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築地ブランド継承なるか

東京の台所として機能してきた国内最大規模の卸売市場である築地市場だが、数十年前から浮かんでは消えを繰り返し政治に翻弄されてきた移転案も漸く実現が叶い、いよいよ本日より豊洲新市場が開場となった。一方で先週末に閉場となりその83年の歴史に幕を下ろした旧市場は今日から解体工事が始められた。

最後となった鮪のセリもいつも通りの威勢のいい声が飛び交ったが、長年観光客はもとより地元はじめとした小学校の社会科見学には欠かせない場でもあった。味にうるさいプロ行きつけの場内「魚がし横丁」の名店も食すタイミングを逃しまた次の機会にといっているうちに此処ではもう食べられなくなってしまったが、人気店も新市場では棟毎にバラバラに分かれる。

インバウンドの観光名所として近年その存在感を高めていた築地だったが、この築地ブランドはまさに歴史の積み重ねで今後新たな豊洲市場でこの辺をどう構築してゆくのか、初日は付近道路が大渋滞となり目玉施設の千客万来は開業がずれ込むほか試算では新市場は年間約90億円の赤字になるというが、築地市場跡地活用等々絡め今後も山積みの課題を背負ってのスタートとなる。


責任の温度差

さて、直近の4日続落に対する警戒感などから今日は方向感定まらないまま小反発となった日経平均だが、昨日は東証の売買システム「アローヘッド」のシステムトラブルで買い注文が執行出来ずに下げ幅を拡大させた一面もあり、この障害ではSMBC日興をはじめ約40社経由の売買が一時執行出来なくなる事態となった。

メリルリンチ日本証券が通信状況を確認する為に毎朝送るデータを通常の1000倍以上の量で誤送信したのが原因というが、アローヘッドのシステム障害といえば6年前の2月に200を超える多くの銘柄で一時取引停止になったケースがあったが、その後もデリバティブ障害などが幾度か起きている。

証券会社は今回執行出来なかった投資家の注文を自社責任で受け渡しを行わなければいけないが、障害に備え複数系統の接続要請をしていた東証と異常データ送信を受けた東証の問題を指摘する証券各社の温度差から早くもこの賠償責任を巡り両者で対立が表面化している。賠償責任といえば遡ってあのジェイコム誤発注事件を彷彿させるが、上場企業に適宜開示を要請している東証の開示姿勢を指摘する向きもあり事態収拾は一筋縄ではいかなそうだ。


裏口上場未遂

さて、連休明けの日経平均は米長期金利上昇を背景に警戒ムードのなか上海総合指数の急落や円高を受け大幅に4日続落となったが、個別でも先週末の株主総会を睨んで乱高下を演じた末のストップ安に続く大幅続落で目を惹いたのが東証二部外のビート・ホールディングス・リミテッドであった。

この株、仕手系好きな向きには新華ファイナンスといった方が解り易いと思うがこの会社、今年の6月に香港の仮想通貨会社ノア・アーク・テクノロジーズから新株予約権発行で同社の議決権の約50%持ち分保有等の株主提案を出されるなど事実上の買収提案を受けており、賛同に難色を示す同社に対し買い増して筆頭株主に躍り出るなど両者の行方が注目されていた。

結局は先週末の臨時株主総会でノア側の株主提案が否決されることになったが、仮にこれが適った場合は金融庁も認めていない仮想通貨業者の上場が実現してしまったワケでこの辺が一際注目されていた所以でもあった。日本の資本市場で外国勢同士が絡んだ降って湧いたような攻防劇も一先ずの終結で東証の緊張もホッと一息というところだろうが、まだまだハコになりそうな企業を虎視眈々と探す動きは続くか。


いま見る東京ラブストーリー

さて、TVでは来週から始まる新ドラマの告知などをやっているが、所謂月9では女優の鈴木保奈美と俳優の織田裕二が共演する「SUITS」が始まる。月9といえばこの2人で思い出すのはなんといってもバブル世代では「東京ラブストーリー」で、つい最近までこの再放送をやっていた。

懐かしさからつい録画し何話か見てしまったが、当時はまだ街の風景もメガバンクが合併前で三菱銀行などの看板が目立ち、受動喫煙弊害も問題視されておらず会社では上司も部下も煙草をデスクでスパスパ吸い放題、ガラケーさえ普及しておらず公衆電話から自宅へかけるというシーンばかりだったが現在のようにスマホがあったらこの煮え切らないすれ違いの恋愛事情もまた違ったモノにもなっていたのか否か?

ところで先月末の日経紙では「1989年からの視点」と題しバブル景気真っ盛りの頃の様子を回顧する記事を見掛けたが、今月に入ってから日経平均株価は年初来高値を更新、1991年以来約27年ぶりの高値水準にまで上昇したが、奇しくもこの1991年といえばちょうどこの東京ラブストーリーを放映していた年で偶然とはいえなにやら感慨深いものがある。

話は戻るがドラマではファッションもまた懐かしく、男性はルーズなダブルのスーツに女性は肩パッドにトサカヘアー全盛と某芸人そのままだったが、過日の朝番組では若い世代で親や祖父の服を着るのがまた一部で流行りとか、また厚底シューズが流行り出した旨もやっており其処彼処で流行はまた巡り出すのであろうか?


