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お家芸の商機

さて、先月末より公開している任天堂が共同製作したスーパーマリオのアニメーション映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の快進撃が続いている。既に全世界で累計で1600億円を突破しているが、日本でも累計興行収入が80億円を突破しており公開17日目での80億円の突破は今年公開作品の中で最速記録となるなど日本のコンテンツが世界を席巻している。

またこれに先立ち「スラムダンク」も中国で公開されているが、封切りからわずか10日で4月に中国全土で上映された映画の中で興行収入トップを記録、先週末段階で約121億円に達している。また欧州各国に先立ちイタリアでも公開されているが、メディアなどが挙って絶賛と少年ジャンプの掲載終了から26年も経っての映画化にも関わらず異例の大ヒットとなった。

アニメ等がお家芸とされる日本も近年はエンタメ産業の遅れが度々指摘されてきたが、こうした現象を目の当たりにするとやはり世界的な人気キャラクターを保持していることの強さを再認識させられる。こうしたエンタメ産業を席巻する人気キャラを生み出しているのは日米が2強ともいえるが、40周年を迎えた東京ディズニーリゾートのような外国のリソースを使ったテーマパーク創設等のコンテンツの活かし方など今後の労働力不足をも睨むにまだまだ商機があるか。


逆ザヤ苦境

本日の日経紙総合面には全国の地銀97行が保有する日本国債や外国債券、投資信託の含み損が2023年3月末時点で合計1兆8000億円と、1年前に比べて5倍に増えた旨が出ていた。欧米は言わずもがな日銀も昨年末に金融政策を修正するなど世界的な金利上昇による債券価格の下落が大きく影響した格好だ。

地銀といえば本邦勢もさることながら更に深刻な状況なのは米地銀勢か。同じく同紙のグローバル面には米株式市場で経営不安が高まる地銀株を標的としたファンドなどの空売りが勢いを増している旨も出ていたが、回転が効いているだけにこれらのポストの空売りによる利益は3月から5月上旬までの間で既にリーマン・ショック時並みの水準に上った模様。

浮動玉に対する空売り比率が平均で8割近くにも達したモノもあるといい日本なら即売り禁で逆日歩攻めに遭いそうな感じだが、それは兎も角もこれまでの金利環境下で構築していたレバレッジ経営のアセットが全て劣化してしまっている現状だけに厳しい状況だ。長短金利はここ30年で最も逆転している現状で、前にも書いたがこの辺が信用収縮に繋がってくると経済全般の下押し圧力にもなってくるだけに今後も注視しておく必要がありそうだ。


G7のジェンダー平等

さて、目前に控えたG7広島でもジェンダー平等は注目される議論の一つであるが先週の12日付け日経紙ではジェンダーギャップ指数や、グローバルから見た日本の課題を浮き彫りにすると共に先進企業による女性活躍推進の“異次元の解決策”を徹底討論するジェンダーギャップ会議の全面広告が出ていた。

前にも書いたが、昨年のジェンダーギャップ指数は146か国中で日本は116位と下位に甘んじG7の中では最下位と不名誉な順位となっている。特に経済では女性管理職の少なさなどが足を引っ張り下から26番目の121位となっているが、先月の男女共同参画会議では首相が東証プライム上場企業の女性役員の割合について2030年までに30%以上とする事を目指すと新たな目標を示している。

いまだ女性役員がゼロの大手企業が存在する日本だが、米S&P500や英FTSE350指数構成銘柄は女性取締役の居ない企業は無くいずれも取締役総数の3割を女性が占めている。上記の首相が掲げた目標はこの辺を意識しているものと推測されるが、微増にとどまる女性社内取締役の嵩上げは急務と思われROEやPBRと並び欧米の株価指数がこれまたお手本ということになる。


募る思惑

先週末は決算発表のピークであったが、なかでも目についたのがソフトバンクGの決算で2023年3月期決算は9701億円の赤字となっていた。2年連続の赤字は実に18年ぶりの事となったが、要因はやはり昨年に続いてのビジョン・ファンド。世界的な金利上昇による投資先の株価下落や、景気減速による業績悪化が決算に大きく影響を及ぼした。

昨年の決算会見を思い返せば徹底した守りに入る旨を強調していた経営トップであったが、虎の子のアリババGの株式放出で5兆円近くもの利益を出すも要のビジョン・ファンドの5兆円を超える損失によりこれをカバーするには至らなかったか。一方で今年の会見ではCFOが攻めのタイミングを見極めてゆくと守り一辺倒からニュアンスの変化も見られた。

