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今年の値上げは?

さて年が明けても巷で関心が高いのが飲食料品等の値上げラッシュの行方について。帝国データバンクによれば昨年のそれは累計で3万2396品目と一昨年の累計である2万5768品目を6628品目、率にして25.7%上回る事となった。年間で3万品目を超える水準というのはバブル崩壊以後の過去30年間でも例を見ない規模であり、記録的な値上げラッシュであったといえよう。

今月の値上げは日清オイリオのドレッシングやごま油に味の素の調味料などだが、今年の値上げで最も多い食品分野は冷凍食品類やパスタソースなど「加工食品」の2137品目で全体の約半数を占めており、次いでトマトケチャップや出汁・つゆ製品など「調味料」の784品目となっている。

そうした裏でここ数年続いた値上げラッシュに消費者の購買力が追い付かなくなり買い控えをはじめとした値上げ疲れが食品の売り上げにも影響を及ぼし始めている。食品スーパーではPBへ人気が集中、相対的に値上げ品目商品は購入個数が減少したり販売数量の減少も見られ結果、後半以降の値上げの勢いが大幅に減速する事となった。

そんなことや輸入物価の下落等を背景に24年は4月頃までは比較的抑制された状態が続くと想定されるが、昨年に進行した円安の影響や人件費などの動向次第では変化する可能性もある。サービス価格では既に後者の人件費増を反映した上昇傾向が顕著にみられるが、今後は食品分野にも波及することも想定され値上げの内容の部分の変化には要注目である。


4年ぶり1億円超え

先週から大手百貨店各社の初売り商戦が本格的に始まっているが、新型コロナの5類移行後で初めての正月ということで今年も各社共に好スタートをきっている。三越伊勢丹は1月2日~3日の売り上げが主力3店累計で前年同期比2%増加、高島屋も同6.4%増加し大丸松坂屋も同期間の売り上げが前年を上回り、初売りを今年から1日遅らせた松屋銀座では3日だけで昨年1月2日~3日の8割を超える水準を確保した模様だ。

これらを牽引しているのは国内富裕層に加えやはりインバウンド客によるところが大きいか。免税カウンタ-の混雑は円安の恩恵を物語っているが、国内百貨店の昨年7~1月期の免税売上高は過去最高を更新しており昨年のインバウンド全体の消費額は5兆円とも試算されたが、大手生保系シンクタンクでは今年はそれを上回る6兆円に達する可能性を指摘しており今年もこの辺はインバウンド客にかかっているといえようか。

ところでこれと並ぶ年初の風物詩、マグロの初競りも先週末に豊洲市場で行われたが4年ぶりに一番マグロの値段が1億円を超える結果となった。昨年も一昨年の値から約2.1倍とコロナ禍以降では最高額だったが、今年は更にその3倍を超える値がついたことになる。注目の競り落とした向きは今年もまたすし店経営の「ONODERA GROUP」と仲卸の「やま幸」であった。

彼らが一番マグロを競り落とすのはこれで4年連続となった。今年は上記の通り4年ぶりの1億円超えだったが、思い起こせばマグロの初競りにおいて初の1億円超え落札を演出したのは言わずもがなあのすしざんまいの「喜代村」であった。豊洲移転直後の史上最高値3億円超えの歴史を作ったのも喜代村であったが、代名詞的存在であっただけにまたどこかで返り咲いてほしいものだ。


辰巳天井

能登半島地震につきまして
2024年1月1日に発生いたしました能登半島地震で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。被災地の一日も早い復旧をお祈り申し上げます


皆さま、あけましておめでとうございます
本年もどうぞよろしくお願いいたします

本日の大発会は3日続落でスタートをきった。昨年の大発会の当欄では「今年の干支は卯。相場格言では「卯跳ねる」と昨年に続き勢いは良さそう」と書いていたが、日経平均の大納会の終値は前年末比7369.67円高の3万3464円17銭と2年ぶりに前年を上回り、年末株価としてはバブル経済期の1989年以来34年ぶりの高値となった。年間での上げ幅は89年以来の大きさとまさにウサギも跳ね過ぎた印象が強い。

ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化など地政学リスクに翻弄されながらも、新型コロナイルスの5類移行で経済活動が回復したことに加え、外国為替市場で円安・ドル高が加速し輸出企業などの業績が上向いたことも株価の援軍になったか。というワケで今年だが、干支では辰。相場格言では「卯跳ね、辰巳天井」といわれ、跳ねた卯年の後の辰年と巳年は高値をつけるとされている。

実際のところ過去の辰年の日経平均の平均年間騰落率をみると、戦後の辰年は4勝2敗で十二支の中でも最もパフォーマンスが良くその上昇率は27.9%を誇る。ウサギが大きく撥ねたので大手証券関係者は何処も超強気で、先の大納会値にこの平均上昇率を乗じた計算で今年は日経平均史上最高値である38915円87銭を更新し史上初めて4万円の大台に乗せるとの予測も多く聞かれる。

