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悪い円安

本日の外国為替市場では米長期金利の上昇を受け円相場が一時、約20年ぶりに1ドル129円台まで急落した。気になる日銀の動向だが長期金利の上昇を抑え込む為に指し値オペを21日から26日まで連続で実施すると発表、既に本日の午前中に指し値オペの実施を通知しており異例の5営業日連続の指し値オペとなる。

周知の通り、米・英は物価の上昇を背景に利上げに動き、同様の理由でお隣韓国も先週には今年2回目の利上げを実施しており、ECBも先週の理事会で量的緩和策を夏までに終わらせ、年内にも利上げを実施する可能性が高まっている。斯様に世界中で利上げに走るなか、景気下支えの大義名分のもと超低金利政策を維持する姿勢を示している日銀は特異に映る。

斯様な金融政策の方向性の違いから日米金利差が拡大するとの思惑で冒頭の通りの円急落となっているワケだが、インフレ下で実質量的緩和を実施している強化している格好だ。ここ9年間にわたって歴史的な金融緩和を継続したにもかかわらず求めているような内需主導型の2%の安定的物価目標はいまだ達成されず、バランスシートも各国比で膨張し負のループに陥っている日銀にはたして各国の出口戦略はどう映っているのだろうか。


NATOガイドライン

さて、これまで日本の防衛費はGDP比1%以内を目安としてきたが、先週末の日経紙総合面には「防衛費GDP2%以上に」と題し、政府の国家安全保障戦略などの改定に関する自民党提言の素案としてロシアのウクライナ侵攻や中国の軍備拡張を踏まえ、この防衛費をGDP比で2%以上に増やすよう政府に求める記事があった。

ちなみにNATO加盟国はGDP比2%以上という国防費目標がガイドラインとしてあり、既に欧州各国では続々と国防費を上げる動きが出て来ている。直近ではドイツが米ロッキード・マーチンの戦闘機を数十機購入すると発表され、バイデン政権の国防費拡大見通しとも相俟って同社やグラマン、L3ハリス、ゼネラル・ダイナミクス等々に物色の矛先が向きいずれも先月から今月にかけて史上最高値を更新している。

斯様な光景を見るにESG投資の大義名分もいろいろと修正されそうだが、それは兎も角も確かに東シナ海を巡る緊張に加え一昨日も北朝鮮が日本海に向け戦術核の運用に向けた新型戦術誘導兵器のミサイル2発を発射したとのキナ臭い報が入るなど緊張が高まっているさまを見るに、我が国も憲法第9条の下での安穏とした状況下に警戒感を持つべきで防衛大綱や中期防衛力整備計画等の見直し機運も高まろうか。


言論の自由至上主義

周知の通り電気自動車大手米テスラのイーロン・マスクCEOが米ツイッター社の筆頭株主に浮上しその後に同社はマスク氏を取締役に迎えると発表されていたものの、その数日後に予定されていた取締役就任日直前になって同氏は取締役就任を辞退、返す刀で今度はツイッターの全株式を取得する買収を提案している。

同氏は残る全株を1株あたり54ドル20セントで取得すると表明、最善且つ最後の買収案を提示したとしているが、この一連の動きに対しツイッター側もポイズンピル等の買収防衛策導入を検討している模様だ。このポイズンピルは日本でも近年では東芝機械や古くはブルドックソース事件でも記憶に新しいが、取締役会が買収提案を拒否した場合には代替案があるとしている。

まさに株式で膨れ上がった資金力を背景にまたも大掛かりなマスク劇場が展開されているが同氏が論点に挙げているのが「言論の自由」、過去には投稿を巡りSECに訴えられた騒動もあったがこの敵対的方向に向かっている買収劇の裏で双方がどういった論点で対立しているのかが焦点、今後更なる買収金額の引き上げがあるや否やこれらと併せ目まぐるしい展開なだけに目が離せない。


イースター2022

さて、来たる日曜日はキリストの復活を祝い春の訪れを祝う「イースター」(東方教会は24日)だが、既に例年の如くラグジュアリーホテル等ではアフタヌーンティーがこれに絡んだものが登場し、ピエール・エルメやジャン=ポール・エヴァンなど今年も新たなシンボルの卵やそれを運んでくるウサギのモチーフの新作チョコレートを展開している。

とはいえ日本ではこれに因んだ商戦にあまり派手さは見当たらないが、米では現在本格化しているイースター商戦は年間の消費動向を占う先行指標として業界では注目されるところで、今年はコロナが完全収束しない中で集いの自粛や一昨日に発表された3月消費者物価指数が約40年ぶりの高水準となった事なども背景に購入活動は20年、21年の過去2年の実績より下回る事が予想されている。

ところで今更ながらイースターで卵がシンボルになっている理由は、卵が命を生み出すものであり復活の象徴とされているからに他ならない。ウクライナのイースターエッグは「ピーサンカ」と呼ばれているが、日々同国の現場の惨状を報道等で見るにつけまさに一刻も早い終結と「復活」を願わずにはいられない今年のイースターである。


食糧インフレの足音

さて、一昨日に製粉業界最古参のニップンは政府が輸入小麦の売り渡し価格を4月に平均17.3%引き上げた事を受け、業務用小麦粉を6月20日分から値上げすると発表している。業務用小麦を巡っては既に製粉トップの日清製粉が値上げ発表をしているが、これで今後も引き続き食料品などの価格に大きな影響を与えるのは想像に難くない。

この辺は言わずもがなウクライナ危機が更に拍車をかけているのが背景だが、10日付の日経紙総合面でも「食糧高騰 アジアに打撃」と題し食料高騰がアジアや他の新興国にも影を落としている旨が出ていた。食糧価格高騰がトリガーになり大規模デモとなったパターンでは11年の「アラブの春」が記憶に新しいところだが、現在の構図もこれと同様で予断を許さない状況だ。

この度のロシアによるウクライナ侵攻は世界中で掛け声になっているSDGsの各動きにも大きな障壁となる事が予想されており、17の目標のうちの一つである2030年までに飢餓をゼロにという目標の達成など暗雲が漂う。FAO(国連食糧農業機関)が先週に発表した3月の世界の食料価格指数は2ヵ月連続で過去最高値を付けているが、食糧インフレが今後様々な事に波及しないのを祈るばかりである。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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