25ページ目   雑記

広がるソバキュリアン

先週末の日経紙夕刊一面を飾っていたのは「ワイン消費曲がり角」と題し、若者の酒離れや質を重視する傾向の強まりを背景に2023年の消費量がピークだった17年から7%ほど減った旨の記事だった。確か数年前のぐるなび総研が発表する今年の一皿では「ノンアルコールテイスト飲料」が選ばれていたのを思い出すが、ソバーキュリアスも若年層にまで広がって来たということか。

このソバーキュリアス、シラフを意味するSoberと好奇心のCuriousを合せた造語だが、飲酒に懐疑的なライフスタイルがZ世代にも受けているという。ある調査ではZ世代で日常的に酒が飲みたいと答えたのは今や22%、酒は効率よく時間を使いたいという若者の価値観とはミスマッチで、このほか健康への悪影響などデメリットの方が大きく感じられている模様だ。

近年ではラグジュアリーホテルのバーなどでも挙ってモクテルなどノンアルのバリエーションが多彩になってきており、下戸には敷居高かったこの手のバーのハードルが下がったのは朗報だろう。このノンアルもこれまでドライバー向けの代替品扱いで消極的な飲まれ方をされてきたものだったが、こうした動きにより今後も商機が増え積極的に攻めてゆく場面も多くなりそうだ。


上期ヒット商品と日本価格

さて、今月は毎年恒例の2024年上期(1~6月)の日経MJヒット商品番付が発表されている。ちなみに昨年は東の横綱が「5類移行」、大関が「ChatGPT」、そして西の横綱が「WBC世界一」、大関が「インバウンド復活」であったが、今年は東の横綱が「新NISA」、西の横綱は「円バウンド」と昨年の大関が昇格?したようなかっこうになった。

しかし円バウンドとはよく言ったもので、外国人観光客によるインバウンド消費のプレミア化が止まる気配を見せない。豊洲や築地では「インバウン丼」なる造語まで今や誰もが知るところとなった1万円前後の海鮮丼や1本3千円超の牛串が連日飛ぶように売れるほか、百貨店では購入者の6割以上を占めるインバウンド勢向けにミキハウスなど従来商品の約4倍の価格設定の高級ライン「ゴールドレーベル」を展開している。

4倍の価格設定とはいえ所詮子供服だろと侮ることなかれ、何せパジャマの16万円超からはじまり、今年の秋冬用に発売予定のモノではそれこそロロピアーナクラスのラグジュアリーブランドでしか見たことの無い「ビキューナ」の毛を使用したベビーポンチョが110万円、子供用セーターは約97万、ブランケットが165万円と振り切った値段を打ち出してきている。

斯様にインバウンド勢と日本人の金銭感覚に差が出るのはとりもなおさず円安の存在が大きい。日米金利差の影響が言われ久しいが、金利差がほぼ変化しない状況下で年明けから半年で円は対ドルで約16円も急落、ドルに限らずスイスフランに至っては私事ながらトランジットでチューリッヒ国際空港を利用していた頃の80円台の憶えから今や178円台と半値以下の水準だ。

冒頭の東の横綱「新NISA」にしても、雪崩を打ったような個人による海外投資の増加で家計の円売りを加速させ構造的な円安圧力の一因になっているからヤレヤレという感じだ。国内の客が手を出しにくい斯様な振り切った価格が映すのはデフレ慣れした安い日本の姿で、円バウンドという言葉の裏に取り残されている「日本の価格」という現実がある。


困難な舵取り

先週も幾つかの経済指標の発表があったが、注目された日銀金融政策決定会合は下馬評通り利上げは見送られ、これまた予想されていた国債の購入減額に関しては具体策決定が次回会合まで先延ばしされた。またこれより先に5月の企業物価指数速報値も発表されていたが、こちらは前年同月比で2.4%の上昇と39か月連続でプラスとなり1980年以降で過去最高水準となっていた。

川上のところでザッと3年以上もプラスの状態が続くとなると川下への影響も必至で、商品やらサービスの価格に転嫁されまもなく消費者物価指数にも響いてくるか。賃上げ圧力のなか企業間取引でも価格上昇が続いている状況で、この企業物価指数に先駆け発表されたGDP改定値でも企業の設備投資は0.4%減と2四半期ぶりのマイナスと経済活動のペースダウンも懸念される。

