474ページ目

LIBORはケタ違い

金融スキャンダルといえば国内では目下のところファイナンスに絡んだインサイダー問題でお茶を濁しているが、直近で世界を舞台にした問題になっているのが周知の通り国際的な短期金利市場であるLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正操作問題で、既に自行に有利になるよう金利を導いたとして英銀バークレイズが罰金支払いと経営陣辞任に追い込まれている。

しかしこれだけ幅広い指標だけにこのLIBORを使った金融取引の額が5京円を越えるというから凄い。京という数字は余程のネタでない限りなかなかお目にかかれないような単位だが、そんな規模の取引が一連の不正で歪められていたとしたらやはり問題であろう。が、これもまた以前より不正懸念が報じられていたにも関わらず漸く今になってというのもまた問題か。

これにはFSAの金融機関に対する従前の緩い姿勢が踏襲出来なくなってきたという噂も関係者の間には出ており率先して手を挙げたバークレイズなんぞがこのせいで逆に災いしたという意見も一部にはあるが、国内のAIJの年金詐欺然りファイナンスのインサイダー疑惑然りで、誰が見てもおかしいと感じる報道から当局が腰を上げるポイントは何処にあるのだろう?

ここへきて週末にはドイツの金融監督当局もこの不正問題を巡り、同国銀行最大手のドイツ銀に対する調査を開始したと報じているが、インサイダー問題のように芋づる式に出てくるのかどうか聞き取り対象行は邦銀も入っているだけに今後もその成り行きに注目したいところ。


脆いチャイニーズウォール

さて今週も国内の証券会社、こと大手においては社内調査が酣である。周知の通り野村は増資インサイダー問題、大和も同様に蜜月のジャパン・アドバイザリー社が証券取引等監視委員会から金融庁に課徴金を課すように勧告された問題、そして日興ではメガバンクの公募増資に絡んでの問題の他に直近ではまた新たにTOB情報の流出問題も発覚してしまっている。

増資銘柄のカラ売りにTOB銘柄の買いと、まさに「インサイダー天国日本」の名に恥じぬ?売り買い縦横無尽のヤリタイ放題であるが、目標達成には手段を選ばずというのは証券でなくとも金融系営業の根幹を成す精神。昔懐かしい仕切り、二階建、露骨な餡子玉等は表面上姿を消しても、一部顧客へのこの手の餡子的営業は脈々と受け継がれていたということだろう。

ところでこの餡子玉といえば直近の日興のTOB情報漏洩のケースなんぞは、オイシイ情報を目の前にして自分では張らず、以前に迷惑をかけたとされる顧客への確実に取れる情報提供であったワケでインサイダー取引というより実質は損失補填の色彩が強いと感じる。この辺は裁く側がどう結論付けるかで変わってくるが、今後もどうせ魔女狩り的に出てくるだろうから夫々の判断がまた興味深い。

しかし、今回の件で個別では機関投資家営業部廃止やら果ては録音機能付きの携帯電話を貸与云々といろいろ発表しているが、こんなのは大義名分でこれまでにもコンプライアンス論を語った文書の読み回し等の定期行事を各社で行っているのと変わらないのである。結論から言えば証拠残しの地道な作業とも言え、この手の不祥事は結として個人の問題で処理されるのが常、そういったことから真の意味での浄化作用を望むほうが現状では難しいのである。


モラルハザードと境界線

本日報道されていたもので目に留まったものにあの低価格レストランのサイゼリアが、2007年と08年に結んだデリバティブ取引の契約で損失が出たことで、BNPパリバ証券など同証券グループ3社を相手取り計168億円の損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こした件があった。

今も記憶に新しいが当時同社は業績絶好調を誇っていただけにこの報道で急落したところはとても美味しい買い場になったのを思い出すが、こんな大手でなくとも食品会社では直近ではエビフライで有名だった神戸のエスケー食品が同様の為替デリバティブ取引によって先月に破綻するなど依然としてデリバティブ被害?が継続している。

さてこのBNPパリバといえば業界では別の意味で有名、悪名高きEB債に絡んで三菱電機の株価操作をやってのけたり、近年記憶に新しいのはこのサイゼリアとほぼ同時期にやったあのアーバンコーポレーションの詐欺的なCB発行契約だろうか?なかば隠蔽工作でディスクロされていないこの取引を信じ、当時は証券マンのなかでも手張りでアーバンコーポを買った向きも居たようだったが後出しジャンケンのパリバの仕業であえなく紙屑と化した。

しかしこの手のデリバティブ契約、便利そうに見えてもちょっとよく見てみれば素人でも相当リスキーな取引であるのは解る筈。相手がパリバだけに同情票も多いだろうが、外部に意見を求める手もあっただろうしモラルハザードの観点からこれをもって100%パリバに責を求めるのも筋違いだろうともまた思う。


規制と文化

さて、本日はひょんなことから大手スーパーに行ったのだが、売れ線のコーナーにはレバ刺し風と銘打ったコンニャクの加工品が所狭しと並べられていた。ご存知の通りお上のお達しによって今月からユッケに続いてレバ刺しの提供が禁止されることになり、先月末は駆け込み需要で店も消費者もそこそこの盛り上がりを見せていた。

ところでこのレバ刺しほど大衆路線ではないが、米でもカリフォルニア州では「フォアグラ」の販売と製造を禁止する州法が今月から施行されている。動物愛護団体が喜びそうなネタだが、こんなフォアグラ路線と同類のモノとしては「フカヒレ」もペニンシュラあたりでは今年から既に提供を停止している。

とはいえこの手はインサイダーと一緒で無くなることはなく、一般的には加熱設備ひとつあれば焼きモノとしてユッケでもレバーでも何でも出せるし、こと一般以外でもカネを落とす一部の上客にはフォアグラだろうがフカヒレだろうがその手の名店なら要望を満たしてあげるのが暗黙の了解だろうか。

その辺は兎も角もこの手の基準とは何だろう?食も文化だけにこの辺はいろいろと深い問題のような気がする。


各々の行方

先月は度々LME(ロンドン金属取引所)について触れたが、その常識を超える破格の買収額と共に取引形態を巡ってもいろいろと憶測が先行している模様だ。まあこの辺は、常連中心に馴染みばかりが集っていた店をオーナーチェンジで広く一般に開放といったところだろうが、当の香港取引所は2015年1月まではLMEの既存の取引形態を維持するとしているもののまだまだ思惑が出てきそうだ。

さて、LMEと比較するに何ともローカルな話題だが取引形態といえば先週末の日経紙で「コメ先物市場の灯を消すな」と題した社説が業界モノとしてやはり目に留まった。鳴り物入りで登場したコメも関西に移り板寄せの道を歩んでゆくことになるワケだが、この先行きを憂慮する関係者は少なくない。

しかしコメだけを関西商取に映すその特異な移管形態もあって主管取引所での取引にこだわる農水省の市場監督権限へのしがみ付きと対で、一向に市場活性化策を講じないその姿に苦言を呈していたがこれはもうコメ登場以前から誰もが思っていたことで改めてこう真面目?に指摘されているのを見ると苦笑を禁じえない。

総合取引所関連法案でコメ先物は例外となり総合取引所が誕生してもこのコメ先物は加わらないことになったが、果たして来年の今頃はこの総合取引所、またこのコメの本上場の適否を巡ってどんな論議が紙面を賑わせているのだろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

1

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31