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変わらぬ影響力

さて昨日から本日にかけては資源大手の豪英BHPビリトンと、英豪リオ・ティントが鉄鉱石事業の統合計画を撤回した旨の報が各紙で伝えられた。

この両社、当欄では二年ほど前に触れた事があったが、当時はリオ・ティント側が最大手のBHPビリトンからの買収提案を拒否した経緯があったのが記憶に新しい。それでも翌年には厳しいファイナンス事情もあって鉄鉱石事業の統合で合弁事業を設立することで合意していたものの、結局今回の結論となった。

業界ではこの両社ほかブラジルの大手ヴァーレや他の新興勢では中国の宝鋼集団などもあるが、ほぼこれらで世界の鉄鉱石供給の7割以上を占める支配力を持っている。今回は当然ながら鉄鋼業界の猛反発もあって、各国・地域の競争当局から統合への承認が得られない見通しになったが安堵も束の間、このシェアでは価格への圧力など脅威は依然健在だろう。

業界によっては独禁法などただのお飾りになってしまっている部分も見え隠れするが、取引所創設など奏功するかこの辺は政治色も濃いのでなんとも言えないが、こうした寡占化というのも昨今の流れの特徴でもある。


消えゆくコード

昨日の日経紙一面には、上場企業の時価総額でみた世界の株式市場ランキングで、東京証券取引所が9月末に4位に後退、1998年から守ってきたベスト3の座を12年ぶりに明け渡した旨が載っていた。

ここ直近では欧米市場や新興国勢の増大とは逆に、日本の出遅れというか弱さだけが特に顕著になって来たようにも思うがこれらを反映している模様。もう一つはやはり単純に上場会社数そのものがここ近年減少の一途を辿っているという点か、ちなみに今年の9月末時点で国内の上場企業数は3,649社、これは04年3月末以来6年半ぶりの水準である。

私も時々何かの切っ掛けでそういえばあの企業どうしているのだろう?とキーを叩く(何故かコード番号だけは時を経ても指が覚えていてスラスラ打てる)と、久しく見ていない銘柄の中には表示されないものが多数。殆どが久しく関りが無く忘却していたものだが、MBOやらTOBから完全子会社化等々で市場から姿を消したものも多数。

また、新興市場ではほとんど錬金目的だけで上場した企業が用済みとなって不祥事発覚のニュースと共に順次消えてゆく姿も周知の通り。そんな事もあって東証は撤退組を補完するという意味合いもあってのTOKYO AIM市場開設など記憶に新しいが、ご存知こちらは依然として開店休場状態が続いている。

今迄個別の国内企業の時価総額、そして世界ベースでもこれら個別企業の時価総額など下克上の模様を何度か当欄でコメントしてきたが、何時の間にか主要市場ベースで見ても地盤沈下が進行しつつある深刻な状況となっている。


中京石油市場

昨日は連休明けから稼動した大証の「新ジャスダック市場」について触れたが、今週はTOCOMも同じ連休明けから中部大阪の石油市場を引き継ぐ格好で「中京石油市場」を稼動させている。デリバリー形態など従前市場を踏襲するものの、値付けは当然ザラバへと変更になる。

これで所謂ホールセールとリテール両方を補完ということになるが、先の夜間取引延長と併せ今後どれだけ低迷している売買高の底上げが叶うかである。ちなみに当初は従来の31社より増え39社でのスタート、気になる初日はガソリンが264枚、灯油が128枚にとどまり低調なスタートとなった。

ところで、昨日触れた「新ジャスダック市場」を擁する大阪証券取引所といえば、直近ではETFの普及をテコ入れする為に証券会社に奨励金を支給し、個人投資家から徴収する委託手数料の無料化を支援する制度を導入すると報じられている。はて、一方で商品取引所はどうだろう?

