244ページ目   雑記

オートファジー

周知の通り2016年度のノーベル生理学・医学賞は、生物が細胞内で不要なたんぱく質を分解して再利用する「オートファジー(自食作用)」の仕組みを解明した、東京工業大学の大隅栄誉教授に贈られる事が発表されている。この仕組みで新たな創薬の道が開かれる期待が掛かるが、日本のノーベル賞受賞は3年連続で計25人目という快挙であった。

毎年恒例行事ということで今一つ方向感が出ないマーケットにおいてこの手は恰好の材料になるワケで特にバイオ系はお約束ともいえる急騰、本日は一服したが先月後半から先取りで賑わっていたコスモ・バイオが昨日はストップ高比例配分、また医学生物研究も同様にストップ高比例配分と急騰、タカラバイオもザラバ急騰して年初来高値更新となっていた。

今年の風景を見ると昨年のパターンと重なる部分も多いが、今年も次の文学賞など今度こそ?の期待を織り込んで丸善HDの出来高が膨らんだり文教堂グループHDも年初来高値を取ってきている。ノーベル賞相場は一過性と揶揄されるのも恒例ながら意外に二番煎じも効き、一種のお祭り感覚で参加する向きは絶えない。


Kai-X設立

昨日は東商取を少し取り上げたが、取引所といえば本日の日経紙投資情報面には「超高速取引を排除」と題して、PTS(私設取引システム)を運営するチャイエックス・ジャパンが今月17日から主に機関投資家向けに東証と比べ売買スピードを意図的に遅らせるHFTを実質的に排除する仕組みを設けた新たな株式取引市場を設立する旨が出ていた。

この手で思い浮かぶものに既に米国では既に3年前から取引をスタートしている同じ私設取引所のIEXがあるが、今年6月には公式な取引所としてSEC(米証券取引委員会)に認可されている。ちなみに同所は受注から売買までの時間を350マイクロ秒遅らせているが、もともと超高速取引に対して疑問を呈していたCEOはこれを対抗手段として売り込んできた経緯があった。

HFTなど超高速取引に関してはこれまで幾度となく当欄でも触れてきたが、これらがリクイディティー提供に重要な役割を担っている一方で、米バーチュフィナンシャルに見られたような一般との機会不平等も混在する。この手の創設によって棲み分けが出てくるかどうかだが、何れにしろ東証を経由しない取引が何所まで普及するか今後に注目か。


ハイブランドの陰り

さて今月始めに「リシュモン先行」とし、カルティエがここ数カ月の為替変動を鑑みて平均で約10%の値下げに踏み切った旨を当欄で書いたが、これに続いて中旬からは先に終了したTBS系「せいせいするほど、愛してる」の舞台にもなったティファニーも約7年ぶりとなる値下げを行い、それから数日後にはボッテ・ガヴェネタも一部商品の価格引き下げに踏み切っている。

ところで、上記のティファーが約7年ぶりの値下げに踏み切った14日の欧州市場では、リシュモンの株価が8月迄5か月間の売上が13%減少との発表から3.9%の下落を見せ、同業のスウォッチ・グループまで連れ安となっていた。また、来年以降は年間売り上げ成長見通しを発表しないとした事を嫌気し、エルメスの株価も8.8%の大幅安をこの日は演じている。

エルメスの決定はリシュモンよろしくビジネス環境の先行き不透明感の裏返しともいえるが、来月もモンブランが平均で7〜8%の値下げを予定し、ヴァシュロン・コンスタンタンも値下げの予定など高級ブランドの値下げはまだ続く模様。インバウンド需要一服で国内高額消費にも陰りが見える中での相次ぐ値下げは決して円高のみが理由というワケではなさそうで各ブランドの匙加減が注目されよう。


SSとCGの形骸化

さて、先週末の日経紙社説には「型より実質が問われる東芝の統治改革」と題して、会計不祥事を起こした東芝がコーポレートガバナンス等の改善状況を東証に報告した旨が載っていた。おもえば2014年のスチュワードシップコードに続きコーポレートガバナンスコードも適用され1年以上が経過、今や多くの企業がコードの諸原則順守を心掛けている。

この二つのコード始動と時を同じくして暫く鳴りを潜めていた村上ファンドなどが久し振りに再活動をみせたのも記憶に新しいが、肝心の企業側が何所もこれを掲げIRに勤しんでいるもののそれらの順守に関する説明が当初から比べると横並びになってきている点は否めない感がする。

冒頭の東芝なども文中にあった通り、いち早く社外取締役が経営監視する体制に移行するなど統治改革の先頭集団を走る会社として市場から評価を得ていたものの、結果は粉飾発覚から特設注意市場ポストに入れられ一年以上経った今も出られぬ憂き目に遭っている。斯様に形骸化が目立つ昨今だが、一方で株価など正直にそれらを映す部分もありもう一度原点回帰で張りぼて構図の再考も求められようか。


ざる法ファンド

さて、本日発売の「週刊新潮」ではクエストキャピタルマネージメントなる都内の投資コンサルタント会社が、運用実態のないファンドに計113億円超の出資をさせていたとして運営会社社長らが逮捕された事件において、騙された向きに格付けチェック連勝記録の有名芸能人やジャスダック上場企業まで嵌められていた事が書かれていた。

証券取引等監視委員会によれば、同ファンドはいずれも適格機関投資家からの出資を受けておらず、当該取得勧誘は金商法に規定する特例業務要件を充足していないとされている。もともとベンチャー企業等への投資を活性化する狙いで金商法施行と同時に導入されるも、通常と異なり届け出だけで運用できるために問題業者等の割合が増加してきた経緯がある。

この辺を鑑み改正金商法では投資被害を防ぐ為に個人出資には1億円以上の金融資産を持つ事などを条件にしていたが、これが逆に災い上記のような客層も嵌められたという構図か。定期的に事件化し一向に無くならないこの手の案件だが、それもそのはず昨年金融庁に届け出のあったモノのうち問題業者と思われるモノは20%を超えるという。ざる法にならぬよう法整備は焦眉の急か。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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