ところで同社といえばアリババに取って代わる主要資産を狙い、直近で傘下の英半導体設計アームの米市場でのIPOを申請している。これが実現して高い評価を得られれば上記の経営方針変化とも併せ、予てより囁かれている同社を巡るMBO観測の現実味も一段と増すというものだがそれら含め今後も同社の動向には要注目としたい。


ESGを巡る青と赤

さて、ちょうど1週間前の日経紙国際面には「米フロリダで反ESG法」と題し、地方債を発行する際にESGの要素を考慮することが禁じられるなどESG投資の活動を制限する「反ESG法」が米南部フロリダ州で成立した旨の記事があった。署名したのは反ESGの旗頭ロン・デサンティス知事だが、他にも保守系17州で反ESG法案の準備が進んでいる模様だ。

日本では金融機関などESG投資への取り組みを強化し、自治体などもESG債の発行が近年では急速に増えてきているが、米ではこれに逆行する形で気候変動などを重視する民主党の支持者が多い州と、石油ガス業界や防衛産業を推進する共和党の支持者が多い州の間でESGを巡る社会分断が深刻な状況に陥っている。

積極推進派のニューヨーク州は公的年金運用を2040年までに温暖化ガスネットゼロ目標、またメイン州では2026年までに年金の化石燃料への投資撤退を表明するなどの一方、反ESGを掲げる冒頭のフロリダ州は昨年末EGSを意識すると掲げている世界最大の運用会社ブラックロックから20億ドルの資産を引き出し、同じく反ESGのウェストバージニア州は全米で初めてブラックロックとの取引を停止している。

ロシアのウクライナ侵攻等でエネルギー確保と安全の重要性が高まるなかで石油や防衛関連株などこうした産業への投資はESGの理念と矛盾するものの、確かに昨年はこれらの銘柄が運用成績に大きく寄与したのは否めない事実。運用において理想主義が最良のパフォーマンスにつながるのか否か? リベラル派からの圧力で投資の自由が奪われるという意見もわからないでもなく、政治的分断がエスカレートするなかESG投資にどうかかわるか運用会社も難しい選択を迫られそうだ。


脱米ドル依存?

一昨日は米地域金融機関の連鎖破綻を取り上げたが、そうした事も一部背景にあり安全資産とされる金が2000ドルの大台超え後も堅調持続している。この辺は先の日経紙総合面でも取り上げられていたが、ここでは特に新興国中銀を中心にした金買いが顕著で、先週発表された23年1~3月期の金買いは1~3月期としては10年以降で過去最高を記録している旨が書かれていた。

足元では特にトルコや中国の金の積み増しが目を惹くが、上記日経紙の文中では中国の3月時点の金の総保有量は約2068トンで過去5か月の間に100トン以上保有を増やした旨が書かれていたが、7日に発表された直近の保有量は約2076トンと更に8トン増加とこれで6か月間連続の増加でこの期間に6.6%積み増した旨が明らかになっている。

斯様に米と一定の距離を置く国は米ドル中心の既存の通貨の覇権に挑み脱米ドル依存を鮮明にしてきているが、確かに実質金利が上昇しているにもかかわらず金が史上最高値を舐めに行く動きを見せているのはこうした要因以外でも何らかのリスクプレミアムを乗せているともいえる。上記の背景以外にも目先では米債務上限問題等も控えているだけに、今後も折に触れ物色の矛先が金に向かう素地が整っているのは間違いの無いところか。


ほろ苦い缶珈琲

GWも終わり本格始動といったところだが、今月の食品値上げは主要食品メーカー195社で824品目を値上げする予定である。前年同月の3倍となる水準ながら、メーカー各社はゴールデンウイーク前後のかき入れ時の値上げを避ける動きに走った事で4か月ぶりに1000品目の大台を下回ることとなった。

今月はコーヒー豆や砂糖の値上がりを背景に缶コーヒーが目立っており、サントリー食品インターナショナルは主力のボスをメーカー希望小売価格115円から140円に引き上げ、同じくキリンビバレッジはファイアを125円から152円に、アサヒ飲料もワンダを124円から151円に引き上げるほかポッカやダイドードリンコも然りでこれら値上げは25年ぶりのことである。