売買高低迷がいわれて久しい折に取引員各社は、それこそ証券各社とは逆に長年ほぼ横這いであった手数料の値上げ改定に動いたのは記憶に新しい。これの起因となっていた一部にはTOCOMの定率会費引き上げという問題があったが、定率会費値上げ分の吸収が企業努力で賄える環境には既に無く、その取引所新システム対応でも多額の資金を割かれている状況にあっては取引員側としても営利法人上選択の余地も無かったのだろう。

そんなワケで取引員も一概に責められないが、取引所の立場としては短期的な収益効果を求めて定率会費値上げを強行する愚行よりもっと先を見据え上記のような行動の一つも起こせないものであろうか? 株式上場を視野に入れた焦りもあるだろうが、今迄新規に打ち出してきた商品の低迷もこうした後押しで軌道に乗せる切っ掛けになった部分があったかもしれないとしばしば思う時がある。


新ジャスダック市場

さて昨日から大阪証券取引所のジャスダック市場とヘラクレス市場を統合した「新ジャスダック市場」が発足し、その取引がスタートしている。上場企業数は1,005社となり時価総額は9月末計算で8兆8,163億円とアジア最大級の新興市場となるが、これに伴ってマル信掛け目なども一部変更となるところあり。

初日の売買代金は約127億円と静かな滑り出しになったが、個別では初日に新高値となったものに貴金属回収のアサカ理研はじめとして9銘柄、一方で統合第一号の上場銘柄トランザクションは売り気配から公開価格を7.5%下回る初値を付けたあとも売り物止まらずズルズルと下落、これは今年度に入り二番目の低調な滑り出しとなった。

この新規上場モノもそうだが今年はIPO15銘柄のうち5銘柄が公開価格を下回っての初値形成となるなど人気薄、特に新興市場といえば近年の不法な上場やファイナンス錬金、またあのライブドア事件などでもケチが付いて信用が失墜、近年ではアジア新興市場といえばお隣のコスダックがあらゆる面で台頭するなどしていたが、果たして新市場はこの信頼回復が叶うかどうか。

また、かつて此処も「ナスダックジャパン」なる市場が開設されていた時があったが、ネームバリューはやはり大きかった。「ナスダック」のような一つの確立されたブランドに育て上げることが出来るかどうか、今後IRやスタープレイヤーの発掘が非常に重要になってくる。


禍根を残すファイナンス

さて、連休明けの日経平均は円高圧力に潰されて9,400円割れと一週間ぶりの安値で終った。この依然円高の中ではハイテク系との格差でNT倍率の変化にも注目だが、TOPIX系でも先週は金融庁がメガバンクに対して国際基準を上回る資本の積み増しを求める事を検討との報道から、先週は4日の「投資の日」から翌日にかけて主力の金融株群が揃って年初来安値更新となっていたのが印象的であった。

目先で見れば「投資の日」がまさにこれらの絶好の仕込み場となったワケだが当初でこそ権利付き取引最終日には中間配有無ではこう色が見られたのも束の間、今月に入ってからは一緒くたに叩かれていた。中でも低位のみずほFGなどは下げがキツイ、今でこそ若干戻りを入れているが先の新安値では110円ドタまで売られ先のファイナンスに応じた向き全体ではこの段階で総額1,000億円以上もの値洗い損を抱えたことになる。

直近では同庁が上記の件を否定した事でショートカバー等からこれらの戻りがここ目立つ動きあり、金融政策決定会合での日銀のゼロ金利政策復活の報ありで、銀行は収益増加期待も加わり株価にとってはいいトリガーになった筈だが、ここからが正念場。現在の好環境が消化し尽くされてしまうとまた上げ拗れを先導する事になりかねないが、その辺は公募価格奪回から更に上に持っていけるか否かに掛かっているだろうか。

しかし、それにしても今年7月に取り上げた国際石油開発帝石のファイナンスに続き、直近では東京電力のファイナンス実施の報があった。今月6日付け日経紙財務面では「問われる資金の活用」とのタイトルがあったが、ここに出ていたように納税資金などという用途に充てた企業あり、また同紙には書かれていなかったが使用目的も無いのに1,000億円以上も調達した企業もあった。

今後これらの批判もクローズアップされてこようが、東電などが今日もまた年初来安値更新しているように株価への批判も益々顕著になってくるのは想像に難くないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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