ESGを巡る青と赤

さて、ちょうど1週間前の日経紙国際面には「米フロリダで反ESG法」と題し、地方債を発行する際にESGの要素を考慮することが禁じられるなどESG投資の活動を制限する「反ESG法」が米南部フロリダ州で成立した旨の記事があった。署名したのは反ESGの旗頭ロン・デサンティス知事だが、他にも保守系17州で反ESG法案の準備が進んでいる模様だ。

日本では金融機関などESG投資への取り組みを強化し、自治体などもESG債の発行が近年では急速に増えてきているが、米ではこれに逆行する形で気候変動などを重視する民主党の支持者が多い州と、石油ガス業界や防衛産業を推進する共和党の支持者が多い州の間でESGを巡る社会分断が深刻な状況に陥っている。

積極推進派のニューヨーク州は公的年金運用を2040年までに温暖化ガスネットゼロ目標、またメイン州では2026年までに年金の化石燃料への投資撤退を表明するなどの一方、反ESGを掲げる冒頭のフロリダ州は昨年末EGSを意識すると掲げている世界最大の運用会社ブラックロックから20億ドルの資産を引き出し、同じく反ESGのウェストバージニア州は全米で初めてブラックロックとの取引を停止している。

ロシアのウクライナ侵攻等でエネルギー確保と安全の重要性が高まるなかで石油や防衛関連株などこうした産業への投資はESGの理念と矛盾するものの、確かに昨年はこれらの銘柄が運用成績に大きく寄与したのは否めない事実。運用において理想主義が最良のパフォーマンスにつながるのか否か? リベラル派からの圧力で投資の自由が奪われるという意見もわからないでもなく、政治的分断がエスカレートするなかESG投資にどうかかわるか運用会社も難しい選択を迫られそうだ。


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