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出資証券乱舞

本日の日経平均は週末の米株式急反発を受け寄り付きこそ急反発して始まったもののあと失速し3日続落で引けたが、121円安のうち中身はファーストリテイリングの57円とソフトバンクの51円の2銘柄で108円押し下げるという高寄与度銘柄によるもの。そんな中個別で先週から地味?に目立っているのはやはり日銀株か。

同株は年明け早々に24,610円と80年代のバブル期以降での最安値を更新し後もダラダラと出遅れ感著しい動きだったが、先月末から突如として動意づき3月に入ってからは4日連続ストップ高の離れ技をやってのけわずか1週間でその株価は2倍化したものの、ザラバで年初来高値を更新した先週末からは一転してストップ安となり週明けの本日も終日ストップ安とジェットコースター相場を演じている。

バリュー株など物色の波が一巡し最後に目を付けられたか否か、確かに日経平均がバブル期以来約30年半ぶりに3万円大台に乗せてきたのを考えると買い進めたETFの運用益増加など勘案するに究極の好業績出遅れ銘柄とも取れなくもないが、政府が半分以上を出資する出資証券の乱舞は違和感が付き纏う。

ところで昨日の日経紙一面を飾っていたのがチャートは語るで「迫るバブルの足音 緩和、見えぬ出口戦略」と題した記事であったが、バブル期に40倍以上にまで大化けした経緯のあるこの日銀株の突然の物色はやはり過剰流動性によって引き起こされた金融相場を象徴するような動きといってもよく上記の日経記事も妙に実感が湧いてくるというものだ。


成長か肥大か

昨日記の通り今週は週明けから日経平均が3万円の大台を超えてきたが、個別でもこの日経平均への寄与度が約10%と影響力の極めて高いファーストリテイリング株もまた10万円の大台を超えて上場来高値を更新していたのが目立ち、本日の日経紙企業面でも「ファストリ、時価総額10.8兆円」と題し同社の時価総額が10兆8,725億円となった旨の記事が出ていた。

ところでファストファッションの双璧といえば世界ではこのユニクロを展開するファーストリテイリングとZARAを展開するスペインのインディテックスだが、これまで長年のあいだ時価総額で後塵を拝していた同社もこれで初めてインディテックスを超えはれてアパレル業界で世界首位に躍り出たということになる。

最近はサステナブルを意識したモデルを構築しコロナ禍も追い風になったのか、はたまた今や大株主にまでなった日銀のETF買い効果なのか、何れにせよ今やこれを買うのに1単元でも1,000万円以上が必要となるワケで数年前のように手軽に手の出せる銘柄ではなくなってしまったが、今後も日銀政策と併せいろいろな意味で目が離せない指標的存在になっているのは間違いないだろうか。


コロナ後を買う?

昨日の余勢を駆って本日も日経平均は大幅続伸となっていたが、米休場の狭間を縫って昨日はとうとう1990年8月2日以来約30年6ヵ月ぶりに終値で30000円の大台を超えて来た。内容としては小売りや半導体関連に資金流入が目立ったが、このセクターでも寄与度が高いファーストリテイリングとファナックの2銘柄でこの日の上げの約3分の1を担ったという構図だ。

しかし今月に入ってからというものあれよあれよと3000円以上も上昇し嫌でも高値警戒感が感じられるものの、溢れた緩和マネーの変わらぬ受け皿として否応なしの状況となっており先の米市場のゲームストップ株ではないが実需というよりETF等も含め構造的にショートが累積していた構図がスクイ−ズを誘発した可能性も無きにしも非ずか。

ところで30年前というと何所も彼処もギラギラしていた懐かしい光景が今でも直ぐに思い出されるものだが、それは兎も角この当時の時価総額を見てみると首位はNTTでそれに続いてズラリと並んでいたのはまだ合併前の大手銀行勢だった。また世界ベースで見てもNTTは2位に君臨していたが、今や国内首位のトヨタ自動車でさえ30傑にも入らない凋落?ぶりとなっておりこの辺は他国との新陳代謝の違いをあらためてまざまざと感じさせられる。


2021年IPOスタート

さて、先週末には2021年最初のIPOとなる半導体レーザー、網膜走査型レーザーアイウェアを手掛けるQDレーザーが東証マザーズに上場となったが、その注目の初値は買い気配のまま前場を終える人気で後場に入って引け前になって漸く公開価格340円の2.34倍に相当する797円の初値を付けた。

本日も同社は寄り付きからいきなりストップ高とその騰勢は止まることなく破竹の勢いとなった今年の一発目であったが、昨年のIPOを振り返ってみると前半と後半で環境に明暗が分かれたものの、前年比8社増の102社となり07年以来13年ぶりの高水準となった。また日経紙によれば上場初値は公募・売り出し価格の平均2.3倍に達し、15年ぶりの高水準となった模様。

資金吸収額が比較的小粒な企業がマザーズの約7割を占めたという構図もこうしたロケットスタートに一役買ったともいえるが、今年のIPOはといえば概ね前年並みかそれ以上の上場件数が見込めそうなものの昨年延期となったキオクシア等も見込まれる事で小粒一辺倒という感じではなさそう。公開価格と市場価格の大幅乖離は投資家のニンマリ顔と対照的に公開企業側に取っては問題も残るものだが、上記の部分でこれが多少緩和される事になるかどうかこの辺も見ておきたい。


ロビンフッダーパワー

先週はVIXが高水準に跳ね上がり米株式は乱高下の憂き目に遭っていたが周知の通りこれはレディット等のSNSで連携した個人が、集団で空売り残高を積み上げたヘッジファンド等の踏みを狙い特定銘柄に買いを仕掛けるような過度な投機的な一連の動きを受け金融システム安定リスクの上昇が警戒されてのもの。

代表銘柄のゲームストップ株の株価は年初の17ドルからひと月で347ドルまで約20倍に跳ね上がるなどあまりの過熱ぶりに、これを介する米証券ロビンフット・マーケッツによる一時取引制限を個人投資家らの反発で緩和した際には一日で株価が倍増し、更には銀や仮想通貨へまで飛び火するなど依然として鉄火場だ。この過程で実際に幾つかのヘッジファンドは巨額損失を計上しロビンフッドも金融機関からの借り入れ措置を取っている。

そういえば日本でも所謂掲示板を使って確か今から6年前だったか、かつて大物仕手筋の関係者が新日本理化やルック等を最大で株価5倍化まで煽り約60億円もの売却益を抜いた事件が風説の流布にあたるとして、証券取引等監視委員会が後に金商法の疑いで強制捜査した件が話題になった事があったのを思い出す。

また上記のヘッジファンドの巨額損失を見るにもう一つ思い出すのは、やや飛躍するかもだが1998年に起こった大手ヘッジファンドLTCMの実質破綻か。今回のようなレディットやロビンフッドといったプラットフォームが個人投資家間の強力な情報交換と取引の手段として普及する一方で、LTCMが巻き起こした金融危機のようなシステムリスクの芽もその副産物として出て来てしまっている点は否めないところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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