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日経紙で思い出す怖い絵

さて、今週の日経紙夕刊の文化面「こころの玉手箱」はドイツ文学者の中野京子氏の連載だが、第一回目の10日付け月曜日には中野氏が監修した美術展について書かれていた。2017年に上野の森美術館にて開催された「怖い絵展」がそれだが、当時はこの美術館に隣接する上野動物園もつい最近中国に返還したパンダのシャンシャン誕生に沸いていたのを思い出す。

その辺は兎も角も、文中で最初に出てくる目玉作品としたわずか9日間の女王を描いたドラローシュの大作「レディ・ジェーン・グレイの処刑」、末尾の方に書かれていたアートショップで販売された布製ブックカバーの表紙に使われたという「オデッセウスに杯を差し出すキルケー」などの不倫モノ?等々、いずれもホンモノの迫力を前にしばし見入ってしまったのを思い出す。

他にも複数存在するといわれるクレオパトラの毒蛇を使った自害を描いた艶めかしい絵や、主人公が居ない空間を描いたシッカートの「切り裂きジャックの寝室」など、本で見ていたモノと実物とではやはり全く別モノと実感したものだ。願わくは作品の背景から怖さを味わい、作品に恐怖を読み解くヒントがあるという中野氏の視点から選りすぐられ世界中から作品を集めた美術展の第2弾が待ち望まれる。


ウルフパック戦術

一昨日の日経紙法税務面には「不意打ち買収に規制の隙」と題し、複数の投資家がひそかに協調して企業の株式を買い集め、時期をみて一気に経営権奪取を図るいわゆるウルフパック戦術なる動きが日本でも注目されている旨の記事があった。これと似た名のレストランが思わず頭に浮かんでしまうが、現在の大量保有報告制度などの制度の緩さが背景にあるとの指摘があるようだ。

買収防衛策として新株予約券の無償割当が盛り込まれこれが発動されるケースがあるが、このウルフパック戦術を使えば上記発動のケースでも一般株主を装って新株予約権を行使して株式が交付され、この経営権奪取を試みるグループ全体としては議決権の希釈化リスクを回避する事が可能になる構図だ。

会社側もこうした工作を暴くべく躍起になって証拠を押さえる作業に奔走するワケだが、日経紙に事例としてナガホリと共に挙げられていた東証スタンダードに上場するプラスチック成型の三ツ星のケースでは、新株予約権無償割当の対象外となる非適格者が広範に及んでいた事などが問題視され会社側の買収防衛策は裁判所から差し止めされた経緯がある。

斯様に株主間の協調行為を第三者が立証するのは難しさを極めるだけに、金商法の改正を視野に入れ大量保有報告制度含めたルールの見直しなども喫緊の課題となってくるが、これまでに狙われた企業などをみるに低PBRの中堅上場企業がターゲットにされているケースが多く企業側もこれらの指標向上を図るべく経営意識を変えるのに努めるべきだろう。


セーフヘブンラリー

今年に入って上昇が鮮明なビットコインだったが、本日はその価格が3万ドルの大台を突破してきた。この大台超えは昨年の6月以来10ヵ月ぶりの事となるが、先月だけでも上昇率は2割を超え年初からの上昇率ではかれこれ80%超えとなっている。これに続く時価総額2位のイーサリアムの価格も昨年8月以来、初めて1900ドルの大台を突破してきている。

これら仮想通貨といえば昨年はあの大手交換業者FTXトレーディングの破綻が記憶に新しく、それ以外でもテラUSDの崩壊等々複数の不祥事を背景に信用低下から総じて価格は停滞していたものだが、米シリコンバレーバンクはじめ数行の中小銀行破綻やFRBの利上げサイクル打ち切りの思惑を背景に投機マネーが急速に戻ってきている。

上記の銀行混乱を受けこの利上げ転換点の早まりへの賭けがホットマネーを呼び寄せているといったところだが、過去10年以上底辺からのボラタイルな復活は何度も繰り返されてきた光景でもある。明日にはFOMCに先立つ重要指標の一つでもある米3月CPIの発表があるが、早くも今年のベストパフォーマンス資産と囃される鉄火場はまだしばらく続くか。


新総裁体制始動

さて、日銀の第32代総裁に経済学者で元日銀審議委員の植田氏が就任した。これに先立ち先週末に退任した黒田総裁の退任記者会見が行われたが、2%の物価安定目標が達成出来なかったことは残念としながらも、総じて先月の衆議院財務金融委員会での発言同様に総じてこれまでの政策運営の成果を強調する自画自賛?に終始した会見となった。

思い起こせば10年前の就任当初に2%の物価目標は2年で達成出来ると豪語していた姿が鮮明に蘇るが、大量の国債購入と資金供給拡大の所謂黒田バズーカでもってマネタリーベースは約5倍の水準に拡大、途中から調整対象をこれら量から金利にも手を出し始めたが上記の通り今なお物価目標の安定的達成は出来なかった。

確かにアベノミクスの支柱をなしたのはこの異次元緩和であったのは異論のないところだが、やはり物価上昇目標の自縄自縛に陥り今や日銀の国債保有割合は50%を超える水準まで膨れ上がり、ETFの累計買い入れ額も37兆円を超えるなど将来に残る弊害のツケを膨らませたのも間違いの無いところだろう。

これらを市場に混乱を与えないように処理して解決するには実に170年かかるとの試算も一部に出ているが、イグジットについて前総裁は最後まで言及を避けて来た。目先は月末の27、28日に開かれる新体制初となる金融政策決定会合でこれら長期金利の上限引き上げ等の政策修正が議論されるのか否かが先ずは注目されるが、いずれにせよ難しい舵取りの宿題?は新総裁へ丸投げされる格好となる。


街のお別れ風景

年度末から新年度にかけての時期は出会いと別れの季節でもあるが、今年は身近な街の風景にもこれが当て嵌まる感がある。最近では東京駅周辺で再開発の起点ともいえる大型商業施設「東京ミッドタウン八重洲」が先月華々しくグランドオープンとなったが、この並びに位置した「八重洲ブックセンター本店」が先月末で約44年間の営業を終えた。

初めて同店を訪れたのはまだ大学に入学したての頃であったが、社会に出てからも他では探せなかったかなりマニアックな本も100万冊以上もの在庫を揃えるここに来ればほぼ見つかったものだった。2028年度に完成予定の超高層複合ビルへ再出店の予定とのことで復活が待たれるところだが、これからしばらくは丸善あたりに足が向かうことになりそうだ。

それともう一つ、夏場は特にお世話になっていた「東京辰巳国際水泳場」もまた上記の八重洲ブックセンター本店閉店と同じ日に30年の歴史に幕を下ろし閉館した。メインプールは長水路で他と違って飛び込みも出来るところも良く、ここへ来たらわざわざ北島康介氏の世界記録樹立プレートのあるレーンで泳いだりしたものだが、存分に泳いだ後にゆったりとジャグジーが満喫出来るのもよかった。

こちらは2年後の秋にアイスリンクとして装い新たに再開業の予定というが、どこかシドニーのオペラハウスを彷彿させる名建築が無くなってしまうのはやはり残念な思いだ。そうそう、名建築といえば帝劇ビルも2025年度をめどに閉館の予定という。此処もまさに昭和の名建築だったが、ステンドグラスや昭和モダンな細部の装飾等々同じ物はもう見られなくなる可能性もあるだけに閉館まで時間の許す限り目に焼き付けておきたいものだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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