とはいえ今年は世界規模の史上最大の選挙イヤーでもあり、冒頭の通り昨年のウサギは卯年の過去平均の倍近く上昇と跳ね過ぎた感も強くそう期待通りに事が運ぶか否かだが、斯様に兜町界隈から株価の強気な数字が並ぶなか今年は新しく「新NISA」制度がスタートする。『貯蓄から投資へ』の流れが大きく加速する象徴的な年となり相場格言通り高パフォーマンスで高値を付けに行くのかどうかこの辺に注目したい。


温もりが戻って来た2023年

先に日本漢字能力検定協会が今年1年の世相を表す「今年の漢字」は「税」と発表されている。なるほど今年はインボイス制度の導入や、1年を通して増税や定額所得減税など税に関する議論が活発に行われていたなと。また2位には記録的な猛暑から2010年に1位に選ばれている「暑」が、そして3位には戦争への不安から昨年1位に選ばれた「戦」がランクインしている。

そしてこの「税」も消費税が17年ぶりに8%に引き上げられた2014年以来、1位に選ばれるのは2度目である。増税メガネと揶揄され続けた首相は「国民のみなさんが税に高い関心を寄せられていることをあらためて感じる。」と述べていたが、斯様に国民が税の問題に高い関心を向けている一方で、財務副大臣ともあろう輩が過去の税金滞納問題で更迭され、この年の瀬には非課税の政治資金パーティーが裏金疑惑で問題視されているというのもなんとも酷い話である。

ところでちょうど10年前の年末の当欄では「~アベノミクスに終始した1年であった~枯れ木に花が咲いたようになった株式市場でも時価総額が2倍以上になった企業が約500社にのぼり、それらと共にボーナス倍増企業も増加~」と書いてある。アベノミクスを伏せればまるで今年の事のようだが、周知の通り25000円台で始まった日経平均は3月の東証要請で流れが一変し先月にはバブル後の高値を33年ぶりに更新している。

来年も引き続き株式市場はじめ金融マーケットへ関心が向くところだが、長きにわたり世界の中央銀行の中でも特異な存在であり続けた日銀の金融政策も一挙手一投足が注目される。昨年末の当欄で「ウクライナ危機もコロナも一刻も早い終息を迎え来年こそ明るい世になるよう~」と書いた願いも虚しく依然ウクライナ侵攻は終息が見えず更には新たな中東の地政学リスクも加わったが、引き続き来年こそ明るい世になるよう願いを込めて今年はこれで筆を擱きたい。

本年もご愛読ありがとうございました。どうか来年が皆様にとってよい年でありますように。


コンサバな個人資産

昨日の日経紙総合面には「個人資産増 投資けん引」と題し、日銀の資金循環統計を基に試算した9月末時点の家計の金融資産は日米株高や円安を追い風に個人の資産全体が膨らみ全体では2121兆円と過去最高を更新、1年間で資産全体の増加額の8割を投資関連の資産が占めるなど家計に投資の恩恵が急速に広がっている旨が出ていた。

とはいえ日本株に投資されている部分はせいぜい10%程度、欧州ではその倍の約20%、米国は更にその倍の約40%が株に流れているという試算からすれば非常に小さく、日本は金融資産に占める現預金の比率は5割超と米の12.5%、ユーロ圏の35.5%と比較しても依然として現金信仰というかコンサバな感は否めない。

上記の現預金部分が52.5%と試算されているからこれが約1100兆円、今年の日経平均の上昇が顕著だった4-6月に外人が買い越した代金が約6兆円程度であったことを考えれば、上記の約1100兆円のうち5%でも約55兆円、いや、わずかに1%だけでも約11兆円と実にこの倍近くの買い圧力が生まれるという計算になる。

貯蓄から投資と言われて久しいものの日本人は長らくデフレに慣れきってしまい金利も貰えていなかったが、インフレが続けば当然ながら現金の価値は目減りしてくる。今、企業も内部留保などキャッシュをどう使ってゆくかが課題になりつつあるが、そういった意味でも家計に滞留する現預金を投資に回し動かすという事が大事になってくるのではないか。


何時の間にか地盤沈下

昨日に内閣府が発表したところによれば、2022年の日本の一人当たりのGDP(名目国内総生産)はドル換算で34,064ドルとなり、OECD(経済協力開発機構)加盟38か国中で21位となった。前年の20位から順位を落としてイタリアにも抜かれ、比較可能な1980年以降でも最も低い順位となり先進7か国でも2008年以来の最下位に沈んでいる。

