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ブランドの光と影

さて一寸の無沙汰で光景移り変わり激しい銀座だが、先週末の日経紙・企業消費面には「銀座旗艦店、相次ぎ改装」と題して、伊ジョルジオ・アルマーニや同サルヴァトーレ・フェラガモ等の海外高級ブランドが2020年の東京五輪開催に向けて観光客が増えると見込み東京銀座の旗艦店への投資を拡大、相次いで改装に着手する旨が書いてあった。

海外の高級ブランドといえば銀座を有望市場と位置付けて、一度は本邦から撤退したヴェルサーチが昨年はホームも交えた立派なフラッグシップストアをオープンするなど再度イタリア勢の進出著しいが、先駆けて建てた同形態のアルマーニタワーも来年ではや10年が経過であるから時の流れは早いものだ。

ところで伊ハイブランドといえば、以前に見た未来世紀ジパングで「激変するイタリア」と題し、現在の食やファッションを取り巻く環境が放映されていた中でメイドインイタリーと銘打った高級ブランドのバッグが、実は安い工賃でほとんど中国人が作成しているとのドキュメント番組が告発者と共に取り上げられていたのが記憶に新しい。

この番組中ではそのブランド名は伏せてあったが、けっこう有名になった話なので知っている向きも多いだろう。(念の為、上記ブランドではないが・・)銀座に出向いた折など当該ブランド店に並ぶ品を見る度に劣悪環境で作業する中国人労働者の姿が思い出されるが、またそれを挙って狂ったように爆買いしている中国人の姿も滑稽というか複雑な気持ちになるのは否めない。


逃げ場

本日の円相場は世界経済への先行き不安の強まりから大きく買われ、前場で一時1ドル100円台と6月24日以来となる円高水準を示現した。そんなワケで日経平均も大幅続落となったが、債券市場も新発20年物国債利回りが初のマイナスをつけるなど投資家のリスク回避姿勢が鮮明になった。

ところで最近の行き場を失った投機マネーの流入先は何も円だけでなく、その矛先は一部インターネット上の仮想通貨であるビットコインにも向かっている模様。先月末の日経紙では人民元安が進む中国経済への不安を映して中国からの資金が大部分を占めているとの記事もあったが、パイが小さいだけに動きが投機的なのは否めない。

とはいえ5月には仮想通貨取引所を登録制とする改正資金決済法が成立し、個人のみならず法人までその範囲を広げてビジネスとしての伸びしろを指摘する向きは多い。上記の通りまだ時価総額という部分のネックはあるものの、様々な商機の機会は今後も加速してこようか。


物言い

本日の日経紙社会面では「株強制取得価格は適正」と題して、数年前に実施した住友商事とKDDIのJCOMへのTOBに関して最高裁が、買い付けに応じない株主から強制的に株を買い取る際の価格が低すぎると申し立てた投資ファンドなど海外投資家らの主張を退ける決定をした旨が載っていた。

TOBで不当に買い取り価格が低いとザワついた例としては、先月まで日経紙「私の履歴書」で会長が執筆を続けていた東宝も数年前に東宝不動産をTOBする際の価格に外国人株主の物言いがついて東京地裁が価格引き上げの決定を下したケースが思い出されるが、その前には西の大阪地裁ではTOBでないが、サンスターがMBOする際に不当に低価格として元株主側が公正な価格を求めた裁判が為され株主側が逆転勝訴したケースもあった。

同じMBOでは他にレックスホールディングスのケース、またカネボウのTOBなど形態は違えどこれまで斯様に多数なケースがあり、どれも比較的ファンド系に軍配が上がったケースが記憶に残っているだけに今回のケースも注目されたものだが、司法判断のニュアンスがこれを機に変わって来るのかどうか今後が注目される。


今年の総会

上場企業の3月期決算の株主総会も先週で漸くピークが過ぎたといったところだが、今年はコーポレートガバナンス・コード導入2年目となり各社も其れなりに体制整備が進展してきた。株主の要求レベルもこれによって変わってきているだけにやはりROEなどに視点が向かうパターンが増えてきている。

実際のところ総会では不祥事企業を起こした企業へは当然の厳しい声が今年もまた相次いだが、その様はやはりシャンシャン総会全盛の頃の所謂厳しい追及とは光景も可也違ったものになってきた感がする。そういった一昔前の茶番が消えた分、いい意味で反対票も急増という流れなどは自然なところだろうか。

