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買収ファンドも順次撤退

さて、先週末の日経紙財務面の「法務が支える企業戦略」文中では、米スティール・パートナーズなどの「物言う株主」の名も出ていたが、このスティール・パートナーズといえば今月は保有するサッポロホールディングスの株式を一部売却していたことが判明している。

中旬までの立会い外クロスにおいて600万口が三発、計1,800万株入ったことが話題になりその株数から同ファンドの名が囁かれていたが、果たして金融庁へ提出の大量保有報告書において17.55%の保有比率から12.98%へと、この売却株数分に見合う約4.6%を売却していたことを明らかにしている。

当欄でも同ファンドについては4年くらい前から度々触れてきたが、中でもソトーやユシロ化学をターゲットにし、その内部留保をあぶり出した一件は記憶に新しい。ただ、ブルドックソースとの戦い?で「濫用的買収者」として認定されてしまった事件や、リーマン・ショックもありそれ以降はターゲット企業の外しが目立つようになっていた。

ところで近年は日本で活躍する外資系の企業買収ファンドの撤退が目立つ。先に米系のサン・キャピタル・パートナーズの撤退、香港本部のユニタス・キャピタルも日本拠点を閉鎖、証券ではメリルリンチ日本証券も日本の買収投資事業から撤退。もともと上記の判決後日本への投資はリスキーというコンセンサスがあったところへこの市況低迷、リスクマネーは時に必要悪とも言われるが、こうしたものが更に細ってゆくのは閉鎖性の加速など懸念されるところ。


交渉における温度差

さて【FUTURES PRESS】でも既報の通り、今週は東京穀物商品取引所が東京工業品取引所に経営統合を申し入れた事が明らかになった。このシナリオ自体はもう既に関係者の間ではコンセンサスとなっていたが、今週19日の定例記者会見でも両取引所社長がこの件に言及し経営統合の交渉を進めていることを認めている。

既に消え、または消えゆく商品取引所がしてきたように、東穀もまたJCCH株式を全て手放し矢継ぎ早にその次は自社ビルの本館まで売りに出すなどの動きが著しかったが、近年は業界団体からの突き上げも厳しくこれと並行して屈辱の統合申し入れに至ったという感じか。

ココは崩落の過程でも以前から一貫して自主独立路線を謳っていた経緯があり、この辺の悔しさは記者会見における社長コメントにも見て取れる。この期に及んでも引き継ぐ対象商品については「売買高にかかわらずすべての商品を前提に考えている」とし、また従業員の受け入れに関してもできるだけ多く引き継ぐよう求めるなどとあたかも立場が対等かのように錯覚している。

しかし、農水系のこうした一連の言動しかり、また業界で見れば仮にこの救済?統合となった場合にはTOCOMと関西商品との二拠点となるが、売買シェアが全国4商品取引所で1%にも満たない長年最低であった関西証取が最後に残るあたり、まさに各所の体質を色濃く表している感は否定出来ない。


デフレ下のインフレ資産人気

さて小麦急騰劇がまだ記憶に新しい中、本日の日経紙商品面ではトウモロコシの国際価格が6月末に比べ7割高と高騰している旨が載っていたが、コモディティー系の話題ではここ直近で綿花も140年の歴史で市場最高値を付けた旨もよく見かける。

また何十年ぶりという話題では通貨でも、15日のニューヨーク外国為替市場で豪ドルが物色され、同通貨が1983年12月に変動相場制に移行後では初めて、1豪ドル=1.0005米ドル前後と等価水準に達した。

斯様に国際商品、資源国通貨から新興国等の様々な投資対象が順次煽られているが、この辺は周知の通り何れも新興国からの旺盛な需要に加えて、FRBの金融緩和観測で余った流動性資金がコモディティー群に流れ込んでいるのが原因。

しかし上記の綿花の高騰では、ただでさえ需要が低迷しているアパレル業界などまた厄介な問題の出現だ。こんなデフレが進行する中を過剰流動性だけはインフレ資産の争奪戦となっているが、昨日は中国が2007年12月以来、2年10ヶ月ぶりに0.25%の利上げを発表している。これを受け既にNY金が2週間ぶりの安値に急落、NY原油も80ドル割れと4%以上急落しているが、一旦はリスクマネーの収縮から一服となるのかどうか各銘柄に注目である。


変わらぬ影響力

さて昨日から本日にかけては資源大手の豪英BHPビリトンと、英豪リオ・ティントが鉄鉱石事業の統合計画を撤回した旨の報が各紙で伝えられた。

この両社、当欄では二年ほど前に触れた事があったが、当時はリオ・ティント側が最大手のBHPビリトンからの買収提案を拒否した経緯があったのが記憶に新しい。それでも翌年には厳しいファイナンス事情もあって鉄鉱石事業の統合で合弁事業を設立することで合意していたものの、結局今回の結論となった。

業界ではこの両社ほかブラジルの大手ヴァーレや他の新興勢では中国の宝鋼集団などもあるが、ほぼこれらで世界の鉄鉱石供給の7割以上を占める支配力を持っている。今回は当然ながら鉄鋼業界の猛反発もあって、各国・地域の競争当局から統合への承認が得られない見通しになったが安堵も束の間、このシェアでは価格への圧力など脅威は依然健在だろう。

業界によっては独禁法などただのお飾りになってしまっている部分も見え隠れするが、取引所創設など奏功するかこの辺は政治色も濃いのでなんとも言えないが、こうした寡占化というのも昨今の流れの特徴でもある。


消えゆくコード

昨日の日経紙一面には、上場企業の時価総額でみた世界の株式市場ランキングで、東京証券取引所が9月末に4位に後退、1998年から守ってきたベスト3の座を12年ぶりに明け渡した旨が載っていた。

ここ直近では欧米市場や新興国勢の増大とは逆に、日本の出遅れというか弱さだけが特に顕著になって来たようにも思うがこれらを反映している模様。もう一つはやはり単純に上場会社数そのものがここ近年減少の一途を辿っているという点か、ちなみに今年の9月末時点で国内の上場企業数は3,649社、これは04年3月末以来6年半ぶりの水準である。

私も時々何かの切っ掛けでそういえばあの企業どうしているのだろう?とキーを叩く(何故かコード番号だけは時を経ても指が覚えていてスラスラ打てる)と、久しく見ていない銘柄の中には表示されないものが多数。殆どが久しく関りが無く忘却していたものだが、MBOやらTOBから完全子会社化等々で市場から姿を消したものも多数。

また、新興市場ではほとんど錬金目的だけで上場した企業が用済みとなって不祥事発覚のニュースと共に順次消えてゆく姿も周知の通り。そんな事もあって東証は撤退組を補完するという意味合いもあってのTOKYO AIM市場開設など記憶に新しいが、ご存知こちらは依然として開店休場状態が続いている。

今迄個別の国内企業の時価総額、そして世界ベースでもこれら個別企業の時価総額など下克上の模様を何度か当欄でコメントしてきたが、何時の間にか主要市場ベースで見ても地盤沈下が進行しつつある深刻な状況となっている。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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