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アノマリーと期待

さて、米格付け会社のムーディーズによる日本国債の格下げの報を受けて株式市場は朝方こそ幅広い銘柄に売りが広がったものの、先物から買いが先行し終わってみれば3日続伸と依然として年初来高値更新が連日続いている。

誰が見ても年末高コースのレールに乗っている気がするが、この辺は本日の日経紙マーケット面にも「なるか3年連続年末高」と題して上記の日本国債格下げや衆院選の行方など不安を残すなかで史上初となる3年連続年末高の可能性について書かれており、カギとなるのは大型株や原油価格動向という。

確かにこの辺はNY DOWと共にもうアノマリーとして後半戦開始以来話題にされてきた事だが、事実ここ10年の11月末の株価と12月末の株価比では、日経平均が9勝1敗、NY DOWでは昨年まで5連勝中となっている。年初来高値更新の時期を併せれば日経平均が25日以降7回、NY DOWは25日以降5回となっており、自ずと期待も高まろうというもの。

昨年の大納会には首相が出席し、「午の尻下がりなんてジンクスは忘れてください。来年はウマくいきます。来年もアベノミクスは買いです!」と頼もしいスピーチがあったが、このシナリオ通りにコトがはこぶのかどうか大納会まで要注目である。


JPX日経400先物始動

さて今週は連休明けからJPX日経400の先物がスタートしたが、注目の初日は売買代金が919億円、売買高が71,514枚と順調な滑り出しとなった。これまで日経平均とTOPIXが長年にわたり日本の代表的指数として双璧であったが、このJPX日経400の登場で投資家そして企業もにわかにROEを意識した経営となり、なによりGPIFもこれを運用基準に採用したインパクトは大きい。

先の追加金融緩和で日銀もこのJPX日経400に連動したETFを買い入れ対象に加えたが、当欄でこのJPX連動のETFについて前回触れた6月時点の残高は1,010億円であった。それから5カ月ほどで今や残高は3,000億円に達し約3倍に膨れ上がっているが、ヘッジニーズが高まる中でのタイムリーな上場となった。

また、これまで日経平均とTOPIXでNT倍率に着目した裁定などあったが、最近はTOPIXに対するJPX日経400の比率であるJT倍率なる物差しで趨勢を測るストラテジストも増えてきてこの辺の裾野拡大も期待出来るものの、この先物、当初より取引単位がミニ並みの手軽さに抑えられているので機関投資家のみならず個人投資家まで取引の間口を大きく広げることになろうか。


新興双璧

連休明けの株式市場は小幅に3日続伸となったが、個別ではオンコリスバイオがストップ高、オンコセラピーも急騰で年初来高値更新とオンコのコンビが仲良く動意づいていた。ところでこれら共にマザーズ銘柄であるが、先週末の日経紙には「マザーズ、代謝する市場へ」と題し、今月で開設15周年を迎えた新興企業向け株式市場の東証マザーズが新陳代謝を促すべく改革に乗り出した旨が載っていた。

ご存じマザーズといえば上記のオンコペア以外にも大物ミクシィを擁する市場であるが、卒業していった企業にはサイバーエージェントや飛び級で卒業したグリーなどこれまたかつてマーケットシェアを握っていた銘柄群が並ぶ。卒業といえば06年のライブドア事件の反省を踏まえ3年前に設けた制度に基づき、上場後10年経過した企業に対し市場選択を促す制度にも触れられていた。

この制度が盛り込まれる直前に当欄では「機動的な資金調達重視もいいが食い散らかしが出来る抜け穴もまた多し」と警鐘を鳴らしたことがあったが、この市場で上場第一号となったニューディールとインターネット総研共に上場廃止となり今は市場にその姿は無く、それ以降も良くも悪くも話題を浚う銘柄が多く輩出されてきた。

今日から先物がスタートしたJPX日経400でも当初はマザーズから2銘柄が選定されていたが、そのうち上記のサイバーが一部昇格となったものの現在はゼロ、同じ新興でもジャスダックとは毛色の違うモノが多いが今後どう棲み分けが為されてゆくのか非常に興味深いところである。


MBO考

今週は週初の日経紙に、「取締役の株主軽視に警鐘」と題しシャルレがちょうどあのリーマンショックの頃に実施したMBOの頓挫で会社に損害を与えたとして株主が当時の取締役に賠償を求めていた件で、神戸地裁が初めて当時の取締役の賠償責任を認める判決を出した旨が載っていた。

MBOといえば近年では先に再上場したすかいらーくや同じ外食の焼肉の牛角を擁するレックスHD、芸能関係ではホリプロや吉本興業、ワインのエノテカやレンタル屋のCCCから引っ越しのアートコーポレーションまで名の通っていた上場企業が一昨年あたりはMBOによって市場から姿を消すパターンが急増した記憶がよみがえる。(そういえば業界のユニコムもMBOで上場廃止の選択をしたなと。)

上記のシャルレは経営陣と一般株主とで価格を巡る思惑があまりにも違った事が問題だったが、このパターンでは出版の幻冬舎もTOB期間に突如として3割もの株式をおさえたケイマン籍のファンドがそれを盾に異議を唱えた件が記憶に新しい。こんな揺さぶりからワインのエノテカのように香りにつられてインサイダ−取引に手を出し摘発された小物まで何かとMBOの舞台裏ではドラマがあった。

この訴訟で問われたのはあまりに株主利益を軽視した取締役の行為という点だが、これらふまえ来年施行予定の改正会社法では取締役には少数株主に配慮して取引内容を承認する等新たな手続きが課されることになる。先には日本版スチュワードシップコードなる行動指針が投資家に導入されつつあるが、株主側に立った行動原則も近年徐々に変わりつつある。


還元機運

本日の日経平均は、市場予想に反してマイナス成長となった7-9月期GDPを受けて16,973.80円と前週末比500円以上の急反落となり5日ぶりの大幅反落で取引を終了した。日経平均へ寄与度の高い銘柄はもとよりほとんどの銘柄が売られていたが、一方でこんな日でも年初来高値を更新している銘柄もあった。

富士フィルムホールディングス等がそれだったが、この辺は日銀のサプライズな金融緩和第二弾で総上げとなった銘柄群とは違い持続的な上昇が特徴となっている。これは先週の日経紙にも「電撃緩和より株主配分」と題してキーエンスやヤマトホールディングス等と共に同銘柄も上がっており、このヤマトホールディングスもやはりこの悪地合下で年初来高値を更新している。

この株主配分、上記の富士フィルムは今年度から配当と自社株買いを通じ2,000億円強を株主に還元と発表しているが同実施期間の純利益が3,000億円見当とされているから約70%程度を株主に戻す計算となる。株主還元といえば先にサプライズな100%還元を発表したアマダがあったが、直近ではインテリア大手のサンゲツが3年で純利益の100%以上を配当や自社株買いで還元すると発表しておりまさに挙ってという感がある。

この一連の動きの先にはやはりROEという一つのテーマがちらつき上記もサンゲツなどのそれは東証平均の半分程度という現状の問題を抱えている。何度も挙げてきたJPX日経インデックス400の登場が如何に企業を刺激し資本効率の向上を意識させているかだが、来週には同指数も先物の上場を控え今後もますますこうした動きが広がるのは想像に難くない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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