高島屋新館

さて本日は所用で日本橋界隈に出掛けたが、先月24日付けの日経紙でも全面広告が出ていた通り高島屋の出来立てな新館はやはり目に付く。この新館はブランチタイム開店が主流の百貨店にあって早いところでは午前7時半からオープンする店を含めた115店舗の専門店を誘致、本店改装と併せ160億円を投じたという。

斯様に早くからのオープンも近隣で働く会社員等も顧客層と見込んだ為だろうが、人気ベーカリー365日と日本橋に途轍もない列を作り自撮りに勤しむ様や、成城石井の先着限定トートバッグ欲しさにレジに走る様などまだ開業当初のオノボリさんは掃けていない感。それは兎も角も新聞緒折り込みには同館に誘致した店の案内など目にする機会が多くなり近隣住民への啓蒙は粛々と行われている。

先のウォッチメゾンに続き今回の新館建設と日本橋を渡ったところは高島屋包囲網が着々と進んでいるが、日本橋を挟んで向こう側では三越伊勢丹も14年ぶりの大規模改装が行われている最中である。百貨店市場が縮小するなかこの双璧の投資が奏功するのかどうか業界全体を見る上でも今後の動向が注目される。


ノーベル賞2018

周知の通り本日の日経紙一面を飾っていたのは、京都大学の本庶佑特別教が米テキサス大学の教授と共に2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞した旨であった。受賞者は16年の東京工業大学の大隅栄誉教授に続き26人目、2年ぶりの快挙とまた日本にとって嬉しいニュースとなった。

2年前の大隅教授の時はオートファジーの仕組みで新たな創薬の道が開かれる可能性が囃されたが、本庶教授は人の体を守る免疫の仕組みを利用してがんを叩く新たな治療法開発に道を開き、これによって小野薬と米ブリストル・マイヤーズががん免疫治療薬オプジーボが開発・発売されている。

そんな背景から本日の株式市場では小野薬品が2016年8月以来、2年2ヵ月ぶりの高値を付けたほか、マザーズのカイオム・バイオサイエンスやキャンバスは揃ってストップ高まで買われ、同じマザーズのメディネットもザラバで大台替えと創薬ベンチャー群は急騰した。2年前の大隅教授の時を彷彿させるような光景となったが、株式市場のバイオ祭りもいまやノーベル賞のこの時期の風物詩として定着しつつある。


サマータイム論

さて、週明け本日の新聞折り込みには何かと物議を醸し出している東京五輪のボランティア募集の広報誌があったが、東京五輪・パラリンピックといえばもう一つ暑さ対策としてかねてより検討されてきたサマータイムは、先週は自民党の東京五輪実施本部長が2020年の導入は難しいとの見通しを語り五輪に合せた導入は見送られる方向となった。

当初本部長は「世界の主要国はみんなやっており日本に出来ない事は無い。省エネで低炭素社会を作り、オリンピックのレガシーにしたい。」とも熱く語っていたが、システムの問題や世論の反応から物理的に難しいという結論になった模様だ。確かにサマータイムを導入している国・地域は世界70カ国以上あるが、高温多湿なアジア地域で導入しているところは皆無という点を考えなければいけない。

こうした特性からサマータイムを導入している国と違って日本では、例えば話は一寸逸れるがナッツのピスタチオに殻が付いているのは斯様に高温多湿なため。また第一生命経済研究所では仮に全国に導入された場合の経済効果が年間7000億円と試算されるというが、上記の他に現実問題としてそもそもプレミアムフライデーさえ浸透していない現状で早く帰るスタイルなど定着できるのかも疑問だ。

挙げればキリが無いが体内時計に及ぼす影響など健康被害に関しても指摘する関係者は多く、直近では1970年代からサマータイムを導入しているEUでも世論調査で廃止を求める声の広がりが鮮明で具体的対応を判断する動きが出てきておりまさに日本と逆の機運となっている点こそ再考の余地があるといえようか。


ブラックアウト

はや月末だが今月は6日に震度7を記録した北海道胆振東部地震が勃発、日経紙でも今週は連日一面で「北海道地震が問う危機」と題して北海道全域でブラックアウトが起きた件など取り上げていたが、電力供給には一定のメドが立ったものの新電力などが電力を調達する電力卸取引市場の停止が続いている。

ところでこの大地震が起きる約3週前の日経紙・眼光紙背では「猛暑後のリスクに備えを」と題し、「〜科学的な根拠はないが猛暑のあとに天災がやってくるような気がしてならない〜」として猛暑と阪神大震災や東日本大震災を絡め警鐘を鳴らす文章が書いてあったのを思い出したが、果たして現実のものとなってしまったなと。

