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MBOという選択

さて、今週は月曜日にMBOの実施を発表した幻冬舎の株式を巡る思惑について触れたが、このMBOといえば昨日は業界からあの日本ユニコムを擁するユニコムグループホールディングスが、MBOの一環としてJFKを公開買い付け者としたTOBを実施すると発表している。

この件を失念し今朝の日経紙に大証金が同社株の貸借取引で申し込み停止措置と出ていたのをとうとう株券調達困難になったかと一瞬勘違いしそうになったが、それはともかく突如のこの報に朝方から買い物が殺到し辛うじて比例配分でストップ高引け、800万株以上の買い物を残している。買い付け期間は来年2/3迄でTOB価格に鞘寄せが続くだろうが、概ね08年の価格水準でディスクロされているPBRからはやはり安めな感も。

さて先に取り上げた幻冬舎といえば、今回のMBOの理由が所謂ディスカウントキャッシュフローの懸念か。今年の6月末でもディスクロでは30万円以上の純資産を有するが、TOB価格への鞘寄せやらファンド介入やらでここ急騰したといっても本日現在でまだ10万円前後も下鞘の状況、一方、前々から当欄で取引員各社は万年低PBRだと指摘してきたが、こちらの業界は更に三分の一くらいのディスカウント状態に放置されている。

過剰流動性がコモディティー市場に流れ込みかつて無いほど活況な海外市場とは裏腹に、国内は不振を極めている様にリンクするかのように各社株価も上記の通り不振を極めている。経営と資本の一体化を考察するに、今の現況でエクイティ・ファイナンスによる資金調達の有用性、また上場維持コスト等勘案するにこうした選択も自然な流れとも思える。

思えば一頃の取引員各社といえば上場による信用獲得が一つの悲願であったものだが、はれて上場当時によもや自ら退場する流れも出ると誰が予測しただろうか。出版業界なども撤退組が相次ぎ苦境だがその中でも上記幻冬舎など勝ち組の部類でもこうした選択、今後も各社の出方がまた注目される。


未公開株の公開

本日のビッグイベントといえばやはりあの大塚製薬の上場であっただろうか? 4月に上場した第一生命保険に次ぐ時価総額や市場からの吸収金額共に、先のポーラに続く知名度抜群企業の大型上場であるが、その注目の初値は公開価格2,100円に対して70円上回る2,170円で寄った。

700万株近くの買いもので気配切り上げのスタートとなっていたが、セカンダリーの催促なのか大口売りが出て10分程度で寄りあとザラバ2,200円超と堅調、グレーマーケットでもそんなに派手な話題は無く初値が市場予想よりも下鞘であったのも予想範疇だが、同社関連の地銀など価格リンク思惑で物色の色が感じられたり、グループ製薬会社の行動にも思惑が募る。

また、先の第一生命保険も下落時にはバイアスの掛かったリポートに恨み節も出たものだが、今回は各社どう出てくるか。ともあれこれを基準として年末相場を盛り上げることが出来るかどうかが今後注目される。

ところで同社といえば、ザッと挙げても家庭薬の「オロナイン軟膏」、食品では「オロナミンC」、「ポカリスエット」、「カロリーメイト」、「ボンカレー」等々というまでもなく上記の通り知名度は抜群、それが逆に利用されて一頃は傘下の未公開株式がいろいろなマーケット?で悪用されその仕入れ価格?も他社の群を抜いていたものだ。本日初めて公正な価格を見た今、その思いもまた人夫々だろうか。


呼び水効果とモラル

東証REIT指数は週明けも大幅続伸、1,000の大台を突破したはつい先日であったが早くも本日は1,100超えとまたも台替わりの動きとなっている。例年アノマリーでも年末はREITの物色がよくいわれるところだが、今年は更に周知の通り日銀が10月に決めた追加金融緩和を受けて、社債等と並んで資金流入が加速している。

