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ジャクソンホール会議閉幕

注目のジャクソンホール会議が先週末に閉幕したが、FRB議長は経済情勢次第で追加利上げをする可能性に言及したことで米債券市場では2年債の利回りの上昇が目立つ展開で日米の2年金利差は約5ヵ月ぶり水準まで拡大、これを受けて週明けの為替市場も円安ドル高が進行することとなった。

斯様に日米の金融政策の方向性の違いから日米金利差の拡大を材料にして円売りが続く可能性があり、投機的な円安になって来た場合の現実的な対応は円買い介入か金融政策の変更というところだろうが、一部外資系銀行では仮に日銀が更なる修正に動いた場合の円高インパクトは春先に予測したものより変動幅は小さくなるだろうとの試算だ。

一方で株式の方はタカ派寄りな内容だったとはいえ終点の見える打ち止め期待も交錯し米市場は上昇で反応、週明けの日経平均もこれを受け先週末から往って来い近い急反発を演じることとなったが、いずれにせよ次の焦点は来月のFOMCで来年末の政策金利などその経済見通しには要注目としたい。


都市部飽和状態の業界

ちょうど一週間前にクスリのアオキHDの株主総会が執り行われた。そこで見られたのは物言う株主のオアシス・マネジメントが創業家の影響が強すぎるとして創業家役員の再任に反対し独自の社外取締役を設けるなどの株主提案であったが、この光景は更にそのちょうど一週間前に執り行われたツルハHDの株主総会とほぼ同じものであった。

結果的にこのクスリのアオキHDの株主提案もツルハHDの株主提案も共に否決されることとなったが、オアシスの真の狙いはこの経営体制の刷新だけではなく業界の再編という見方が専らである。このドラッグストア業界で初の大型再編があったのは2021年2月のマツモトキヨシHDとココカラファインの経営統合であった。

このドラッグストア業界に絡んでは昨年当欄でもカインズによる東急ハンズ買収を取り上げた際の末尾で「これに限らずドラッグストアなど他の流通業界の再編も今後ますます加速してゆくのは想像に難くないか。」と書いていたことがあるが、ホームセンターよろしくこちらもオーバーストアが常態化している状況にあり常に再編の噂が絶えない。

ただホームセンター以上に各社の地盤や売りのカラーが違うところが厄介で、そういった意味では上記のマツモトキヨシとココカラファインの経営統合などは本当に相性の良いマッチングであったのだろうと思う。ちなみに冒頭のオアシス・マネジメントはこのココカラファイン株も大量保有していた経緯がありちゃっかりと売り抜けにも成功しているが、自らが絡める再編の機会を虎視眈々と狙う動きは今後も続くか。


有報に見られる本気度

本日の日経紙投資情報面には「PBRが課題 最多44社」と題し、有報に示す経営課題の項目にPBRに関して記載する企業が2023年3月期決算の上場企業で44社と前期比で42社増え過去5年で最も多かった旨の記事が出ていた。この辺はひとえに東証による低PBR改善の要請を背景にして企業側が資本効率の向上等を目指す姿勢を明確にし始めた表れか。

業種別では平均PBRがそれぞれ約0.6倍、約0.7倍の「鉄鋼・非鉄」で記述する企業が業種全体の15%を占め最も多かった模様だが、昨日のM&Aの話で取り上げたTAKISAWAなど工作機械メーカーもPBR1倍を大幅に割り込んでいる銘柄が目立つ業種だ。他に万年低PBR業種といえば銀行業もあるが、この辺は構造的な違いから他と同じ括りには無理があるか。

とはいえ斯様な企業の本気度?からPBR1倍割れ銘柄は着実に減少傾向にあり、今年の期末で1121社あったそれは今月の上旬には1070社まで減少してきている。自助努力の自社株買い等では低PBR企業ほどバリュエーションが切り上がり是正が顕著であり、冒頭の通り資本効率の向上で水準訂正に動いた場合は指数に対する寄与度も大きくなるだけに今後も引き続き低PBR各社の動きに期待したい。


M&Aの矛先

本日の日経紙マーケット面には「市場同意得た予告TOB」と題しTOBを予告する手法がここ数年で増加しつつあるなか、東証スタンダード市場に上場している工作機械のTAKISAWAに対して同社と合意しないまま市場の同意を得るという新たな戦法で買収提案をした東証プライム上場のニデックが取り上げられていた。