しかし今回の件ではタワマンのエレベーターなどが故障し給水もストップ、市の中心部ながら孤立した状態になったり、札幌証券取引所もBCPが機能せず終日取引停止の憂き目を見た。地方証取といえども札幌はあのRIZAPグループが上場しており売買代金は実に9割を占めるだけに大きなイベントが無かったのが不幸中の幸いだったか。

上記の件は何れも想定外だったといい、証取の件もこれを反面教師とし他地方証取はBCPを強化してゆく考えというが、立て続けの天災が起きインフラ被害も増加している昨今、改めて万が一の備えのレベルを上げ各所での課題を再確認して行く必要があろうか。


再流出

さて、年明けの仮想通貨交換会社コインチェックによる仮想通貨巨額流出事件から約8ヵ月が経過したが、先週はまたも仮想通貨交換会社テックビューロが不正アクセスによってビットコインなど仮想通貨67億円が流出したとの発表があった。

同社はもともとシステム障害への対応などを巡って金融庁から業務改善命令を2度にわたって受けていたが、こうした事から報道当日の株式市場ではFFRIからカイカまでセキュリティ対策関連が物色される一方で、同社へ出資しているインフォテリアや他に仮想通貨取引所を運営するリミックスポイントなど連想売りの憂き目に遭っていた。

そんな中で同社に対する金融支援を実施し株式の過半数を取得する資本提携等を検討する事を明らかにしたフィスコも当日は先のマネックスGの二番煎じの連想でザラバ急騰を演じ本日も続伸しているが、昨日は金融庁が3度目の処分を出しており補償基準のインフラ含め当局の今後の審査にも影響してくるのかどうか注目される。


IPO終盤戦

本日は保険クリニックブランドのアイリックコーポレーションが東証マザーズ市場へ新規上場の運びとなり、仮条件が目論見書記載の想定発行価格を大きく上回る水準に設定された案件だったわりには注目された初値は公開価格を25.8%上回る2,226円とそこそこという感じであった。

今月のIPOといえば上旬に上場した子供服のナルミヤ・インターナショナルの公開価格割れで3月から続いていた連勝記録が37でストップとなったが、新興株市場の牽引役と期待された先に公開のメルカリなどの大型案件も先週は年初来安値を更新しほぼ公開価格まで往って来いとなるなど冴えない展開となっている。

メルカリと同じマザーズ市場では先週に遊休不動産活用の駐車場サービス業であるアズームも新規上場の運びとなり、注目の初値は公開価格の2.1倍となりその後ストップ高まで急騰する場面もあったが、以降連日の続落となっており上記の件も含め個人も早々に利確する動きが顕著になってきている感も否めないか。

こうしたマザーズなどの新興市場はIPOを起点にした資金の回転が要となるが、短期志向が強くなりIPOインデックスも低迷となると資金の好循環も生まれにくくなる。今週も週末には上記のナルミヤ同様の再上場組ワールドのIPOがあるが、引き続き個人の資金を惹き付け続けるのかどうか今後の後半戦も注目したい。


雪・(月)・花

昨日から六本木のサントリー美術館では「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙」が開催され国宝や重要文化財に指定された仏像や仏画が堪能出来るが、此処で出展されている空海像や足利家所縁の書などと同じ室町時代の重要文化財が出展された「金剛宗家の能面と能装束」を観に今月は三井記念美術館に行って来た。

同展ではなんといっても同館が所蔵する重要文化財である孫次郎作の「ヲモカゲ」を見る事が出来るのが要だが、私がこの能面と再会するのは2011年以来約7年ぶりのこと。久し振りに再会し7年前初めてこの能面を直に観た時の感動が再度蘇ったが今回はもう一つ、豊臣秀吉が愛蔵したという龍右衛門作の小面が揃って展示されているのも目玉だ。

上記の孫次郎作「ヲモカゲ」と共に三井記念美術館は重要文化財である龍右衛門作「花の小面」も所蔵しており、ここに金剛宗家が所蔵する龍右衛門作「雪の小面」が特別出品されるという夢のような展示はやはり圧巻で大満足であったが、時空を超えてこれらもまた久方ぶりに静謐な空間で再会を果たしたということになるか。


あれから10年とこれからの金

約1週間前に束の間の1,200ドル大台を回復した金が週を跨いで再度の大台割れとなっているが、昨日の日経産業紙には「有事の金輝き失わず」と題し国際市場に不透明要素が充満するなかでも低迷している金も、一方で実質金利が上昇しても下げ渋るなど新たなリスクを背景に色褪せていない旨が書かれていた。

ちょうど一週間前にも当欄ではリーマン危機から10年目という中での金を取り上げたばかりだが、このリーマン危機時も換金売り一辺倒からS&P500等を凌ぐ急回復にスポットが当たったものだがその後も回復のキーとなったのは危機後から低下を続けた米実質金利にあっただろうか。

冒頭の通り地政学リスク含む新たな不確定リスクが蔓延しているなかで当の実質金利は昨年末あたりから上昇場面も見られ微妙な均衡となっているが、コモディティーから金融商品の側面が色濃くなりその変動要因もより多層化してきている事もまた現状の膠着の背景とも言えるか。