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各種低迷の影響

さて先週末の日経紙夕刊一面を飾っていたようにまたぞろ原油価格が安値更新してきている。13日には一時1バレル41ドル台まで下落し約6年5ヶ月ぶりの安値をつけてきているが、中国景気の減速よる世界的需要減への不安に加え米シェールオイルの高水準の生産やイランからの輸出拡大観測など供給面での材料も積みとなっている。

以前にも記したように原油以外の商品にも下げが広がっており、貴金属など金の国際価格が5年5ヶ月ぶりの安値水準に沈み、またプラチナも6年半ぶりの安値水準に沈んでいる。その金に比べた上鞘のイメージから国内ではプラチナが思わぬ人気を喚起し田中貴金属工業では7月の販売量が前年同月の32倍以上、石福金属興業では同月間平均の3倍が売れるなどしている。

とはいえこんなバーゲンハントの裏でマクロでみれば既に採算割れの深刻な状況から鉱山では大幅なリストラが進行し、上記の原油安では米でもエネルギー関連の社債の一角が崩落しているという。シェール革命の波に乗って大量発行が相次いだ社債市場の咎めで、デフォルト懸念が出ると金融市場を一気に冷さす可能性を秘めておりこの辺は新たな懸念材料でもある。


今年で見納め?

さて、先週末は隅田川花火大会に続いて東京三大花火大会の一つでもある「東京湾大華火祭り」が開催された。この三大花火大会が終わると直ぐにお盆休みモードとなってくるが、昨年はゲリラ豪雨による一昨年の隅田川中止に続いて台風の影響でこの東京湾も中止に追い込まれてしまったのが記憶に新しい。

というワケで今年はそんな鬱憤を晴らすような素晴らしいオープニングからのスタートとなったが、六部に分かれたそれぞれで隅田川では出来ない400メートルの花を咲かせる尺五寸玉が盛り込まれ、また「スライド牡丹」など発色技術と併せ今年もこれまで観た事のないような変わり種が数多く披露された。

ところで昨年も囁かれていた話だが、来る東京オリンピックの選手村を設営する工事着工の影響から会場確保が難しくなる事が予測され、この東京湾大華火祭りは今年を最後に休止してしまうとの話が出ている。30年近く続いてきた風物詩というのもあるが、花火大会は何処もその経済効果もばかにはならない規模だけになんとか関係各所の働き掛けに期待したいものだ。


爆買いに暗雲?

本日の日経平均は前引けにかけて一気に値を崩したが、昨日の場中動向を再現しているかのように酷似した展開となった。これは周知の通り前日に続いて中国人民銀行が人民元の基準値を引き下げたことによるものだったが、SQを控えている事もあって今回もまたボラタイルな展開となっている。

こんなオペをやっておきながら当の人民銀行は上海外国為替市場でドル売り介入を実施したとの報も入っており、株式市場同様により一層管理相場の色が濃くなってきている。しかし世界の市場を振り回しても次々にカードを切ってくる背景には、想定を超す減速感への危機感が窺える。

今のところアジア各国はこのオペに対して直ぐに輸出競争力が影響を受けることはないとみて通貨戦争が勃発するとは想定していない模様だが、アジアでなくとも米などこれの裏側でドル高が長期化すれば経済への影響も懸念されひいては利上げ先送りの観測も出てこないとは言い切れずまだまだ思惑は尽きなさそうだ。


試験上場6年

さて昨日の日経紙社説には「コメ先物存続は農協参加で」と題して日本の農家や業協同組合も、米国の生産者のように先物を利用すべきで取引所も農協や農業法人などに対し市場の役割や利用手法を分かり易く説明し、政府もコメの市場機能をいかし、需給調整に役立つよう積極的に支援してもらいたい旨が書かれていた。

コメ先物については先月も一度触れたが、既報の通り大阪堂島商品取引所が最近の上場大手卸各社の参入等も踏まえて今月に期限を迎えた試験上場の延長申請を農林水産省にし、同省が試験的上場期間を更に2年延ばす事を決めている。