ニデックといえば旧日本電産時代から国内外で上場企業を含む60件以上の企業買収を成功させてきたM&A巧者では有名な企業であったが、2008年には東証スタンダード市場に上場している東洋電機製造へのTOBは同意が得られず断念した経緯がある。TAKISAWAも同様に資本業務提携を提案し昨年断られた経緯があるが、今回は同意を得られずともTOBを開始する意向だ。

ところでM&Aといえばこのケースのように日本企業同士のM&A、所謂イン・イン型が増加してきており、今年上半期の買収額は6兆8000億円と前年同期比で8割も増えている旨がちょうど1週間前の日経紙に出ていた。1兆円を超えるところでは日本産業パートナーズによる東芝、産業革新投資機構によるJSR、また名の知れたところでDHC、SBI新生銀行など数多。

総じて長引く円安によりイン・アウト型のハードルが上がってきている面もあるが、東証のPBR是正要求もこうした国内型増加に一役買っている部分もあるだろうか。冒頭のTAKISAWAは来月にも賛否の意見表明を行うとしているが、いずれにしても今回の件が試金石となり他の買収対象となり得る企業の経営戦略にも影響を及ぼす事になりそうだ。


ガソリン政策

ガソリン価格の高騰が止まらない。直近で発表された先週アタマの価格は前週より1.6円値上がりし、リッターあたり181.9円とこれで13週連続の値上がりとなっている。政府による元売り会社への補助金が段階的に縮小して以降の値上がりがやはり顕著になってきたが、来月末にはこの補助を終了する予定と経産省は発表している。

これまでの史上最高値が2008年のリッター185.1円だったと思うが、既にこの水準を指呼の間に捉えておりこの政府補助金が終了するのと前後してこれを超えてくるかどうかというところ。補助金が無かったらとっくにレギュラーベースで200円超えという試算もあったが、こうも高騰が顕著だと改めてコーティングされた各種の税金が恨めしく感じる。

ところで税金といえば、証券などでは配当において法人税を支払った後の税引き後利益を株主に支払う際に所得課税が行われるという所謂二重課税が問題視されてきたが、このガソリンも構造的には基本税額に加えて揮発油税や石油石炭税など数種の税の合計額に消費税が課せられておりこれまた税に税がかけられる二重課税となっている。

いずれにせよこの補助金終了のタイミングでまたぞろ凍結されて久しい特例税率上乗せ免除なるトリガー条項が再度思い出されるが、そろそろ特例法改正の機運は出てこないのであろうか?補助金が機械的に終了し、円安や物価高で家計購買力が低下するなか凍結解除に今はまさに好機だと思うが。


文化政策

さて今年は4年ぶりに各地の夏祭りが通常開催の運びとなっているが、昨今の物価高を背景に一部では運営資金の一部をクラウドファンディングで調達する動きも広がっている。ところでこのクラウドファンディングといえば直近で一番話題になっていたのがやはり目標額1億円を掲げてこのクラファンを募った「国立科学博物館」か。

コロナ禍の影響で柱の入場料が5分の1程度にまで落ち込んだうえ、物価高からこの2年で光熱費が約2倍にまで跳ね上がったことで500万点以上の保管品の保管環境を維持する事が困難になった事が背景にあるが、驚きだったのは何といってもその達成速度か。開始からわずか9時間そこそこで目標額の1億円を突破し約1日で2億5千万円超え、ちなみにこれを書きながら見た時点では約6億7千万円が集まっていた。

ところでこの手のクラファンでは昨年の「法隆寺」が記憶に新しい。此処もまたわずか半日にして目標額2千万円を達成し、終了時には1億5千万円を超えていた。国立科学博物館は11月上旬まで続ける模様だが、法隆寺は普段は未公開の特別拝観、国立科学博物館も非公開のバックヤードツアーへの参加、更には標本作成の体験や収蔵品に触れる機会も用意されるなど双方共に工夫された返礼品が刺さった面も大きいか。

博物館といえば欧米の場合は財団等の支援で成り立っている部分も大きく文化に対する国の姿勢の違いを感じるが、取り組みを応援してくれる新たな仲間と出会える機会にもなると科学博物館が述べている通りクラファンはファンコミュニティを作る意味でも効果的なプラットフォームともいえる。国立科学博物館や法隆寺のような状況にある施設は全国に多数存在しているのは想像に難くなく、この件が関心を持つきっかけとなりこういった動きが広がって来るかどうか注目してゆきたい。


事実上の撤退?

