37ページ目   雑記

クラファン史上最高額

さて、8月に一度触れた国立科学博物館が総額1億円を掲げ募っていたクラウドファンディングだが先の日曜日にこれが終了した。初日から目標額の1億円を突破したのが当初話題になっていたが、その後も寄付は途絶えることなく果たして約57000人から国内史上最高額となる約9億2千万円が集まることとなった。

それにしても凄い額が集まったものだが、これまでのクラファンではコロナ禍の20年に行われた新型コロナウイルスの感染防止活動の基金を募るプロジェクトが集めた約8億7千万の最高額でこれを抜いた格好になる。行動経済学における寄付の主要動機が科博には全て網羅されていたという説もあるが、やはり馴染みのある科博の現状に改めて危機感が共有された部分が大きいか。

前回は当欄で末尾に「~博物館といえば欧米の場合は財団等の支援で成り立っている部分も大きく文化に対する国の姿勢の違いを感じる~」と書いたが、一昨年だったか米のスミソニアン博物館にアマゾン創業者が約2億ドルを寄付したのは記憶に新しく、双璧のロンドンの大英博物館など入場料は無料だが昨年の寄付額は2700万ポンド超え、共に収入に占める公費割合は日本と大きく異なる。

冒頭の通り今回6万人近くから寄付を集めた科博は今回潜在的な支援者を掘り起こした格好になったが、今後は会費制の賛助会員を増やす方針という。ただ今回の成功例で問題が全て解決したというワケにはならず上記の欧米の例も改めて鑑み持続可能な運営の仕組みをどう作ってゆくかが今後も問われることになろうか。


都市鉱山潜在力

昨日の日経紙夕刊一面には「都市鉱山ゴールドラッシュ」と題し、直近で金(ゴールド)価格が史上最高値を更新するなど高騰していることから都市鉱山などリサイクル市場も活況となっている旨が出ていた。今年1~9月の金のリサイクル供給量は前年同期比1割増で伸び率は金鉱山からの採掘量を上回っている。

都市鉱山というとやはり記憶に新しいのが2020年の東京五輪・パラリンピックのメダルをリサイクル原料を使って作るという「都市鉱山から作るみんなのメダルプロジェクト」で、当時は近所の小学校でもこのプロジェクトを謳った黄色いボックスをよく見かけたのを思い出すが、この時に五輪向けに金を全量供給したのが同頁でも出ていた田中貴金属の湘南工場だったと思う。

その辺は兎も角も、今や日本国内に蓄積されてリサイクルの対象になっている金属の量は金でも約5300トンと世界有数の資源国に匹敵するほどの規模になっており、他の貴金属然りでそれらの回収技術を上記の非上場の田中貴金属はもとより多くの上場企業が競い合っている。資源循環、資源安定確保の観点からも天然資源の乏しさと引き換えに生み出された日本の先端技術はお家芸なだけに政府の後押しにも併せて期待がかかる。


値上げ疲れ

さて月初め恒例の値上げ品目チェックだが、この11月に値上げされる食品は前年同月比で約9割減の131品目にとどまり、これで4か月連続で前年同月を下回った。原材料価格の高騰が落ち着いたことや、消費者の買い控えなどを背景となり月別では値上げラッシュが本格化した2022年1月以降で最小となる見通しだ。

項目別では缶コーヒー等の酒類・飲料が76品目で約6割を占め最多だった。次に調味料の32品目、次の菓子は18品目と今年最も少なく、バターやパック牛乳等の乳製品は10ヵ月ぶりにゼロとなった。値上げ疲れから値下げに踏み切る動きも一部に出ておりこれまで約2年にわたり続いてきた値上げの動きは年内に鎮静化するとみられる。

厚労省発表の毎月勤労統計調査では働く人一人当たりの物価の影響を考慮した実質賃金は17ヵ月連続でマイナスとなっており、26か月連続で上昇している消費者物価指数の上昇に追いついていない現状等も背景に消費者側も買い控えが顕著になってきた。中東情勢の悪化による原油価格の変動や円の相場水準如何で更なる値上げ要因になり得るものの、各企業の価格戦略見直し等がどの程度出てくるのかこの辺にも注視したい。


治療薬争奪戦

さて、新型コロナとインフルエンザの同時流行で解熱鎮痛剤や咳止め等の薬が全国規模で不足する事態となり薬局が対応に追われている状況が続いているが、もう一つ最近では糖尿病薬のGIP/GLP―1受容体作動薬が本来使われるべき2型糖尿病患者以外にもダイエット目的でこれを求める向きが急増しこちらも同様に品薄となっている旨も度々報じられている。

その抑制効果だが確かに解りやすいデータがあり、米市場で代表的なオゼンピックを服用している患者の食品購買量の変化を前年比較でみると、ポップコーンが27.4%減少(米全体では3.5%減少)、チップスが18.8%減少(同0.7%減少)、ソフトドリンクが15.1%減少(同3.9%減少)、など高カロリー食品の購買量が大きく減少している。

国内でも自由診療を謳う美容クリニックなど今やオゼンピック様サマで、英でもデンマークの製薬大手ノボノルディスクが肥満症治療薬ウゴービの販売が開始されているが、このオゼンピックと合せ強い需要を背景に同社の収益は過去最高水準に達し、その株式時価総額も先月はあの仏高級ブランドのLVMHを抜いて欧州で首位に躍り出ている。

これとは対照的に人工透析サービスや血統監視装置メーカーの株価は下落の憂き目に遭い、上記データにある通り米では食品メーカーにとっては逆風になるとのモルスタのリポートも出ている。これに対しペプシコーラのCEOはほとんど影響無しと述べているが、現在のところこれらが長期的な消費行動の変化に影響を及ぼすかは未知数、世紀の発明ともてはやされているバブルがいつまで続くのかと併せ注目してゆきたい。


土壌整備が急務

さて、先週は新宿でスターアップと大企業をつなぐ都内最大のマッチングイベント「ベンチャーサミット」が開催された。スターアップといえば長い間にわたりその重要性が叫ばれてきた日本だが、スターアップ企業数の国際比較を見てみると1位は断トツで米の7万6821社、次いでインドが2位で1万6006社、3位が英で699社、そこで日本はというと24位で608社に甘んじているのが現状。

米と比較するに約120分の1と計算するのも嫌になってしまう差だが、長い間スターアップの重要性が叫ばれてきた日本だがこれが育つ土壌がいまだに整っていないのが背景といえる。この辺は意識や風土などもあるが、それらと並行して金融機関やVCが本質的なリスクを取らず結果起業家がリスクを取っているなど資金調達の部分も大きい。

そういった事も背景に有望どころも海外に活路を求める動きが出ており、今年に入って不動産テックなど5社がナスダック上場をはたしている。他にも複数企業が米での上場を目指す動きがあるが、上記の土壌という部分では米市場は元々リスクよりも成長の可能性に着目する投資家層が厚くスタートアップ企業を相対的に高く評価する傾向がある。

また数年前に当欄でも取り上げたSPAC(特別買収目的会社)など上場への箱の選択肢なども多彩だが、成長戦略としてこの解禁方針が盛り込まれた一件はあれからどうなっているのだろう?いずれにせよ斯様に先行して米上場を果たす企業の増加で、これまでコンサバとされてきた日本企業文化が変化してゆくのかどうかにも注目しつつ国内の土壌整備にも期待したい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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