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対日M&A

さて、今週に内閣府が発表した2010年の日本のGDP実額は、年間を通じて初めて中国の名目GDPを下回った。1968年以来、日本は米国に次ぐ世界第2位の経済規模を保ってきたが、とうとうその座を中国に明け渡した格好になった。

このGDPは既に大方予想されていた事だが済成長はやはり著しい。GDP逆転だけでなく斯様な背景で拡張するチャイナマネーも近年日本株投資の他、企業買収等へ振り向けられている。年末には中国系と見られる2つの投資ファンドが、日本の所謂「01銘柄」等を始めとした一部上場85社で10位以内の大株主となっていた事が判明している。

また中国企業による日本企業のM&Aも増加、平成22年の件数は年末の段階で前年度比約42%増の37件、ここ4年で2.2倍になった旨が報じられている。これに関連した件では2/12付け日経紙夕刊一面で、中国の大手会計事務所「信永中和」が日本に会計監査の拠点を設置する旨が報じられていたが、こうした中国系の監査法人が国内に設置されるのは初めてという。

日本企業の対中投資等のサポートもあるだろうが、この辺の動きは当然上記のような対日M&Aを睨んでのものだろう。積極化するチャイナマネーの旺盛な海外投資意欲を受けて、この手のグローバルな会計ネットワークが今後広がる可能性があると同紙では指摘しているが、ファンドの動向等併せてますます目が離せない。


ショコラの波

さて、昨日はご存知「バレンタインデー」であったが、今年は平日にあたり職場等においては義理?が発生するぶん例年アテの少ない殿方も束の間のイベント気分に浸れたと思うが、この平日になるのは3年ぶりのこと。

こうしたイベントものと絡めて必ず登場する行動ファイナンス理論だが、ちなみにこのバレンタインデーではここ20年間バレンタインデー当日の日経平均株価は71%の高い確立で上昇し、直近10年間では全て値上りしているという。なるほど昨日も日経平均は上昇し昨年4月30日以来、約9ヶ月半ぶりとなる高値水準で取引を終了している。これでまた一つ実績?が追加されたことになるか。

それはともかくチョコ系といえばここ近年は欧州著名店の日本進出が著しく感じられる。昨年はデフレがいわれる中を所謂売れ線だったのは高級チョコばかりであったが、今年はこれに更に拍車が掛かっておりマーケティングも応分のものになってきている。「サロン・デュ・ショコラ」などもそうだが、この辺はバレンタイン云々ではなく文化の相互理解の観点からも益々発展しそうな感もある。

ところでこれら原料のカカオといえば昨年はヘッジファンドのスクイズ観測等から暴騰するわ、今年は有力生産国の禁輸措置で先物が約30年ぶりの高値水準に達するなどで話題には事欠かないが、今後も先物、製品いずれの世界でもまだまだ熱いシーンが見られそうな気配だ。


メガ取引所

さて、先週末にかけて飛び込んできたビッグニュースといえばNYSE(ニューヨーク証券取引所)を擁するNYSEユーロネクストと、欧州大手のドイツ取引所が合併に向けて協議に入ったとの報道だろうか。また、ロンドン証券取引所とカナダのトロント取引所を擁するTMXグループも合併で合意と発表している。

この両者(NYSEユーロネクストとドイツ取引所)の縁談話といえばかつて2008年に一度破談になった経緯があるが、時を経てその環境も新興国市場の台頭に危機感を共有し、使い勝手のよい市場作りやコスト削減効果で地盤沈下を避けようと焦眉の急を告げるものに変わったということなのだろう。

その辺をベースに何れのパターンも特化が鮮明となっている。NYSEユーロネクストとドイツ取引所のケースではデリバティブ取引ではCME(米シカゴ・マーカンタイル取引所)グループと双璧の世界最大級のグループになる。また、ロンドン証券取引所とカナダのトロント取引所のケースでは、もともと世界の代表的な鉱山が多数上場していることから鉱山セクターにおいては圧倒的な強みを持つ取引所となる事か。

