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時代背景

さて、今週の日経夕刊の「なるほど投資講座」は入門・コーポレートガバナンスと題して連日企業統治について連載が行われているが、この企業統治や利益還元を声高に訴えていたファンドとして先の日曜日の同紙「企業転換 戦後70年」の項では村上ファンドが取り上げられていた。

この村上ファンドに関しては当欄でも最近では2月、3月と取り上げた事があったが、ガバナンス論を武器に日本人による日本企業への敵対的TOBとして初の試みが話題になったものの、初回の昭栄やその後のプロキシーファイトでも日本初となり注目を集めた東京スタイルにおいても志半ばで不発に終わる結果となった。

時代が今ならファンド側も企業側もまた違ったタッチになり、村上ファンド以外でもスティール・パートナーズなど外資勢の展開や企業の政策もまた変わっていたかもしれないのは否めないところだが、時は流れ上記の昭栄は後にヒューリックと経営統合しその社名は消滅、そして東京スタイルも後にサンエーと持株会社方式で経営統合しTISホールディングスと名前を変えている。

2月に「消えゆくトラウマ」と題し、対話型への変遷から以前のようにファンドをアクティビスト扱いする風潮も無くなってきた旨を書いたが、これも国際標準へ向かう過程の経験図という事になろうか。


教育業界再編劇

本日の日経平均は4日続伸、年初来高値更新で2000年4月14日以来15年ぶりの高値水準となった。そんな中で全市場値上がり率トップとなったのは東証2部の学習塾最大手の栄光HD、これはいわずもがな昨日に通信教育Z会運営会社がTOBで全株取得を目指すとの報道からそのTOB価格に鞘寄せしたもの。

もともとココは進学会が大株主だが、その経緯が他のところに株集めされた際のホワイトナイトであったものの、著作権侵害から両者関係が悪化したまま燻っていただけに再編思惑が絶えなかった銘柄の一つでもあった。

そんな一件から本日はこれまた思惑が燻っているジャスダックの市進HDが一時ストップ高の急騰、そして上記の進学会まで一斉高となったが、同業他社の中には本日静かだったものの関係者が水面下で株集めしていた経緯のある銘柄もある。来るセンター試験廃止を睨んでの少子化マーケットで今後もどういった形で再編が進むのか目が離せない展開になってきた。


ドルから金?

先週末の日経紙夕刊一面では、「金 見て飾って使って」と題して延べ棒や宝飾品イメージの強い金が、スターウォーズのキャクターをあしらった小判や、30キロの鉄アレイ工芸品としてさまざまな形で輝いている旨が載っていた。

個人的にこの手の品はどうしても重さで見てしまうので随分強気な値だなという感しかないのだがそれは兎も角、この金といえば米国景気の回復の遅れを示す指標が相次ぎ利上げ時期が遠のくとの見方が強まり、金利が付かない金の買い材料となって週明けのNY先物が3ヶ月ぶりに1トロイオンス1,230ドルを上回った旨も本日の日経紙に出ている。

原油の活況を横目に今一つの盛り上がり難が続いていた金であったが、こんな状況からかどうか連休明けから登場した東京ゴールドスポット100の出来高も上場来最多を記録するようになってきたという。更にETFなど組成品絡めて盛り上がりが継続波及してくるかどうか見守っておきたい。


吸い上げ副作用

週明けの日経平均は、欧米金利の上昇など海外不安が後退し投資家心理が改善したことで大幅続伸となった。とはいえ前場84.20円高のうちKDDIや値嵩のファーストリテイリング2銘柄で値上がり寄与は30.54円、一方の値下がり寄与もファナック1銘柄で27.09円となるなど依然としてこうした高寄与度銘柄の影響が強い。

ところでこの高寄与度銘柄のファナックだが、近年変動率の上昇がよく言われるようになってきた。これが顕著になってきたのは日銀が異次元緩和を導入した時期にほぼリンクしており、背景には日銀によるETF買いで株式が吸い上げられ結果リクディティー低下の弊害がいわれている。

実際この手の株にしては日中の板がスカスカになっている事も珍しく無くなってきたが、これに限らずMSCI絡みで買いあさったモノも数年前とは比べ物にならないくらい板が大きく乖離してしまったのも多くなっている。見た目には吸い上げた物の保有者はETF運用会社とはいえ、実質は日銀であり既に大量保有報告レベルに達している。

この辺は当欄でも昨年10月に、公的機関が大株主に登場するケースでは日本版スチュワードシップコードに絡んで矛盾する部分も出てくると書いた事があった。倫理的な部分以外でもこんなリクイディティー低下を逆利用し鞘を抜こうとする輩が増えてくれば更に一般への弊害も出てきそうな気がするが、この辺は実際の弊害が広がって来るまで議論は強まってこないか。


間接効果

さて、今週の日経紙商品面の多面鏡の項では「連動型投資、売買押上げ」と題して、低迷が続いている商品先物市場においても近年のETFやETN絡みの影響によって、原油の1〜4月の売買高が前年同期比で約4倍に達するなど商品によっては飛躍的な伸びを見せ主役級に成長している旨が書かれていた。 

この辺に関しては既に3月の当欄でも「ETN活況」と題して野村グループの日経・TOCOM原油ダブル・ブルETNを取り上げたことがあったが、同ETNの発行口数は先月末で昨年末比36倍にも膨れ上がっている。実際に私は何度も利用した事があるが、リクイディティーも申し分なくとにかく使い勝手が良くて、保有株式のヘッジ等でも存分にその役割を果たしてくれた。

当初この手のTOCOM連動型は原油に先駆けて5年ほど前に金が登場していたが、こちらの出来高は後発組と比べてもなかなか盛り上がらなかった経緯があるが、それだけにこの原油はまさに大ヒットという感が強く、今後製品など枝葉を伸ばした物が登場し同様な商いに繋がればますます選択肢が増えてくるとの期待がいやでも膨らむ。

取引所としてもこういったETFやETNなどの金融商品は商品先物への間接投資という構図になる為に当然ながらこうした相乗効果が生まれることになるが、いずれにしても売買高が約20年ぶりの低水準に落ち込んでいる市場にとっての証券マネーの取り込みはまさに救世主的な存在と言えるだろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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