斯様に物価高騰への警戒感が高まるというものだが、理想とされる賃金と物価の好循環には暗雲が漂う。コロナ禍の反動もあって米では年内の利下げ想定が3回から1回に減るまで逡巡されるほど景気が過熱気味な状態にあるが、一方で日本はというとそれこそスタグフレーション懸念も一部台頭するなど対照的だ。賃金と物価の好循環が理想とされているがこれが叶う日は来るのか否か、的確な景気浮揚策の難しい局面を迎えている。


依然低ランクだが・・

さて、毎年恒例の世界経済フォーラムによる男女平等の実現度合いを数値にした2024年の「ジェンダーギャップ指数」が先週に発表されているが、今年の日本の順位は調査対象146カ国中で118位であった。前年は125位と過去最低を記録していたが辛うじて今年は7位ほど浮上したかっこうになる。

項目別にザッと見てみると、総合で評価を押し上げた政治分野の順位が前年の138位から113位に浮上しているものの、一昨年に1位であったものの昨年に47位へと大きく後退した教育が更に順位を下げての72位、また健康が58位、そして経済が前年の123位からほぼ横ばいの120位という結果になっていた。

ちなみにSDNSが毎年公表しているSDGsの達成度を評価したランキングの評価も日本は低くSDGs17の目標のうち5番目のジェンダー平等評価点の低さが目立つ。女性管理職比率の低さが言われて久しいが、それでも今年に入ってJAL社長に初の女性が就任し、金融では副頭取ポストに三井住友銀行で初の女性が就任するなど徐々に変化の芽は出てきている感はある。

折しも株主総会シーズンだが、この辺に絡んでは今月総会を開く日経500構成銘柄企業では女性取締役を2~3名以上選任する予定の企業割合は前年からそれぞれ増加している。それでも米S&P500や英FTSE350指数構成銘柄で女性取締役の居ない企業は無く、いずれも取締役総数の3割を女性が占めているのが世界標準だ。今や組織成長に欠かせない多様性は企業統治の必須条件で、投資家の目も女性登用の遅れに対し厳しさを増してきているだけにこの項目の浮上スピードが問われている。


相場連動事件

本日の日経紙商品面には「金属高騰で換金活況」と題し、金属価格高騰でのリサイクル活況は換金を狙った窃盗など負の影響も生んでいる旨の記事があった。直近では先の日曜日に相模原市の太陽光発電施設から銅線ケーブルの盗難事件が報じられているが、先月は茨城のデイサービス市施設でエアコン室外機の盗難が相次ぎ、足利市でも神社本殿の屋根材の銅板約270枚が盗難に遭うなど、特に毎度ターゲットになる北関東でそれが目立つ。

エアコン室外機の窃盗事件は外気を冷却する部分に使用されている銅狙いだが、この手の窃盗事件はコロナ禍の2020年の255件から一昨年には819件と3倍以上に急増、全体でも銅盗難事件は昨年の1万件そこそこから今年は16000件超えと急増している。もう数年前から相場に比例した盗難事件と書いているが、銅製品盗難が目立ちはじめた2021年の銅価格はトン当たり約87万円であった。

それが昨年に北関東で銅製の二宮金次郎像が盗難に遭った件を取り上げた時にはトン当たり約123万円と約4割以上も値位置を切り上げ、盗難事件が急増してきた先月の相場ではトン当たり約175万円と過去最高を更新してきており、上記の2021年からはちょうど2倍に化けている。直近では下落している国際相場も先月は一時11000ドル超とこちらも過去最高値を更新する場面があった。

脱炭素社会が叫ばれて久しいが、その通電特性からエンジン車比で4倍もの銅が使われる電気自動車はじめこれに関わる太陽光や風力等どれを取っても大量の銅が使用されるワケで斯様な社会の実現は銅無しではあり得ない構図と言っても過言ではないだろう。これに乗じての投機マネーが入る場面も近年は増えてきており、相場を睨んだ更なる盗難対策の強化も急務だろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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