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あらためて米

国内消費の約9割を海外から輸入する小麦がウクライナ危機に因る国際相場上昇や円安で高騰が止まらない対策として政府は売り渡し価格の据え置き措置をしたが、昨日の日経紙社説には「食品価格の安定へ国産穀物の振興を」と題し、これらを鑑み食料の安定供給を長期的に確保する事を考えた場合に国産穀物の振興に力を入れるべきとの見解が書かれていた。

国内需給率がほぼ100%を誇り価格の変動も少ない国産穀物といえば先ず米が思い浮かぶが、最近この米も彼方此方での着目がじわじわと感じられる。近所の兜町に福岡で人気のお米バーガー店が最近オープンしたのも思い出したが、ドミノピザが先にピザライスボウルを発売したのに続き同業ではピザハットも最近ごはんピザMYBOXなるモノを発売している。

確かにピザ業界もメイン食材の小麦高騰で今後どうそれを安定して調達するかが課題となるだろうが、自ずとこの対極の食材に矛先が向かったのも自然な流れか。ピザ業界に限らずまた違った観点から米に着目する向きも増えて来ようが、米の生産性向上と併せ国産小麦も伸ばすべく生産支援の仕組みなど再構築が求められようか。


欧州の火種

さて、世界の中央銀行による大幅な利上げが引き起こす景気悪化への懸念がマーケットに一段と顕在化し、完全なリスクオフムードの様相を呈している。NY DOWは30000ドルの大台割れ以降も続落し6営業日ではや29000ドル割れとS&P500と共に連日で年初来安値を更新し独DAXも年初来安値を更新、またお隣韓国も年初来安値を更新し2020年7月以来の安値に沈んでいる。

中でも混乱が大きいのが英国で、今月発足の政権が公約の目玉だった大規模減税を発表するや財政悪化や更なるインフレを招くとの懸念からポンドが売られ対ドルで一時は1.03ドル台と過去最安値を更新。本邦も政府と日銀とでチグハグなオペが揶揄されているが、英も金融引き締めのブレーキを踏みながら財政拡張のアクセルを踏むというチグハグさを露呈する迷走状態になっている。

欧州といえばもう一つ、伊総選挙において右派政党が勝利しこれまた財政確保の見通しの無いまま公約のバラマキを敢行するなど政治的な安定性に対しても大きな不透明感が燻る。そういったマーケットにはどうしてもディスカウントが入り易くなり、ポンドもさることながらユーロも対ドルで依然としてパリティ割れが継続している。

先にOECD(経済協力開発機構)は来年の世界全体の経済成長率を6月時点の予測から下方修正に動いている。過去世界経済はこの度のコロナ禍やリーマンショックなどマイナス成長を何度か経験する度に金融緩和に財政出動という手段で何れも乗り切れたが、インフレが絡む今回はそれらの処方が極めて難しいだけに国際協調など含め思案のしどころだろうか。


冷凍変遷

さて、今週アタマの日経紙ビジネス面では「悩む外食 冷凍食品に活路」と題し、外食各社が店内飲食や宅配に比べて人件費などのコストを抑えやすい冷凍食品の販売に活路を見出している旨の記事があった。この冷食といえば確かに近年はロイヤルHDやリンガーハット、吉野家等々上場外食各社の取組が目立っていたが、最近では以前にも書いたように中華街の老舗まで注力してきている。

この背景にはコロナ禍で外食の機会が減った一方で、中食需要から冷凍食品マーケットの急拡大がある。去年の冷凍食品の出荷額はコロナ禍前の2019年の約3164億円から、約3919億円に750億円以上も増加し過去最高を更新しているなど数字に顕著に表れており、こうした冷食傾斜に大手百貨店やスーパーなども商機を見出している。

先月はイオンが新業態として、俺のフレンチから日本酒までユニークな品揃えで約1500品目を取り扱う日本最大級の冷凍食品専門店(@FROZEN)をオープンしたほか、今月にオーンしたライフ豊洲店も3Fの冷食コーナーで圧巻の1110種類を取り扱う。また百貨店も松屋銀座が先月に銀座アスターや銀座みかわや等の名店の味を家で楽しめるハイスペックな冷凍食品売り場(GINZA FROZEN GOURMET)コーナーをオープンしている。

