45ページ目   株式

2021年IPOスタート

さて、先週末には2021年最初のIPOとなる半導体レーザー、網膜走査型レーザーアイウェアを手掛けるQDレーザーが東証マザーズに上場となったが、その注目の初値は買い気配のまま前場を終える人気で後場に入って引け前になって漸く公開価格340円の2.34倍に相当する797円の初値を付けた。

本日も同社は寄り付きからいきなりストップ高とその騰勢は止まることなく破竹の勢いとなった今年の一発目であったが、昨年のIPOを振り返ってみると前半と後半で環境に明暗が分かれたものの、前年比8社増の102社となり07年以来13年ぶりの高水準となった。また日経紙によれば上場初値は公募・売り出し価格の平均2.3倍に達し、15年ぶりの高水準となった模様。

資金吸収額が比較的小粒な企業がマザーズの約7割を占めたという構図もこうしたロケットスタートに一役買ったともいえるが、今年のIPOはといえば概ね前年並みかそれ以上の上場件数が見込めそうなものの昨年延期となったキオクシア等も見込まれる事で小粒一辺倒という感じではなさそう。公開価格と市場価格の大幅乖離は投資家のニンマリ顔と対照的に公開企業側に取っては問題も残るものだが、上記の部分でこれが多少緩和される事になるかどうかこの辺も見ておきたい。


ロビンフッダーパワー

先週はVIXが高水準に跳ね上がり米株式は乱高下の憂き目に遭っていたが周知の通りこれはレディット等のSNSで連携した個人が、集団で空売り残高を積み上げたヘッジファンド等の踏みを狙い特定銘柄に買いを仕掛けるような過度な投機的な一連の動きを受け金融システム安定リスクの上昇が警戒されてのもの。

代表銘柄のゲームストップ株の株価は年初の17ドルからひと月で347ドルまで約20倍に跳ね上がるなどあまりの過熱ぶりに、これを介する米証券ロビンフット・マーケッツによる一時取引制限を個人投資家らの反発で緩和した際には一日で株価が倍増し、更には銀や仮想通貨へまで飛び火するなど依然として鉄火場だ。この過程で実際に幾つかのヘッジファンドは巨額損失を計上しロビンフッドも金融機関からの借り入れ措置を取っている。

そういえば日本でも所謂掲示板を使って確か今から6年前だったか、かつて大物仕手筋の関係者が新日本理化やルック等を最大で株価5倍化まで煽り約60億円もの売却益を抜いた事件が風説の流布にあたるとして、証券取引等監視委員会が後に金商法の疑いで強制捜査した件が話題になった事があったのを思い出す。

また上記のヘッジファンドの巨額損失を見るにもう一つ思い出すのは、やや飛躍するかもだが1998年に起こった大手ヘッジファンドLTCMの実質破綻か。今回のようなレディットやロビンフッドといったプラットフォームが個人投資家間の強力な情報交換と取引の手段として普及する一方で、LTCMが巻き起こした金融危機のようなシステムリスクの芽もその副産物として出て来てしまっている点は否めないところ。


悲願の復帰

本日の日経紙社説には自動車生産の予想以上の回復を背景にした半導体不足の深刻化でこの自動車生産が変調をきたしている旨が出ていたが、これを受け大手のルネサスエレクトロニクスが車の走行を制御するマイコン等で値上げを要請、また東芝もパワー半導体など1〜2割の値上げを複数の自動車メーカーと交渉入りしている。

これを受け週明けの両者の株価はルネサスエレクトロニクスが年初来高値を更新、また東芝に至っては一時ストップ高まで買われる暴騰を演じたが、こちらの方は半導体の値上げ云々よりも東京証券取引所の承認を得て今週にも現在の2部から1部市場に指定される事になったとの報が大きいいだろうか。

この突飛高で大株主に犇めく魑魅魍魎のアクティビストも取り敢えずはホッと一息といったところだろうが何れにせよ17年8月に2部落ち?してから約3年半ぶりの悲願の1部復帰、今後はTOPIX組み入れなどによる需給の変化があるや否や、復帰といえども解消すべき課題は依然多くアクティビストの動向と併せまだ目の離せない展開が続くか。


「蜜」な年末IPO

さて、先に米IPO市場の調達総額が今年は過去最高記録を更新するなど活況を呈している旨を書いたが、日本でも先週から12月のIPOラッシュがスタートしている。先週木曜には5社が同時上場とマザーズなどはまさに「蜜」状態を呈しているが、既に知名度の高い新興家電の「バルミューダ」などは上場日から本日で4日連日のストップ高の離れ業で上場日の寄りで買ってもたった4営業日で実に株価2倍と大化けしている。

他にも上記のラッシュの17日にマザーズに新規上場した「ビートレンド」や「プレイド」、「かっこ」はいずれも買い気配のまま初日を終え、翌18日に同じくマザーズに新規上場した「ココペリ」も買い気配のまま初日を終えその後いずれも公開価格の約2倍から4倍で初値を形成、また本日マザーズに上場した「いつも」も公開価格の2.3倍にあたる3545円まで気配値を切り上げ買い気配のまま取引を終えるなど猛ダッシュのスタートを切っている。

今年は国内で新規上場する企業は前年から7社増え93社と2007年の121社以来、13年ぶりの高水準となるが特にここからは営業日を考慮するに1日平均で2社以上のハイペース公開が続く。中には公開後に急反落と息切れしているモノも散見されるが、先に上場延期となったキオクシアの上場延期も需給面で一役買っている素地もありこのラッシュが新興ポストにとって追い風となるか否か月末まで注目したい。


思惑の乱高下

昨日の日経紙総合面には先週末に上場したユニコーンの民泊仲介エアビーアンドビーの時価総額が10兆円に達し話題な旨の記事があったが、米IPO市場の活況は今がまさに旬?でこれ以外にもこの前日の9日に上場した米料理宅配大手ドアダッシュも初日は公開価格を9割近く上回る水準で引け好スタートを切っている。

ところでこのドアダッシュに傘下ファンドが出資している事でその含み益思惑から翌日のソフトバンクG株は急騰し年初来高値を更新、この日の日経平均の上げ幅の実に4分の1は同社が寄与するという格好になった。もう一つ、この急騰の背景にはドアダッシュ以上に材料視されているものに依然として燻るMBOの思惑もある。

創業者の持ち分が他株主の締め出し可能になるまで少しずつ発行済み株式を買い戻すという所謂スローモーションMBOなるもので、自身の買い増しでなく他株主が買戻しに応じる事によって保有比率が上昇、ゆくゆくは他株主から未保有株を買い取る権利が発生しプレミアムを支払わずに済むとブルームバーグは具体的なスキームを報じている。

直近でも先週末にロボット開発の米子会社を600億円で売却合意との発表が為されるなど粛々と資産売却を進める同社と沈黙を続ける創業者に様々な思惑が募るが、何れにせよ10日の年初来高値更新で3月の安値からは実に3.4倍にも化けた同社株、上記の通り日経平均への寄与度が高いガリバー的存在になっているだけに今後も同社の動向からは目が離せない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

11

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30