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縮図なおせち

さて、今年もまだ残暑厳しい頃から始まった各社のおせち料理商戦だが、今週で大手百貨店各社など御節料理の受付を終了するところが多い。もともとおせち市場はコロナ前から拡大傾向にあったが、今年も旅行や外食の自粛が続くなか昨年以上の勢いで予約が好調で大手百貨店では何所も前年比で大幅な増加を見せている。

今年の売れ筋はコロナ禍などで来店客の減った有名料亭が注力し手掛けた5万円以上の高価格帯商品だそうで、高島屋が扱った25万円超の京都吉兆の三段重など販売初日に売り切れたという。斯様に景気の良いのは料亭の和食にとどまらず、洋食でも今年は松屋がブルガリの手掛けるレストランと組んで40万円の商品を売り出している。

このブルガリおせちはトリュフにキャビア、50年間熟成させたバルサミコなどの高級食材を多用する内容だが、高級食材といえばローソンの100円おせちの今年の目玉はアワビという。企業努力でこの価格を実現出来るのが凄いところだが、この100円おせちも昨年230万個を売り上げるヒットとなっている。昨今のおせち商戦は根強いデフレマインドの中でアッパーミドル層の資金が高額商品に流れ込む縮図的なものを見せてくれる点もまた面白いところである。


異例の呼びかけ

さて、昨日の記者会見で岸田首相は「年末年始に牛乳をいつもより1杯多く飲んで頂く、料理に乳製品を活用頂くなど国民の皆様のご協力をお願いしたい。」などと異例の呼びかけを行っている。首相が特定の農産物の消費を呼びかけるのは異例な事だが、背景にはコロナ禍で消費が落ち込んでいるところに学校給食が休みになる事なども重なり特に今年の年末年始はかつてない規模で余ってしまう事があるようだ。

今から6年くらい前だったかバターが極度な品薄に陥り業務用価格が29年ぶりの高値を記録、株式市場でも六甲バターが上場来高値を更新するなどしたことが記憶に新しいが、これを受け官民挙げて生乳生産増産対策をやってきた効果がここ数年表れていた土壌もある。何の因果かタイミングが悪いというか何れにせよこれらが裏目に出た格好だ。

これを受け対処療法的に明治が今週から牛乳消費を喚起するプロジェクトを開始したり、ローソンでも年末年始の2日間はホットミルクを半額で販売したりと協力体制を敷くが、生乳の余剰問題はこれが初めてではなくつい昨年の5月頃も学校の休校や飲食店営業縮小を受け過度な余剰に陥った経緯がある。それらを鑑みこの1年何が出来たのかというところだが、生産側も飼料価格の高騰が加わる二重苦の状況だけに政府としてもセーフティーネット的なものが喫緊の課題か。


エシカル気運

さて、今週アタマの日経紙夕刊には「エシカルな消費文化に商機」と題し、世界的なファッションブランドでリアルファーの使用を避ける動きが本格化、先行的にアニマルフリーを達成して新たな消費文化を創りたいという思惑がある旨が載っていたが、仏の主要ファッション誌ELLEも今月はじめに誌面とウェブサイトから毛皮を使用した製品を排除する方針を明らかにしている。

同頁では服飾以外でも高級車等でレザー(本革)離れが加速している旨も書いてあったが、レザーといえば伊藤忠商事が手掛けた廃棄服から創る循環型ポリエステル新素材から創られた日本のランドセルも先月ロンドンのポップアップストアでお披露目されており、こうしたエコなランドセルもエシカル消費の一環といえよう。

欧州でのお披露目をとなったのは特にこうした動きが欧州で先行していたからに他ならないワケだが、日本でも松屋がこの夏に人工ダイヤを使ったジュエリーの自社ブランドを立ち上げている。天然ダイヤの採掘は土壌が弱るなど環境問題に影響があり、ウイグルよろしく労働環境に問題のある場所が多くあるなど倫理的な問題も指摘されているだけにこれもエシカルな流れと言える。

とはいえグローバル経済に依存している現況下で何所まで完璧にエシカルが浸透するかは未知数だろう。日経紙夕刊の「エシカルな消費文化に商機」の題名もエシカルがモノを売る為の推進力とも取れなくもないが、いずれにせよ環境意識が高い顧客が増加しつつあるのは否めないだけに今や企業も使命感を持って環境や人権に配慮した消費に対応する事が求められるのは時代の流れでもあるか。


古くて新しい計画

ちょうど1カ月前の当欄ではGEとほぼ時を同じくして本体とグループで手掛ける主要事業を3分割しそれぞれが上場する方針を検討に入った東芝を取り上げたが、昨日の日経紙ビジネス面には「東芝、3分割へはや試練」と題し、この分割案の魅力を訴求する同社に対し市場の反応は冷ややかで大株主のアクティビストの一部からも反対声明が出ている旨が書かれていた。

ガリバー企業で初の事例とはいえ発表当時からただ分割宣言しただけでその具体策が見えないとの指摘もあったが、虎の子事業を手放して以降展開力を失った感は否めなく世間の目も衰退が続く3つの会社が出来るだけではと冷めた見方は根強く、従業員など他のステークホルダーも蚊帳の外に置かれた印象が拭えないのも否定できない。

ともあれ定時総会を前に株主の意向を確認する来年早々?にも行われる予定の臨時株主総会が一つの節目と見られるが、これまで株主総会の度に株主と対立を繰り返して来た同社だけにはたして魑魅魍魎?のアクティビストらにどれだけ訴求出来るか、反対多数なら計画は限りなく白紙に戻り経営の混迷は一段と深まるだけにこの辺が焦点となりそうだ。


企業の苦心

先週末に発表された11月の企業物価指数は前年同月比9.0%の上昇となったが、これは第二次オイルショック時の1980年12月以来、41年ぶりの上昇率を記録する事となった。いわずもがな背景には原油や原材料の高騰があるワケだが、一方で消費者物価指数は10月時点でわずか0.1%の上昇と企業物価との間には大きな開きが出ている。

同指数が発表になった先週末も伊藤ハムや日清食品が値上げの発表を行っていたが、こういった食品業界の他にも電気料金はもとより文具からインテリアまで幅広い企業が値上げ発表を行ったこの秋冬であったが、それでも上記の数字の開きや昨日の日銀短観の仕入れ価格と販売価格の差を見ても企業や生産者などまだまだ価格に十分な転嫁が出来ていない現状が浮き彫りになっている。

一方、米でも物価上昇が止まる気配は見えず同じく先週末に発表になった11月のCPIは前年同月比の上昇率が6.8%に達し、1982年6月以来、39年5ヵ月ぶりの歴史的な高水準となった。ただ、賃金上昇が進み需要の強さを背景に価格転嫁が進んでいる米と景気の回復ペースが遅く価格転嫁が遅々として進んでいない日本とではその違いが鮮明になっており、この流れが継続という事になると企業収益を圧迫しかねない点が危惧されるところだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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