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個人の判断

本日の日経紙ビジネス面にはマスク・出張制限撤廃3割と題し同社の実施した国内主要企業社長へのアンケートで、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5月8日から「5類」とし季節性インフルエンザと同じ分類とはなったものの、社内でのマスク着用等を撤廃する企業は3割前後にとどまった旨が出ていた。

周知の通りこのマスク着用に関して政府が示した新たなルールでは13日から「個人の判断」となっている。初日は近所の三越のライオン像のマスクが約2年10ヵ月ぶりに外され、空港でも受付カウンターのパーティションが外される光景を目にしたが、百貨店やレジャー施設なども概ね上記企業とほぼ同様な対応となっており5類移行まで各所明確な判断がし難いだろうか。

半ば生活の一部になってしまっている一番難しいマスク問題だけ唐突に個人の判断にすると半ば責任放棄とも取れる政府のガイドラインだが、改めて勝手にどうぞと言われるとはたしてマスクやパーティションにどれ程の効果があったのだろう?とも思う。時にはスーパーコンピューターまで持ち出しその効果を謳ったのが記憶に新しいが、その辺の科学的な知見とはいったい何だったのだろう?

日本は一度決めたことが効果のある無しがわからないままなお続けてしまうキライがあるが、世界中でマスクを外した日常が戻るなか日本だけ頑なに政府のガイドラインを守りマスクを付け続けた効果が諸外国と比較し顕著だったかどうか、せめて政府は検証すべきだろう。いずれにせよ5類移行でコロナ前の生活様式が直ぐに戻るのはなかなか難しそうだ。


堂島限日取引始動

今週から堂島取引所では金、銀、白金の先物「限日取引」がスタートしている。先物取引には通常限月が存在するが、これは限月制ではないので決済期限が無く無制限に売買のポジションを持ち続けることが出来る。貴金属先物といえばJPX傘下のOSE(大阪商品取引所)が知られたところだが、こちらは取引単位を更に小口化しているのが特徴となっている。

限日取引は上記のOSEでも「東京ゴールドスポット100」が8年前からスタートしているが、限日取引自体はこれより更に5年前に「日経・東工取指数」がこの取引形態で上場していた事がある。ただ残念ながら値洗いにおいて理論価格との乖離が著しくなるなどでリクイディティーの低下を招き、限月取引へ回帰するも結局は上場廃止となってしまった経緯がある。

それは兎も角もこの堂島取引所、周知の通り2011年にコメ先物の試験上場を開始し以降10年にわたり5回の期限延長してきたものの結局農水省の認可を得られず事実上の取引ゼロ状態であった。このコメ先物の再上場も目指す同取引所だが、先ずは再始動となるこの貴金属の限日取引がコメ先物に代わる柱となり得るかどうか今後に注目したい。


復活の兆し

さて、国土交通省がこの時期恒例で公示地価の発表をしている。先週発表されたそれは全用途の全国平均が前年比で1.6%上昇し2年連続で上がった。15年ぶりの上昇率となったが住宅地、商業地共に去年より上げ幅を拡大させ、商業地の全国平均は1.8%上昇で都心部のオフィスや店舗の需要が地価を押し上げた。

地価高額地点は1平方メートルあたり5380万円となった常連の山野楽器本店はじめズラリと銀座が上位を占めていたが、昨年1.1%の下落だったこの山野楽器本店は今年は1.5%の上昇に、中央通り沿いでは他に2丁目のダンヒルがある場所も昨年の2.0%下落から今年は1.0%の上昇と個人消費やインバウンドの回復期待を背景に昨年の下落組が軒並み今年はプラスに浮上している。

銀座といえば以前に当欄では「腐っても銀座」と題し、メインストリートに近い好ロケーションの空き物件は好機とみて手当が進んでいるのを書いたことがあったが、5年前にこの銀座から一度撤退したH&Mは再度この地に出店を予定している。このカテゴリーではZARA銀座も昨年はリニューアルオープンしており、新たなテナントの入居でまたかつての活気が戻ってくるかどうか期待したいところ。


東芝非公開化の道

先週は東芝がJIP(日本産業パートナーズ)陣営による買収提案を受け入れる事を取締役会で決議したと発表している。市場の二部落ちから3年半ぶりに悲願の一部に復活するもアクティビストからの突き上げで度重なる臨時株主総会が行われ、二転三転のグループ分割案などここ数年迷走が続いていた東芝だが大きな節目を迎える。

ところで肝心のTOB価格だが1株4620円という。週末の同社株はこれにサヤ寄せする格好で反発していたものの、発表前の株価が約4200円であるからなかなか微妙な安さ?に感じる。昨年も60件近いTOBがあったが、それらのプレミアムの平均が4割を超えていたことを考えればモノが違うとはいえ同社の場合はこの4分の1程度という計算になる。

