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値決めの是非

さて、先週末には3週間ぶりのIPOとなるシイエヌエスとフューチャーリンクネットワークがマザーズへ新規上場を果たした。注目の初値はシイエヌエスが公開価格を55%上回りフューチャーリンクネットワークも公開価格を75%上回る好発進となったものの、共にあと売り物が嵩み前者は初値を23%下回り後者も初値を16%下回って共にストップ安の引けとなり、今週に入っても安値更新するなど軟調展開を強いられている。

ところでIPOといえば過日の日経紙には一面で公正取引委員会が新規株式公開時に適切に資金調達出来ているかの調査を始めた旨が出ていた。事前に証券会社と決める公開価格と最初に売買が成立した初値の差が欧米より大きく、企業が調達する額が低いとの指摘があるためで資金調達の面から改善を探る動きという事だ。

IPOで上場した米国や欧州主要国の初値は平均で公開価格の1.1~1.2倍なのに対し、日本企業の初値は平均で公開価格の約1.5倍となっている。この辺を一括りにするのは難しいところだが、日本は売買主体が欧米のような機関投資家というより個人投資家が多く新興ポストには小粒な企業が集まりがちという要因もある。

また資金調達のパイプも欧米ではスタートアップ企業等に資金供給する道筋は多岐にわたるが、対して日本はこのパイプが細く企業の規模が小さいままIPOを急いでいるきらいがないとはいえない。勿論のことロードショーを巡る問題点や証券会社の取引慣行の見直しなど図るのが悪いとは言わないが、SPACなどを巡る腰の重さもこれまで目に付くだけにこの辺も併せて図ってゆく必要もあるのではないか。


ESGと中国市場

先週公表された主力企業の決算が事前予想を上回る内容であった事で楽観ムードが広がり今週も週明けから米市場はダウ、S&P500共に史上最高値を更新しているが、折しも五輪期間という事で個別でも米ナイキの株価なども順調に上場来高値を更新している。ところでこのナイキといえばウイグル自治区の問題が記憶に新しい。

同業の独アディダス等と共に強制労働問題に懸念を示す旨の声明を出しウイグルの綿花を排斥しているとの発信が批判を呼び、CM等の契約を結ぶ俳優やモデル等が次々と関係を解消、ファーウェイなどスマホ大手のアプリストアで同社のアプリを検索してもダウンロードする事が出来なくなる事態になった経緯がある。

さて、ウイグル問題の波に呑まれた企業には国内勢ではファーストリテイリングや無印良品など挙げられるが、こちらの株価といえば前者が本日は大幅安で年初来安値を更新、後者も年初来安値まであと僅かに売られている。中国リスクに対し敏感なポジションにある企業間でも上場来高値を更新する向きと年初来安値に沈んでしまう向きありと明暗だが、成長ドライバーを何所に絞るか中国リスクに対し敏感なポジションにある企業の課題だろうか。


場の選択肢

さて一昨日の日経紙総合面には「東証と私設取引、競争促す」と題し、金融庁が個人の株取引を取引所に取り次ぐ際にPTS含めた複数の株価を比較するなど、売買価格を最重視する事を原則として証券会社に求めるなど東証一辺倒であった市場構造の見直しに乗り出す旨の記事が載っていた。

年度内にも金融商品取引法に基づく内閣府令を公布し、上記の通り証券会社が投資家の立場を最優先する方法を示す最良執行方針に価格を最重視する記載を盛り込むよう求める方向で、取引システムの刷新が予定されている2024年を睨んでの見直しが徐々に具現化する方向になってこようか。

国内では先にチャイエックスが米投資ファンドJCフラワーズからアジア進出を狙う米CBOEグローバル・マーケッツ傘下となったが、こことジャパンネクスト証券の双璧でも取引量で見ればせいぜい7~8%水準に甘んじている。メガバンクも食指を動かして来ているが、斯様な構造見直しで先ずはリクイディティーの部分など変化が見られるか否かこの辺を見ておきたい。


遜色のないバカ

さて、本日の日経平均は手掛かり材料難のなか米市場の軟調を受け3日ぶりに反落となったが、そんな中で一際立っていたのが肥料大手の多木化学か。この株、つい4営業日前の先週末には5,000円の年初来安値を示現していたのだが、本日は寄り付きからストップ高まで買われ一気に年初来高値を更新と破竹の勢いとなっていた。

この背景としては、同社が香り・食感共に「松茸」に酷似する「バカマツタケ」の大量生産試験が可能な研究栽培施設の増設を発表した事で事業化の前進が囃されたものだったが、昨日今日の急騰劇を見るにちょうど3年前に同社が世界で初めてこのバカマツタケの完全人工栽培に成功した時の事が思い出される。

当時もその発表翌日から3日連続でストップ高を演じた後も日経平均が4ケタの急落となるなかを続伸するなどわずか3営業日で株価は約7割の急騰を演じたのが鮮明に思い出されるが、絶対に不可能といわれた舞茸の人工栽培を雪国まいたけが成功させたのを皮切りに斯様な日進月歩の技術を以て従来は絵空事だった領域の克服が加速している。

かつて高根の花だった舞茸や山伏茸など今ではどこのスーパーでも安価で何時でも手に入るが、こうなると今後この分野では料理界のダイアモンドと称されるトリュフなども人工栽培を成功させる向きが出て来るのだろうか?と夢は膨らむ。何れにせよ斯様な進化で数年後の食文化が今とは違った光景になっている可能性も十分に考えられるか。


其々の奔走

さて、東京都に4度目の緊急事態宣言が出された事もあり本日の日経平均は終日ダラダラと続落し安値引けとなったが、そんな中で今週は6日まで東証2部指数が3営業日続伸し7,739.83ポイントと、2018年1月23日に付けた7,731.41ポイントを上回りおよそ3年5か月ぶりに過去最高値を更新している。

この動きの背景には一昨日に当欄でも書いたように、東証の市場再編を見据え東証一部に代わるプライム市場に昇格するとの思惑による個別物色も背景にあるところが大きいだろうか。かつては一部に上場しで日経平均構成銘柄にもなっていたエンジニアリング御三家の一つ、千代田化工建設はじめ日本精機や中央自動車工業、つい昨日に年初来高値を更新したヨネックス等々候補銘柄は数多ある。

この東証2部指数の約3年5か月ぶりの過去最高値更新と並んで日経ジャスダック平均株価も先月末には2018年5月以来、約3年ぶりの高値を付けてきているが、こちらのポストからはフェローテックホールディングスや芝浦電子などがプライム昇格有力銘柄として挙がりいずれも先月末には年初来高値を更新してきている。

当然ながら既定の一部からも多くの企業がプライム入りを目指し、創業者など大株主に株を手放してもらう働きかけや保有する自己株式を消却したりと奔走する動きが見られるが、駆け込み?でこれが適ったとしても要はその後の維持で中長期的に企業価値を高めるべく市場と向き合う事が求められるなどその後こそ大規模な再編イベントの意義が問われるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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