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EXITの真意

今月は先にヘッジファンド業界の「GAIM会議」がモナコで開催されていたが、出席したヘッジファンド会社幹部らは銅などのベースメタル含むコモディティー価格はピークに達したのではないかとの見方を示し、先月の急落が今後の下落の前触れではないかとの懸念からこの部門への投資を避けている旨をロイターが伝えている。

この中の一人ガイア・キャピタルのマネジングディレクター、コースト・ストレンジャー社長は会議の際のインタビューで、投資家の関心の高まりや急騰する価格を背景に最近相次いだコモディティー関連のIPO(新規株式公開)は高すぎるようだとして警戒を促し、最近注目を浴びたスイスの商品取引大手のグレンコアなどの上場は、バブル的様相を帯びているとみているとも伝えている。

このグレンコア、先月ロンドン市場に上場した際に当欄でも少し触れたが、そもそもがこれまで非上場を貫いていた企業の変化はやはり気になるところだろう。資源に目利きの巨大商社がココをイグジットの好機と見るのもチャートを並べてみるとより一層そういった思惑が募るところ。

この辺に絡んでは先週末の日経紙にて「商品相場の過熱和らぐ」と出ていたが、同時に直近で行われたIEAによる石油備蓄放出決定を受けた原油相場一服もその効果は長続きしないとの見方もあると書かれていた。斯様に如何様にも予測されるところだが、何れにせよ株式交換など新規の武器も駆使できるようになった訳で今後の戦略にも一段と注目となろうか。


ジパング展

さて、今週初め迄日本橋高島屋では「ジパング展〜31人の気鋭作家が切り拓く、現代日本のアートシーン」と称して現代絵画、映像、立体などの作品が展示されていた。以前に一度写真で見て気になっていた作家さんも参加しておりたまたま近くで所用もあったので一寸チェックしてきた。

今回は展示数こそ少ないながら何れもなかなかインパクトのある作品揃い。入って直ぐにはいきなり鴻池朋子氏の大作「無題」の一部が鎮座、その並びには会田誠氏の艶めかしい「大山椒魚」が掛けられていた。ZIPANGUと打ってあるだけに和モノテイストにも期待が掛かるが、山口藍氏の「道すがら」や山本太郎氏の「隅田川桜川」などあらためて実物はやはり圧巻であった。

また渡辺佳織氏「開け心」のシルクタッチな作品を始めとしたお馴染み折り紙モチーフの作品もなんとも艶があったが、彼女も含め熊澤未来子氏の「侵食」や岡本瑛里氏の「奪還」など緻密なタッチとそのメッセージ性には感心、ちなみに彼女ら女性陣は全員20代でこれから先がいい意味の末恐ろしさ?を感じる。

しかしコンテといえば、昨年の旧フランス大使館で開催された「NO MAN’S LAND」以来であったが、ちょうどこんな国難の最中で日本ブランドの信頼性が揺らいでいる折、こうした独自の文化力はまだまだ健在だなと改めて認識した展であった。


ヤリ得?

本日の日経平均は続伸し久し振りに75日線をクリヤしてきたが、出遅れポストやここ原油安で冴えなかった資源系の国際帝石も戻してきた。ところで国際帝石といえば当欄で昨年夏に取り上げた通りの大規模ファイナンス銘柄だったが、金融庁は企業の公募増資に関連した不公正な取引を防ぐ為に、増資発表後に空売りした投資家への増資で発行される新株取得を禁止する等の新規制を今秋にも導入する方針を固めている。

今迄この辺のオイシイ仕組みは2年前にも「公募増資利用型手法」としてコメントしたことがあったが、漸くココへもメスが入るという運びか。しかしそのまま「インサイダー取引」というイメージが薄いのかどうなのか日経紙に出ていた内容では金融商品取引法違反として30万円以下の過料という。

この過料なるものだが、解釈では刑罰ではない軽い犯罪のジャンルでありこの手の取引にしてこれは随分寛容な考えだなと。逆に言えばペナルティーがその程度の額で済むならば必要経費の範疇で幾らでも実行に移す輩も出てくる可能性はある。この手は線引きが非常に難しいが中途半端に固まってしまうことが危惧される。


復興カジノ

今日は何れも一服となっているが、先週末から俄かに動意付いたモノに日本金銭機械やオーイズミ等のカジノ関連株がある。何れも震災ショック後の安値からの戻りも鈍く売り直しの動きから直近ではその安値に接近、一部は年初来安値を更新していただけに、降って湧いたような「復興カジノ」なる好材料に物色難の資金が取り敢えず向かったようだ。

さて国際観光産業振興議員連盟、所謂カジノ議連であるが、昨年の夏に私案としてのカジノ法案が提示されたものの、例のスポーツ界の賭博問題勃発や加えての政局混迷が障壁となり動きが鈍かった経緯があるが、東日本大震災の復旧・復興に向け厳しい財政の支援策は焦眉の急という環境の変化がにわかに転機となった模様だ。

当初は2ヶ所ということで東京都・大阪府・沖縄県の争いがいわれていたが、宮城県仙台市に「復興カジノ」を設置し、その収益を大震災の復興財源にするという超党派議連の動向も一部報道されている。

その辺は兎も角もどの段階でこの私案が議連案に形を変え法案提出の運びとなるかだが、公営ギャンブル系は所管省庁OBの天下りがお約束、昨年の事業仕分けではないがこの辺もどさくさに紛れてカモフラージュされていないかどうかチェックしておく必要がありそうだ。


どちらのバンザイか?