冒頭の通り今月の品目数は一服となったが、6月以降は5500品目以上の値上げが既に決まっており日経紙調査ではコスト上昇分の価格転嫁の割合は5割未満が半数に上っている事などから、少なくとも秋までは断続的な値上げが続くとみている。また先の輸入小麦の政府売り渡し価格が22年4月~23年3月に比べ平均5.8%上昇しているが、今後はこの小麦粉の価格上昇がパンや菓子などの値上げにつながるかが焦点となるか。


米銀預金獲得競争

さて、予てよりその突出した預金流出から次はココではないか?と噂されていた米地銀ファースト・リパブリック・バンクがやはりというか経営破綻となった。これで先のシリコンバレーバンクが破綻して以降、このおよそ2か月足らずではや3つの中堅銀行が破綻に追い込まれたことになる。週明けのマーケットが開く前にJPモルガンによる救済とギリギリの決着となったが、この一連のスピード決着の流れは先のクレディスイス救済の時の週末を彷彿させる。

これら以外の銀行も戦々恐々だろうが、これまで預金の流出が軽微にとどまっている銀行でも先の決算では軒並み今後の業績を下方修正しているところが多い。この背景には今やMMFでも遜色ない金利が得られるようになったことで、SVB破綻以降は銀行よりも安全で安心なMMFが恰好の受け皿となっており、預金を繋ぎ止める為に金利を従来の想定予想以上に引き上げたことがある。

加えて直近ではアップルが先月から預金サービスを開始しているが、業界を騒がせたのはその預金利率で変動制とはいえ当初の利回りは全米の貯蓄口座の平均の10倍以上に相当する年4.15%。全米で1億人を上回るアイフォーン利用者をフィンテック分野強化で狙い囲い込む作戦だが、早速開始後4日間で10億ドル近くの預け入れがあったそうで中小銀行勢にとっては泣きっ面に蜂ともいえる状況だろう。

この二重苦、三重苦の状況のなかこの流れが今後も続いてしまうか否かだが、今回救済に動いたJPモルガンのCEOは中堅銀行の経営不安は終わりが近づいているとの認識を示しているものの、今後は資本規制強化に備えリスクアセットを縮小する動きが出る可能性から貸し渋りの顕在化も懸念される。株価の下落に身売りが報じられる銀行も出てくる視界不良のなか今後も暫くは中小銀行の憂鬱は続きそうだ。


業界再編第二弾

さて、先週の東証プライム市場での値上がりランキングトップとなり目を惹いたのはスーパーのいなげやであった。比例配分でのストップ高を交え一時は2,000円の大台変りを示現する急騰を演じたが、これは周知の通りイオンが同社を連結子会社化するとの発表から子会社化に向けイオンによるTOB実施も想定されTOBプレミアムへの期待が先行する格好になったことが背景にある。

しかしいなげや株の急騰を見るに思い出されるのはかつてバブル期に秀和が流通再編を唱え仕手戦さながらにいなげや株を20%超まで買い進んだ事件か。あの時はいなげやと共に忠実屋の買い占めも行われていたが、両社は相互の株式発行で抵抗し不動産融資総量規制も直撃し結局はこの仕手戦?に提灯を付けた一部投機家だけが儲かり同社が描いた再編劇の青写真は未達に終わった経緯がある。

結局この時の株がイオンに流れたワケだが、このイオンによるスーパー再編の動きは今から10年近く前にもあり当時も当事者のマルエツやカスミの株式が物色され急動意となったものだった。今や株式市場から両社の名前は消えたが、上記の秀和事件で助け舟を出して収拾したダイエーも今やイオン傘下に収まり市場からはその名前は消えている。

コロナ禍を経て巣ごもり需要の反動や物価高騰による買い控えを背景に足元厳しく、来るデジタルシフト化も睨み効率化待ったなしの業界再編第2弾といったところだが、上記と並行し買い占めの憂き目に遭った百貨店もその後再編が進んだ。いなげやも経営統合となれば市場からその名前が消えるはこびとなるが、そうなるとこれまでの再編劇において市場で戦った面子はイオン以外全て株式市場から名が消えるなんとも諸行無常な感だが今後も流通業界の合従連衡の波は続くか。