これによって今度の試験上場期限は17年8月、試験上場の期間が6年にもおよび過去にこれ以上の延長事例が無いことから実質的にこの商品にとってラストチャンスとなろうが、先にも書いたように先物の使命は指標価格、相互利点を踏まえて限られた時間を有効に使いたいところ。


巨大化と副産物

先週末の日経紙国際面には「ETF、ヘッジファンド超え」と題して、6月末時点のETF(上場投資信託)運用残高が世界全体で実に計2兆9,710億ドルに達し、投機的売買を特徴とする同時期のヘッジファンドの資産残高計2兆9,690億ドルを初めて上回った旨が出ていた。

この変に絡んで最近の中国株の急落の背景には、当局の厳しい規制を掻い潜って投機的手法を駆使した海外ヘッジファンドが暗躍しているとロイターでは報じているが、ETFも投機的な売買にも用いられこうした株価急落などの一因にもなっているという。

中国の場合は先に書いたようにまた市場構造が先進国とは異なる部分が多いが、本邦でも日銀の執拗なETF買い入れで高寄与度の指数採用銘柄が吸い上げ状態になっており、一昔前の板と今とでは随分と光景が変わってきている。一方でレバレッジ型含め最近もJPX400派生指数連動型のETF3週が上場する等、増殖のペースは衰えない。

こんなことに伴いヘッジファンドの代表的指数とS&P500種株価指数を比べると過去4年は後者が大きく上回りETFなどで株価指数に投資する方が効果的という結果になっている模様だが、斯様な影響力の台頭が市場に今後どういった変化をもたらしてくるのかまだまだ各所でチェックすべき項目は増えている。


資源ショック

さて昨日の日経紙マーケット面には「資源国通貨が下落」と題し、今週に入ってブラジルレアルやマレーシアリンギが対ドルで揃って今年の安値をつけた旨が書いてあったが、他にもロシアルーブルも主要25通貨のうち先週は最も下落して約5ヶ月ぶりの安値に沈み、南アランドも景気減速と物価高が同時進行し約13年ぶり安値に沈んでいる。

この背景にはなんといっても国際商品相場の下落があるが、商品市場の動きを表す代表的な指数であるロイター・コアコモディティCRB指数は今週初めに最近高値だった昨年6月から36%低下、あのリーマン・ショック後に付けた09年3月の最安値をも下回り12年ぶりの低水準になったという。

先週も当欄で銅が最大消費国である中国の景気減速懸念で数年ぶりの安値に沈んでいる旨を書いたが、冒頭の南アランド安で世界生産7割を占めるプラチナもこうしたランド安を背景にした供給増の一方、需要は中国の景気減速等で減退している事で6年7ヶ月ぶり安値水準と一段安、またレアル安で粗糖先物も同じく6年7ヶ月ぶり、コーヒー豆も1年6ヵ月ぶりの安値水準に沈むなど負のスパイラルが広がっている。

負のスパイラルといえば米では最近の相場低迷で運用利回りが急激に悪化、運用資産の縮小と相俟って、商品相場に投資するヘッジファンドの清算・運用停止も相次いでいる模様。また昨日の株式市場でも場中の決算発表がネガティブサプライズとなった資源モノの三菱商事が一気に急落の憂き目に遭うなど斯様にコモディティ価格の下落が世界景気減速懸念イメージを増幅させている。


広がる新形態

本日の日経紙・大機小機には「投信運用会社VS販売会社」と題し、日本の投信残高が100兆円大台を超えるなど利用者層が広がり存在感も増すなど投信時代が到来する一方で、投信先進国の米国とは投信会社と販売会社の立ち位置の違いが書かれていた。

文中には「投資家の人気が高く大量販売が容易なファンドも、販売会社にとって都合がいい。」との一文があったが、かつて話題になった大手の一兆円ファンドなどその基準価格も流出額の崩壊もまたガリバー規模であったなと思い出す。長年回転の道具に多用され、なれの果てで極端に純資産規模が減ってしまったモノはその構造上運用も難しく放置された後に座してナントカといった状態になっている物が珍しくなかった経緯があった。