さて、東穀取は先週末17日にNon-GMO大豆とロブスタ種のコーヒー生豆の2銘柄について、売買高の低迷が著しく今後も回復が難しいとして、今後は新たな限月を立てないと発表している。これで既存限月がすべて納会を迎える約1年後にはいずれも上場休止か廃止となる見通しだ。

東穀取はかつて横浜商品取引所を吸収合併したが、大義名分?でなし崩し的に延命措置を謀ってきた引継ぎ凋落商品をある程度保有期間を経て廃棄処分にしてきた。今後はココがTOCOMへの市場移管を控えて二度手間にならぬよう事前の選択集中ということかだが、両商品ともかつては当業勢の活発な商いがあった時期もあり、何故彼らが撤退していったのかその辺も再考すべきだろう。

ところで東穀取といえば期待の大型商品「コメ」上場認可の可否までもう僅かである。そんな矢先にJA全中は、先週末に現会長の後任に新潟県農協中央会の万歳会長を充てる人事を固めている。名字こそ「バンザイ」さんとメデタそうだがこの方、TPPと併せコメ先物の上場を巡る議論では前会長を踏襲し強固な反対路線を貫くとされている。

市場修復の可能性も握っているこの上場認可、政治が絡むだけに環境云々だけで語れないが果たしてJA側のバンザイ!となるか、はたまたまたも東穀取がお手上げのバンザイとなってしまうのか目先はこの結果に注目したい。


米市場波及なるか

本日の日経平均は3営業日ぶりに急反落となったが、株式市場といえば先週には東日本大震災で途絶えていた新規上場が約2ヵ月半ぶりに動き始めた。非鉄金属リサイクル事業を手掛ける「クロタニ」がそれだったが、公募価格が仮条件の上限で決まる期待値の高さに反して、蓋を開けてみれば買い物が16万株そこそこしか入らず売り気配スタート、初値は公開価格比30円安と軟調でなんとも肩透かしの結果になっている。

この公開価格割れは3/15上場のアイディホーム以来のこと。同社の公開価格は一応PERで測ってみれば6倍台と一般的には割安感が出そうな水準ではあるが、今の市場では吸収額も気にされ加えて業態の地味?さも足を引っ張った模様だ。

思えばこんな状況は一寸前のちょうどリーマン・ショック時にもあったが、当時はその後に上場して人気化したグリーがそんな低迷ムードを打破した経緯がある。今回のクロタニが上場し現時点で予定されている新規上場は下旬の5社。目先は新規上場銘柄が個人の投資意欲を喚起するシナリオより需給不安の方が先行してしまうという見方もあるが、こんなグリーのような救世主?が現れるかどうか今後の推移を見守りたいところ。

そうそう話は逸れるが、グリーといえばソーシャルゲームサイト業界では直近で公正取引委員会がDeNAを取引先のソフト開発会社の契約行為を妨害したとして排除措置命令を出している。急成長する新興業界の競争の熾烈さを垣間見た一件である。


商品バブル論と市場

直近で高値更新し破竹の勢いであったトウモロコシだが、昨晩は一時ストップ安まで叩かれる大幅調整となっていた。ところでこのトウモロコシ、昨日の日経紙社説には「トウモロコシ最高値の警告」として、食糧高騰は新興国のインフレ圧力を強め、面性的な栄養不足に苦しむ飢餓人口の増大や政情不安にも繋がるとし各国政府は対応を急ぐべきであると載っていた。

当の相場は前年同期日の倍以上に上昇しているが、先に同紙の商品面にて国際商品価格の適正水準として米国農家の採算などを考慮すればトウモロコシ1ブッシェル6ドルあたりが妥当とも出ていた。調整過程でこの辺までのコレクションがあるかどうかだが、中国あたりの買いがすかさず入り消化は早いと一般的にはみられている。

妥当値からはたして投機プレミアムの部分がどれだけ乗っているかということになるが、昨今の実需が付いてきている部分も近年は加味する必要があり、またやはりETF等の存在もあってこれは捉え方が難しい。ただ市場規模を考えれば特に金融商品組成の部分こそプレミアムが乗る余地があり、今後は先ずこの辺の対応が論議されてくることになろうか。


