117ページ目

再度のパリティ割れ

今週の外為市場は再度ドル高が勢いを増し22日にはユーロドルが7月中旬以来となるパリティ割れを示現、以降は本日こそ等価水準を回復する動きがあったが弱保ち合いが継続している。予てより再度のパリティ割れの可能性が指摘されていたが、FRB高官によるタカ派的な発言を背景にドルが堅調持続する一方でエネルギー供給不安や欧州景気減速懸念を背景にユーロは軟調地合いを強いられている構図だ。

余談ながら今週ワールドカレンシーショップでドルとユーロを同一単位でそれぞれ円価に替えた際、ドルの手取りがユーロの手取りより多かったのを見て久し振りに今から数十年前を思い出した。モノ自体が全く違うので比較するものでは無いが、彷彿とさせるケースとしてゴールドとプラチナも長年にわたるプラチナ上鞘時代の憶えから逆鞘に転じた際も早晩の修正論が出ていたがもう長らくプラチナの下鞘が定着している。

というワケでこんなパリティ割れが一時的な現象に終わるのか否かだが、ここ強いタカ派のメッセージを先取りしドル買いの動きも勢いを増して来たものの、仮に市場が期待していたほどのタカ派的な発言がなければ一旦の調整が入る可能性がある。何れにしろ目先は週末のジャクソンホール経済シンポジウムが最大の焦点となるだけに、FRB議長はじめ関係者のメッセージに注目としたい。


ミーム株乱高下

先週には34,000ドル回復した米株式も金融引き締めへの警戒感強くはや1000ドル以上の押しを入れてきているが、米株といえば今月に入ってから一際目を惹いていたのがAMC等のミーム株群か。中でも生活雑貨販売のベッド・バス・アンド・ビヨンドは今月に入ってからその株価が実に約5倍に大化けしたのも束の間、先週末にかけその株価が2日間で半値以下まで急落の憂き目に遭っている。

この背景には同株式を10%強保有する大株主RCベンチャーズの保有全株売却報道があるようだが、このRCベンチャーズを率いているのはかつてのミーム株の代表格であった米ゲーム専門店ゲームストップの会長を務めた人物で、このゲームストップ株も今月は約3割の急騰を見せていたがベッド・バス・アンド・ビヨンドの急落を受け上記のAMCと共に値崩れしている。

しかし終盤で大株主によるディープアウトのコールオプション購入話が喧伝されこれが個人投資家らに信任投票と受け取られ株価が佳境に入ったところで大量売却が行われたとしたらとんだ梯子外しだが、いずれにせよ来月にFRBはQTの上限額を月950億ドルに引き上げて資産圧縮を加速する。カネ余りでミーム株も幾度となく乱高下を繰り返してきたが個人の投機熱の持続性も試されそうだ。


消えぬデフレ圧力

さて、昨日はあの一口サイズで知られる「チロルチョコ」が原材料価格の高騰や物流コストの上昇を理由に1993年以来、29年ぶりの値上げに踏み切る旨の発表があったが、本日も大塚製薬が「オロナミンC」ドリンク等の小瓶ドリンクを原材料価格やエネルギーコストの高騰を理由に11月1日出荷分から25年ぶりに値上げすると発表している。

食品の値上げといえば昨日の日経紙総合・経済面では「食品値上げ「未達」3割」と題し、1月~5月に値上げのあった食料品16品目の動向調査ではメーカーが公表した値上げ幅と7月の店頭価格の前年同月からの上昇率比較では3割にあたる5品目が表明幅の下限にも届いていないなど値上げがメーカーの思うように進んでいない旨が出ていた。

成る程同紙に掲載されていた5品目もさることながら、冒頭のオロナミンCも近所のスーパーで10本入りが500円台で売られているのをつい最近見た。改定では税抜きで120円になるというが、上記の安売りでは一本約60円弱でありメーカー公表の約半値という計算になる。エネルギー価格が否応なしの値上げ断行が為されている一方で、デフレ圧力がいまだ色濃く残るこの業界の構造を垣間見た気がする。


インフレ功罪

先週に総務省から発表になった7月の家庭で消費するモノやサービスの価格の動きを示す指標である消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除いた指数が去年より2.4%上昇した。上昇率の2.4%は消費税増税の影響を除くと13年11か月ぶりの水準で、日銀の目標としている2%を超えるのは4ヵ月連続となる。

斯様に消費者物価指数が2%を超える伸びを続ける中、更に高い伸びとなっているのが企業同士で取引される原材料等のモノの価格である企業物価指数で、先に発表された7月のそれは前年同月比で8.6%の上昇と17カ月連続で上昇、依然として乖離も大きなものとなっており企業側が仕入れコスト上昇分を吸収し価格への転嫁が進んでいない事を示している。

しかし国内事情はそれとして欧米では高いインフレが広がっている。米の7月消費者物価指数は8.5%の上昇、英のそれに至っては10.1%の上昇と40年ぶりの高水準となっている。個別で比較しても日本では目立ったところで電気代が19.6%、ガス代が18.8%の上昇であったが、英のそれは電気代が54%、ガス代に至っては95.7%とケタ違いである。

欧米は景気に勢いがあるので賃上げも進んでおりインフレの良し悪しも難しいところだが、売り上げ増や賃上げ実現という経済の基盤になるのも事実。企業は何とかコスト上昇分を出来るだけ価格に転嫁する事で適正な利益を確保し、少しでもスタッフの賃上げに繋げてゆくなど経済の好循環を作る事を目指すのが引き続き課題となるか。


単元株考

さて、先月末に当欄では東証の株式分布調査で2021年度の延べ個人株主数が8年連続で増加し過去最多となった旨を書いたが、約一週間前の日経紙社説には「1株から日本株を買える制度に改めよ」と題し個人金融資産を投資へと動かすために、政府や取引所、企業は現状で100株からしか買えない日本株の売買制度を1株から買えるように改めるべきとの旨が出ていた。

思えば対面が主流だった一昔前は額面50円銘柄で1000株単位と仕手株に飛び乗る際にも倍々ゲームで膨れ上がる買い付け代金に逡巡したものだが、記憶を辿れば1株単位の銘柄があった当時はそれこそ1株から1000株まで8種類の売買単位が存在し今は市場からその姿を消した誰でも知るところのライブドアなどは1株単位でそれこそ数百円で買えた株であった。

それが今から約4年前に100株に統一されたワケだが、確かに指数への寄与度が高いファーストリテイリングを買うには急反落となった本日の株価でさえ約870万円近くが必要になり、米株では同じく寄与度の高いアップルなど数万円で投資出来るのとは雲泥の差である。文中にもあるようにNISAの啓蒙こそ喧しいものの積立より上限が高い一般でも120万の枠とこの手の銘柄ははるか足元にも及ばない計算になる。

この100株単元に甘んじている背景として考えられるのはそれこそ株主管理コストの負担であったり、はたまた上記のライブドア・ショックの際に見られた東証のシステムダウンのトラウマだったりがあるだろうが、システム障害を経て増強が為されている筈だし来年には総会資料の電子提供制度も始まる。「貯蓄から投資」を標榜するのであれば政府もこの辺にこそメスを入れ、企業側も積極的に歩み寄り協力するところか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

9

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30