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“箱”としての役目

昨日は金融審議会が纏める報告書案の全容が明らかになったが、既存株主権利を損なう恐れがある第三者割当増資などの資金調達手法についての情報開示ルールを強化し、違反企業には課徴金を新たに加える旨も盛り込まれる事になった模様。

コトが起こってから重い腰を上げるのは毎度の事だが、先に東証の上場制度整備懇談会などでは300%を超える希薄化を招く第三者割当増資について上場廃止まで含む提言をしている通り、確かに株式併合等でマジックを使えばそれこそ4倍常識どころではなく数十倍まで新株発行が出来てしまうインチキも罷り通っていたのは事実だし、この辺はさすがに放置し過ぎただろう。

しかし今迄喉から手が出るほど資金需要に迫られた上場企業は、もう箱の役目を終えて消えたところ含め新興市場中心に山ほどあったが、数年前までこうした箱を発掘し営業に飛び回っていたアレンジャーの連中はその後の展開と共に随分美味しい思いもした向きも居よう。

斯様に美味しいところはさんざん既に喰われた後という感もあるが、まあこの手の話は別に証券に限った事でなく他もまた然り。怪しいファイナンス物の匂いに誘われてつい手を出した方も悪いとはいえ、少数株主が利用され切捨てられるのもそろそろ見直されるべきだろうか。


隠れ蓑にされるSRI

本日は林業関係の案件で相談があったのだが、こうした植林関係といえばちょうど昨日はキリの苗木植樹と5年間の育成管理権利を無届で販売したとして、金融商品取引所法違反の疑いで都内の会社が挙げられていた旨が各紙で報道されていた。

謳い文句としては地球環境に貢献し金も儲かるとの事だが、ここ数年エコとか社会的責任云々とかは本当に旬で何にしろ使い易い?言葉だ。上記のような原始的な詐欺モノは論外として、マトモなところで最近では一部証券系から昨年触れた記憶のあるワクチン債のお勧めも頻繁に来るようになった。

数多ある金融商品でも今一つ仕組みが理解出来ないまでもその利回りの高さに目が眩み、怪しい気持ちも其の前には霞んでしまうというパターンがそもそもの引き摺り込まれる発端だが、こうしたエコなど気運となっている事も重なって怪しさ?が消えるどころか逆に社会貢献もしているという自負を擽る部分があるので尚更厄介である。

先月はインフルエンザに便乗した詐欺商法を懸念したが、この辺のSRIを語った類も手を変え品を変え出てくる可能性もあり注意するに越したことはない。


アジア中核市場は何処に

さて、日曜日の日経紙経済面にはアジア・太平洋地域の株式市場の売買代金に占める東証のシェアは1〜4月に25%まで落ち、約12年ぶりの低水準となった旨が載っていた。

金融危機の影響とかで投資家の売買手控えが他より目立ったというものの、東京の地盤沈下懸念は先にも述べた通り暫く前からいわれている事でありここ外国企業含めて撤退も続いている。取り急ぎ?の規制緩和等ではたして地盤沈下の速度は緩むかどうかその寄与度も未知数である。

同じ1〜4月でも上海証券取引所などそのシェアは27%と躍進してきており、迎え撃つ東証としては撤退組を補完するというかこの辺の誘致策としてはAIMなどを打ち出すが、これが失敗でもしようものなら同じアジアでも上記のようにそのシェアを伸ばして来ている上海などにアジア中核市場の座を奪われかねない。

時価総額ベースでは依然優位に立ってはいるものの、始動したAIM含めて今後の動向を注視しておきたい。


危機から生まれる技術革新

さて昨日触れた白金と自動車業界、いま日経紙一面には「GM国有と世界」なるものが載っているが、昨日付けで冒頭にあったトヨタ時期社長の「2、3年後にはトヨタだってGMになる恐れはある」とのコメントはいろいろと考えさせられる。

上の方では肥大化やグローバル戦略云々濁しているが中段以降で目に付いたのは、ホンダが快走を続けるハイブリッド車を上回る安さと燃費性能を併せ持つエコカー開発に全力をあげ、、その先に燃料電池車を走らせるという構想の一文であった。そういえばこの両者、直近では戦略車種の比較広告?的なもので火花を散らしている模様だが、そんな中ここ数日でも日産やら三菱やらスバル等々電気自動車関連のニュースが続々と出てきている。

今迄環境の変化を背景とした危機における産業界の崩壊の度に、何らかのそれを乗り切る革新的技術の普及でそれらを克服してきた経緯があるが、言われている百年に一度の危機ともなればこの脱却には従前とは異なる画期的な行動を起こさなければならない部分も出てくるだろうし、それを考えるに上記のホンダのようにこの期にこうした部分に巨額投資を敢行する事は大きな意味を持ってくる可能性がある。

そうした視点で見るにGM再生などますます暗雲漂ってくるような気もするが、足元ではこれら普及に伴い本来支払うべき諸税の免除等々からゆくゆくの税制変化も考えられるか。また先行きこの辺で無茶な政策だけは勘弁してもらいたいものだ。


下鞘は異例か?

本日のTOCOMは金・銀の先限が年初来高値更新、白金もここ棒上げしているが午後にはドル建て現物相場が約8ヶ月ぶりの高値を付け一段高となっていたのが印象的であった。

この白金、昨日の日経紙商品面にてGMに対する米政府の財政支援方針が好感されて白金が国内外で上昇している旨の記事が載っていたが、一方でGFMS(ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ社)あたりは自動車向け需要は弱く、GMにしても不透明感が強く白金相場の上昇は短期間で収束するとの見方をしている。

そういえばこの白金相場、昨年末は久し振りに金を下回った場面があったが、過去の例よろしくこれら下鞘は短命に終っている。百年に一度の危機とやらでGM筆頭にした斯様な自動車業界の惨状を見るに、今回はある種経験則も通用しないかなとも思ったりしたものだがそれも杞憂?に終ったか。

ただ、これから先を展望するに本日の日経一面にも出ていたように構造的な転換が訪れた場合は業界ランキングの入れ替わりや、こうしたコモディティーにしてもアノマリーが崩れる時がいずれ訪れるのだろうか。この辺はまたもう少し触れたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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