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禁じ手とジレンマ

本日は東京証券取引所においてUBS証券がカプコンCBにおける売買で3兆円規模の誤発注をするドタバタ劇があったものの、米株高に円安効果もあって日経平均株価は4日ぶりに反発となったが、財務・金融・経済とあちこち兼任している与謝野担当相は昨日閣僚後会見にて政府として株価対策を検討してゆく方針を明らかにしている。

一部紙には政府による株の買い支えなど「禁じ手」にまで踏み込むかが注目されている模様だが、この期に株式買い入れ機関構想等さしたるファクターにはならないばかりか後の弊害が懸念される。

当欄で昨年に日経平均株価が7,000円の大台を割った時には「〜昔の所謂PKOだのPLOなる造語が流行った時代を彷彿させる〜」としたが、この時の空売り規制にしてもそうだが人為的に逆行する介入は結局相場も自立性も歪めてしまうし地盤沈下もかえって促進させてしまうだろう。

諸外国では取引所側の動きも日本企業誘致の働きかけを粛々としているが、こうした禁じ手が焦眉の急だとしても更にこうした動きを助長させてしまっているというジレンマに陥るのはなんとも八方塞な感じがする。


ファンディング危機

金融庁が昨年10〜12月に受けた貸し渋りや貸し剥がしの相談件数は7〜9月より2倍近く増えて四半期で過去最多となった旨が報道されていたが、昨今貸し剥がしで問題になっていたSFCGが3,000億円以上の負債を出して昨日破綻した。

あのアーバンコーポや大和生命保険をも上回る額とは凄いが、思えば10月末にストップ安で500円台を付けてからその日のうちにストップ高に切り返したのを号砲に僅か一ヶ月そこそこの営業日で株価が4,000円台へと約8倍に化けたのもこれまた凄かった。

ただ足が速いカネが色濃いノンバンクだけに貸出金の猛烈な回収が始まった昨年あたりから既に関係者の間では噂が出ており、上記の棒上げにした株価も訳アリと更に深読みされて要注意の銘柄に選定されていたものだったが、結局のところ流動性確保が追い付かなかったのだろう。

ところでSFCGという社名ではピンと来ない向きも居るだろうが同社は旧商工ファンド、同業の類ではロプロなるものもあるがこちらは旧日栄、これも何時の間にか株価一桁になってしまったが今や淘汰の波は社名を変えようが容赦なく業界を呑み込む。


丸の内の目玉

今週は週初の日経紙一面に日本製紙グループ本社がオーストラリア3位のオーストラリアンペーパーを買収する旨が出ていたが、全般M&A金額が金融危機の影響で縮小する中を豊富な手元資金を持つ向きの攻勢が際立つ。
ところでM&A同様大きな買い物関係といえば、直近では何度か当欄でも触れた経営再建中の米保険大手AIGがとうとうあの丸の内のAIGビルの売却を決めた模様である。

このAIGビル、築年数こそ古いものの皇居のお堀とセットで一つの風景になっており東京駅周辺の物件の中でも八重洲側とは可也ステージが違う、一寸前まで先ずこのクラスが売り物に出る事は稀だろうと見られていた物がこうして出て来るのはやはり金融危機があってこその事例だろうか。

まさに昨年末当欄で「Welcome不況」のタイトルで書いた経済混乱故の出物だろうが、とはいってもでは頂きましょうと落とせるのは其れなりに纏まったキャッシュを動かせるところに限られてこよう、そうなるとやはりこの辺の財閥系大家さんになるのだろうかなどと勘繰ってしまうが、やはりこんな局面こそ強固なところほど更に機会も多いという構図か。


萎縮から再編

本日の日経紙財務面にはREITの産業ファンド投資法人が三菱商事を引受先に80億円の劣後債を発行する旨が出ていたが、REITによる劣後債発行は初のケースだろうか。

さて、REITといえば不動産証券化協会が先週末に纏めた個人投資家の意識調査結果によると、REITを保有しているとの回答は僅かに6.6%、今後REITに投資する予定が無い向きが60%に達するなど人気の無さが顕著だが、つい数年前にREITを当欄でとり上げた時は累計資産額が一年間で60%増と破竹の勢いで膨張していたのを思えばその凋落ぶりがなんとも酷い。

昨今のREITは組み込まれている不動産資産価値を合せた実質純資産額を時価総額が下回る状況、リーマン破綻で所謂ブルーチップ株が軒並みPBR割れと割安感?が煽られていたのに状況は同じであるが、株式よろしく今のセンチメントはPBRの異常な低下は割安感より破綻懸念を喚起してしまうのが現状である。

こんな状況に危機感を募らせた政府は投資家の信頼回復の為に運用を行う投資法人同士の合併・再編を促す方針を固めた模様だが、これまた企業同様玉石混合なだけにそのオペの成り行きが注目される。


醒めないMAGIC

さて、先週は内定取り消しやら何やらで一頃晒し者になってしまった日本綜合地所がとうとう2,000億以上の負債で破綻の道を辿るハメになってしまったが、こうしたモノが出る一方で先週末の日経紙一面に出ていたようにオリエンタルランドなどは09年3月期の連結決算で純利益が過去最高になった模様である。

もともと同社は昨年から度々上方修正をい繰り返すなど一般とは全く逆の優等生ぶりを見せ付けて来たが、最近の景気後退の中で所謂レジャーの「安近短」傾向が追い風になったと見られている模様である。

まあ上記は額面通りには受け取れないもののTDL周辺については度々当欄で触れて来たが、古くを辿ればバブル崩壊期でもへこまず100年に一度の危機でも最高益とはそれこそMAGIC、考えてみればここ数年に亘ってレンジ内での動きを続けている管理相場のような同社株価には正直つまらなさを感じる事もあったが、まあ外部環境に左右されないというのもやはり特異でもある。

先に25thアニバーサリーに触れた時に「〜シンプルな発想ながら絶え無き仕掛けとその実現にはいつも敬服させられる〜」と書いたが、もう一つの強みはやはりキャストの教育であろうか。この辺は以前に直営ホテルへ宿泊した時にこれは凄いなと敬服した出来事が幾つもあったが、或る面ココの人材教育に似たようなエッセンスを持っていたのが2/5付けで書いたマハラジャであったが、さすがにそのマジックの規模が違った。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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