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BaaS

週末に米アップルが2023年4~6月期決算を発表している。アイフォーンの販売伸び悩みが懸念されていたものの、アプリ販売等のサービスの売上高拡大がカバーし売上高と一株利益共に市場予想を上回る事となった。ところでこのアップルといえば4月に始めた預金サービスの残高が100億ドルを超えたとも発表している。

このアップル預金については当欄でも5月に一度触れているが、同社は口座提供と管理を米ゴールドマン・サックスが担っており、預金利回りが全米の預金口座の平均の10倍以上となっていることに加え、アップルカードで買い物などをした際に付与されるキャッシュバックが口座に自動入金され残高に対する利息が受け取れるなど貯蓄習慣を簡単に確立・継続する事が出来るのも魅力となっている。

こうした異業種のサービスを既存の金融サービスと連携出来る新たな金融プラットフォームとして注目されているBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)だが、今年の春先に米銀破綻という悪地合いの中で東証スタンダードに上場した住信SBIネット銀行など公開価格を上回る初値となったのも同事業が評価されてのものと指摘する向きもある。

銀行やライセンスを持った事業者がキャッシュレス決済をはじめ後払いや送金などの仕組みを他の事業者に貸す事で内製化の動きという流れが顕著化すると想定した場合、同事業の市場規模は非常に広いといえ今後銀行もこうした部分での在り方が求められる場面ではその領域で先行している向きが或る意味アドバンテージになるか。


祭りと商機

コロナ禍を経て先月は日本三大祭りの一つ、京都の祇園祭が4年ぶりに通常開催となり約15万人が訪れたが、昨日からは東北最大の青森のねぶた祭がこちらも通常開催されている。こちらも4年ぶりに制限のない通常開催となったことで感慨もひとしおというものだが、今年はインバウンド含めた富裕層を対象にしたサービスが全国の夏祭りに広がっている。

上記の祇園祭の最大の見せ場となる山鉾巡行では今年初めての試みで、一席40万円のプレミアム観覧席が販売された。山鉾巡行についての音声案内ガイドが用意され、京都名物の「おばんざい」をつまみに京都で作られたワインや日本酒を飲みながら祭りを楽しめるというものだが、販売開始と共に8割近くがインバウンド客に売れ体験した向きはいずれも満足そうであった。

この青森ねぶた祭でも昨年1日2組限定で導入した100万円のVIP席を今年は1日6組、開催5日間で30組まで増やしたがこちらも開始早々半数の予約が埋まったという。こうした動きを見て今月12日から始まる徳島の阿波踊りでも1人20万円のプレミアム桟敷席を20席導入、2階のソファー席で徳島産素材を使った食事を堪能しながら演舞の解説を聞いたり踊りの体験も出来るという。

先に2023年1月~6月の訪日外国人客数がコロナ前の64.4%までに戻った旨が報じられていたが、某生保系シンクタンクが報じているところではコロナ禍前の2019年1-3月と今年の同期では宿泊日数が4日以上伸び、消費額も約9割が回復しているとういう。内訳では買い物代が減少する一方で上記の祭り含む鑑賞モノなど娯楽・サービスが2倍以上に膨らんでいるという。インバウンド消費もモノからコト消費へと変化するなかで、高単価の企画等ここに商機を見出す動きは今後も加速してゆきそうだ。


7か月ぶり減少

猛暑のなか8月と月替わりだが、今月も消費者が価格に敏感な製品含め多くの食品が値上げされる。帝国データバンクによれば全食品分野で6月以来2か月ぶりに最多となった調味料はじめ、パック牛乳やヨーグルト等の乳製品、缶詰、菓子類など合わせて1102品目にのぼるが、昨年同期比のおよそ4割にとどまり7か月ぶりに減少に転じることとなった。

とはいえ一班消費者が手に取る頻度が高い上記のパック牛乳やヨーグルト等の乳製品は価格に敏感で値上げを実感し易い部類。一寸挙げても雪印メグミルクの74品目、明治の23品目、森永乳業の15品目等の価格が引き上げられる。この乳製品に関しては飼料価格の高騰等で厳しい経営が続く酪農家を支援するため、昨日から生乳の取引価格が改定された影響が背景になっている。