当欄ではちょうど一年前の総会の時期に「今年のコーポレートガバナンス元年が、双方の距離を縮め好循環の起点となるのかどうか大いに期待したいところである。」と書いていたが、徐々にその効果は浸透してきているだろう。今後も改善途上のROE絡め手元資金の有効活用など対話の重要性が試されるところ。


創業家彼是

さて今週は石油限売りで国内2位の出光興産の創業家が、来年4月に予定している同5位の昭和シェル石油との合併に反対を表明する事態となった事が報じられている。所謂「社風の違い」がネックになったというところだが、株主総会日に反対を表明するという異例の事態になった。

しかし最近のニュースでは上場企業の重要案件にこうして創業家が絡むケースが多い。いまだ揉めている大戸屋ホールディングスも役員人事を巡って創業者一族が株主総会を前に経営陣に噛みついたのが記憶に新しいが、昨日の大手紙全面広告が一際目立った匠大塚や大塚家具にしてもいまだ世間の関心を集めている。

これら兎も角も上記の統合が白紙になれば経産省の国の資源エネルギー政策を睨んだ再編青写真は見直しを余儀なくされるという事になって来るが、まさにEU離脱で再度の憂き目に遭っている原油価格に需要減と併せ三重苦の構図を今後どういったシナリオで切り抜けてゆくのかこの辺が注目される。


コメダ上場

さて、本日はコメダ珈琲店を擁するコメダHDがはれて東証一部に上場となった。注目の初値は売り気配からのスタートとなりシンジケートカバーによる売り買い一致で公開価格1,960円を4.7%下回る1,867円となった。

同じく揃って本日の上場を果たした実質再上場のソラストと共に公開価格割れとなるスタートとなってしまったが、公開価格の1,960円から試算したPERは19倍強と同業の東証一部ドトール・日レスHDの約15倍や、東証一部のサンマルクHDの約14倍などと比較した割高感がやはり警戒された部分も大きかっただろうか。

とはいえ業態はコーヒーそのものに重きを置くというワケではないので上記二社ではサンマルクにより近いといえるが、大きなポーションが珍しがられる以前から時々利用してきた経緯があるだけに個人的にはどことなく愛着もある。ROEはブレが目立つもののEPSは伸びてきており株価と共に今後に期待といったところか。


コモディティー二極

昨日は英国のEU離脱決定で大揺れとなった株式市場やオプション、それにFX市場も取り上げたが、コモディティ−の方もまた然りで先週ETF人気と取り上げた安全資産とされる金が急騰する一方で、リセッション懸念を背景にオイル関係は急落の憂き目に遭った。

これによって上記のSPDRなどイートン・パーク等一部のヘッジファンドが大量に投資してきただけに応分の利益となったのは想像に難くはないが、それら以外も今回の金価格の方向性の不透明が続く裏でのETF残高漸増傾向はこの先のユーロの構図に対する不安の裏返しの表れとも取れる。

前回も日欧のマイナス金利政策など世界的な低金利環境下で利回りの低下した国債保有リスクが高まっている旨等を支援材料に挙げておいたが、これまで金利を生まないというデメリットが事あるごとに取り沙汰されてきた金もリスク分散の受け皿的役割が恒常化する可能性が出て来たか。


EU試練

周知の通り先週は英国のEUからの離脱を問う国民投票があり、その開票結果は離脱支持が全体の過半数を占めて離脱が決定、下馬評では残留ムードで一致していただけにサプライズとなったが実にEU加盟国の離脱は初めての出来事で、同時に残留を説いてきた英首相が辞任表明するなどその日のうちに大きく動揺が広がった。

大きな動揺を見せたのはやはりマーケットも然りで、FXを展開している証券会社など事前に損失シミュレーションを書いた注意喚起メールが何度も来ていたが、果たして当の英通貨ポンドは対ドルで31年ぶりの安値に沈み、比較的低リスク通貨とされる円は対他通貨で急騰とかつて何度か見た光景が再度蘇った。

寄り直後から逐一の報に一喜一憂していた株式市場も昼から下げが加速し結局1,286.33円安と16年ぶりの下げ幅を記録。225がこうなると凄いのはオプション市場で例えばディープアウトの11,000Pは寄り付き直後の2円の安値から、昼前には29円と約15倍にまで暴騰、これを始めとしここから13,000Pまで何れも寄り付き直後の安値から10倍以上の暴騰を演じることとなった。

しかし個別の投資関係はこんな感じとしても、今度どうなる世界情勢。本邦も企業など練り直し始めアベノミクスには向かい風となるのは想像に難くないが、英に限らず他国もこの手の素地がありポピュリズムとどう向き合ってゆくのかも今後の課題となってくるだろうか。


