247ページ目   雑記

縦割り行政の弊害

当欄では先週火曜日に、日本取引所が17年後半には清算システムを12年ぶりに全面刷新し金利先物などデリバティブ拡充を目指す旨などを取り上げたが、本日の日経紙金融面には「日本取引所、品ぞろえ強化」と題して、上記に絡みデリバティブを増やし株式関連の依存度を抑える事でより安定的な収益拡大を狙う旨が載っていた。

取引所と言えば足元ではLSEグループとドイツ取引所が経営統合に向けての交渉中だが、このドイツ取引所など営業収益の40%強をデリバティブで稼いでいるし、かつてこのドイツ取引所と一度縁談のあった経緯のあるNYSE(ニューヨーク証券取引所)を傘下に持つICE(米インターコンチネンタル取引所)も30%強をデリバティブで稼いでいる。

翻って本邦のそれはわずかに20%弱にとどまり、50%を超える現物株依存の構図はやはり否めない。政府は総合取引所の実現を成長戦略の一つに掲げ、これももうそろそろ10年近くになるが縦割り行政の弊害で実現期待の掛け声も年々虚しさを感じるようになって来た。一部証券系シンクタンクなどTOCOMの脆弱さを引き合いに現実的な選択でJPX主体の市場創設を推す向きも居るが、関係当局の協調は焦眉の急となっている。


産業革命の次

今週は月曜日が振替休日であったが、その日の日経紙面で目立ったのは社説から金融面、科学技術面そして社会面までAIを取り上げた頁が非常に多かった事か。直近でグーグル傘下の企業が開発した人工知能が、世界トップ級のプロ棋士との対局で勝ち越しを見せたのが話題になっているだけに今がやはり旬というワケか。

社説には「筋肉の限界」から解き放った動力革命と対比し、「頭脳の限界」からの解放を挙げていたが確かに自動車、航空機や船舶などは人間の行動範囲を著しく広げた動力革命であった。そこで後者を考えるに常識や欲求、需要などが時折云われるが、欠如している部分は何所だろうかとの議論も絶えない。

既に現在は次のステージで前者の動力革命に頭脳が加わる時代、自動走行時の事故発生賠償など行動の法的責任も課題となっているが、各所の責任の所在が何所にあるか整備も課題か。ほか国民的合意など壁も多いが、試行錯誤の議論のなかで何所までAIに任せるか等の棲み分けの方向性が出てくる事に期待したい。


デリバティブ拡充

昨日の日経紙総合面には「金利先物の拡充検討」と題して日本取引所グループが2016年度からの3か年の中期経営計画で、17年後半には清算システムを12年ぶりに全面刷新して多様な商品を上場し易い環境を整え、金利の先物などデリバティブの拡充を目指す旨が出ていた。

既に東京金融取引所では短期金利関連を上場させているが、大証もまた現状で未上場の超長期や中期の金利オプション、短期金利先物等を候補に検討を始めるという。上場のはこびとなれば投資家としてはそれ以外の国債との金利差を利用した裁定取引等が可能になってくる構図だ。

日本取引所のデリバティブの課題については統合当時から当欄で何度も触れているが、いまや先進国取引所の収益の柱はデリバティブが時代の趨勢、取引所間競争はここを押えずして勝ち残りの芽は無いが本邦の場合もう一つそれと並行し、先の税制改正でも叶わなかった損益通算等こちらの整備も望まれるところか。


マクズウェア

今週週明けの日経紙の文化面には「ハマの陶工命浮き彫り」と題して、真葛香山研究家の田辺哲人氏による陶芸家の真葛香山の作品と解説が載っていた。これが目に留まったのもちょうど先月中旬から下旬まで日本橋で「超絶技巧・世界を驚かせた焼き物 真葛香山展」が開催され、私も終盤にこれを観に行っていたという事がある。

日経紙に出ていた作品写真はこの真葛香山の代表作でもある「高取釉高浮彫蟹花瓶」であったが、実物はやはり圧巻であった。もともと私が真葛香山に興味を持ったのもこの作品が、私の好きなエミール・ガレの名作「ストローブ松」や「蜻蛉文脚付杯」、ドーム兄弟の「チューリップ文花瓶」に見られるようなアプリカッション技法を彷彿させるようなものだったからである。

さながらヨーロッパが誇るガラス技法を東洋がポーセリアンでやったようなもので、今にも動き出しそうな写実的造形の完成度に衝撃を受けたものである。他にも茶道具の逸品の数々、三代目の「帆立貝魚柄磁器匙」のような欧州を意識したような焼き物から「乾山意松竹梅大壺」等に実際に生花を生けたコラボ作品まで久し振りに素晴らしい展を堪能出来た。


あれから五年

先週末で東日本大震災が発生してから丸5年が経過した。この日に合せ各地のイベントからテレビや各紙報道、広告等々震災追悼の人々の輪が広がったが、改めて各所の爪痕を見るにその当時が思い出され、各所での復興の進展が報じられる以上にその裏で取り戻せない喪失感もひしひしと伝わって来る。

日経紙一面では「この5年でこう変わった」として震災前後と現在の比較表が出ていたが、マーケットは株価が約2倍、為替も円相場が約5割の円安となった。今月の日経紙「私の履歴書」のアイリスオーヤマも被災地企業だが、この間に被災地に本社を置く企業の株価は9割弱が震災前を上回り中には5年で4倍になった薬王堂などの例もあった。

とはいえ被災地同様にこの3.11ショックで制御不能に陥り暴走したデリバティブマーケットなどがトリガーとなり、金融界では体力の無い企業パンク寸前の状態に陥り、当然ながら個人もそれまで安泰だったFXやオプションのセルボラ等の小銭稼ぎで再起不能な致命傷を負ったのは記憶に新しいところ。

渦中の東電もディフェンシブ優良株から一時は紙屑寸前まで売られいまだ終わる事の無い償いを背負い生かされている状態が続いているが、折しも週末には大津地裁の司法判断からの高浜原発の運転差し止めで関電も急落の憂き目に遭っていた。斯様に原発事故の処理も入り口に立っただけで先の見えない展開が続くが、昨年も書いた事だが原則を忘れず臨むことが肝要だ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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