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08年再来?

さて、ここ最近紙面を賑わせているものに穀物の高騰問題がある。これに関しては先に仏と米が世界的な天候異変で穀物など食料価格が上昇している問題への対応を協議するためG20による緊急会合招集の準備に入っているが、直近では先週末の日経紙に「穀物高、じわり食卓圧迫」として食用油の値上げが浸透、飲食店向けや店頭価格も上がり始め、小麦も値上がりしそうとの旨も書いてあった。

当然近年金融商品化が著しいコモデティー市場においては先にカゴではトウモロコシも大豆も史上最高値を付けているが、食料とエネルギーという二つの顔を持つトウモロコシなどは争奪戦の様相を呈し本日の日経夕刊でも「食料か 燃料か」と物議を醸し出している。ましてやここへ最近頻繁にチラつかせる機会が多くなってきた金融緩和政策では過剰流動性の波が再度作られており、ファンドも其れなりの商機を狙っているから尚更か。

さて冒頭の件だが、足元ではデフレ化著しいなかで正直何処まで原料コストの上昇分をそのまま製品価格に転嫁出来るかどうかは未知数というところ。本日の日経紙ではレアアースもあの手この手で世界中からかき集めている旨が書いてあったが、斯様に調達先を増やし必要量の安定確保を図るのは企業側の重要課題。この辺に関しては最近穀物に強い丸紅は先に米穀物商社ガビロンの買収を決めているが、従前の総花的経営からの同社の転向は競争激化もさることながらこの辺を睨んでの展開ともいえこの後に続くメジャー群の動向もまた注目されるところ。


投資セグメント

さて、今週は週初に上場している主要な商品取引員の2012年4-6月期の決算が出揃ったが、この期中の売買高が前年同期比で約2割の減少となった事がやはり手数料にも響き、果たして全社が最終赤字となっていた。この中には先に書いた東京商工リサーチの継続企業の前提注記企業もあるが、手数料の落ち込みを自己でカバーした向きもある等この辺は以前から見られる構図でもある。

恒常化している売買高減少によって取引員でもその事業内容の転換を図る向きが近年幾つか出てきているが、上場企業でも今やそのコードナンバーからはおよそ想像もつかないような事業内容に業態変更してしまっているところは幾つも出てきており、この辺は引き続き経営陣の手腕が注目されようか。

本業の落ち込みを自己でカバーしたりもともとのヘッジ事業からの派生がメインになってきた事例は何も取引員に限ったことでなく、一部上場の貴金属リサイクルや不動産事業を営む中外鉱業なども先物投資事業が今や最大の損益変動要因。ちなみに先週発表された同社の2012年4-6月期の連結最終損益は、この投資事業が足を引っ張り赤字転落となっている。

境界線が微妙ながらもヘッジに絡んだ取引で思わぬ利益が出てしまい国税と揉めた石油精製会社もある一方で上記のようなパターンもあるが、斯様に投資事業のセグメントをメインに据える向きはやはりブレも大きく、そのセグメントの巧拙如何で収益が大きく左右されるリスクが孕んでいるのは否めないところだろう。


復活と経済効果

さて、先週末の「東京湾大華火祭」が終ると一気にお盆モードに突入し、週明けから都内はさながらゴーストタウンのようになるが毎度束の間の喧騒の無い空間が平和でとても心地よい。ところで冒頭の花火大会だが昨年の中止から今年は都内各所で2年ぶりに復活するところが多く、おのおの夏の夜空を色鮮やかに染めた。

東京湾大華火祭ではやはり他とは玉のサイズの違いが鮮明、ちょうど時期的に酣だったこともあってオリンピックの五輪を鮮明な色で立て続けに打ち上げたのは圧巻であった。しかし近年この色彩やデザインも進化激しい感があり、先月末の「隅田川花火大会」では従来無かったようなパステル調の色彩がコンクールで多用されたり、話題だったパンダや天の川まで縦横無尽であった。

この隅田川花火大会だが昨年は追悼や復興をテーマにしたものが多かった訳だが、今年の復活組も被災地からの招待や被災地産品販売等復興を後押しするものがやはり目立つ。またこれら含め消費を盛り上げる花火大会の復活は経済への波及効果も大きく、東京湾大華火祭のそれは70億円規模と推計されている。これだけでも束の間のイベントとしては、あの金環日食の半分近くになる計算だからその経済効果はやはり大きいといえよう。


アルゴの暴走

昨日のNY外国為替市場ではユーロが対ドルで4日ぶりに上昇となったが、このユーロといえば先週はスイスフランに対して一時5ヶ月ぶりの高値近辺まで急上昇する一件があった。これはRBS(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)証券のトレーダーが引き起こした取引ミスによるものという。