LV-exhibition

さて春先から案内を頂いていたものの、なかなか行くタイミングを逃していた紀尾井町で開催されていた「空へ、海へ、彼方へー旅するルイ・ヴィトン」展へ、過日ちょうど永田町で所用があった事からそのついでに行ってきた。

紀尾井坂を上りきったところに突如として現れる会場だが、エントランスを抜けると創業者の肖像画から初代のトランクなどクラシックな雰囲気でスタート、茶道具入れから果ては自由民権運動指導者であった板垣退助氏が購入した名入りのトランクなどまるで美術館の世界が広がる。

路は冒険、ヨット、空、列車などシーン別に展開され100年以上前の逸品が目白押しであったが、新しいところでも現代美術科・村上隆氏などコラボしたモノや、その後の芸術家・草間彌生氏とのコラボ作品など日本人勢とのコラボも話題を呼んだのを思い出す。

新旧入交じりの構成ながらスティーマーバッグやシャンパン入れだったノエ、キーポルなど何れもこれらがベースとなっている物が現在の定番地位を確立しており、モデルのみならず柄一つ取っても既に約120年以上前に登場していたダミエ柄や、モノグラム柄然りでブランド確立とはどういうものつくづく考えさせられた展であった。


夜の規制緩和

さて明日からというか深夜からは改正風営法の施行によって、音楽に合せて客がダンスを踊る方の「クラブ」営業の規制が緩和されダンスホールなど対象から外し、店内の明るさや営業時間に応じ一定の条件で深夜営業が認められることになる。

確かこの手の絡みで当欄にて以前に触れたのはちょうど二年前くらいで当時は政府の規制改革会議の提言であったと記憶するが、あれから二年での改正となった。それまでは風営法の付き合い方も二号から企画系の五号へと流れていたものだったが、その後は三号に絡んでも大阪で無罪になった例も出ていた。

とはいえ、今から3年前の六本木の大箱「VANITY」の摘発事件などクラブ狩り?が激化していた頃が記憶に新しい。既にこの前日に閉店した西麻布の「イレブン」や「alife」、それに「Vanilla」等々消えていった名店は多いが、規制緩和で今後のクラブもそのナリが変遷するのかどうか興味深い。


悪事の素地

昨日は金ETF人気から順調にその残高が積み上がっている旨を書いたが、金絡みではローカルなニュースで豊島区の「造幣東京博物館」から展示用の時価にして6,384万円という15キロの金の延べ棒を盗んだとして造幣局の職員が窃盗容疑で逮捕されたという報があった。

リースと称してレプリカを置かせオリジナルは質入れしたというが、しかし受け側も疑いもなくよく受け入れたものだと或る意味感心。他にも金絡みの犯罪では先々週にマカオからプライベートジェットを使って大量の金を密輸しようと試みた比較的大掛かりな例もあった。

金の密輸といえばたしか昨年の末だったか韓国から下関港に到着した活魚運搬車からも密輸しようとした金が見つかった件があったが、更にその前の関空で見つかった金密輸も同様に韓国からであったおぼえがある。付加価値税と関税還付、更に消費税狙いと悪知恵は尽きないが今後も増税の度にこの手の密輸事件が表面化してくる気配である。


金ETF熱

先週の株式市場は英国のEU(欧州連合)離脱懸念への不安から大きく揺れたが、こうした金融市場のリスク回避姿勢の対でファンドが逃避資金を金に振り向け、ニューヨーク証券取引所に上場する金ETFの代表銘柄SPDRゴールド・シェアの金保有残高は15日時点で900.75トンと、2013年10月上旬以来約2年8ヶ月ぶりに900トンを突破した旨が先週末の日経紙に出ていた。

この前週の段階でも保有残高は年初比で37%多く約881トンであったが、やはり増加傾向が続いている。加えてちょうど一週間前に当欄で「レジェンド復活」とした著名投資家のジョージ・ソロス氏の投資ファンドも上記SPDRのコールオプションを保有している事も判明しておりこの辺も価格頭打ち以降の残高減少に歯止めがかかっている所以だろうか。

最も旬な材料としてはやはり今週の国民投票が焦点ということになろうが、価格に関してはFRBの利上げ踏み切りを絡め踊り場とする見方も一部にある。ただ日銀や欧州のマイナス金利政策など世界的な低金利環境下で利回りの低下した国債の保有リスクが高まっている事も背景に残高漸増傾向はまだ当面継続される可能性も強いか。