しかしこのマーケット拡大も冷凍技術の進歩があってこそで、最近は一般的な冷凍庫の数十倍の速さで凍らせるという特殊技術でこれまで実現が難しかったモノも次々と冷凍化が可能になっているという。そういった事でバリエーションの方も拡大し解凍したらお店にあるメニューが食べられる時代になって来たという事だが、消費者の期待も従来の手軽さからより本格的な美味しさにその視点が移行して来るのは想像に難くなく今後もこの手の冷凍食品の伸びしろは大きいか。


基準地価と風景

本日は所用で銀座界隈に出掛けたが、この辺を歩くに国土交通省が先週に7月時点の基準地価を発表していたのを思い出した。全用途の全国平均は0.3%の上昇となり3年ぶりに上昇に転じていたが、とりわけ新型コロナウイルスの感染拡大で停滞していた経済活動が回復するなか住宅地は1991年以来、31年ぶりの上昇となっている。
   
行動制限が無くなったことで繁華街は人出が増加し観光地も客足が戻りつつある事から、東京・浅草などインバウンド絡みのところなどその期待感が反映されて上昇した地点も。また17年連続で全国の最高価格となった東京・銀座2丁目の明治屋銀座ビルはインバウンドストップで3.7%下がった前年に続いて0.5%下落した。

しかし銀座といえば先にも書いたようにコロナ禍を経て新陳代謝もより一層著しい感がある。メルサやアマンドがそれぞれ約50年の歴史に幕を下ろす一方で、ダイソーなどのプチプラ大手勢が挙ってこのエリアに旗艦店を出しワークマンも初進出を果たしている。この円安下の政府による水際対策緩和でまたこの優勝劣敗の街も風景が変わるかもしれない。


総理のトップセールス

賛否両論あるなか今日の国葬を敢行した岸田総理だが、先の国連総会出席の際に米投資家を前に講演を行い自らの経済政策「新しい資本主義」を推進すると強調、「日本経済は力強く成長を続ける。確信を持って投資してほしい。」と日本への投資を呼びかけている。日本の優先課題として、年功序列型の賃金制度見直しや女性活躍の推進等を訴え、NISAの恒久化や新型コロナの水際対策の緩和も表明した。

昨日は円安の流れを受け入れその円安メリットを生かし日本に投資を呼び込む政策が喫緊の課題と書いたが、水際対策の緩和一つとってもこれは既に総理が5月から宣言している事で、聞いた感じでは小出し感も強く正直あまり新鮮味を感じなかったが、そこそこ長いプレゼンを終始英語で行った部分は一部の投資家には多少刺さったのだろうか。

またNISAの恒久化に関しても具体的に踏み込んでいるのはコレだけでその他には?という感じがしないでもないが、恒久化はこれまで何度も見送られて来た経緯がありそれこそ3度目の正直どころではないが今回こそ期待を持ちたいもの。多くの投資家が防衛的な構えなのが少なくないのも賃金上昇期待が弱く、中長期目線に乏しい部分もあるだけにこの辺に関する施策も併せて求められようか。


伝家の宝刀効果は

注目の金融政策ウィークが終ったが、プラス金利入りが注目されていたスイス中銀は大方の予想通り6月に続き0.75%の利上げでマイナス金利政策を解除、このプラス金利入りで日本のみが世界でも際立つマイナス金利継続国となった。また英国は0.5%の利上げを発表しこれで利上げは7回連続、14年振りの水準となった。

最大の注目FOMCでは一部に1%予想もあったものの下馬評通りに3会合連続で0.75%の利上げを発表していたが、特に注目されたのは政策金利の見通しを示すドットチャートでピークの2023年が4.625%となるなどいずれも6月から上方修正されている。経済見通しの方は下方修正されており、このドットチャートと併せて見るに景気を多少犠牲にしてでもインフレ抑制の為に利上げを継続して行くという強い姿勢が窺える。

さて日銀だが、こちらも下馬評通り金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持する方針を決めた。今更の感が強いとはいえ金融政策の違いが改めて鮮明となり円相場は1ドル145円台後半まで円安が進んだが、政府・日銀は22日、1998年6月以来、約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。

遂に伝家の宝刀という感じだが、当欄で以前に俯瞰して見ると日銀と政府とで各々の政策が整合性の取れないものとなっていると書いた通り、日銀が大規模緩和の現状維持を決めたその日に円買い介入を敢行する違和感は否めず。その効果も一時的に5円ほど円高に振れたものの本日は一時144円台示現と往って来いまで指呼の間、円安の背景にあるものが不変な限り方向性は変らないワケでここは流れを受け入れ円安メリットを生かし日本に投資を呼び込む政策が喫緊の課題だろうか。


