猛暑の経済損失

今月のアタマには気候変動から長期化しつつある「夏」で売れ筋の変化から1年を二季として商品構成を考えるアパレル各社の戦略などを書いたが、日曜日の日経紙・科学の扉では「世界で酷暑、損失600兆円」と題し、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書によれば気候変動による世界のインフラの損失額は平均気温が2度上昇した場合に2100年には約600兆円に上ると推計される旨の記事が載っていた。

世界レベルの損失といえばILO(国際労働機関)も暑さによって失われる労働時間が2030年までに全世界で2.2%に達しフルタイムで働く8000万人分の労働力が消失すると分析、その経済損失は2兆4000億ドル(日本円で約380兆円)になるとしている。また日本でいえば医学誌のランセットによれば23年は暑さで日本の労働生産性が低下、労働時間の損失は年間で約22億時間、潜在的な収入損失は年間で約5兆4000億円という。

それ以外でも同紙に出ていたように天候不順からさまざまな果実の収穫が減少、オリーブオイルやチョコレート製品は価格がここ数年で2倍以上に跳ね上がり、漁獲量などを見ても理解できないほど従来のバランスが大きく崩れている。そのほか洪水や干ばつ被害の頻発から一部では火災保険が続々と停止に追い込まれ各所で生活に大きな影響を与えている。

冒頭のIPCCだが、地球の気温上昇を1.5度以内に抑えるためには2035年に2019年比で60%の温暖化ガス削減が必要としている。2050年には実質排出のゼロを実現しなければならないが、足元では第2次トランプ政策の壁が立ちはだかるなど停滞も懸念されるところ。とはいえこの手の取り組みは人々や生態系に関わって来る重要な事だけに流れとしては不可逆的なものになろうが、いずれにせよ各国による実効性のある対策が喫緊の課題といえるか。


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