上期ヒット商品と日本価格

さて、今月は毎年恒例の2024年上期(1~6月)の日経MJヒット商品番付が発表されている。ちなみに昨年は東の横綱が「5類移行」、大関が「ChatGPT」、そして西の横綱が「WBC世界一」、大関が「インバウンド復活」であったが、今年は東の横綱が「新NISA」、西の横綱は「円バウンド」と昨年の大関が昇格?したようなかっこうになった。

しかし円バウンドとはよく言ったもので、外国人観光客によるインバウンド消費のプレミア化が止まる気配を見せない。豊洲や築地では「インバウン丼」なる造語まで今や誰もが知るところとなった1万円前後の海鮮丼や1本3千円超の牛串が連日飛ぶように売れるほか、百貨店では購入者の6割以上を占めるインバウンド勢向けにミキハウスなど従来商品の約4倍の価格設定の高級ライン「ゴールドレーベル」を展開している。

4倍の価格設定とはいえ所詮子供服だろと侮ることなかれ、何せパジャマの16万円超からはじまり、今年の秋冬用に発売予定のモノではそれこそロロピアーナクラスのラグジュアリーブランドでしか見たことの無い「ビキューナ」の毛を使用したベビーポンチョが110万円、子供用セーターは約97万、ブランケットが165万円と振り切った値段を打ち出してきている。

斯様にインバウンド勢と日本人の金銭感覚に差が出るのはとりもなおさず円安の存在が大きい。日米金利差の影響が言われ久しいが、金利差がほぼ変化しない状況下で年明けから半年で円は対ドルで約16円も急落、ドルに限らずスイスフランに至っては私事ながらトランジットでチューリッヒ国際空港を利用していた頃の80円台の憶えから今や178円台と半値以下の水準だ。

冒頭の東の横綱「新NISA」にしても、雪崩を打ったような個人による海外投資の増加で家計の円売りを加速させ構造的な円安圧力の一因になっているからヤレヤレという感じだ。国内の客が手を出しにくい斯様な振り切った価格が映すのはデフレ慣れした安い日本の姿で、円バウンドという言葉の裏に取り残されている「日本の価格」という現実がある。


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