円安が響いたというところだろうが、22年の日本の名目GDPは4兆2601億ドルでトップの米国、そして中国に次いで3位の地位はなんとか維持することとなったが世界全体に占める割合は前年から0.9ポイント下落し4.2%と過去最低となっている。そういえばゴールドマン・サックスが最近まとめた2075年の世界のGDPランキングでは日本が12位に沈むというショッキングな転落が描かれている。

こんな背景には人口動態の問題があると思われるが、この辺はよく移民などが挙げられ議論されるところ。とはいえその移民も冒頭の一人当たりのGDPが高くはないところはなかなか選ばれないのが現状で、議論されているほどの経済活性化には繋がり辛いか。そうなると今後はますますAI等の使い方に工夫が要求されようが、相対的な地位が下がりゆく地盤沈下には更なる危機感を持つべきであろう。


SPACE WEEK 2023

本日は東証グロース市場にナルネットコミュニケーションズが上場となったが、初値は公開価格を約8.1%下回り終値もその初値を下回る軟調スタートとなった。ところでIPOといえば今月は同市場に小型衛星などの開発を手掛ける宇宙ベンチャーのQPS研究所が上場しており、こちらの方は本日ストップ高と気を吐いている。

この宇宙絡みでは先月末から今月アタマまでアジア最大級の宇宙ビジネスのイベント(NIHONBASHI SPACE WEEK 2023)が日本橋で開催されていたが、JAXAはじめロケット開発や人工衛星ビジネスを手掛ける企業に大学や自治体などが参加した他、損保や旅行など宇宙関連以外の企業や大使館も参加し今年のイベント出展数は去年の2倍を超えた。

斯様な盛り上がりにみられる通り、こうした宇宙ビジネスは世界規模では2040年までに市場規模は現在の3倍の150兆円にもなるという試算がある。とはいえ宇宙ビジネスを行うベンチャーに対してのリスクマネー供給が及び腰なことで日本の宇宙ビジネスの遅れがかねてより指摘されている。

そういった事を背景に政府は宇宙分野の技術開発などを支援する「宇宙戦略基金」の設置を決定し、先月はその改正法案が衆院本会議で可決されている。企業などに長期的に資金や補助などが付く事でハードルが下がり幅広い産業が参入し易くなる事が予想されるが、日本の宇宙ビジネスの更なる活性化のトリガーとなる事を期待したい。


不可能が可能へ

クリスマスムードたけなわということでホリデーギフト含めさまざまな案内が喧しいが、過日には世界三大珍味の一つであるトリュフのお取り寄せの案内が来ていた。さて、このトリュフといえば今月アタマの日経紙・地方経済面では「黒トリュフ人工栽培成功」と題し、茨城の森林総合研究所と岐阜県森林研究所がトリュフの人工栽培に国内で初めて成功した旨の記事があった。

白トリュフの旬が過ぎて今は黒トリュフが旬だが、この白トリュフの方は既に森林総合研究所が人工栽培に成功しているという。かつて人工栽培が不可能なキノコとされた舞茸も雪国まいたけの技術でこれが可能になった旨を書いた今から7年前の当欄では、このトリュフについては「松茸と共に人工栽培はほぼ不可能とされる。」と書いていた。

ところがこの松茸に関しては現在では東証プライム市場に上場する肥料メーカーの多木化学が既に松茸によく似た近縁種で香りや味が松茸以上ともいわれるバカマツタケの人工栽培に世界で初めて成功、当時はこの発表翌日からわずか3営業日で3日連続ストップ高をまじえてその株価が約70%も急騰したのが記憶に新しい。

このバカマツタケ相場からはや5年が経過しその後の様子が気になるところだが、今年9月の同社のニュースリリースでは市場の需要や生産効率を詳細に評価し、商品化については計画的に検討してゆくとのことであった。わずか数年前には不可能といわれた事案も日進月歩の技術で次々に夢物語ではなくなってゆくが、そう遠くない時期にはこのトリュフもホリデーギフトに人口栽培モノが登場する事になるのだろうか。


6502退出

再来年には創業150年を迎える名門東芝だが、今年9月の日経紙にて「株式会社東芝の株主の皆さまへ 公開買い付けへの応募はお済みでしょうか?」との全面広告から3か月、周知のように本日付けで上場廃止を静かに迎え、今後は先に同社のTOBを実施した日本産業パートナーズらの陣営の下で再建を目指すこととなった。

「サザエさん」の番組スポンサー企業でもあったこの名門、以前にも書いたが2015年の不正会計でケチが付いて以降迷走が続いた。この翌年には約9000億円を投じて買収した米ウエスチングハウスの巨額赤字が明らかとなりその翌年には債務超過に転落、この時の苦し紛れの第三者割当増資が悪夢の始まりとなったが、漸く魑魅魍魎の呪縛から解かれることとなる。

