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米市場波及なるか

本日の日経平均は3営業日ぶりに急反落となったが、株式市場といえば先週には東日本大震災で途絶えていた新規上場が約2ヵ月半ぶりに動き始めた。非鉄金属リサイクル事業を手掛ける「クロタニ」がそれだったが、公募価格が仮条件の上限で決まる期待値の高さに反して、蓋を開けてみれば買い物が16万株そこそこしか入らず売り気配スタート、初値は公開価格比30円安と軟調でなんとも肩透かしの結果になっている。

この公開価格割れは3/15上場のアイディホーム以来のこと。同社の公開価格は一応PERで測ってみれば6倍台と一般的には割安感が出そうな水準ではあるが、今の市場では吸収額も気にされ加えて業態の地味?さも足を引っ張った模様だ。

思えばこんな状況は一寸前のちょうどリーマン・ショック時にもあったが、当時はその後に上場して人気化したグリーがそんな低迷ムードを打破した経緯がある。今回のクロタニが上場し現時点で予定されている新規上場は下旬の5社。目先は新規上場銘柄が個人の投資意欲を喚起するシナリオより需給不安の方が先行してしまうという見方もあるが、こんなグリーのような救世主?が現れるかどうか今後の推移を見守りたいところ。

そうそう話は逸れるが、グリーといえばソーシャルゲームサイト業界では直近で公正取引委員会がDeNAを取引先のソフト開発会社の契約行為を妨害したとして排除措置命令を出している。急成長する新興業界の競争の熾烈さを垣間見た一件である。


商品バブル論と市場

直近で高値更新し破竹の勢いであったトウモロコシだが、昨晩は一時ストップ安まで叩かれる大幅調整となっていた。ところでこのトウモロコシ、昨日の日経紙社説には「トウモロコシ最高値の警告」として、食糧高騰は新興国のインフレ圧力を強め、面性的な栄養不足に苦しむ飢餓人口の増大や政情不安にも繋がるとし各国政府は対応を急ぐべきであると載っていた。

当の相場は前年同期日の倍以上に上昇しているが、先に同紙の商品面にて国際商品価格の適正水準として米国農家の採算などを考慮すればトウモロコシ1ブッシェル6ドルあたりが妥当とも出ていた。調整過程でこの辺までのコレクションがあるかどうかだが、中国あたりの買いがすかさず入り消化は早いと一般的にはみられている。

妥当値からはたして投機プレミアムの部分がどれだけ乗っているかということになるが、昨今の実需が付いてきている部分も近年は加味する必要があり、またやはりETF等の存在もあってこれは捉え方が難しい。ただ市場規模を考えれば特に金融商品組成の部分こそプレミアムが乗る余地があり、今後は先ずこの辺の対応が論議されてくることになろうか。


無矛盾性

本日の日経紙経済面には「二重ローン各論で溝」として、三党が東日本大震災で被災した企業や個人が新たな借金を抱える所謂二重ローン問題に関して独自の対策案をまとめた旨が載っていた。

これに関しては各所の債権買取や放棄といった総論では一致しているものの、公的機構新設やノンバンク支援の是非を巡る溝は埋まっていないとも書かれていたが、今迄およそ自然災害で二重ローンを免責するというある種特別な政策が実施されたという記憶が無い。そんな訳で今回は特例と捉えるなら、それこそ東電の原子力損害賠償法のそれがチラリと連想されてしまう。

ローン免除などを打ち出している党もあるが、それでは支払い済みで大被害を受けた向きとの整合性はどうなのだろう?金融機関の債権放棄とて都合のよい材料というか盾にされる恐れもある。融資制度の整備を始めとしてコトが起こる前に何も法整備が為されてこなかった政策のツケがこんな部分で回り紆余曲折は想像に難くない。


時価総額下克上・2

さて、先週末の日経紙には「時価総額の逆転相次ぐ」として、ライバル企業の時価総額逆転が株式市場で相次いでいる旨が載っていた。直近では個人情報流出問題から年初来安値を先週も更新したソニーが、1997年以来14年ぶりに日立の時価総額を下回ったという。

この辺は直近での事件も起因しているとはいえ、リーマン・ショック以降の構造改革の成否で明暗が分かれたとしており、この手では他に住生活Gが増加したのに対し積ハウスが減少と出ていた。他には新興国開拓での逆転組としてユニチャームと資生堂、いすゞとマツダ、ネット対応ではサイバーエージェントと博報堂DYがあり今やサイバーは電通に次ぐ業界2位という。

ちょうどこの時期にはよくこうした比較が行われるが今回挙げられていた企業で、2年前に当欄で同様の件について触れた際に登場していたのは日立やマツダ、それに高島屋があったが、当時はこれら全て苦戦組として挙げられていたもの。今回もマツダや高島屋はまたも下鞘に甘んじる苦戦組に入ってしまった一方で日立は堅調組に浮上となった。