祝日取引開始

さて、先の日曜日の日経紙総合面には「株安時の損失リスクを軽減」と題し、海外で大きく株価が動いた際などに損失リスクを軽減する機会を増やす事などを目的として、JPX(日本取引所グループ)が明後日の秋分の日より株価指数先物取引などデリバティブの祝日取引を始める旨が出ていた。
   
今週はまさにシルバーウィークだが、欧米に比べて取引所の祝日数がいつの間にか多くなった日本ではイベントや非常事態等で相場が荒れても対処が困難で、オプション取引では長期の連休などタイムディケイの影響も出る。そういった意味では売買できる機会が自ずと増えるのは機会損失の防止等含めメリットは大きい。

個人投資家の属性の違いから大手証勢はサービス導入を見送る模様だが、大手ネット系中心に20社強が参加を表明している。大晦日と年初2日は当分実施しない模様というが原則土曜・日曜日を除く全ての現休業日が対象日になる予定で、祝日営業日の日中立会終了後は値洗いによる追証判定は実施しない。デリバティブの口座を持っていない向きは新たにこの口座開設の必要が出て来るが、逡巡していた向きも勉強する良い機会となるか。

前にも書いたが、国内では実に70年ぶりに取引時間の延長が実施される見込みとなっているが、今回の祝日取引の開始と合せ日本の個人投資家の置かれた環境は更に改善してゆく事になる。こうなると其の先で現物との損益通算を求める声が益々高まりそうだが、そういった促進の意味でも今回の一歩は前進といえるか。


金融政策ウィーク

本日、総務省が発表した家庭で消費するモノやサービスの値動きを見る8月の全国消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除いて去年より2.8%上昇した。消費税増税の影響を除くと1991年9月以来、30年11ヵ月ぶりの歴史的な上昇幅となり、原油価格高騰の影響で都市ガス代金が26.4%と81年3月以来、41年5ヵ月ぶりの上昇率となるなどエネルギー価格の上昇が続いている。

また輸送費の高騰や急速な円安等の影響で食パンが15%、食用油も39.3%上昇しているが、先に日銀から発表された8月企業物価指数も2020年の平均を100とした水準で115.1と比較可能な1980年以降で過去最高を記録、前の年の同じ月と比べた輸入物価の上昇率も円換算で42.5%とこれもまた急速に進む円安が指数を押し上げている。

斯様に円安が数多の指数を押し上げる悪役?になっているが、この円にとって今週は注目の金融政策ウィーク。本日はスウェーデン中銀が1%の大幅利上げに踏み切っているが、来る22日にスイス中銀が利上げをしてプラス金利入りとなれば円だけがマイナス金利と世界で際立つ事になる。また更に注目されるFOMCにおいてはインフレ上振れリスクの顕在化でその利上げ幅を巡る予測が喧しいが、これを経てドル円の相場水準も壁越えとなって来るのか否か先ずはその辺に注目したい。


TOB乱戦模様

さて、青果物ネット販売のオイシックス・ラ・大地が給食運営のシダックスに対し先月末からTOBを始めているが、これがなかなかの乱戦模様となっている。そもそもの買付価格が開始時点の株価を大幅に下回るという稀なパターンで筆頭株主とも応募契約を結んでいないという何とも不透明なケースであったが、果たしてというか当のシダックス側からこのTOBへの反対意見が発表されている。

予てよりオイシックス以外の企業から協業の提案があり比較検討が必要な事や、株式の取得価格が時価より低い事などを理由に挙げていたが、この企業こそコロワイドを指しておりフードサービス事業買収の提案が為されていた。しかしこのコロワイドといえば2年前の大戸屋に対する敵対的TOBが記憶に新しいところで、大戸屋側の抵抗虚しく資本市場に長けたコロワイド側が粛々とTOBを成立させた経緯がある。

おまけにその過程で大戸屋側が苦し紛れの業務提携を発表した相手もオイシックスであったのも何かの因縁でこの参戦が注目されたものだが、つい昨日この買収提案をコロワイドが撤回するという意外な幕引きとなった。今後は取締役会や大株主の投資ファンドの対応が焦点となるが、何れにせよ株主間契約の有効性含め企業統治の在り方が問われるケースとして今後の動向にも目が離せない。