とはいえ今後は事業の成長と共に負債の返済も両立させてゆくのが必須となる。ちなみに昨日の最終売買日は前日から出来高を5倍近くまで膨らませ、その終値は前日比5円安の4590円で一旦株式市場からは退出となった。74年にわたる上場企業の歴史に幕を下ろしたわけだが、はたして再上場が叶うかどうかすべては上記の課題にかかっている。


トップの品格

さて、東証プライム市場に上場するENEOSホールディングスの社長が今日付けで解任されたと報じられている。情けないのはその理由で、酒の席での女性に対する不適切行為だという。この処分と共にこの酒の席に参加していた副社長や常務など幹部も処分されたようだが、副社長のほうはコンプライアンス部門のトップだったというから酷い話だ。

しかしこのENEOSホールディングスといえば確か昨年の夏に当時の会長も女性へのセクハラ行為で辞任に追い込まれたのを思い出す。この時の記者会見で今回解任された社長が神妙な顔で「信頼を取り戻すべく社長として全身全霊で取り組む」と決意を語っていたのを思い出すが、同じ理由でプライム企業のトップが2年連続で解任となるともはや呆れるが可哀想なのは社員である。

そういえばこのENEOS会長セクハラ辞任の少し前には同じくプライム市場に上場している横浜ゴムの社長も20代の大学院生と所謂“パパ活”に精を出していたのも報じられ、パパ活といえばこの後にはこれまたプライム市場に上場するシステナの会長もパパ活を行っていたと相次いで報じられていたなと。

一昔前とは違って近年は、SNSの発達に恐怖の“文春砲”などもありプライベートの問題に対しても社会からの批判が強まる傾向にあるのは否めないところ。コンプライアンスやコーポレートガバナンスが声高に叫ばれる現代においては、トップの行動で企業のレピュテーションが大きく毀損するリスクも孕んでいるだけに経営陣の品格が問われるところか。


ハト派転換へ

今年最後となる日銀の金融政策決定会合が始まった。金融政策といえば世界でも先週は主要な中央銀行が金融政策を発表しているが、はたしてECBは10月に続き2会合連続で利上げを見送る決定をし、イングランド銀行もまた3会合連続で政策金利を据え置きすることを決定、そしてFRBは事実上の利上げ終了宣言となった。

まだ景気もそこまで悪化していないなかで金利が今後下がる期待感でマーケットはこれを好感、ダウ工業株平均は約1年11か月ぶりに史上最高値を更新している。FOMCでは中央値で来年3回の利下げを見込むという事が示されたが、一方でドル円相場もこれらを受け1日で4円以上も円高が進み約4か月半ぶりの水準を示現することとなった。

斯様に世界では利上げ局面が終了に向かう重要な節目を迎えているが、正常化が進まず周回遅れともいうべき日本はマイナス金利の早期解除への期待感が高まっている。とはいえ足元では実質賃金が19か月連続のマイナスと物価上昇に賃金の伸びが追い付いていない状態が恒常化。個人消費や設備投資等々の勢いを考慮すれば地ならし段階のいまマイナス金利解除に動くのかどうか微妙なところだが、いずれにせよ今週最大の焦点だけに明日の結果公表が注目される。


債券以上株未満?

さて、先週は東証プライム市場に上場している日本酸素ホールディングスが2019年1月に発行した劣後特約付き社債を財務の改善進行を背景に繰り上げ償還するとの発表があったが、社債といえば先月はソフトバンク(株)第1回社債型種類株式が東証プライム市場に上場している。ところでこの社債型種類株式、日本では初めてとなるシロモノだが会社法上では株式となる。

一部議決権や普通株式への転換権利があるこれまでの種類株で代表的であった優先株とは違いそれらの権利は持たないものの配当請求権が優遇される株より債券寄りな商品で、発行日から5年間年率2.5%の固定配当を得ることが出来、それ以降は発行体が買い戻せる権利が生じその際は発行価格相当で買い取る可能性もある。今回調達した資金は1200億円で購入申し込みの実に92%が個人投資家であったという。

初めて東証に上場したといえば9月にはETFのアクティブ型も計6本が初めて上昇している。パッシブ型のラインナップに新風を吹き込んだ形だが、この度の社債という絡みでは8月には三菱UFJ信託銀行とNTTデータが年度内に1万円単位で社債を売買出来るインフラ整備の旨が報じられている。

従来では100万円単位の取引が主体であった社債に個人も投資し易くなることで個人の投資と企業の資金調達の手段の幅も広がってくる。こうした新しいデジタル技術が与えるメリットとして効率性に加えて上記の通り投資家の選択肢の広がりなどがあるが、新NISAを前に今後も新たな枝葉の広がりに期待したいところ。