こうした時系列で見ると各社の舵取りもまたよく見えてくるが、さて来年はどんな下克上が展開されるのか、また今回の日立の如く苦戦組の浮上なるか否か興味深いところ。


さて、過日は知人の医師が開院10周年を迎えたのを記念して祝賀会を開催した。前々から是非にとお招きを頂いていたので久し振りにネクタイを締めて会場となっている都心の某ホテルに行って来た。

このホテルも本当に久し振りだったが、当日は大手局のアナウンサーが司会を務め、壇上の演奏もTV等で活躍中の面々が生演奏、祝辞は今が勢いのある上場企業のトップから学会の権威までマスコミにもしばしば登場してきた彼だけになかなか何れもセレブ揃いの祝賀会であった。

来賓も紹介いただいた方は各方面で活躍する面々ばかりでさながら異業種交流会のようでもあったが、いろいろ話す中で一様に皆現況を憂いているのを感じた。医療分野では今後の移植のあるべき姿の話題もあったが、今はまだしも将来にかけて増大してくるであろう事例に公的対応は耐えられるのだろうかとか、介護問題にしても錬金の材料に使われかねない動きには危機感を覚えている。

日進月歩の技術革新とは対照的に、政治の方は混迷が続きこの辺と上手くマッチングしないさまはなんとも歯痒い。政治を話題にしている向きは少なかったが、誰もが皆思いは同じだったのではないか。


取引所の顧客考

昨日の日経紙投資財務面「一目均衡」には、機関投資家向け電子トレーディングシステムを野村証券で構築した第一人者が三菱UFJモルガン・スタンレー証券へ移籍した話が載っていた。同氏らによる電子取引システムの再構築が軌道に乗れば、証券会社の売買シェアが塗り替わる可能性があるという事で取り上げられたもの。

当欄でも何度か触れたように昨年から東証のアローヘッドが導入されたが、コロケーションサービスもスタート、総注文件数に占める高速取引の割合は当初の10%程度から今年の4月には34%を越えたと日経紙で報じられている。過剰流動性の増加や大震災の影響もあって斯様に注文件数が右肩上がりになるのは想像に難くないが、一方で個人や中小会員はすっかり蚊帳の外となった感も。

時代の趨勢もあって半ばこうした部分は殆ど無視され当然のように障害無くコトを運ぶことが出来たが、着々と大口主体というか外資の計画通りに事が粛々と遂行されているのはこれを含め昨今のリップサービスにも見て取れることである。

一連の計画は、ある意味一部投資家や一部会員の淘汰を促進させることにもなろうが、それでも基本の売買行為自体は当たり前だが変わりようも無い。遠大な誘致計画もまた変えようも無いだろうが、今後は市場に残る一般へもせめて税制面等の調整その他の再考が求められて来よう。


言葉の裏

本日の株式市場は、このところ売られていた主力どころに後場からカバー等も入り4日ぶりに反発となっていたが、日経平均といえば日曜付けの日経紙には震災復興と日本株の見通しとして、ストラテジストが株価上昇は夏場以降とした旨の座談会の様子が載っていた。

あまり先の予測をあれこれ考えてもさほど意味がないとも思っているが、要の復興に絡んでは目先やはり首相の辞任時期が気になるところ。補正予算の都合や東電問題もあるだけにこの辺は市場が材料にする大きな切っ掛けとなるか。米株式の方も連日の続落となっているが、今月末でいよいよ終了となるQE2を睨んでこちらもある意味催促相場と取れる。この次のQE3があるのか否か期待論は依然多いがこの二点が目先の焦点か。

株式市場は例外なく強弱材料が混在し、その時々で適宜理由が付けられる好都合の材料を煽って売買に利用するというのがマーケットの常。短期と中期ではまた影響も違ってくるものの、震災後「至急、日本脱出を!」と言いながら海外勢は日本株を買い仕込み、「頑張れ日本!」と言いながら国内勢は日本株を売り逃げている対極の構図があったが、最終形は何れが取るかこの辺もまた興味深いところ。


現代のサマータイム

さて、今月から所謂「サマータイム」が全国の企業で始まっている。東証の実施については先に触れたが、他にも上場企業の主力どころが始業時間を早めるのを軒並みスタート、KDDIは午後を在宅勤務にしたり、主力の自動車8社などは休業を土・日曜日から木・金曜日に移すと発表するなど独自のサマータイム導入に工夫を凝らす向きも見られる。

これらの導入で個別では子育て世代など生活への影響も良い面、悪い面それぞれ問題になってこようが、分散消費という部分での経済効果に期待する向きも多い。ひいては平日需要の変化に伴って雇用形態もまた変わってくる可能性もあるなど確かに景気へのインパクトはそれなりにありそうだがここで継続性がまた問題になってくる。

