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恒常化?

先週末の日経紙商品面には「WTI、ブレントに接近」と題して、原油安が続くなか今月中旬には国際指標の北海ブレントと米国指標のWTIがほぼ同水準となる場面があるなど両者の価格が迫っている旨が書いてあった。

需要や生産面を背景としたファンダメンタルズに加え先物での裁定などもこの辺を後押しして約1年半前の逆転劇も視野に入るとされているが、コモディティーでは最近貴金属の世界でも金と白金の逆転現象が今月中旬以降ニューヨーク先物市場で起きている。

上記の北海ブレントも経済低迷する欧州という背景があるが、プラチナも触媒用途のディーゼル車が主流になるこれまた欧州景気の先行き不透明という素地に加え、やはり中旬のスイス中央銀行による対ユーロで設定していたスイスフランの上限撤廃発表によってユーロ安が一気に進むなど外為市場の不安定さから安全資産とされている金も買われたのが背景になっている。

原油の頁でも末尾にはWTIが長期にわたりブレントを上回るかは不透明だとしているが、これらが今後長期化するか否かが注目されるところ。株式の世界でも同業などの株価逆転が起こった当時は初のパターン等と珍しがられたものも、その後それが恒常化し格差が更に広がるケースも近年多く安易なアノマリーは通用しにくくなってきているのかもしれない。


変わらぬ手口

さて、先々週の日経紙(日曜に考える)では、2006年のライブドア事件が取り上げられており当欄でもこれについて触れたが、先週のそれは1980年年代に世間を騒がせたあの豊田商事事件について取り上げられていた。

当時はちょうど彼方此方横行していた私設市場を懸念し商品取引所法の改正がありこの辺がこの手の業者が蔓延るようになった背景でもあったが、金だけでなく枝葉を広げてベルギーダイヤモンドや鹿島商事などダイヤモンドからゴルフ会員権まで扱う雑食企業、最後は会長が襲撃されその後事件の全貌が次々に明らかになってきたが今でも当時の様子は生々しく思い出される。

同紙の見出しには「悪質商法の源流 詐欺師の養成所」と題してあったが、企業名から始まりテレコール部隊やらそのシステム化された営業手法、異業種への進出意欲など今や消えていった業界大手も考えてみればまさにこれの映しだったような気もするが、そういえばこの豊田商事が商品なら時を同じくして投資ジャーナルという株式版もあったなとも思い出す。

それはともかく何れにせよ一見無数に見える詐欺手法も基本部分は今も昔も変わっていない。近年起きている詐欺的事件もカラクリは至極単純ながらそれでも実際に広い年齢層が釣られ被害者として毎回毎回多数出てくるのも不思議だが、今更ながら最大の防御は金融リテラシーを先ずは各々磨いておく事だろうか。


翡翠もまた

昨日は中国中銀の利下げで過熱した中国の株式市場と、それと共に投機が過熱した信用取引における会員のペナルティーがあった旨を書いたが、こうした中国国内の過剰流動性資金はなにもこうした株式市場のみならず美術品や宝飾品(原料)にも流れ込んでいる。

記憶に新しいところでは昨年の11月に当欄でも取り上げたが、集団泥棒の醜態まで世界に晒す事になった赤サンゴがある。入札価格が数倍になり末端相場は数十倍まで跳ね上がったが、日曜日の日経紙では「ヒスイに中国マネー」と題してミャンマー特産のヒスイの売買が中国から訪れた仲買人によって活況を呈している旨が載っており、こちらは更に値上がりが顕著で10年前に比べて単価が100倍以上になったという。

上記の赤サンゴの場合昨年の輸出は中国向けが71%にも上ったが、ミャンマーではこのヒスイの輸出額が前年度比で3倍となり中国向け輸出は実に90%にもなったという。一部ブローカーバブルが発生している一方で中小業者の軋轢も起こっているというが、モラル無き過剰流動性は想像を超えるものであり早くも次のターゲットを模索している。


上海事情

昨日の日経平均は反発し17,000円大台回復となったものの、昼前後には値を消す場面もあった。これは上海総合指数が前週末比で一時8%を超える急落をした事によるところが大きかったのだが、これは中国の証券監督当局が前週末に信用取引にからむ不正行為で一部証券会社の処分を発表した事がきっかけ。

中国証券監督管理委員会が発表した処分は、本日の日経紙によれば大手証券3社の信用取引返済期限の引き伸ばし、また信用取引条件を無視していた9社としているが、おりしも中国中銀の利下げで上昇ピッチが加速するにつれて投機も過熱し会員側もここが掻き入れ時とばかりにマル信利用を煽っていた模様だ。

しかし上記を見るに返済期限の引き伸ばし行為というが所謂一般信用というのはまだ存在しないのであろうか?また同紙では信用取引条件の資産保有が50万元としているが、これもハードルが可也高い感もある。何れもまるで20年以上前の本邦を見ているような気にもなるが、同等になるまでにはまだまだ相応の時間がかかるということか。


スイス・ショック

さて、先週末に起こった寝耳に水の出来事と言えばやはりスイス中央銀行が打ち出した無制限の為替介入政策の終了決定だろうか。突如の決定に当のスイスフランは対ユーロで約3割近くも急騰したが、想定外の決定からの急変動が他へも余波を広げた。

スイスフランの急騰に伴い先ず株価指数のSIMは前日比で約8.7%とここ25年で最も大きな下落となり、個別では腕時計世界最大手のスウォッチグループが前日比16%の急落、他リシュモン等も同様に急落となり、本邦株式市場も対ユーロの円相場が昨年ハロウィーンに日銀が追加金融緩和策を決定する前の水準まで上昇した事で、週末は欧州関連株が軒並み売られ、コモディティでは金がリスク資産代替で4ヶ月ぶりの高値まで買われた。

マーケットはそんな感じだが決定直後に直ぐに話題に上がったのはやはりFX関係、もともとスイスフランのような低金利通貨はキャリーでショートの対象になり易い素地を持っていたところへ、中央銀行のお墨付き?介入政策が為されていた事で個人投資家にとっては上限は限られるという安心感につながっていたからこれで一瞬のうちにパンクしたショート勢が続出となった。

これですぐさま思い出したのが、あの東日本大震災の時にクズ同然のプレミアムが大化けしたオプション事件だろうか。セルボラでほったらかしにしていた向きが一晩で一斉にパンクし、また業者もその顧客勘定損失をカバーし切れず破綻懸念が彼方此方で起こったが、今回も業者の中には破綻したところや金融支援を仰ぐところが出てきている。

それでも業者の中には昨年秋頃にカウンターパーティーよりスイス中銀が介入中断または放棄の可能性があるという事からの必要証拠金引き上げ要請を告知していたところもあった模様だが、改めて国家による為替介入には限界がある事を実感させられた事例だ。昨今は業者も投資家も以前にも増して想定外に備えたリスク管理の必要性を切に感じる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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