次期総裁の重責

先週末の日経紙一面を飾っていたのは「日銀総裁に植田氏」の見出しで、政府は4月に退任する日銀の黒田総裁の後任に経済学者で元日銀審議委員の植田氏を起用する人事を固めた旨の記事であった。日銀総裁の人事に関しては先週も書いた通り、現副総裁の雨宮氏の名前が挙がっていたが同氏は就任を固辞したとみられる。

事前の民間エコノミストの予想でも雨宮氏と違って同氏の名前は挙がっていなかった事でサプライズ人事だったが、誰がなったとしても異次元緩和が生んだ副産物の諸々の処理が待ち受けている。金利を抑え込むために大量の国債買いを行った結果、今や日銀は発行残高の半分以上を保有する異常事態になっているし、大量買いといえばETFもまた然りで購入を続けた結果今やその保有額は40兆円に迫る勢いだ。

国債に関しては既にYCCによる歪で企業に起債などへの悪影響が懸念されているが、YCCの限界を見込み空売りした投資家が決済日までに国債調達が出来ずフェイルが急増しているのも直近で話題になっている。またETFにしても粛々とした継続購入で既に日銀は上場企業の約4割で上位10位以内に入る大株主となっており、自己資本の数倍に相当する株の変動リスクを自らのバランスシートに抱えるなど弊害を挙げればキリがない。

コーポレート・ガバナンスの重要性が彼方此方で謳われるなか、この空洞化さえ招きかねない問題があるこうしたオペはほかの主要中銀は手掛けない特異な政策だったのは言うまでもない。これまでこれらのイグジットに関しては様々な憶測が飛び交ってきたが、はたして10年にわたって続けた異次元緩和をどう降りてゆくのか次期総裁の重責は計り知れないといえる。


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