明暗のGW

さて、GW目前だが今年の場合は新型コロナの制限が緩和されたことにより自宅で過ごす向きが減少し、旅行などいわゆる外向きな動きが復調するGWになりそうだ。そうした事で調査会社インテージによればGWにかける予算は一昨年の15,908円、去年の16,407円に対し今年は27870円と去年に比べて約1.7倍と大幅にアップしている。

この恩恵を受け特に復調を見せそうなのが旅行業界で、JTBによれば今年のGWの国内・海外合計旅行者数はのべ2470万人と新型コロナの影響が出る前の19年比で1%減水準まで回復、円安の影響を受けない国内は特に好調で19年比2%増と過去最多を見込むという。先週発表した国内航空11社のGWの国内線予約合計も245万人と前年同期比で23%増となっている。

円安や燃料高の影響で海外旅行、国際線は低調だがその逆でインバウンドは急回復、訪日外国人旅行者数は今年3月で181万人と前月比で約23%増加、今やコロナ前の7割くらいまで戻ってきている。GWのホテルもラグジュアリー中心に満室が目立つが、需給逼迫で客室単価も首都圏で約5割上昇し更には外国人向けにプレミアムルームを設け更なる書き入れを狙う施設も増えている。

そういった事でGWの市場規模は全体で2兆7114億円になると試算されているが、そんな裏でこの復調に対し一部受け入れ側はコロナ禍で従業員を削減した傷が癒えず人手不足問題のジレンマに陥っている向きも少なくない。ホテルなどこうしたところは稼働率の限界を単価でカバーする動きも出ないとは限らずまだ料金も上がって行きそうな雲行きだが、いずれにせ連休明けには新型コロナは5類に移行し復調も一層顕著になってくることでこの辺が課題として残るか。


新体制下の初会合

さて、植田新総裁になって初めての日銀金融政策決定会合が明日から行われるが、やはり最大の関心事はYCC(イールドカーブ・コントロール)なる長短金利操作の修正がいつ為されるかだろう。新総裁は就任直後の記者会見で、「現状の経済物価金融情勢を鑑みると現行のYCCを継続することが適当。」と述べていたもののマーケットのさがで何らかの動きを期待するフシもある。

一部の外資系銀行ではドル円への影響を仮に4月にYCCの10年債のレンジを0.5%から上限1%に拡大した場合は約5%の円高、長期金利の操作対象年月を5年から7年に変更した場合は約6%の円高、YCCを撤廃した場合は約9%の円高に振れると試算している。ただ今回はGW直前なだけにマーケットの混乱等を避ける意味でも現行継続は適切との発言を撤回してまで決行するような可能性はさすがに低いか。

ましてや欧米での金融システム不安や、先の日銀短観で大企業製造業景況感が5期連続で悪化している事などもあり何らかの動きがある可能性としては6月という向きが多い。しかし米の実体経済の悪化、リセッション入りの足音も聞こえはじめているだけに金融政策の正常化への舵を切るタイミングもなかなか難しいところではあるが、ともあれ目先は明日からの初会合に大注目としたい。


金庫株消却

本日の日経紙投資情報面には「自社株消却、過去最多に」と題し昨年度の自社株消却件数が前年比で18%増加し302件と2年連続で過去最多となった旨が出ていた。自社株買いで積み上がった株式を消却する事で株主資本は減額されROE(自己資本利益率)が上向く事となり、市場への再放出懸念も払拭され株価の底上げが狙える事などが背景にある。

予てより東証が低PBR企業などに対し資本効率の改善を求めるなか企業側も1株利益等を高めるべく余剰資金などで自社買いを加速させており、東証が今月に発表した投資部門別売買動向では昨年の事業法人の買越額は5.5兆円と前年度から約2倍に増加し1983年度以降で過去最高を更新している。

新しいところでは先々週にホームセンターのDCMホールディングスが総額50億円の自社株買いと発行済み株式総数の4.78%に相当する750万株の消却を発表しており、先月には双日が過去最大の300億円上限の自社株買いと同社としては初めてとなる約1500万株の自己株式の消却を発表している。

これらいずれもPBRは本日段階でDCMが0.82倍、双日は0.78倍と1倍割れだが、株価の方は水準訂正し今月に入って共に年初来高値を更新してきている。昨年の市場再編で上場維持基準として流通株式比率が導入されこの達成を狙った自社株消却の動きも見られるが、上記の通り株価も含め株主還元としては良いネタになるだけに今後も各社の動きが注目される。