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優待制度の在り方

さて、各株主には期末の配当金と共に優待カードなどが各企業から送られてくる時期でもあるが、優待と言えば先週末の日経紙・投資情報面には「株主優待の適用拡大」と題して、東急が株主優待制度を改定しこれまで200株以上の株主が対象だった優待適用を100株以上へと基準を引き下げるなど裾野を広げる旨が出ていた。

昨今の物価高の波を受けてふるさと納税と共にこの株主優待も家計を助ける手段として再度注目度が高くなっており、特に外食系で年2回ほど優待カードや商品引換券などを提供するすかいらーくHDや日本マクドナルドは安定した人気を誇っているが、内容を改悪?した吉野家などは最近の失態と相俟って失望の声も多く上がった。

ところで吉野家のような改悪から更に廃止へと方針転換する企業も一方で増加しつつあり、2021年9月末までの1年間で株主優待制度を廃止した企業は75社と過去10年間で最も多くなっている。優待の活用が難しい機関投資家や海外在住投資家は対象外とされている事などから不公平感を無くし公平な利益還元を求める声に対応した格好だ。

また4月の東証の市場再編では株主数の規定が緩和された事で、個人株主の確保策として優待制度の優先度は下がる事になった背景もあるか。一部の入札等も経て金券ショップに並ぶラインナップもこれから減少に向かうのかどうかだが、冒頭の例と照らし合わせ今後株主優待制度の増減は如何に各企業の取組に注目したい。


TOB繚乱

本日の日経平均は原油高を受け関連銘柄を物色する動きや割安感が意識される銘柄などへの見直し買いも入り3日続伸となった。そんな中で一際目立ったのが終日買い気配で推移し比例配分でストップ高となったプライム市場のキトー株か。米投資ファンドKKR傘下で米クロスビーグループと経営統合する事で合意し、KKR側が同社に対しTOB実施との報が背景になっている。

同社の場合、TOB価格が2725円ということで前日比60%超のアップ率だった事から本日の急騰となったが、本日の日経紙マーケット面でも「次のTOB銘柄に思惑買い」と題し足元でのインフロニア・ホールディングズによる東洋建設のTOB実施など、特に冒頭に書いたような割安感がある低PBR顕著な建設業界等でTOB機運が高まっている旨の記事があった。

ところでインフロニアといえば自身もその経緯はなかなかひと悶着のあったTOB劇を挟んだものであったが、今週期限を迎える上記のTOBも任天堂創業家の資産運用会社が割り込んで来た事で暗雲漂う。こうしたケースは昨年も幾つかありTOBの頻発に比例して近年多く見られるパターンだが、企業価値向上策を競る上でもガイドライン等再考の余地はまだあるか。


団栗の背比べ?

先週の日経紙・金融経済面には東証で実質最上位の「プライム」の上場企業に対し、現状で約1割にとどまっている有価証券報告書の英文開示を求める声が強まっている旨が出ていたが、このプライムといえばJPXは同指数をスタンダード、グロースと共にこれまで1日1回の終値算出から15秒間隔での算出とリアルタイム算出に変更すると先週に発表している。

市場再編からはや1ヵ月が経過したが、果たしてというか上記の英文開示以外にも終値だけでは日中の値動きを把握出来ずに使い難いといった声が多く届けられ、当初この3市場指数を市場全体を投資対象とするような運用ツールに使われるモノではなく、単に統計目的の参考値として考えていたJPXも方針を転換せざるを得ない状況になった模様だ。

投資対象といえばこの度の市場改革は金融庁の金融審議会等でTOPIXを市場区分と切り離して投資対象としての機能性を高めるべきとする背景があったものだが、ちなみに再編スタート時からの3市場のパフォーマンスをTOPIXと比較した検証結果では特にプライムなどTOPIXと変らない結果が出ていた模様。

この辺は絞り込みで猶予期間を与える等の措置を取った結果が如実に表れたのだろうが、
これに限らず例えばこれまでのTOPIX100とかROE等で選りすぐったJPX400等もここ10年間のTOPIXとのパフォーマンス比較でほぼ差が生じていない検証結果も出ている。これではわざわざ選りすぐった指数の意味も無いという事になるが、真に” 使える” MSCIのような市場代表性を備えた指数が渇望されるところでもある。


言論の自由至上主義

周知の通り電気自動車大手米テスラのイーロン・マスクCEOが米ツイッター社の筆頭株主に浮上しその後に同社はマスク氏を取締役に迎えると発表されていたものの、その数日後に予定されていた取締役就任日直前になって同氏は取締役就任を辞退、返す刀で今度はツイッターの全株式を取得する買収を提案している。

同氏は残る全株を1株あたり54ドル20セントで取得すると表明、最善且つ最後の買収案を提示したとしているが、この一連の動きに対しツイッター側もポイズンピル等の買収防衛策導入を検討している模様だ。このポイズンピルは日本でも近年では東芝機械や古くはブルドックソース事件でも記憶に新しいが、取締役会が買収提案を拒否した場合には代替案があるとしている。

まさに株式で膨れ上がった資金力を背景にまたも大掛かりなマスク劇場が展開されているが同氏が論点に挙げているのが「言論の自由」、過去には投稿を巡りSECに訴えられた騒動もあったがこの敵対的方向に向かっている買収劇の裏で双方がどういった論点で対立しているのかが焦点、今後更なる買収金額の引き上げがあるや否やこれらと併せ目まぐるしい展開なだけに目が離せない。


IPO一転

本日はグロース市場にサークレイスが新規上場となったが、旬な業種のうえ市場からの吸収金額の軽量感も囃され買い気配のまま初日の取引を終えた。IPOといえば一昨日の日経紙総合面には「新規上場急ブレーキ」と題し、金融引き締めやウクライナ危機で株式市場が混乱した事などを背景に昨年のIPOブームから一転して、今年1月から3月で世界のIPOのうち128社が中止となり過去20年で最多となった旨が出ていた。

特に米での減少が目立つが、日本でも同期間に7社が上場を中止しこの期間のIPOは15社と8年ぶりの低水準となった格好だ。特にネット銀行で初の上場案件という事で注目されていた、先月24日に東証一部上場予定であった住信SBIネット銀行はその想定時価総額が約3000億円にのぼる大型案件であった。

冒頭のサークレイスは公開価格の2.3倍まで買い気配を切り上げるロケットスタートとなったが、これまで上場したうち約3割の初値が公開価格を下回っているのが現状。バリュエーション水準も切り下がり想定していた資金調達難から今年のIPO数は下方修正が濃厚ともいわれるが、売買主体が欧米のような機関投資家とは異なる構図の日本ではその手段も限られるのが悩ましいところで資金供給する道筋の広がりなど今後の課題となるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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