税制大綱の金融彼是

先週末に2026年度の与党税制改正大綱が決定した。物価高対策や経済成長に向けた企業支援を意識した内容と謳われているが、ザッと我々に関係のあるところではNISAの「つみたて投資枠」を18歳未満も利用できるように広げる点や、暗号資産(仮想通貨)取引で得た所得については金額に関係なく現状の総合課税から分離課税で一律で20%と株式や投信と同等の扱いになる点などか。

この暗号資産もこれまで総合課税で最高税率55%だったことで、売却し難い点を付いてこれを売却することなく資金需要に対応するべく暗号資産担保ローンビジネスなど登場したものだったが、これが叶えばまたビジネスの景色も変わってくるか。この辺は富裕層において暗号資産投資の裾野が広がっているのが背景にあったが、富裕層といえば27年の寄付からふるさと納税も上限無しだった控除額に193万円の上限を設けるという。

一方で中所得層には国民民主党の悲願であった年収の壁の178万円引き上げが叶う見込みだが、試算してみると年収665万円とそこから1万円多い666万円とでは控除額急減の壁があり手取りが逆転してしまう歪な構造も指摘されている。またこの税制大綱では税収が集中する東京都がターゲットにもされているが、企業や人の集中という特異な構造上この辺は致し方ない部分もありまだ課題が残るか。

ただ28年にも分離課税開始が叶うかどうかという冒頭の暗号資産だが、諸外国をみれば既に金融資産としての地位が高まっておりその税制も米国が最大20%(1年以上の保有)、英国が20%、ドイツに至っては非課税(1年以上の保有)となっている。斯様に国際比較をしてみると金融課税扱いしていないのは先進国で日本くらいであったわけで、こうした部分においては国際標準に漸く一歩近づいた感もあるか。


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