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資本論理と業界秩序

さて、先週の祝日の日経紙投資情報面では「旧村上F系がTOB」と題して、現在投資ファンドと組んでMBOを目指している東証一部上場の廣済堂があの村上世彰氏が関わる不動産会社と投資ファンドが同社に対しTOBを開始する報告を受けたと発表した旨が出ていた。

廣済堂といえば先に発表したMBOについて、米ベインキャピタルと経営陣が実施するTOBの買い付け価格の引き上げを先に発表したばかりだがこれに対抗した格好か。ところでTOBといえば注目を浴びていた伊藤忠商事によるデサントへの敵対的TOBが先に成立の運びとなり、本日はデサント側が伊藤忠側に大幅譲歩する経営陣大幅刷新内容の発表があった。

先月に当欄でもこれを取り上げた時に王子HDの時を彷彿させる敵対型の再来となっており紙戦争の時の三菱商事のようなホワイトナイトが現れるのかどうかと書いたが、資本論理より業界秩序の維持が優先されたかっこうになったこの時の事例を塗り替えるべく大手企業同士で初の成立案件となった。

13年ぶりに動き出したこのケースだが敵対的という言葉だけが独り歩きするという環境も変って来た昨今、一部株主の排除や利益が損なわれる懸念などの課題を踏まえつつ日本ではレアケースとされる敵対的TOBが今後企業価値の向上に繋がってゆくのかどうかこれらの事例と併せ注目して行きたい。


春のIPOラッシュ

さて、昨日IPOの共栄セキュリティーサービスに続いて本日も建設業特化人材派遣のコプロHDに、「みんなの株式」を運営するミンカブ・ジ・インフォノイドなど立て続けの新規上場があった。注目の初値はコプロHDが公開価格を14.6%上回る2,395円で初値形成、ミンカブの方は公開価格を33.3%上回る1,400円で初値形成と好スタートとなった。

また明日は明日でIT人材仲介ベンチャーのギークスが新規上場の予定となっているが、先月の2019年第一号のIPOとなる識学が初日には値付かずで上場2日目にして公開価格の実に2.5倍の初値形成となった事が今月のIPOの好地合いに繋がっており、明日のギークスにもロケットスタートの期待がかかっている。

それは兎も角も今年1〜3月のIPOは前年同期の16社を上回る20社強と一寸したIPOラッシュとなりそうだが、昨年末にマザーズへの上場申請関連書類で内部統制の運用状況詳細を記載する旨の改正が今年7月から適用となるなど一段の審査強化の影響が後半戦にどう出るのかという一抹の不安要素もある。

IPOのハードルが高くなればベンチャーキャピタルの投資回収などにも何れ影響が出て来ようが、来月の働き方改革関連法の一部施行のタイミングで上記のような人材系スタートアップが出て来ており、成長期待の高い予備軍も控えるなど展望は期待のできるものであり新年度以降も引き続き注目されるところ。


肥大化に歯止め

さて、先週末の日経紙一面には「東証一部企業絞り込み」と題し、東京証券取引所が優良企業の集まる上位市場の位置付けを明確にして日本市場の国際競争力を高める狙いで、現在2100社超ある東証一部の上場企業数を時価総額の基準引き上げや英文開示の義務付けなどで絞り込む旨が載っていた。

この辺に関しては同じく先週末に毎日紙が東証一部の上場・降格基準を厳格化し日本経済を牽引するプレミアム市場を創設する旨も報じられていたが、何れにしてもこうした背景にはやはり二部やマザーズ経由での所謂内部昇格が恒常化し、時価総額や売買代金でその格差が看過出来ないところまで露呈されて来ているという部分もあるか。

当欄でもこうした上場区分の見直し機運に関しては昨年10月末に「並存解消機運」と題して新興市場など一寸触れた事があったが、元はといえば今のJPX創設前における上場誘致を巡っての東証と大証が誘致合戦していたところに起因し、02年に東証が出した内部昇格基準等が今になって自身に跳ね返ってきている格好だ。

何れにせよこれによって一部上場企業数の3割強にあたる約720社が除外される計算となってくるが、現状JPXは19年世界の取引所のブランドランキングで12位に甘んじているだけに上位市場を明確にし日本市場の国際競争力を高めるためには致し方なしとの見方もあるが、統合後の市場改革が手付かずだったが為に降格対象企業は翻弄された格好になったか。


解消と受け皿

さて、昨日の日経紙夕刊一面では「株主優待最多の1500銘柄」と題して株主に自社製品や金券などを贈る株主優待制度の導入が個人に安定的に株を持ってもらいたい企業の意向もあって、今年の1月末で1500銘柄を超え実に上場銘柄全体の4割に達するなど過去最多となった旨が載っていた。

当欄では約4年前に企業側が優待に力を入れ始めている背景には、持ち合い解消促進とその後の受け皿としての個人株主の存在があると書いた事があったが、当時伸びしろがあるとした通り最近は長く保有するほどより優遇する仕組みが増えておりその割合は優待の3割を占めているという。

ふるさと納税も返礼率5割が当たり前だったバブル当時にはふるさと納税評論家なる輩が彼方此方で登場していたが、株主優待生活を前面にアピールした一部タレント化した投資家も彼方此方で露出が多くなって来た昨今、上記の件と絡め長期保有への啓蒙も進みつつあり今後は優待先行の弊害に不満を持つ機関投資家ともESG等絡めどうバランスを取ってゆくかも課題になろうか。


非公開市場

さて、本日小反落で引けた二部の松尾電機が回路保護素子の新製品を開発した報を囃しPTSでストップ高と急騰しているが、取引所を経由しないPTSのような私設モノに関して先週の日経紙には会員の中で投資家の取引注文をつき合わせるダークプールの実態把握に金融庁が乗り出した旨が載っていた。

FX業務も所謂デスクというヤツがあったが、ダークプールの利点としては株価に影響を与える大口注文でも他の取引参加者に晒されずに売買出来、価格の刻み値を取引所に比べて小さく出来るためにより有利な価格で売買出来るというのが特徴とされているがはたして成立価格が本当に有利なのか、また個々の認識の下で執行されているのか等々も点検の方向と。

ところで一部投資家によっては上記のような利点より売買の秘匿性を重視するというケースもあるようだが、仮想通貨も大口注文で他の取引参加者に晒されずに売買出来る事でこのダークプールが使用されているケースがあるようで、同時に更に秘匿性も高くなってくる事でその辺含めこれが今後どう捉えられてゆくのか金融庁の動向と併せ注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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