サプライズのコア上昇

注目された8月の米CPIが発表され果たして前年同月比8.3%の上昇となった。前年比ベースでの伸び率は前の月からやや縮小し2ヵ月連続で鈍化したがたが、前月比ベースでは横這いからプラスになった。コア指数は前年比、前月比共に前の月からは伸び率が拡大、ガソリン価格は下落するも指数全体のおよそ3割を占める住居費等コア指数が0.6%上昇したのは懸念すべき点となった。

下馬評ではインフレ上昇のピークが来た事を示す数字が出て、ピークアウトから鈍化に向かう方向に期待がかかっていたものだが斯様にこれが見事に裏切られた格好となった。これで次の市場の関心は来週のFOMCということになるが、大方が予想しているところの利上げ幅0.75%も今回の発表で一部証券会社など1%の大幅利上げへの可能性を指摘する向きも出て来た。

FRB議長は先のジャクソンホール講演でも「痛みを伴っても」という表現をしていたが、今回サプライズだったコア指数の項目が下がる程度まで景気が悪くなっても利上げ継続を敢行することになるのか。先の8月雇用統計も極めて強かっただけに、利上げで多少の雇用が失われても容認されるとも取れ痛みを伴うステージへの下地も整いつつあるか。


鎖国から開国へ

本日の日経紙マーケット面では、昨日の東証プライム市場で年初来高値を付けた銘柄の数が148銘柄と前営業日から32銘柄増えて6月8日以来、3か月ぶりの多さとなった旨が書かれていた。円安のプラス効果が意識される製造業などの輸出産業と並んでとりわけインバウンド関連の強さも際立つ展開となっている。

この頁の一覧でも挙げられていた小売りからは三越伊勢丹HDに高島屋の百貨店の双璧が年初来高値を更新し、旅行関連からはJALやハナツアージャパン、JR九州などがいずれも本日も続伸しこちらも年初来高値を更新していた。これらの背景にはいわずもがな日経紙一面にも載っていた政府の水際対策の上限撤廃報道がある。

しかし他のG7並みに円滑な入国が可能となるように水際対策を緩和すると首相が宣言したのが今年の5月のこと、その後新型コロナの新規感染者数が統計上世界最多と記録するに至り水際対策が如何ほどの意味を持つのか誰もが疑問符だったが、この期に及んで漸く上限撤廃への道筋が見えてきたか。

ともあれ足元の円安で海外からは日本はモノが安い国に映っているのは事実。今の円安にブレーキをかけるには金融政策の正常化か開国?しかないワケだが、意固地になっている金融政策が当面動きそうもない今、急激に進む円安対策という意味でもこの開国での爆買い復活に期待したいものだ。


動くに動けず

さて、歴史的な円安水準が続くなか先週末にかけては日銀に財務省と金融庁など情報交換の三者会合を開催し為替市場の動向や今後の対応についての意見交換をしている。これに絡んでは財務省の財務官が斯様な相場の動きが継続すれば必要な対応を取ると明言、更に翌日にも日銀総裁と総理大臣が会見を行い急激な動きを牽制している。

後者はトップ同士の会見ということで介入警戒感からやや円を買い戻す動きが出たものの、威勢よく明言した財務官のように果たして実際にこの段階で円買い介入に踏み切る現実味は如何ほどだろうか?円買い介入に際しては外貨準備を取り崩して介入に充てる事になるが、米国債なども絡むためにかつてよく行われていた円売り介入とは桁違いのハードルが控える。

また周知の通り日銀は頑なに金融緩和を続けているが、これだけ頑なな緩和継続の一方で円安は困るから何かしようという事自体にそもそも無理がある。マクロ政策が円安になるような時に介入を敢行すれば目敏い投機筋の格好の獲物になるのは火を見るよりも明らかで、この辺は90年代後半にやった円買い介入の結果が物語っている。

しかし近所でミサイルを飛ばされたり軍事演習をされたりのやりたい放題に「断じて容認できない」とか「誠に遺憾」とのコメントを繰り返す事しか出来ない日本だが、この為替市場でも必要な対応を取る準備があるという表明も空虚感漂う。このまま為す術なく98年安値さえ更新してしまうのかどうかだが、何れにせよ先ずは明日の米8月CPIに注目というところか。