この辺はロイターによれば電子取引プラットフォーム「EBS」でミスが発生し、他の銀行のコンピューターによるアルゴリズム取引が誘発されたことでこの急上昇がもたらされた模様。顧客資産に影響は全く出ていないとしながらも同証券の損益等について公表は無いが、金融市場ではつい最近米マーケットメーカーであるナイト・キャピタルの取引ミスで150銘柄の株価が乱高下する事態が発生したばかり。

RBS証券の財務基盤は兎も角として、このナイトに至ってはたった数十分でその屋台骨を揺るがす規模を飛ばした模様であるからやはりこの手の金融事件は異様と言われても仕方なしだろう。SECやCFTCは高速取引の実態把握に乗り出している模様だが、先にも書いたように初期段階より念には念を入れたシステムや取引でもこの膨張したマネーやアルゴリズムの前に完璧という言葉は存在しなく何れまたこの手は出て来ようか。


ロンドンオリンピック閉幕

第30回夏季オリンピック・ロンドン大会が閉幕した。閉会式も開会式同様にそこそこ素晴らしかったが、今大会の日本勢の結果は金メダルが7個、前述したようにJOCが獲得目標としていた15〜18個の半分以下に終ったものの、獲得総数は37個を取ったアテネ大会を上回る38個と史上最多となった。

しかし毎回感じるが技の進化は末恐ろしいほどで、内村選手に沸いた体操競技ではオランダのゾンダーランド選手の鉄棒など個人的に圧巻であった。彼の一つの技でも少し前などかつては成功するのが五分五分で演技に組むかどうか躊躇していた技を、開始直後から立て続けに3回連続させるという超離れ業を見せてくれた。かつての塚原選手がムーンサルトを発表してから40年、技も既に未曾有の領域に入ってきた感がある。

一方で組織委員会が絡む政策には、広くスポンサー企業も含めおよそ健全なスポーツの精神というかイメージには遠いグレーな部分も一部露呈されているが、巨額なカネが動くだけになかなかクリーンとはいかないか。

さて金メダルに話は戻るが、今大会の金メダル重量は夏季五輪史上最も重く先の北京大会の約2倍、また近年の相場高騰を映して価格も先の北京大会の約2.6倍に跳ね上がった模様だ。しかし、JOCも獲得目標を挙げるのもいいが、他国に比べるに日本の控え含めた選手への対応の特異性を見るに、日本の金メダルが獲得目標以下という原因がこの辺に無いともいえないのではないか?


業界初の上場

さて、今週目に留まったイベントのひとつに海外市場でのIPOがあったが、日本のパチンコホール大手のダイナムジャパンホールディングスの香港証券取引所への上場がそれである。注目の初値は公募価格仮条件の下限で決まっていたこともあって公募価格と同値の14香港ドルとなったが、注目はパチンコホール運営会社の上場自体が国内外で初めてというところだろう。

これで思い出すのが、かつて上場を目論んだ同じパチンコホール運営大手のピーアークである。今から数年前にたしか日興が主幹事でジャスダックに上場する準備が整っていたものの、三店方式換金システムの合法性の部分が引っ掛かって投資家保護が見出せないとして上場が叶わなかった経緯がある。

それが今回の香港証券取引所に上場が叶いしかもGEMでなくメインボードへの上場というから、関係者としてはさながら取引員が初の株式公開を果たした時のような興奮を覚えたに違いない。グレーゾーンという色の濃淡が大きく変わることは無いと思うが、おりしも規制強化の流れの中で同時に参加人口減もいわれる業界、いずれにしてもこの香港証券取引所への上場が、こうしたグレーゾーンが絡む業界を巡る制度論に一石を投じるのかどうか今後注目されよう。


システムの脆弱性

昨晩は遅くまで東証には明かりが点いていたが、周知の通りこの東証でTOPIX先物や日本国債先物等のデリバティブ取引が約1時間半全面停止するというシステム障害が発生した。ルーター故障が原因といい、一応取引自体はその後に再開されたものの国債の先物が手掛けられなかった為に現物債を売った投資家も居た模様である。

さて東証のシステムトラブルといえば、最近では東証上場200銘柄以上もが売買停止になったあの2月のトラブルを思い出す。前回これを取り上げた当欄では「〜こんな茶番を言っている間に数百億円も注ぎ込んだ自慢の高速取引とやらを少しは危惧したほうがいいだろう。」とも書いたが、果たしてというかあれから半年で今年2度目の不祥事である。