とはいえ筆頭株主の旧村上ファンド系エフィッシモ・キャピタル・マネジメントはじめ火中の栗を拾った増資引き受け組の簿価を考えるにこの値でも十分なイグジットだが、昨年の二次入札へ進む過程で非公開化を提案したアジア系ファンドは1株7000円の買収価格を提示していた経緯があり、昨年末に当のJIPが提示した価格でさえ5000円台であったワケだが逆にいえばそれだけ劣化?進行が早いという事か。

しかし海千山千のアクティビスト、一昨年だったか英系のCVCキャピタル・パートナーズが買収提案をした際も別のアクティビストが算定価格を大きく下回っているとして反対表明した一件があったが皆が素直にこの価格で応じるかどうかが焦点、TOBは7月下旬とのことだがはたして3分の2以上の取得が叶い長年の呪縛から解放される日が来るのか否かまだまだ予断を許さない。


貴金属市場を2023/3/27に開設

堂島取引所は、2023年1月16日付けで農林水産省及び経済産業省から認可を受けた貴金属市場(金・銀・白金)の市場を開設。

▼堂島取引所:貴金属市場開設のお知らせ(PDF)
▼貴金属市場の取引結果について(初日)
▼投資家が「今」注目する金・銀・プラチナ
▼日経:金と銀・白金「貴金属先物」取引スタート 堂島取引所


花見マーケット

さて、全国トップをきって桜の開花を宣言した東京だが気象庁は昨日満開になったと発表、これまた全国で最も早くの満開ということになる。桜といえば定番の上野公園では今年は4年ぶりに先週から「うえの桜まつり」がスタートし、同公園では一部エリアで飲食を伴う宴会が解禁となった。4年ぶりといえば、秋に建て替えを控える国立劇場もさくらまつりが4年ぶりに復活している。

街でも各所でイベントが復活、近所の日本橋では先週から「SAKURA FES NIHONBASHI2023」がスタートし江戸通りのライトアップなど街全体が桜色に染まっている。またホテル勢も日本庭園を擁しているところは挙って桜絡みのイベントをスタート、ホテルニューオータニではお花見宿泊プランを展開、ホテル椿山荘東京では1000灯のLEDでライトアップした夜桜雲海を展開、グランドプリンスホテル高輪も100灯のRGBライトや提灯で桜をライトアップし桜桟敷席を設けた。

冒頭の上野では近所の多慶屋が花見グッズの特設コーナーを設け、もう一つの名所でもある目黒ではドンキも特設コーナーを設け花見支援も喧しいが、上記のホテル勢もホテルニューオータニではお節料理のような「桜・お花見重 三段、59,400円」を用意し、グランドプリンスホテル高輪では桜桟敷席でいただける「八重コース、45,000円」を用意、いずれもなかなか強気?な価格設定となっている。

それもこれもお花見市場の急回復を見込んでのものだがそうなると気になるのはその経済効果、市場調査のインテージ調べでは今年の花見予算のアンケートは6935円と回答、花見の宴会が自粛となっていた去年と比べて約1.8倍という結果になったという。関西大学の推定では今年の花見の経済効果はインバウンドも乗って約6,158億円と去年の約3倍になるとの試算もある。はたしてコト消費もこれを皮切りに急速に動いてくるかどうか注目されるところだ。


スイス発大型再編

先週はスイスの金融機関最大手UBSが、同2位のクレディ・スイス・グループをにわかに30億スイスフラン相当となる株式交換で買収する運びとなった。近年はアルケゴスとの取引で信用問題が不安視されていたが、直近の米銀2行の破綻が追い打ちをかけ預金や預かり資産の流出が加速、筆頭株主も匙を投げ株価も急落するなか危機封じ込めをスイス金融当局が主導した格好だ。

クレディスイスの時価総額は直近で1兆円を超えていたことを見るにその買収額が半分以下となったあたり不透明感を内包している感もあるが、それだけにスイス国立銀は両行に最大1000億スイスフランの資金枠を提供、スイス政府は買収に伴い今後発生する損失に関しても90億スイスフランの政府保証を与えるなど異例の後押しをしている。

しかし斯様な主要金融機関の大型再編はリーマン・ショック以来の事と思うが、それにしては一連の処理は異例の早さだった。日銀を含む6中銀も協調して市場へのドル供給を拡充するなど鎮静化を図り、週明けのマーケットが始まる前に金融危機が世界的に伝播するリスクを出来得る限り遮断したかった意図がうかがえる。

斯様な処理が奏功し今週は日米の主要株価も一先ずは切り返しに入っているが、今回の買収ではUBS株の割り当てでクレディスイス株の価値こそゼロになる事は免れた一方で同社の2兆円を超える劣後債は無価値となった。斯様にAT1債が一瞬で紙屑になった事もあり実物資産に改めて資金が向かい先週書いた金相場はとうとう一時2000ドル大台を突破しているが、この辺の処理の副産物が後々マーケットに影響してくるか否かしばらく注意しておきたい。


精養軒スクイーズアウト

さて、今週は欧米の金融不安台頭から週明けから今日までの4営業日で日経平均は1,100円以上も下落の憂き目にあったが、そんな中で連日のストップ高を交え株価約7割高を演じて一際目を惹いたのが東証スタンダードの精養軒。周知の通り上野恩賜公園に鎮座するフレンチの老舗で、日本にフランス料理を広めた草分けとして一世紀半の歴史を誇っている。