それが漸く近年では運用会社が直接一般の顧客に対して販売する直接投信の類が出始め、手数料無料投信も続々登場、また驚異的な成績から発売直後に直ぐ販売停止になるようなスター的ファンドも登場している。上記の道具扱いが過去の産物になるのかどうか今後の動向にも注視しておきたい。


仮想で創造

今月に入って仮想通貨ビットコインが大量消失したとされる事件で、運営会社MTGOXの元社長が私電磁的記録不正作出・同供用容疑で逮捕された件がいまだ紙面を連日賑せている。ビットコインにあまり関心のない向きには既に忘れ去られた事件ともいえるが、当初のハッキング被害説が俄かに社長の犯行へと変わってきている模様。

一部報道では自身で如何様にも操作可能だった一元管理を利用し一頃茅場町界隈で流行った?オプションのノミ屋紛いの取引を試みたという説もあったが、何れもガラス張りではなく外からは完全に見えない世界なのでこの手の悪知恵が発生する土壌にあったのは否めないだろう。

ところでビットコインといえば最近、手持ちのビットコイン資産の20倍までFX(外国為替証拠金取引)のように売買できるサービスを用意し始めたベンチャー企業も出てきている。どんなモノも創生期にはMTGOXのような事件が必ずと言っていいほど起きる素地があるが、禍根を残す一方でまた新たな創造が幾多も輩出されてくる。


遅れる石油系

先週末の日経紙一面を飾っていたのは「出光・昭シェル統合へ」と題して国内2位の出光興産と同5位の昭和シェル石油が経営統合で基本合意の正式発表した旨の記事であった。2016年をめどに統合をめざすというが、両者の統合で元売り界では首位のJXに大きく迫ることになるという。

出光が昭和シェル買収を目指し交渉に入ったとやはり日経紙一面を飾ったのは昨年のクリスマスの頃だったと記憶するが、両社の統合は6年前に当欄でも「和製メジャーへの道」と題して取り上げた上記のJXの前身、新日本石油と新日鉱ホールディングス統合以来の大型再編となる。

斯様にこうした鉱業系と比較するに石油系は大手始めとしややペースが遅い感がしないでもないが、同時にまたこうした再編劇の過程で外資メジャーの日本撤退という構図も浮き彫りになっている。下流から国際競争激化を鑑み上流問題まで睨んでの将来のメジャーを目指す観点から大手中小含めた再編も未だ途上、残る関係各社の身の振り方が今後ますます注目される。


本体上場の真偽

さて、今週気になったニュースとしては火曜日に日経紙一面を飾っていた「サントリー上場検討」と題して、サントリーHDが早ければ2018年にも上場する検討に入った旨の報か。大型買収等で膨らんだ有利子負債を上場で調達した資金で圧縮し、新たな成長に向けた経営資源を確保するという。

仮に上場した場合、その時価総額はアサヒグループHDや、キリンHDを上回る3兆円規模になる見通し。そういえばこの後者のキリンHDとも同社はかつて経営統合話が出たものだったが、重なる思惑違いからコカコーラを抜くかとも言われたメジャー睨みの大型統合話は破談になってしまった経緯もあったなと思い出す。

とはいえサントリーといえば今から約2年前に清涼飲料部門のサントリー食品インターナショナルが上場を果たしているが、その時に当欄では末尾に「今回の上場は実によく考えたもので、本家のサントリーHDはやはりというか非上場のまま上場後の同社株式をなお約6割握り、同族ならではの自由度は確保という構図か。」と書いている。

あれから2年、コーポレートガバナンス元年といわれる今年にその本体の上場話が出てくるのは冒頭にある有利子負債圧縮という本題とは違う部分でも自然な流れともいえよう。とはいえ当のサントリー本体側はすかさず同日付でこの報道の事実を否定。「これは当社が発表したもの云々」までは常套句だが、続けて「当社が株式上場について検討に入った事実はありません。」とも続けており真偽のほどはというところだがはたして。