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商機とモラルリスク

さて、先週の日経紙・アジアVIEWには新型コロナウイルス保険の保険金支払いが急増しタイでは経営に行き詰まる保険会社が相次いでいる旨の記事があったが、国内でも少額の保険料ながら新型コロナウイルス感染の際に一時金が受け取れる所謂コロナ保険が感染第6波を背景にこれまで保険にあまり興味がなかったような若い世代など中心に賑わいを見せている模様だ。

感染し入院・自宅療養などとなった場合は最高で60万円が支払われるコロナ保険を2年前から販売している太陽生命は年明けから加入者が急増し累計販売数は21万件を超えて来ており、またペイペイのアプリで手軽に契約でき感染確認で5万円が支給される損保ジャパンの「コロナお見舞金」も販売わずか1カ月ほどで加入件数は15万件に達し今月に入ってからは20万件を突破している。

斯様に加入が殺到しているコロナ保険だが、日本生命子会社の大樹生命保険は想定を上回る支払いが見込まれる事で昨年末販売の商品維持が困難な事態に陥りわずか数カ月で販売停止に追い込まれている。そういえば感染第5波のあった昨年9月にも第一生命の子会社が販売していた同保険の販売が一時中止に追い込まれていたのも記憶に新しいところ。

ちなみにこの第一生命の子会社はこの2月に入ってから展開するコロナ保険の保険料を先月の約4倍に引き上げるなどまるでオプション取引のプレミアムを見ているようだが、冒頭のタイでは保険金目当ての意図的感染も横行するなどモラルリスクも表面化している模様。いずれにせよコロナ禍に乗じ商機に賭ける胴元の思惑は如何に、各社共その舵取りが注視される。


既視感

さて最近まで近所のスーパーでは熊本産のラベルが貼られたアサリが連日大量に売れ残っている光景を目にしたが、漁獲量の100倍以上にものぼる量の中国や韓国などから輸入されたアサリが熊本県産と表示されて全国に流通していた問題が世間を騒がせ、この問題のあおりを受け無関係のシバエビやハマグリまで熊本産は売れなくなり入札が止まるなど余波は多方面に及んている。
 
偽装といえばこのアサリ以外にも大手百貨店内に店舗を展開しふるさと納税返戻品にも選ばれた専門店など中国産の鰻を国産と産地偽装して蒲焼などを販売していた件が明らかになっているほか、今週は中国産のワカメを徳島県の鳴門産として出荷販売した食品加工会社社長が食品表示法違反などの疑いで逮捕された報が入って来るなど偽装の波は広がるばかりだ。

ウナギの偽装など10年以上も前にも中国産の横行が問題になり世間を騒がせたのが鮮明に蘇って来るが、この頃はミシュランの二つ星を獲得した今は無きヒルトンの有名レストランまで産地偽装が発覚しヤレヤレという思いであったのも思い出す。日本人の中国産などに対する目が依然として厳しい事などを背景とした悪しき商慣習や、調査の壁になっている縦割り行政等も含め繰り返し発覚する偽装問題の根は深い感がある。


政治的武器

本日はバイデン米大統領が、ロシアが早ければウクライナに対する大規模な侵攻を強行する可能性が高いとしていた日であったが、ロシア国防相はウクライナ国境から一部部隊を撤退させたと発表、これに対し米政府はこの撤退を確認しておらずロシアが依然として大きな脅威を与えているとの認識を示すなど緊張が続いている。

マーケットの方もこれらの状況に振り回される状況が続き、週明けのWTIは約7年5か月ぶりに1バレル95ドル台をつけ、同じく主要産出品であるパラジウムも上昇、貴金属といえば金もまた地政学リスクを囃し約8か月ぶりの高値まで上昇した。上記の軍部隊一部撤退の報でこれらは一斉に一服となったが未だ予断を許さない状態だ。

原油や天然ガスはいわずもがなだが、パラジウムもセンサーやメモリーに使われる他、触媒から歯科用までこれまで当欄で書いて来た通りで、ロシアに本腰を入れてカードを切られたらその影響は計り知れない。豊富な資源を有する国だけにこうした事態になると何とも厄介な構図だが、しばらくは政治的武器にされつつある各コモディティーの動向から目が離せない。


前評判に暗雲

本日の日経紙・一目均衡には、東京証券取引所が4月に実施する市場再編に関してQUICKの2月の株式月次調査で市場参加者の56%が実質的に何も変わらないと回答するなどその前評判に対して散々な旨が書かれていた。その理由として基準未達でも移行できる経過措置の存在や期待を下回る時価総額基準など挙げられていたが、この辺は当欄でも1月に書いた通り。

同頁には消えるジャパンファンドと題してジャパンファンドの数がこの数年で減少している旨も書いてあったが、斯様な骨抜きとも言われかねない市場再編は更に市場再浮上に暗雲漂わせるものになりかねない。ところで前評判に対して散々なモノにもう一つ、東芝がグループ3分割計画を修正し2分割にすると発表した件がある。

物言う株主に忖度しながらすっかり風見鶏に成り下がった経営陣は昨年末の公表からわずか3ヵ月で軌道修正を迫られた格好だが、分割後の中核事業が依然として不透明なままでこちらも暗雲漂う。ともあれ先ずは来月の臨時株主総会で株主の理解が得られるか否かというところが焦点になろうが、まだまだこの先も紆余曲折が予想されるだけに目の離せない展開が続くか。


進まぬ転嫁

さて先週に日銀は1月の企業間で取引するモノの価格動向を示した企業物価指数を発表しているが、前年同月比で8.6%上昇し109.5となっていた。前回当欄でこれを取り上げた時からは小幅に鈍化しているものの、原油など資源価格の高騰や円安などを背景にオイルショックが影響した1980年12月以来の水準で高止まりとなっている。

ところでこの企業物価指数が発表された日に米では1月の消費者物価指数が発表されておりこちらは予想を大きく上振れる7.5%の上昇となっていたが、一方で直近の12月の日本の消費者物価指数は0.5%の上昇と依然として欧米のそれからは低い水準にとどまり企業物価指数との乖離は大きいままの状態が続いている。

この辺は前回も書いた通りで生産者や企業が価格に転嫁出来ていない実態が反映されており、実際に先月末に帝国データバンクが価格転嫁に関して実施した調査では約8割の企業が自社の商品やサービスに原料価格高騰等の影響があるとし、約36.3%が価格転嫁が全く出来ていないとし、全体の価格転嫁率は25.9%と3割を下回る現状が明らかになっている。

このCPI発表前には岸田首相がモノの値上がりに対し賃金の引き上げが行われなければならないと発言していたが、主に下請け中心に供給網全体でコストの適正分担が進まねば賃上げも難しい構図となっており、価格転嫁未達が6割を越える上位業種など消費者が壁になっている実態等と併せこの辺が依然として課題といえようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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