さて、斯様にプライドを捨てて国を超えた合併提携が進んでいるが、国内はどうだろうか?東証など数年前にはこのNYSEとの業務提携の話があった記憶があるが、今回の件で東証の社長は国内外取引所との提携については「東証は常にオープン」としながらも「今すぐというのはなかなか難しい」と述べている。この東証社長が言うように文化や価値観、国家体制が違うこともあるのだろうが、この狭い庭で今まで幾つか淘汰があったにせよ取引所が5つも存在しているのはやはり外から見れば奇異に映る。


49人モノ

昨日の日経紙夕刊一面には世界のヘッジファンドの運用資産が急回復し、2010年12月末の資産残高は1兆9,173億ドルと1年前より約2割増え、リーマン・ショック以前の08年6月末に記録した過去最高の1兆9,314億ドルにほぼ肩を並べるまでになった模様。金融緩和によるカネ余りもファンドを勢いづかせ、世界の株式や商品市場にマネーが流れ込む構図という。

さて、ファンドといえばこのように規模が巨大な物から殆ど仲間内?で組成しているような小粒の私募ファンドまであるが、このほど証券取引等監視委員会は合法的な仕組みを装って規制を逃れているファンド業者の摘発を強化する模様だ。金融商品取引法施行以前から私募モノなど一部富裕層に出回っており、旧店頭モノのCB等を彼方此方結託して自在に操り数百パーセントの運用益を叩き出した実にオイシイ出来レース的な物もあったが、その一方ではこれを隠れ蓑にしての錬金も一部横行する例が後を絶たない。

今月も某証券がインチキファンドを組成していたのが発覚して処分勧告されていたが、そういえば今は無き某商品取引員もこうしたファンドに手を染めていたところがあったなと思い出す。もう一つ今週は法令順守意識が著しく欠如している投資助言業者についてもまた、登録を拒否できるよう証取監視委が金融商品取引法改正を金融庁に建議していたが、こうした助言業者も仕手株全盛期の環境からすると今は一変しその営業手法もネットが発達した今は可也変遷している。

何れも顧客(投資家)がカモにされる事例でここ挙げられているが、中身を覘いてみればこの手は実に単純だ。昨日記の新興国モノ投信などマトモな物もその仕組みの半分も理解していないのが個人の実情だが、まして怪しいファンドスキームや弱小投資顧問の運営方針等は一個人にはなかなか知る由も無く、イタチゴッコのなか当局がどの程度そのカラクリを見抜くかに本腰を入れるのに掛かっているといえようか。


投信リスク選好

本日の日経紙経済面には「アフリカ投信 解約停止」として、アフリカの株式や債券で主に運用する国内投資信託で、エジプトの政治混乱の影響からの同国証券取引所休場に伴いこの関連に投資する一部の投資信託の解約受付を停止した旨が書かれていた。

エジプトなどはポストBRICsとして有望視されていた経緯もあり、ここ新規設定が相次いでいたがS&Pが同国国債の長期信用格付けを投機的水準にまで下げ、13日からの取引再開に戦々恐々とする中を各社保有分の売却や比率の大幅引下げの措置に奔走している。

ところで数年前まで人気を誇ったグロソブなどは、その残高ピークが6兆円近くまで膨れ上がっていた08年からほぼ半減しているという。これらから流れ出たものが次々と高い分配金を狙える新興・資源国の投信に移ったわけだが、うちこうしたアフリカ関連投信の合計残高は670億円にのぼり、趨勢は安定より収益狙いという感じか。

投信のカントリーリスク顕在化に関しては、昨年の11月に純資産残高が急増したブラジル関連投信の例で、「新興国モノでは投資家への情報伝達など一部乏しいだけに一般は常にこの辺に注意をはらう必要があろう」と書いた事があったが、依然リスク意識が低くなっている表れともいえるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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