しかしこの乳製品といえば新型コロナの影響による消費低迷で北海道の一部酪農家など従来の3分の1にまで減産するなど16年ぶりの生乳生産抑制の憂き目に遭っているという。工業製品と違って定期的に乳を搾らないと牛が病気になってしまうため苦渋の決断で毎日生乳を捨てている向きもあるというが、諸外国のように政府が買い上げ国内外の援助物資として活用する等の政策が求められるか。

話が逸れたが、そういったことで帝国データバンクでは消費者の価格の上昇に対するマインドが寛容さを失いつつあり、防衛志向や値上げ疲れが一層進行する可能性もあるとしている。消費マインドが低下すればひいては景気の足を引っ張る可能性も出てくるワケで引き続きこの辺の動向にも注視しておきたい。


バイオ彼是

さて、厚生労働省の専門部会が国内の製薬大手である第一三共が開発した新型コロナウイルスのワクチンについて使用を認める事を了承している。1月に厚労省に承認申請を行っていたものだが、これで国内の製薬会社の新型コロナワクチンとしては初期に流行した従来型対応のモノながら初めて正式に承認されるという事になる。

当初この手のワクチンといえば少なくとも5年以上はかかるといわれたもので、3年で承認に至った今回を早いとすべきか否かだが、新型コロナは既に5類への引き下げが為され街の景色も以前に戻りつつあるなか漸く初期型対応が実用化という光景は1年そこそこで実用化された欧米の製薬会社と比較するにそのスピード感の違いを感じざるを得ない。

斯様にワクチンでは後塵を拝した感だがこのバイオ分野では7月にもう一つ、製薬大手エーザイが米と共同開発したアルツハイマー病の新薬がFDA(米食品医薬品局)から正式承認を受けている。日本でも秋までに承認審査の結果が出る見通しだが、アルツハイマー病の根本を標的にした薬として初めて有効性を示した画期的なものである。

とりわけこの分野は90年代後半から約20年の間に何社も挑んでは200本近くの治験が散っていった経緯があり、同社も治験の経緯を睨みながら株価も往って来い以上の急落の憂き目に遭って来ただけに投資家目線でも感慨深というものだ。各社がしのぎを削って様々な新薬帆候補が出てくるなか、この手のものは社会的インパクトの大きさで突出した存在であり今後益々日本のバイオ技術に期待が膨らむ。


金融政策ウィーク

先週は25日から米FOMC、27日のECB、そして27日からの日銀金融政策決定会合と
金融政策決定ウィークであったが、果たして米は政策金利を2会合ぶりに下馬評通りの0.25%引き上げ、ECBも9会合連続で同じく主要政策金利を0.25%引き上げ、中でも中銀預金金利は3.75%と2001年5月以来、21年ぶりに過去最高水準に並んだ。

そして注目の日銀だが、長期金利を抑え込まずに事実上1%を上限とし緩やかな上昇を容認するYCC(長短金利操作)の修正に踏み切った。それなりに構えはあったもののやはりボラタイルな動きになったのはマーケットで、10年物国債利回りは一時2014年9月以来の高水準となり、為替はドル円が発表直後のわずか1分そこそこで約3円もの乱高下を演じ、連れて日経平均も一時800超の急落を演じた。

久々にというかようやく金利の存在する世界への一歩を踏み出せるかといったところだが、YCCの弊害で円は最弱通貨への道を歩み週末に取り上げたビッグマックの例にみられるように世界での日本の購買力は著しく低下、インバウンド客が買い物天国ニッポンと歓喜するなかその裏で我々には輸入物価の上昇から生活コストの上昇が襲っている。

逸る気持ちはゼロ金利解除に向かうが、賃上げ等もそれに繋がるキーになって来る筈で今年の春闘ではベアが2.12%、定期昇給と合せた賃上げ率は3.58%であったがさて来年は如何に。いずれにせよ目先としては今後の各種経済指標の発表を経た8月のジャクソンホール会議で次の転換点があるか否かこの辺に注目してゆきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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