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12年ぶりの改定

さて先週末の日経紙投資情報面では「株主保護に重点」と題し、経済産業省が株主に不利とならぬよう独立性を担保した委員会を設置して買収価格の算定根拠などを議論する事を求めるなど、MBO(経営陣が参加する買収)に関する改定指針を発表した旨が出ていたが改定は12年ぶりのことという。

このMBOに関しては当欄で先月に一度取り上げているが冒頭で日本において買収価格が低く抑えられがちな旨を書き、これまでMBOの実現適わずに終わった中堅印刷会社の廣済堂はじめ東栄リーファライン、アサツーDKから日立国際電気等々そのMBO価格の低さをアクティビストらに指摘されてきた経緯も挙げた。

素地としては企業側が資金調達に困るという環境下に無くMBOの誘因が高まる半面、総じてこれまで経営陣らによるディスクロが不十分であった為に株主側から待ったがかかったパターンが多くMBO件数が低迷している背景があるが、特別委員会の設置でこの辺の透明度も高まり低迷から抜け出せる切っ掛けになるのかどうか先ずはこの辺に注目しておきたい。


MBO事情

本日の日経紙社説には「MBOにきちんとした規律を」と題し、上場企業の経営陣が株主から株を買い取って非公開化するMBO(マネジメント・バイアウト)が、日本においては買収価格が低く抑えられがちとの見方があるなかで実効性のあるルール作りが進みつつある旨が書かれていた。

MBOといえば最近では日本の企業ではないものの、あの幻に終わった米テスラモーターのMBO騒動が記憶に新しいところだが、同紙にもMBOが失敗に終った例として上記の通りそのMBO価格の低さを旧村上ファンド関係者らに指摘され幻に終わった中堅印刷会社の広済堂が出ていた。

これに限らず同じく旧村上ファンド系では同様に東栄リーファラインのMBOに対しても価格の低さを指摘していた経緯があり、同様の理由ではアサツーDKや日立国際電気も其々アクティビストから価格の低さを指摘されていた。経産省は特別委員会を設置し権限を持たせるなど実施指針の12年ぶり改定を目指すようだが、これでMBOもまた国際標準に近付くのかどうか引き続き注目しておきたい。


退避先?のIPO

本日の日経平均は前週末に急反落していた週末の米株式や、1日に中国政府が米製品に対する追加関税を従来の最大10%から最大25%にする報復措置を発動した事等を嫌気して4日続落となったが、そんな中で先週末に令和に改元となって初のIPOとなったソフトウェアのテスト・検証サービスを手掛けるバルテス株が本日も大幅続伸となっていたのが目立っていた。

このバルテス株、上場したのは先週木曜だったが初日は買い気配で値が付かず、翌日にようやく公開価格660円に対して2.76倍となる1,820円で初値を付けるに至ったが、これで初値が公開価格を上回るIPOは15社連続となり株式マーケットが全体に軟調展開を強いられるなか個人のホットマネーがIPOに向っている旨が窺える。

当欄でIPO絡みといえば今年の3月に取り上げその時の末尾には成長期待の高い予備軍が控え新年度以降も引き続き注目と書いたが、果たしてIPOインデックスは4月末比で1%上昇と上記の通り日経平均とは対照的だが、現況は退避先と見られている斯様な構図も上場申請関連書類等のハードルも上がり成長期待が背景にあるだけに一過性のものか否か今後に控えるIPOも目が離せない。


楽観支配の咎め

本日の日経平均は米中貿易摩擦と世界景気への影響を懸念して4日大幅続落となり約1か月半ぶりの安値圏に沈んだが、本日の日経紙にも「米中不安市場揺らす」と題しVIが日米欧で揃って上昇、一昨日の所謂恐怖指数であるVIX指数は一時3か月ぶりに節目の20を上回った旨が書いてあった。

このVIXといえばやはり思い出されるのがこれに振り回され大荒れ模様となった昨年2月が鮮明に思い出されるが、先月末時点でヘッジファンドなど投機筋によるVIX先物の売越残高は18万359枚と実に統計を遡れる2004年以降で最大となっていた旨も一昨日の同紙に載っていた。

東日本大震災の時に先物オプション市場に溜まっていたセルボラが大パニックになった時も然り、リスク・パリティ型ファンドが増殖している近年昨年2月以降でも10月の乱高下なども記憶に新しいところで、低金利と低インフレを支えに変動の小さい相場が続くと「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の如く楽観がまん延していた証左の最大の売りに逆回転がまたも牙を剥いた格好になったか。


泥船避難

さて、一昨日の日経紙には「代表がインサイダー疑い」と題して、上場廃止になったジャスダック市場の機器輸入販売会社T&Cメディカルサイエンスの社長が上場廃止前に同社株を不正売却し損失を免れた件で、証券取引等監視委員会がインサイダー取引の疑いで関係先を強制調査した旨の記事が書かれていた。

今回のケースと同様な破綻売り抜けパターンとして直近では、先月に証券取引等監視委員会が課徴金納付命令を出すように金融庁に対し勧告したエアバッグ大手タカタが民事再生法の適用申請を公表する前にこの情報を内部で知り自身の保有するタカタ株を売り抜けていた元社員の例が記憶に新しい。

同紙には他にスミダコーポレーションやALBERTの元役員のインサイダー例が出ていたが、更にその前には東京スタイルと経営統合し今はその名が市場から消えたサンエー・インターナショナルの社長もファイナンス公表前に所有する自社株を売り抜けて利益を上げていたのを思い出す。

新興ポストは一頃上場ゴールなる造語が喧しかった時期があったが、そうした部分も含め新興企業に限らず上記の件も自社株保有しながら敢えて新株予約券を行使して株取得し即売したというから確信犯だろうが、今後もコンプライアンス絡めこうした問題が無くなる事は難しく課題として残り続けるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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