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買収たけなわ 

当欄では先月だけでベネッセホールディングスや大正製薬など3件のMBOを取り上げたが、今月に入ってもこの流れが止まらない。先週末はプライム市場に上場している人材派遣のアウトソーシングの創業者が投資ファンドのベインキャピタルと共にTOBを実施した後に株式非公開化の方針との旨が報じられている。

さてTOBといえばもう一つ、直近では人材派遣業界3位のパソナグループの子会社ベネフィット・ワンに対し第一生命ホールディングスがTOBを実施する旨もまた報じられている。とはいえ同社に対しては既に医療情報サイト大手のエムスリー社がTOBを実施中でパソナも賛同を表明しており、買収対象の同意を前提とするとしている第一生命に対してのパソナ側の対応が注目される。

ところで10月に当欄では京成電鉄が保有するオリエンタルランド株の方が親会社である京成電鉄よりも時価総額が上回っている親子逆転現象について書いた事があったが、このベネフィット・ワンもまた親会社のパソナより一時期は5倍以上の時価総額を誇っていた“超親子逆転”株で有名であった。近年ではこの差も随分と縮まったが、それでも先週7日時点で子会社の方が約2.5倍と10年以上続く親子逆転は解消されないままであった。

それは兎も角も、つい最近では日本生命が介護大手のニチイホールディングスの買収を明らかにしているほか、住友生命も医療データ解析のPREVENTを8日までに買収と大手生保の異業種買収がこのところ目立つ。国内の少子高齢化・人口減少で市場が縮むなか、収益多様化を図る動きの活発化でこうした買収により活路を見出す動きが今後も増加してくるか。


決着でココロも満タンに?

さて、株主総会シーズンから当欄では度々取り上げてきたコスモエネルギーHDだが、岩谷産業が投資会社シティインデックスイレブンズなど旧村上ファンド側から保有する同社株のほぼ全てを取得したことが先週に報じられた。これまで更なる買い増し意向を示していた旧村上ファンドだが、今回の件に伴いこれが取り下げられる事となった。

同ファンド関係はコスモ株を1000万株超まで集めた昨年の段階で投入コストが300億円超といわれ、直近ではそこから更に8割弱まで買い進めていることを考慮すれば約600億円弱の投入で雑な胸算用だが今回の売却では約500億円前後の利益というところか。いずれにせよ百戦錬磨のファンドだけに買い増しの構えを見せつつもイグジットの期を虎視眈々と狙っていたというところだろう。

これで昨年の春から続いた両社の戦い?は1年半での幕引きとなった。MOM(マジョリティー・オブ・マイノリティー)まで持ち出し対立してきた両社だが、はれて水素分野で協業する岩谷産業が安定株主となり脱炭素時代に打って出られる体制が一歩進んだ。これも一つの再編劇といえるかというところだが、今後も再編絡みでこうしたケースが出てくるのは想像に難くないか。


テロと金融市場

本日の日経紙グローバル市場面には「ハマス攻撃前空売り急増」と題して、10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃する数日前に、主要イスラエル株で構成するMSCIイスラエルETFやテルアビブ証取に上場しているイスラエル大手行のレウミ銀行などの個別株に空売りが膨らんでいたとの疑惑が持ち上がっている旨の記事があった。

これで真っ先に思い出されるのがあの世界を震撼させた9.11米同時多発テロ事件の際の金融市場か。真相は闇の中だがイスラム原理主義を掲げるテロ組織アルカイダの関係者およびグループが、テロと前後して大手航空会社や大手保険会社の空売りやプットオプションで巨額の利益を上げたとする話だ。

同じ利益でもサブプライムローンの破綻を予測して巨額の利益を得たジョン・ポールソン氏や、ERMの限界を見越したポンド売りで巨額の利益を手にしたジョージ・ソロス氏等は多くの投資家に神扱いされるが、金融市場は入って来るマネーの色や人物は見分けようもないものの同じ巨額の利益でも相場の読みとは無縁な上記とは天と地である。


先物も1万円大台超

このところ堅調相場が続くゴールドだが、先週末のNYでは金先物が20年8月に付けたこれまでの最高値2069.40ドルを抜き、約3年4か月ぶりに過去最高値を更新した。この流れを受けJPX(日本取引所グループ)の大阪取引所でも週明けに先物の中心限月がザラバで10028円を付け1982年の上場以来、初の1万円大台を超えて最高値を更新してきた。

1日のFRB議長の講演では早期利下げ観測の牽制と取れる発言が聞かれたが、これより先の先月末のFRB理事の講演で積極的なタカ派とみられていた同氏が利下げに言及していたこともあって市場は現在の金融引き締めは緩和に向かうとの思惑が広がっている。これで米長期金利も4.1%台と約3か月ぶりの水準まで低下、ショートカバーも巻き込み金に矛先が向かった格好だ。

現物や先物が最高値更新ならETFもまた然り、国内現物保管型の三菱UFJ信託の純金上場投信、ワールドゴールドのSPDRゴールドシェア、野村のNEXT金価格連動型上場投信、WisdomTree金上場投信等々、多いもので商いを前日比9倍近くも増加させていずれも軒並み年初来高値を更新してきている。

目先はちょうど1週間後に始まるFOMCに注目というところだが、折しもイスラエルとハマスは交渉決裂で交戦が再開しこれにウクライナ侵攻と依然燻る地政学リスク、分断の深まりで基軸通貨ドルの信認低下には歯止めがかからずドル指数も3か月ぶり安値を示現、米ドル保有のリスクを意識した中銀の金買いなど今の金は複合要因が背景にある点がこれまでと構図を異にする事を認識しておきたい。


師走の値上げ

早いもので師走入り。今年もまた値上げに明け暮れた一年となったが、帝国データバンクによれば今月の飲食料品値上げは677品目。調味料が全食品分野で最も多く、次いで乳価改定の影響を受けた乳製品が続く。単月値上げ品目数としては今年の7月以来、5か月ぶりに前年同月を上回るものの年内では2番目に少ない水準となっている。

結局今年の値上げ品目数は累計で3万2395品目、1回あたりの値上げ率の平均は15%にのぼり昨年の水準を上回る記録的な値上げラッシュの1年となった。この度重なる値上げによる価格転嫁で大手食品メーカー各社の4~9月期の増益効果は主要9社で約1060億円にも達し、原材料高等のコスト増影響を差し引いても420億円のプラスになっている。

来年の値上げ予定品目は直近で判明しているところで原材料や冷凍食品など中心に累計1596品目と前年同期比9割減となり、通年の値上げ品目は最大で1万品目前後の水準とこちらも約7割減とラッシュは収束化の見込みだが、円安の長期化や賃上げによる人件費上昇等々の影響がタイムラグを経て発生する可能性も高くこの辺は引き続き注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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