東証の1日のデリバティブ取引売買代金は約5兆円で、最近は1兆円割れも珍しくなくなった薄商い現物株を上回る規模、最近ではTOPIX先物主導で相場も振れる場合もあり、先の現物トラッキングエラーから先物裁定にも影響が及ぶ恐れが生じた事態など鑑みるにやはり立て続けのトラブルは由々しき事態だろう。

銀行等もこの手では起こっているがバックアップ体制の見直しを経てもなおこの手の障害は避けられないものなのだろうか?おりしも大和証券グループ本社等と組んで5月にはミャンマーで証券取引所の設立支援に関する覚書を締結するなど証券システム受注を固めた矢先の出来事、また足元でも大証との合併を控える身でもあり双方共にこれらが足を引っ張ることにならなければよいが何れにせよ金融インフラだけに猛省を促したい。


サヤ寄せ中

本日も株式市場は続伸となっていたが、なかでも東証値上がり率ベスト10ではソントン食品が昨日に続いての連日のストップ高で一際目立つ。昨日触れたFXプライムはTOBであったがこのソントンの場合は先週末に経営陣によるMBOで非上場化すると発表、買い付け総額は約156億円でその1株1,000円の買い付け価格に本日も鞘寄せする動きとなっている。

ところでこのMBOといえばかつて上場していたCCCがMBOを実施してほぼ1年が経過した。あれから同社は業務提携していたカカクコム株の大半を3年足らずで売却したが、この辺もMBOに伴う借入金返済を前倒しで目指すという同社の資金捻出の一環だろうか。

市場から名が消えるのと引き換えにMBOすることによって税金面やら配当やらの部分の負担は大きく減少するが、上場時とはまた違う舵取りの難しさが求められる。業界でもMBO実施の前例があるが、上場廃止後もその手腕が問われるのには変わりがないだろう。


再編化け

先週8/2からジャスダック市場で連日ストップ高の暴騰を演じていたFXプライムが週明けの本日漸く大幅続伸で値が付いた。つい最近付けた先月末の年初来安値190円から実に9営業日で株価2倍以上となったわけだが、これは周知の通りGMOインターネット傘下のGMOクリックホールディングスが同社を一株410円でTOBするとの発表を受けてそれに鞘寄せして来ていたもの。

しかしこのFXプライムに限らず最近は業界モノの株価倍増の急騰が目に付く。以前から自社株買いやらで突飛高する単発モノはあったが、先月などこの手のTOBとは違うものの、アストマックスが6月下旬にマネックスグループとの業務提携から同グループ傘下の投資顧問買収を発表して以降動きが急変、提携発表前の11,900円から7/19には43,400円までこちら株価は約3.6倍化の大化けを演じている。

以前は業界モノでも、某投資顧問が介入とかストックオプション等内部事情が絡んだ噂的な話が一人歩きし株価急騰でもその裏に具体的な政策が見えないものが多かったが、近年は合従連衡というか再編絡みの具体的な動きで一気に化ける可能性のある素地が作られつつあったという事だろう。ところで今回のTOBは上場廃止を企図していないとはいえ、上限株数を設定していない状況では事の成り行きによっては上場廃止基準に抵触しないとは限らないわけで今後の行方もまた注目される。


投資家保護と規制緩和

さて、今週目に留まった報としては日経紙金融面などでも載っていたが、東証など全国の証券取引所が「証拠金規制 年内にも緩和」として、信用取引売買当日の再利用解禁の旨がある。周知の通りマル信では受け渡し日迄は次の売買を同一証拠金内で出来なかったが、9月をメドにこの部分の契約規約を変更する規制緩和によって再利用を可能にするという。

ところでこのマル信の規制緩和で先ず思い浮かぶのが、やはり松井証券の「即時決済取引」か。これは当欄でも約一年前に触れたもので店内発注を立会外のJ-NET当日取引として取次ぎというものだったが、そのエッセンスをパクって早くも何処の証券会社でもこれが可能になる。

しかし、斯様にこの手の古くからの街金の即金サービスが堂々と一般の証券会社でやれるようになり、そこから一年で取引所側も契約規約変更の規制緩和でこれが可能になるとは時代の変化を感じる。ただ本来であれば街金や一企業が先駆けて手掛けたものを模倣するのでなく、当初より取引所側が率先してこの手のものを投資家に提供すべきであると思う。

ただもうひとつ一方で、他人の模倣でもやらないよりマシとはいえ売買の薄さに悩む各取引所や証券会社の最近の傾向はなにかこうリスク選好を煽っている感も強い。腕に覚えのある向きにはより機動的で便利な市場にまた進化したと思うが、初心者マークのなかにはこれらに則したテクが追いつく前に中毒性に嵌りヤラレてしまう向きもあろう。「投資家保護」とある部分で対の「規制緩和」、金融庁はこの辺の舵取りの按配が今後問われよう。