この急騰の背景にあるのが、同社に関係する特定法人・個人等のみを株主とするために株式併合を実施、併合によって端株となる株式を併合前の一株につき1200円で買い取りを実施するというものでこの価格にサヤ寄せした格好。来月に開催予定の定時株主総会で議案を付議するが、5月には上場廃止のはこびとなる予定だ。

株式市場への上場はこの上野本店の建て替え後ほどなくしてだったが、グリルフクシマの伝統の純フレンチは勿論のこと本店レストランでも昔ながらのビーフシチューやハヤシライスなどが気軽に頂けたものだ。飲食業ながら株主優待も無い企業であったが、コロナ禍の中ここまで辛抱強く付き合ってくれた株主には最後はささやかなプレゼント?となったか。

しかしこの精養軒、当欄でもパンダ関連株としてこれまで東証スタンダード上場の中華の東天紅と共にオメデタの兆候の度に何度となく取り上げてきた経緯がある。先日はシャンシャンが惜しまれつつ日本から居なくなってしまったが、奇しくもこの精養軒もそれを追うかのように株式市場からはその姿が消えることとなる。


オルタナティブの金

さて、今週は国内の金現物小売価格が初めて9000円の大台に乗せてきた。周知の通り相次ぐ米銀の経営破綻を受け金融市場の不安定化に対する警戒感が広がるなか、安全資産とされる金にリスク回避の投資マネーが集まった格好となりニューヨーク先物は一昨日には1900ドルの大台を回復、JPXの大阪取引所上場の先物も連日の最高値更新となっている。

こうなるとまたぞろ判で押したように買い取り業者の煽り広告が急増しそうな雰囲気だが、それに釣られ売りに来る顧客が目立つ日本に対し欧米ではリーマンショック以降、金利の上昇やドル高など教科書通りなら金にとっての逆風環境下においても地金や金貨への現物投資意欲が安定的に強く、昨年のそれは400トンを超えてきている。

斯様な個人もさることながら中央銀行の金買いも安定的に継続しており、昨年の中央銀行による金準備の積み増し量は約1136トンと過去最大を記録している。米と対立するロシアや中国などが主役とみられているが、今回のウクライナ侵攻では経済制裁における米ドル凍結等のケースを目の当たりにし西側経済圏資産の保有はリスクが高いと印象付けたのが色濃く表れているか。


満額回答ラッシュ

さて、世の物価高のなかこれに対応した賃上げが焦点となっている今年の春闘だが、先月は自動車業界からトヨタ自動車と本田が労働組合の賃上げ要求に満額回答し早くも春季労使交渉が決着する異例?の展開となった。これに続くように昨日は全日空が過去30年で最も高水準の6000円のベースアップを実施すると労組に回答、本日は三菱電機が労組要求に満額回答したが電気連合は前年下限の3倍超水準で回答する方向が報じられている。

斯様に例年とは光景を異にするが、これらが持続可能なものになるか否かはやはり労働生産性を如何に上げてゆくかどうかがポイントになってくるワケだが、金融政策もしくは財政政策でもってこの生産性を上げてゆくことには限界があるということを認識しつつ経済政策の方は進めてゆく必要があるか。

以前にも書いた通り、日本の労働生産性はG7の中においても最下位という状況。とりわけ日本の輸入依存度から見るに昨年のような資源高や円安等の市況は実質賃金の伸びの重しになり易い構造になっており、G7の諸外国以上にこの労働生産性の引き上げの重要性がポイントになってくるだけに早急の浮上が望まれるところ。


あれから12年

先週末で2万2千人以上が犠牲となった東日本大震災から12年を迎えた。東北の各地では追悼の催しが開かれ、都内でも日比谷公園で追悼の催しが開かれ献花台に花を手向けて手を合わせる人の姿が見られた。十三回忌ということで一つの区切りと捉える向きもあるが、食品なども台湾では10年以上にわたる食品輸入禁止措置が昨年緩和され食品輸出促進の機運も高まっている。

ところで昨年は福島の帰宅困難地域に若干の進展が見られたものの、除染、廃炉、その先の核ゴミの問題含め道筋がついているとは言い難いと書いていたが、1年経ってもこの状況は変わらず昨年末時点で累計4兆円を超えた除染費用は23年度以降更に兆円単位で増加する可能性があるなど処理費用は膨張を続けている。春か夏に処理水の海洋放出が始まり今年後半には溶融燃料の取り出しも始まるが負担の跳ね返りは不透明だ。

またロシアの暴挙が改めて原発問題と向き合わざるを得ない状況を作り出しているとも書いたが、年末には唐突に原発政策の大転換が決まり原発の運転延長や新増設を進める方向と政府は原発回帰の動きへ舵を切っている。原発関連株が不気味な物色をされるなかこの一連の動きに専門家の一部からは疑問視する声も上がっているが、いずれにせよ今後の議論と丁寧な説明は不可欠だろうか。