無矛盾性

本日の日経紙経済面には「二重ローン各論で溝」として、三党が東日本大震災で被災した企業や個人が新たな借金を抱える所謂二重ローン問題に関して独自の対策案をまとめた旨が載っていた。

これに関しては各所の債権買取や放棄といった総論では一致しているものの、公的機構新設やノンバンク支援の是非を巡る溝は埋まっていないとも書かれていたが、今迄およそ自然災害で二重ローンを免責するというある種特別な政策が実施されたという記憶が無い。そんな訳で今回は特例と捉えるなら、それこそ東電の原子力損害賠償法のそれがチラリと連想されてしまう。

ローン免除などを打ち出している党もあるが、それでは支払い済みで大被害を受けた向きとの整合性はどうなのだろう?金融機関の債権放棄とて都合のよい材料というか盾にされる恐れもある。融資制度の整備を始めとしてコトが起こる前に何も法整備が為されてこなかった政策のツケがこんな部分で回り紆余曲折は想像に難くない。


時価総額下克上・2

さて、先週末の日経紙には「時価総額の逆転相次ぐ」として、ライバル企業の時価総額逆転が株式市場で相次いでいる旨が載っていた。直近では個人情報流出問題から年初来安値を先週も更新したソニーが、1997年以来14年ぶりに日立の時価総額を下回ったという。

この辺は直近での事件も起因しているとはいえ、リーマン・ショック以降の構造改革の成否で明暗が分かれたとしており、この手では他に住生活Gが増加したのに対し積ハウスが減少と出ていた。他には新興国開拓での逆転組としてユニチャームと資生堂、いすゞとマツダ、ネット対応ではサイバーエージェントと博報堂DYがあり今やサイバーは電通に次ぐ業界2位という。

ちょうどこの時期にはよくこうした比較が行われるが今回挙げられていた企業で、2年前に当欄で同様の件について触れた際に登場していたのは日立やマツダ、それに高島屋があったが、当時はこれら全て苦戦組として挙げられていたもの。今回もマツダや高島屋はまたも下鞘に甘んじる苦戦組に入ってしまった一方で日立は堅調組に浮上となった。

こうした時系列で見ると各社の舵取りもまたよく見えてくるが、さて来年はどんな下克上が展開されるのか、また今回の日立の如く苦戦組の浮上なるか否か興味深いところ。


さて、過日は知人の医師が開院10周年を迎えたのを記念して祝賀会を開催した。前々から是非にとお招きを頂いていたので久し振りにネクタイを締めて会場となっている都心の某ホテルに行って来た。

このホテルも本当に久し振りだったが、当日は大手局のアナウンサーが司会を務め、壇上の演奏もTV等で活躍中の面々が生演奏、祝辞は今が勢いのある上場企業のトップから学会の権威までマスコミにもしばしば登場してきた彼だけになかなか何れもセレブ揃いの祝賀会であった。

来賓も紹介いただいた方は各方面で活躍する面々ばかりでさながら異業種交流会のようでもあったが、いろいろ話す中で一様に皆現況を憂いているのを感じた。医療分野では今後の移植のあるべき姿の話題もあったが、今はまだしも将来にかけて増大してくるであろう事例に公的対応は耐えられるのだろうかとか、介護問題にしても錬金の材料に使われかねない動きには危機感を覚えている。

日進月歩の技術革新とは対照的に、政治の方は混迷が続きこの辺と上手くマッチングしないさまはなんとも歯痒い。政治を話題にしている向きは少なかったが、誰もが皆思いは同じだったのではないか。


取引所の顧客考

昨日の日経紙投資財務面「一目均衡」には、機関投資家向け電子トレーディングシステムを野村証券で構築した第一人者が三菱UFJモルガン・スタンレー証券へ移籍した話が載っていた。同氏らによる電子取引システムの再構築が軌道に乗れば、証券会社の売買シェアが塗り替わる可能性があるという事で取り上げられたもの。

当欄でも何度か触れたように昨年から東証のアローヘッドが導入されたが、コロケーションサービスもスタート、総注文件数に占める高速取引の割合は当初の10%程度から今年の4月には34%を越えたと日経紙で報じられている。過剰流動性の増加や大震災の影響もあって斯様に注文件数が右肩上がりになるのは想像に難くないが、一方で個人や中小会員はすっかり蚊帳の外となった感も。

時代の趨勢もあって半ばこうした部分は殆ど無視され当然のように障害無くコトを運ぶことが出来たが、着々と大口主体というか外資の計画通りに事が粛々と遂行されているのはこれを含め昨今のリップサービスにも見て取れることである。

一連の計画は、ある意味一部投資家や一部会員の淘汰を促進させることにもなろうが、それでも基本の売買行為自体は当たり前だが変わりようも無い。遠大な誘致計画もまた変えようも無いだろうが、今後は市場に残る一般へもせめて税制面等の調整その他の再考が求められて来よう。