93ページ目   雑記

経済と倫理

さて、2度にわたる停戦交渉も虚しくとうとうロシアは欧州最大の原発まで攻撃する前代未聞の行動に出たが、こうした事を背景に各国の主力大手企業が続々とロシアから離れる動きが加速している。ロシアといえば先ず石油だが、これに絡んでは英BPをはじめシェルもロシア極東で展開しているサハリン2から撤退、また米エクソンもサハリン1からの撤退方針を決めている。

自動車業界も米GMがロシアに輸出停止したのをはじめ、ドイツからはダイムラートラックにBMWやフォルクスワーゲン、英はロールス・ロイスにアストンマーティンやジャガーもロシア事業を停止と続いている。また航空業界も米ボーイングや欧州エアバスがロシアでのサービスを停止、末端消費では米アップルがアイフォーンはじめとした製品の販売停止にナイキやH&M、英バーバリーやイケアも続々とこれに続く。

更にはエンタメからは米ディズニーやワーナーメディア、ソニーピクチャーもロシアで劇場映画の公開を中止し、米ゲーム大手のEAはサッカーなどを題材としたゲームからロシア代表とクラブチームを除外すると発表、金融では米マスターカードやビザにアメックスも決済ネットワークからロシアの複数銀行を排除するなどロシア国民にとっても生活水準の劇的な変化の波が迫る。

サハリン1やサハリン2など言わずもがな巨大プロジェクトであり、またハリウッドにとってもロシアは極めて重要な市場であったが、人権問題で各企業が踏み絵を迫られた中国ビジネスを彷彿させる今回はこの時より待ったなしの状況と言え、いずれも利益優先よりも倫理を優先し事業撤退を英断している。上記のサハリン2には本邦勢も三菱商事や三井物産が出資しているが、エシカル経済の観点から他の進出企業含め今後の在り方が問われる事になるか。


制裁と返り血

さて、一寸前まで個人的な海外送金をする際には送金依頼書に必ずSWIFTナンバーを記入していたものだが、周知の通り欧米はこの国際的な資金決済網であるSWIFTからロシアの大手行排除を実行する事とし日本もこれに追随する方針を示している。SWIFTから排除されるとなると世界で殆どの金融取引が出来なくなることで輸出入が滞りその事業展開能力が損なわれる事になる。

このSWIFT排除、冒頭の送金依頼書にも北朝鮮・イラン関連規制に該当しないかを問うチェック項目があったが、かつてこのイランと北朝鮮に発動された経緯がある。常軌を逸したかのようにも見えるロシア大統領は核戦力を含む核抑止部隊を高度の警戒態勢に置くよう軍司令部に命じた事が報じられていたが、さしずめ金融の世界で核爆弾にも相当するのがこのSWIFT排除か。

これに加えて制裁はロシア中銀にまで及んだ事で外貨準備を使った通貨の買い支えが出来なくなり、通貨防衛の為に出来るのは利上げくらいという事で急遽その政策金利をクリミア併合時の17%を上回る20%にまで引き上げている。しかし国家や通貨そのものの信認が失われつつあり、中銀が斯様に強烈な利上げを行っても通貨価値の維持やインフレ抑制の効果は期待できないだろうか。

いずれにせよこの金融制裁がロシア経済を悪化させるのは想像に難くないが、上記の通りの金融核爆弾を行使した” 返り血”もまた避けられない。ただでさえ昨年から原油や小麦共に上げ続けていたところへ世界輸出の約3割を占める大国への制裁措置は火に油で、直近のWTI先物は約13年半ぶりの高値示現、小麦先物も14年ぶりの高値となっており遠く離れた地に居る我々も今後は更なる身構えが必要になるか。