何でも先駆けというのはあるが、つい先週当欄でJASDAQ-TOP20ETFを取り上げた通りでやはりこれもこのパターン。ただこちらの場合は相手が日銀で今月からいよいよ始動とのこともあって、当のREITばかりでなくそれら関連の銘柄も明らかにこれを意識してこのところ急騰しているものが多い。

最近では当の受託信託にまで物色の波が押し寄せてきている模様で、日銀側としてはこの活況を鑑み所謂「呼び水効果」が出始めたなどとしているが、実際例えば選定に始まり手数料等従前通りなのだろうか?次はETFという流れになろうが、双方共に公正さというか透明性を持たせなければ後々にまたモラルハザード等の問題も出て来るのは想像に難くない。


企業政策とファンド思惑

本日の日経平均は後場からジリ高へ転じたが、新興市場の方は来週にJASDAQ-TOP20指数ファンドの設定が控えていることもあり、朝方から中小型株への物色が活発であった。さてJASDAQといえば、先週は先にMBOの実施を発表した幻冬舎の株式を英領ケイマン諸島に本籍を置く投資ファンド、イザベル・リミテッドが議決権ベースで30.6%取得していた旨が話題になっていた。

同社は現況TOBを実施中であるが、その価格は一株22万円、直近の軌跡では先月末から手当てしていた模様。週末から株価は一服しているものの、曲がりなりにも買い付け価格を挟んで横這いであった水準を上回ってきているだけに予想外の第三者介入には一部で思惑も出ている。

当然その性格からは抜け目ないEXIT狙いというところだろうが、ファンドといえば2部に上場している都築電気にも約四分の一を待つ大株主としてあの高額納税で一躍話題になったタワー投資顧問が直近で登場している。こちらは元々子会社株のTOBに応じず後の株式交換に乗じ、首尾よく安上がりなコストで株式を取得出来たという計算である。

他にも、あの村上ファンドの辣腕組がシンガポールに拠点を置くファンドも一部親子上場組の株式を粛々と買い集めている動きあり、上記ファンド含めこれら昨今の上場企業の傾向を睨んでの動きとも取れるが、何れのパターンも会社の思惑通りに事が運ぶとは限らない例となっており今後も番狂わせ?なケースがまだ出てくる可能性もあるか。


狭まる効率営業

さて、今週は6日付けの日経紙にて「円高の年の冬ボーナス・外貨投資 狙い目は」と出ていたが、円高といえば先週あたりから入ってきたニュースには「通貨デリバティブ」を購入した中小企業が多額損失で経営難に陥っている事例から、金融庁が同商品の販売方法や取引先の損失状況などについて実態調査に乗り出すという報もあった。

そういえば先週3日付けの日経紙夕刊一面にも、06年から07年に発行した円高で支払い金利がハネ上がる仕組み債でここ近年各地方自治体が損失拡大しているという記事も目にした。しかしこの手の話は続々と出て来るが、今に始まったことではなく二年前だったか駒澤大学や立正大学のデリバティブ損失も大きな話題になっていた記憶がある。

さてこうした被害者?というか顧客側をザッと眺めてみるとなんとなくだが共通項は毎期決まった入り勘があって且つ特段設備投資の用もないというところが多い。辣腕の営業なら先ず効率を考えこの辺を集中的に落しに入ったのだろうが、幸運?にも手垢の付いていない向きなどは売る方が心配になるくらい決裁が単純なものという。果たして今更の大騒ぎになっている訳だが、この期に及んでどういった商品内容なのかを精査するところは少なくない。

ある程度の敗戦処理が片付いた段階で、顧客側もこの手の物への再考論など出てきそうだが、7日付け日経紙にも金融庁が金融機関に対して、投資信託を勧誘・販売する際の利用者への説明を丁寧に行うよう求める旨が出ている。証券界では所謂「仕切り」と共に長い歴史を歩んできたこの回転売買も然り、この時代になって漸く売りの手法も転機が近づいてきたという感じがする。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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