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連動モノの匙加減

OPECが昨日公表した月報では来年の世界原油需要見通しが前月から下方修正されていたが、原油といえば先週の日経紙・市場点描には野村證券が原油先物指数のNOMURA原油ロングインデックスの算出ルールを11月末に変更するとして、先に価格変動の影響を抑える運用ルールに変更していた野村アセットマネジメントのETFに同指数が追随する格好になった旨が書かれていた。

ところでこの原油系組成商品に絡んではもう一つ、先の東証のシステムトラブルで終日売買停止となった際にETN系も当然ストップしたが、これらの発行体の証券会社は残高増減に合せ東商取の原油先物を売買する性質上、この日も支障なく稼働していた東商取の原油先物もこの影響で注文減との思惑からその売買高がロールオーバーも含め前日比で約2割ほど減少した経緯もあった。

こうしたケースではリクイディティーが細ることからともすればその価格変動が大きくなり易くなってしまうが、冒頭のケースは逆に価格変動が小さくなってしまいリスク選好の投資家離れに繋がる可能性も出て来る。投資家保護の観点含め何れがというところは難しいところだがここ数年選択肢が増えた裏で個別の課題もいろいろと見えてきたというところか。


関係悪化と金買い

本日の日経紙商品面には「世界の中銀 一転金売り」と題し、金価格が2000ドル大台超から史上最高値を更新していた8月に、コロナ禍で外貨収入源に苦しむ新興国を中心とした中央銀行が準備資産の一部として保有していた金を約1年半ぶりに売りに転じていた旨が書かれていた。

ネットで売却が上回ったという今回の件ではウズベキスタンやロシア等の国が挙がっていたが、ここ数年では米国債から金に資金移動するなどの動きがこのロシアなどで目立ち米による経済制裁を受ける同国の外貨準備に占める割合が20%に達しその残高は約2300トン超えと保有量4位のフランスに次ぐ水準となっている。

とはいえ上記のロシアは今年に入ってその動きを止めているものの、これと入れ代わる格好で台頭してきた存在でトルコが報じられており今年1月から5月累計で世界の中銀で最大の買い手となり前年同期比の伸び率も3倍となった模様。同国もまたここ数年米との悪化が報じられているが、ドル離れと併せ各国中銀のスタンスに大幅な変化が想像出来ない事から今後も金買いが継続されるのは想像に難くないか。


国際金融都市に向けて

ちょうど1週間前には東証がシステム障害により初の全銘柄の終日売買停止に追い込まれる事態となり当欄でもその旨を書いたが、先週末の日経紙・真相深層でも「東証縛った2つの約束」と題し2012年と2018年に起きた同様のシステム障害後に取り決めたよりよい運用を目指した約束が今回の件では裏目に出た格好との旨が書かれていた。

この項の末尾では「運用面でも様々な事態を想定した対策の準備が必要になる」と書いてあったが、今回の件もつい昨年末にシステム刷新した際に導入したばかりの運用系ネットワークにおける共有ディスクの故障が原因で事業継続計画にも再起動した場合のその後の手順は記載されていなかったという。

システム会社や会員などが一体となった体制作りが安定運用に欠かせないのは当然だが、前回も「親亀コケたら皆コケる」と他の地方取引所もこの影響を被った旨を書いた通り、今回改めてクローズアップされた斯様な取引所の一極集中という特異な形態も資本市場のインフラの根幹を支えている部分なだけに今後再考の余地が出てこようか。


儲かるGoToキャンペーン

さて、周知の通り政府による国内旅行の需要喚起策である「GoToトラベル」に今月から東京発着が追加されているが、コロナ禍の影響が多大だっただけにこの事業には期待の声が高く一部シンクタンクによればこの東京追加による個人消費の押し上げ効果は1年間で7700億円にもなるという。

とはいえメディア等が取り上げる中で目立つのはやはり実質的に半分が補助されるとあって一般には普段使いでなかなか手の出し辛い高級ラグジュアリーの類で、実際にこの手のホテルからの案内は彼方此方からある。斯様な事も背景にこうした中でお得感の少ない元々の単価の安いホテルや利用者の間でもその恩恵に歪が出ているとの指摘もあるが、この辺は富裕層ほど得をするふるさと納税と構図が似ているか。

そのふるさと納税も返礼品競争が過熱したのが記憶に新しいが、上記の背景もありホテルの中には誘致目的で独自の買い物クーポンを付与し実質自己負担分以上に儲けが出てしまうようなケースも早速出てきた。また自己負担分以上に儲けが出るといえば、同時に今月から始まった飲食店や農林漁業者を支援する「GoToイート」キャンペーンでも早速問題が出ている。

この辺は実施前から指摘されていた事だが、すなわちその高付与率に目を付け予約した店では僅か数百円の品だけ注文する行為を繰り返し実質支払い分を大きく上回るポイントを獲得しようとするさもしい輩がやはり出てきた。斯様に制度の盲点を突かれ、本来応援すべきものが逆に店を更なる窮地に追い込むケースなどこれでは本末転倒も甚だしい。

給付金の類もいろいろ問題が表面化したが、こうしたケースが出て来るのはひとえに制度設計がきちんと出来ていないまま見切り発車スタートしたという部分に他ならないか。本来の目的が本末転倒にならないよう例えば注文金額の足切り等きちんとした制度設計の見直しなどが今後早急に求められようか。


相次ぐ流出

さて、先週アタマの日経紙夕刊では国際的なマネーロンダリングに、違法な収益を紛れ込ませ易い海外との出入金が日常的に多い法人口座を持つ日本の中小企業が関与していたケースが相次いで発覚している旨の記事があったが、マネーロンダリングといえば先月話題になっていたものに米財務省金融犯罪取締ネットワークからリークされた所謂フィンセン文書がある。

世界88ヵ国の報道機関で400人以上の記者を投入し金融機関側やマネーロンダリングに関与した疑いがある企業や個人を取材したが、ここに記されていた不審な取引は2100件以上にのぼり、欧米の名だたる銀行が利益優先の為にマネロンなどの手助けに勤しむなどコンプライアンスを守っていなかったという。

このあおりを受けて英HSBCホールディングスの株価など25年ぶりの安値に沈む憂き目に遭っていたが、同じく英スタンダードチャータード銀やドイツ銀なども売りモノを浴びていた。しかしこれで思い出すのが数年前に各国首脳や著名人の名が挙がり世間がザワついたパナマ文書、またパナマほど騒がれなかったこの後のパラダイス文書等があったが、ここ数年の金融情報の流出劇は何を意味するのか思惑が募るところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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