コロナ禍の疲弊

さて、一昨日は新宿のハイアットリージェンシー東京が身売りを検討しているとの報が入って来た。ロビーの巨大なクリスタルシァンデリアやガラス張りのエレベーターなどが象徴するようにバブルと共に開業し我々の世代ではホテルセンチュリーハイアットと言う方が馴染みがあるが、施設の老朽化やコロナ禍があだとなって小田急電鉄が保有資産の見直しに動く模様だ。

バブル期に欠かせない存在であったホテルといえばこのハイアット以外にも赤坂プリンスホテルや六本木プリンスホテルがあったがいずれも今はその姿を消し、生まれ変わったホテルの一部も直近ではシンガポールの政府系ファンドへ売却する方針を西武側が表明している通り、ここ数年に及ぶコロナ禍で鉄道業界の疲弊の深さがが窺えるというもの。

しかし昨年営業を終了してしまったホテルグランドパレスや上記の赤坂プリンスホテルなど幾つもの名物メニューがありそれらがもう味わえなくなってしまう寂しさがあったものだが、ココも擁するレストランは幸福ならぬ”口福”がコンセプトであったが既に1年前から大半のレストランを閉めていた。つくづくバブル期に馴染のあった施設の身売り話の浮上はやはり感慨深いもの。


弥生もまだ

さて本日から3月入り、毎年恒例の光景といえば首都圏以外では高校生が卒業を迎えたところも多かったと思うが、例年と違う光景といえば年明けからの各種値上げの顕著化か、先月も食品からエネルギーまで幅広く続騰模様となったが、この流れは今月も多くの食品群から主要エネルギーまでまだまだ続く。

食品などザッと挙げてもマルハニチロや日本水産がサバ缶などを約3~20%、ニチレイフーズが家庭用冷凍野菜を約8~15%、日清食品チルド・日清食品冷凍がチルド麺や冷凍麺を6~13%、昭和産業が家庭用油を1キロあたり40円以上値上げ、キューピーや味の素がマヨネーズを約2%~10%、ヤマサ醤油が全製品を約4~10%、それぞれ値上げする。

また値上げの波は日用品にも及び大王製紙がティッシュやトイレットペーパーを15%以上値上げ、更に大手9社の電気料金や大手4社のガス料金の値上がりも続く。最近は昨年の関西スーパーマーケット争奪戦ですっかり有名になったオーケーが、値上げ宣言した花王製品の取り扱いを中止する旨が話題なったが、長い間デフレの中で競争してきた経緯があるだけに企業は価格を上げ難い。世界的なインフレ下でデフレ脱却が叶わぬ日本、ロシアの暴挙が予期せぬ形でこの構図を変える事になるか否か引き続き目が離せない。


統制五輪と政治

さて、新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るう中、17日間におよぶ北京五輪が閉会式を迎えその幕を閉じた。91ヵ国、地域から2877選手が大会に参加、フィギュアスケート団体では日本が史上初めての銅メダルを獲得、終盤はカーリング女子が初の銀メダルを獲得するなど日本選手団のメダル数は金3、銀6、銅9の計18個と過去最多を更新する快挙であった。

一方で開会式から聖火リレー最終走者にウイグル族選手を起用したのに始まり、本来であれば式典に出席出来ないロシア大統領も堂々と出席、そしてこの背景にもなっているROCのこの期に及んでのドーピング問題発覚から、スキージャンプのスーツ規定違反問題、スノーボードハーフパイプの不可解判定等々、IOCも終始傍観を決め込み最後まで後味の悪い問題が露呈した大会でもあった。

五輪外交を通じた米欧などとの緊張緩和は欧米諸国の外交ボイコットで目算が崩れる事となったが、これを以てスポーツの政治化には反対と批判していた中国こそ今回の五輪を政治的に最大限に利用したといっても過言ではないだろう。ウクライナ情勢緊迫化のなか式典に出席したロシアは閉幕後早々にウクライナに侵攻、増大した国力を背景に国際秩序の変更を目指す中国やロシアと今後どう向き合うか、民主主義陣営の結束と覚悟が試される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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