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希薄化は買い・2

さて、今週目に留まったニュースといえば第一生命保険が米生保買収の原資とする目的で公募増資により2,000億円規模の資金を調達する検討に入ったという報だろうか。4年前に同社が上場した時は内需縮小で収益の成長が楽観視出来ない事からの戦略転換と書いた記憶があるが、次のステップとして海外市場に活路を求める動きが強まってきたか。

ところで今週はこれ以外にも大王製紙やDICがそれぞれ公募増資を発表しているが、やはり増資といえば株式希薄化のイメージで発表直後には一様に売り物を浴びる。これら三社も例外ではなかったが、昨日の日経紙財務面に載っていたようにその下落率は増資による株数の増加率、所謂希薄化率よりもそれぞれ小幅にとどまっているのが最近の傾向。

それどころか例えば先月公募増資を発表した三井不動産、この発表後は急落したものの数営業日程度で株価は公募増資発表前の水準をあっさりと回復している。冒頭の第一生命もこのパターンで本日既に増資発表前の水準を回復し、それぞれ増資売りに向かった向きは増資分の下落がまるまる利幅になった構図である。

昨年も春先に「希薄化は買い?」のタイトルでJVC・ケンウッドHDを取り上げた記憶があるが、株価の回復を追い風に資本増強を選ぶ動きが目立ってきているなか、その成長戦略が好望視されるものを選べば労せずして目先掬いでも一回転を狙える地合いに近年は変わってきている。


ハイレバ選好

昨日の日経紙マーケット面には、週明けの株式市場で日経平均の2倍の値動きをするETF「NEXT FUNDS日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投資信託」の売買代金が705億円となり、東証全体の1位となった旨が載っていた。

このところの急伸で警戒感も一部出ているなかでも値上がり益を果敢に狙う個人の買いが
集まった格好だが、このETFの拡大も近年は世界でめざましい。日経紙によれば資産残高は過去4年で倍増しており、日本でも3月末の資産残高は12年末から9割増の8兆円超となっている模様。

この中でも売買代金の半数以上を占めるのが上記のレバレッジ型というが、この傾向は数年前から続いている。確かこのレバ系ETFについて書いたのは一昨年くらいからだったと思うが、先物オプション系と倍率ゼロのETFの中間あたりに属するモノは慣れてきた層には手頃なのだろう。今後のハイレバ系の枝葉の広がりにも期待がかかるところである。


資本効率への関心

先週末の日経紙財務面には「ROE、8.6%に上昇」として、東証一部上場企業の2013年度のROEが円安や構造改革による利益拡大が寄与して8.6%と前年度に比べ3ポイント強上昇、6年ぶりの高水準となるなど、日本企業の資本効率が改善している旨が載っていた。

ところでROEといえば思い浮かぶのがこれを重視したという新指数のJPX日経400か。この辺は本日の日経紙一面にも、1月に算出を始めた同指数に連動する投信の運用資産が1,010億円に達した旨が載っていたが、個人の資本効率の高い企業に投資したいという姿勢を表すようかの出来事である。

個別でも先月中旬には東証一部のアマダが純利益の100%を株主に還元すると発表し急騰、その後も上がり続け本日は4ケタの大台に乗せて年初来高値更新となっている。同社のこんな方針はJPX日経400を可也意識したものとされているが、当初この新指数が報じられた約1年前のそれは5%程度であったからこの一年でこんな動きが出てくる通りなかなか改善しつつある。

しかしまだまだ企業によっては現金が積み上がったままの低PBR銘柄もゴロゴロしているのが現状。こうしたところなど今後はそうした資本の有効活用策として自社株買い、若しくは増配などの実施思惑も大きく第二第三のアマダのような動きが出てくることを期待する向きも多い。


思惑祭り

さて本日で日経平均は6日続伸となったが、今週は週初からミクシィを軸としたソーシャルゲーム株物色が顕著であった。同じポストのKLabのストップ高や関連のenishやボルテージ等も急伸する循環物色効果で泥沼だった各種新興市場指数も切り返し急となったが、何せ冒頭のミクシィは20日以降の売買代金がトヨタ自動車を上回るというから凄い。

このミクシィ株といえば昨年末もホットマネーのほとんどをここ一社で吸収するような大商いを見せたことがあったが、この時は10日間連続ストップ高のあと当時の株価の約7分の1のターゲットプライスを出して、中立から売りにレーティングを変更したゴールドマン・サックスの影響で一転して今度はストップ安が続いた事件?が記憶に新しい。

そういえば先週末の日経紙にもこのミクシィ株が「プロも惑わす怪物」として取り上げてあったが、文中には今年2月に入ってからゴールドマン・サックスが公表した大口のカラ売り残高が今回の急騰で担がれて窮地に陥っている旨が書いてあった。斯様にこの株を巡っては何かとゴールドマン・サックスが材料を毎度提供してくれるパターンになっている。

また、担当アナリスト7人のうち6人が現在の株価を大幅に下回る目標価格に設定しているのに対し、唯一強気に目標株価を設定している三菱UFJモルガン・スタンレーの事も書いてあったが、これまた昨年末は上記のゴールドマン・サックスの約7分の1の目標価格に対して同社は従前の9.6倍となるも目標価格を設定していた事も今回と酷似している。今後戦に新たな動きが出るや否やだが、こんな祭りが全体へのカンフル剤となるかどうか注目である。


何所が違う?

さて、先週15日付けの日経紙夕刊社会面には「早大OBらを強制捜査」として、証券取引等監視委員会がネット株取引において所謂「見せ玉」を使い、不正に株価を吊り上げていた疑いがあるとして早大の投資サークルOBらの関係先を強制調査していた旨が載っていた。

これを見た時は数年前の早大OB事件が何故今更?とも思ったが、2009年のその件ではなく今回はまた別件であった。同じ投資サークルの同胞が挙げられたにも関わらず同様の手口でまた挙げられるというのも全く学習していない気もするが、近年ではアルゴを逆手に取るようなテクを駆使する輩も出てきて個人レベルも日進月歩である。

しかし、この行為自体を擁護するつもりはないものの摘発の境界線とはどの辺に敷かれているのだろうか?市場には外国籍含め魑魅魍魎のヘッジファンドがウヨウヨしているが、所謂「狩り」行為も横行しており個人でやっているこれらと何所に違いがあるのだろうか?というアルゴなど頻繁にある。

むしろ上記のような狡猾アルゴを逆手に取った方が摘発されるなどこの辺が逆に不信感を募らせている部分もある。2009年の事件の時に当欄では末尾で「活躍のフィールドが変わればまた貴重な力となるのは否定できないところ」と書いたことがあるが、この背景はこんなところからも来ている。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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