さてESGを巡る社会的分断についてはこれまで何度か取り上げてきたが、先週の日経紙夕刊では米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングが信用格付けリポートに記載していた企業のESGの定量評価についての公表を取りやめる旨の記事があった。同社は先月に決算を発表しているがESG関連については全体の足を引っ張っていた模様だ。

同社はこのESG分野での収益目標等も取り下げた模様で、今回の定量評価の公表停止は記載方式の変化にすぎないとしているが、昨年に同社は共和党が優勢な州からESGの定量評価を公表することに反対する旨の書簡を送られた経緯がありこの辺も影響していたのは否めないところだろう。

ESGに関しては先に反ESGを掲げる州から運用資金を引き揚げられたブラックロックのCEOもこの用語が攻撃材料として使われる為に自身としてはもう使うつもりはないと公言した経緯があるが、こうした運用会社や今回のこの格付け会社の事実上の撤退ともみられる動きで各企業のESG対応への影響が注目されるところだ。


新NISAと旧回転売買

本日の日経紙金融経済面には「乗り換え勧誘悪用恐れ」と題し、来年から始まる新NISAに絡んで投信の販売業者等が手数料目当ての回転売買に悪用するのではとの懸念が浮上している旨が出ていた。現行制度では買った商品を売っても非課税の生涯枠は減ったままだが、これが新制度では売ると翌年に生涯枠が復活するのが特徴でこの構造が悪用されるのではというもの。

当欄でこの手の投信回転売買について書いた頁を調べてみたら、2010年の8月に証券取引等監視委員会が投信乗り換えを頻繁に勧める事例が増えているとして証券会社による投信の販売状況について立ち入り検査を通じ重点的に点検する旨を取り上げていたが、13年を経てもなおこうした問題行為の懸念が消えていないということか。

「貯蓄から投資」が喧伝されこの新NISAもその非課税枠が現行制度から数倍へと拡充されたうえに非課税機関の縛りも無くなるなどまことに都合良く器は改善されてはいるものの、先の仕組み債のようにこうした流れが削がれるような金融商品の問題はマズイという事で早めに芽を摘んでおきたい金融庁の姿勢を感じる。規制緩和の弊害で麻痺した販売側の意識改革は言わずもがなだが、それと共に受益者側の金融リテラシー向上も喫緊の課題か。


団体解禁

先週末に中国政府が中国人による日本への団体旅行を解禁している。長らく期待されてはいたものの肩透かしが続いていただけに唐突といった感じもするが、実際のところインバウンドは今年の6月まで訪日客全体数は約1070万人とコロナ禍前の7割弱まで回復してきていたものの、中国からの訪日客は2割にも満たなかったのが現状であった。

こうなると真っ先に反応するのは東京株式市場で、ザッ挙げても本命ともいえる三越、高島屋等の百貨店株や、JR各社に京成等の鉄道、JALなど航空といった交通機関から土産物菓子の寿スピリッツ、中小型モノでは免税店のラオックス、インバウンド向け旅行会社のハナツアー、ABホテルの物色にシーツ・タオルの白洋舎も連動高するなどインバウンド関連株が軒並み高となっていた。

これらの物色熱は週明けも続き本日の日経平均は日米金利の上昇を嫌気し400円超の急反落となったものの、上記の銘柄群はほとんどが年初来高値を更新するなど逆行高が目立っていた。大手証券系シンクタンクではこの度の団体旅行解禁で今年の訪日客全体の消費額は約2000億円押し上げられるという試算もある。

今年の6月までの訪日客の消費額は観光庁発表では約2兆2千億円となっているが、弱保ち合いが続く円安の効果は大きく訪日客の購買力は更に増しているといえようか。とはいえ受け入れ態勢の整備などオーバーツーリズムへの課題は残るが、政府が目標としている5兆円という数字が夢物語で無く視野に入って来るのかどうか今後もこの辺に注目してゆきたい。


バービー炎上

今週は原爆が投下されてから78年となる広島と長崎で平和祈念式典が開かれ、広島では首相をはじめ過去最多となる111か国の代表などが参列した。ところでこの原爆に絡んで直近で物議を醸し出しているのが、夏休みが始まった頃に全米などで公開された映画「Barbie」で、この米国の公式アカウントが原爆投下を想起させる画像に好意的反応を示した事が批判を呼んでいるというもの。