いずれも夏の節電対策を主としての対応だけに、今回のこうした実施は何処も秋口までといった感じ。需要期を過ぎて各社元へ戻せば上記のような景気効果も自ずとインパクトが限られてこようということになるが、元々が副産のようなものなのでその先にまで期待を掛けるのはいささか無理があるか。

何れにしてもこのサマータイム、かつて日本では進駐軍施政下にあった当時実施されたものの、諸般のデメリット論が多く3年で廃止になった経緯がある。時を経てその環境も一変した現代、はたして今回は個別で其れなりの効果が出るや否や注目しておきたい。


固定客の強さ

さて、ボックス相場が続く株式市場の中でも週始めに書いた金融ポストのような低迷するところがある一方で、主力以外でもジワジワと強さが目立つものもあるがフレンチの「ひらまつ」もその一つ。今週は再度10万円の大台を回復して来たが、先に日本フードサービス協会から4月外食産業月次動向が伝えられた中でこの手のレストラン系が比較的堅調だったことも背景にある模様。

一方で居酒屋関係は一段と厳しかった模様だが、しかしこんなモノを同じステージで比較は出来ないものの、エッセンスの部分はさながらイタリア高級ブランド等と同じだなとも思う。この辺は2年ほど前に、自動車業界が軒並み減産体制を強いられる中をフェラーリは増産体制に入り過去最高の販売台数を記録したことや、ブリオーニのスーツが不況といわれる中相変わらずの引き合いの強さを見せていたことも思い出す。

反面、当時はBMWやベンツなどのドイツ勢は軒並みダウンし、これらの主力層が不況に抗せない縮図も垣間見られた。上記からするとそれじゃあBMW等は居酒屋か?ということになるが、ようは或る程度手が届く領域のある部分はそれだけ分布も多いので不況の影響はやはり避けられないというのはよく聞く話。

もう一つ、ブランドといえば直近で株価を上昇させていたものにティファニーがある。その背景には同社決算は当初震災の影響で売上高は15%減少すると見込んでいたものの、蓋を開けてみれば4月単月は6%増、四半期でも3%減にとどまりドル換算では7%増加のサプライズとなったことがある。上記も含めこれら好調組に共通して言えるのはやはり強固な固定客の存在だろう。

高いブランド力で価格競争に巻き込まれないという点もあろうが、ペーパー寄りでない富裕層は世間で騒がれている不況とは無縁の存在で彼らを擁しているところはやはり強いか。


感覚の変化

さて連休明けの海外商品市況で金は小動きであったが、この金といえば日曜付け日経紙けいざい解読には「現代版ゴールドラッシュ」として、ドルへの不安感の裏返しとして通貨代替や資産保全の機能を金に求める動きが続いている旨が出ていた。

この中で、テキサス大学の基金運用会社「UTIMCO」が重量20トン、時価10億ドル相当の近海をニューヨークの銀行の金庫に保有することにした旨や、ユタ州では5月から金貨を同州の法定通貨として認めたという旨が出ていたが、「UTIMCO」といえばたしかハーバード大学のそれに継ぐくらいの規模と思うが、もともとこの金は先物でロングしており昨年の波に乗って既に倍化していたものの、この先物から現引きという手段を取った事になる。

デリバティブ先進国の米国では各種の運用形態も先物が主流だが、一部現物への回帰など今迄に見られなかった動きが出て来たのは興味深い。ユタ州の事例にしても他の州へもこうした動きが波及し始めているとも聞くが、当の米国内でこの手の動きが出て来たことは昨今のドル不安が根強いものと改めて感じざるを得ない。


紙一重

さて、欧州金融市場ではスペインやイタリアなど南欧の主要国の財政懸念が再燃してきている。これら先に米S&Pはイタリアの長期債務格付けを「ネガティブ」に引下げ、スペインは与党の地方選敗北などで地方政府の財政内容に対する見直しが進んだ場合、飛ばし債務の表面化から粉飾が次々発覚するのではという懸念が再燃している

ところで粉飾といえば、こんな国家規模とスケールが違うものの最近国内ではかつて「名証セントレックス」に上場していた富士バイオメディックスの粉飾が問題になっている。ココは上場してわずか3年で市場から退場するハメになったスピード破綻であったのが、既に上場当時からアレンジャー連中の存在はあったものだ。

このアレンジャーなる言葉は直近のこの事件で彼方此方が使うようになったが、当欄では数年前から度々アレンジャーには触れていた。多くは証券系で僅かに商取のドロップアウト組も居るが犯罪色に変わりないものの、その実は高度な金融や法律知識に長け人脈もけっこう派手な面子をセッティング出来る兵も多い。はっきり言ってこの手はその辺の証券会社の役員クラスよりも切れる輩だが、何処でどうボタンを掛け違えたのかと我に返る向きも居るものの悲しいかなアングラ系の需要と青写真にマッチングしてしまう向きは意外に多い。