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需給は全てに優先する

本日の日経紙マーケット面には「プラチナ、長引く逆転相場」と題して貴金属市場の中でも金と、本来であれば割高になるプラチナが値下がりの激しさによってその値動きに差が出ている旨が載っていた。

この逆転劇といえば東日本大震災での自動車生産台数激減を囃して以降もう恒常的に取り沙汰されるようになったが、近年では外貨準備や代替通貨として買われる通貨の二面性を持った金と、あくまで素材としてのプラチナの差といったところが顕著になってきているというところだろうか。

また、同紙の冒頭にはプラチナの生産量が年間200トンで金の15分の1以下であるから、その希少性で通常はプラチナの方が価格が高いといった一文があったが、そもそも需要が供給を満たさなければこの通説自体があまり意味をなさない物になってしまうのは当たり前である。相場格言で「需給は全てに優先する」とはよく言ったものである。


総会お土産

さて、昨日は株主総会を前にした企業の買収防衛策廃止の姿勢について触れたが、この株主総会といえば週末に総会を開くソフトバンクが恒例だった「お父さん」をあしらった食品等のお土産をとりやめるなど、出席する株主にお土産を渡すことを止める企業が相次いでいる旨の記事を昨日の日経夕刊で目にした。

このまま機関投資家やアナリスト向け説明会のヤツまでは廃止にならないだろうが、当欄でちょうど今から一年前にこの株主総会のお土産について書いた際に、この総会土産を廃止にした企業の総会出席者数が3割〜7割も減ったという件であったのを思い出した。

各社廃止の理由として欠席した株主への還元が不公平になるほか、出席株主の増加で経費や会場運営の負担が重くなることを挙げているが、ヘタをすればそれこそ優待よりお土産が豪華なパターンも存在し、「お土産」の中には非売品も多く特にレアものは根強いコレクターも存在するだけに各社その分の拡充策も思案のしどころとなろうか。


次の焦点

時節がらか配当関係と共に定時株主総会招集の通知が多く届いているが、そんな株主総会を前に買収防衛策を廃止する企業が相次いでいる旨が週末の日経紙に載っていた。ただ今年度は昨年度より7社多い19社が廃止を決めたというものの、先月末でなお479社が買収防衛策を継続しているという。

買収防衛策といえばやはり切っても切れないのが敵対的買収を行うファンド勢。これに呼応するかのように同策導入のピークは2008年の570社であったと同紙では報じているが、それでも当欄でも取り上げたPGMによるアコーディアへの敵対的買収、そしてもっと最近ではプロスペクトによる豊商事へのそれなど依然ポツポツと事例は続いている。

馴れ合いTOBとも取れる事例も無いとは言えないモノも中にはあるがそれは兎も角として、ピーク時から減った企業群の中には統合や再編で株主構成の変化からそもそも同防衛策の必要性が無くなったものも少なくはなく、冒頭の通り今なお同業他社等からの敵対的買収に対する警戒感がなお根強いのも事実。

何度も触れているように今月からはコーポレートガバナンス・コードが適用開始。それに伴い同策に関しての投資家への詳細説明が必要になることで、統合再編とは別の部分で廃止促進が為されるのか否か、持ち合い含めこれまで特異とされた体質がこれを機に変化してゆくのかどうか今後に注目である。


養蚕革命

さて今週はたまたま見かけたWBSの中で、ちょうどGWを挟んで新宿のグッチで行われていた現代美術科のスプツニ子!による「Tranceflora・エイミの光るシルク」なる特設展が取り上げられており、そこで展示されていたドレスに使われていた光る絹糸にフォーカスがあてられていた。

これを見た時に昨年に同じ糸で作られた十二単の存在を思い出したが、同展で使用された絹糸も農業生物資源研究所が2008年に開発したオワンクラゲやサンゴの遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え蚕の繭から作られたモノで、紫外線を当てると光る特性があるユニークな物。他にもクモの遺伝子を組み込み通常の1.5倍の切りにくさを備えたクモ糸シルクなる物もある。

ところでシルクといえばかつて養蚕業は世界を席巻し、先物市場にも前橋乾繭や横浜生糸が上場していたものだが今や新興国に押されて風前の灯火となり先物市場からもその姿を消している。それがここへきて上記の通り付加価値を持ったシルク開発技術は、再生医療から化粧品までの利用拡大を視野に入れつつ再度日本が先行しており、産業化確立を視野に入れた動きとなっている。

昨年は養蚕業の象徴であった富岡製糸場が、日本の近代化遺産で初の世界遺産登録となった。衰退してしまった養蚕農家も、こうした将来の私達の生活をも変える可能性を秘めている技術応用をもってもう一度世界遺産と共に立て直す大きなキッカケになるかもしれなく今後も期待したいところだ。


利害一致

さて昨日の日経紙には「切り札は株式購入権」と題して、役員報酬を株価と連動させ株主の利害と一致し易くする狙いからストックオプション制度を新たに導入する企業が増えている旨が載っていた。

確かに最近では同制度導入企業の相対的な株価堅調が一寸話題になっていたが、統治改革の対応も後押しとなって同紙によればこのストックオプションも導入企業は今年に入ってから先月迄で93社にのぼるといい、この5か月間で既に14年通年の80社を上回っているという。

当欄で「インセンティブ多様化」と題して同制度を取り上げたのがちょうど一年前の6月であったが、この時もリーマン・ショック前の2008年以来、6年ぶりの高水準と書いていたのを思い出す。ファイナンスなどもまた然りだが、株式相場の回復と共にまた増加傾向となる類でもコーポレートガバナンス・コード等絡めてその内容も変遷しつつあるのだろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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