同作品は既に先月末時点で世界の興行収入は既に約1100億円に達するなど記録的ヒットとなっており、時を同じくして公開されている原爆の父とされる米物理学者の伝記映画と絡めバーベンハイマーなる造語と共にバービーと原爆を合成した投稿が相次いでいたものだが、よりによってこの「原爆の日」を控えた時期になんともタイミングが悪かった。

このBarbieだがもう一つ、この原爆問題以前に映画に登場する地図の中で中国が主張している九段線が描かれていたということでこれもまた物議を醸し出した経緯がある。折しも中国とベトナムが領有権を争っている最中ということもあり、ベトナム国内ではこの映画が上映禁止にまでなっている。

穿った見方をするなら業界にとって旨味のある市場である中国に忖度しているというシナリオも考えられなくもないが、それにしてもそれぞれの地域のセンシティブな問題について製作側の意識の低さは否めない。逆に中国がこのベトナム側の扱いだったらどうなっていただろう?おそらく蜂の巣をつついたような騒ぎになることは想像に難くないが、いずれにせよ日本公開前に水を差した格好になってしまったのは残念である。


中古車投機

中古車販売のビッグモーターの不祥事が連日世間を騒がせているが、中古車といえば先週末の日経紙夕刊・親子スクールでは「国産中古車が海外で高値?」と題し、海外で90年代に日本の走り屋などの間で人気を博したスポーツカーがオークション等において非常に高価格で落札されるケースが出ている旨の記事があった。

海外で注目されるようになったのは言わずもがな映画「ワイルド・スピード」の影響だろうが、併せてキーワードのところでも取り上げてある製造後25年が経過したモノはクラシックカー扱いで輸入車安全的合法の安全基準から除外される所謂25年ルールも流通に寄与しているか。こうした海外人気が国内需給の品薄を招きこれが更なる高値を招くスパイラルが起きている。

同頁では中古のスカイラインGT-R価格の暴騰するチャートが載っていたが、かつて私も知人から維持に疲れた同車種の売却を持ち掛けられた事があったのを思い出す。既に15万近く走っていたこともあり全く食指が動かなかったが、驚くことに今やこの程度でも500万前後の値が付いており当時提示された値からは実に約10倍に大化けしているから凄い。

こうなるとまるで昨今のウイスキー投機のような話だが、円安の影響で更に海外からは買い易い環境にある事で物色意欲は衰えないか。そういえば直近でもトヨタが新型のランクルのお披露目をやっていたが、この車種も人気モデルは中古市場で新車の約1.5倍の値が付いているという。販売店では転売防止で購入後直ぐの売却をしない旨の誓約書を書かせるケースも出ており、これはメルセデスでもよく聞く話だ。オルタナティブの幅もここ数年で随分と広がってきたとつくづく。


BaaS

週末に米アップルが2023年4~6月期決算を発表している。アイフォーンの販売伸び悩みが懸念されていたものの、アプリ販売等のサービスの売上高拡大がカバーし売上高と一株利益共に市場予想を上回る事となった。ところでこのアップルといえば4月に始めた預金サービスの残高が100億ドルを超えたとも発表している。

このアップル預金については当欄でも5月に一度触れているが、同社は口座提供と管理を米ゴールドマン・サックスが担っており、預金利回りが全米の預金口座の平均の10倍以上となっていることに加え、アップルカードで買い物などをした際に付与されるキャッシュバックが口座に自動入金され残高に対する利息が受け取れるなど貯蓄習慣を簡単に確立・継続する事が出来るのも魅力となっている。

こうした異業種のサービスを既存の金融サービスと連携出来る新たな金融プラットフォームとして注目されているBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)だが、今年の春先に米銀破綻という悪地合いの中で東証スタンダードに上場した住信SBIネット銀行など公開価格を上回る初値となったのも同事業が評価されてのものと指摘する向きもある。

銀行やライセンスを持った事業者がキャッシュレス決済をはじめ後払いや送金などの仕組みを他の事業者に貸す事で内製化の動きという流れが顕著化すると想定した場合、同事業の市場規模は非常に広いといえ今後銀行もこうした部分での在り方が求められる場面ではその領域で先行している向きが或る意味アドバンテージになるか。