52ページ目

重点フォローアップ国

昨日の日経紙法務面には「仮想通貨、申告漏れにメス」と題し、暗号資産を巡る税務処理に国税当局が監視を強め大規模な税務調査などを手掛けている旨が出ていた。今や暗号資産の取引は日本でも急増し、日本暗号資産取引協会によれば3年前に8千億円強であった取引額は今年の5月には実に5兆円を超えていた模様だ。

暗号資産に関する税の専門家も黎明期だけに少ないのを逆手に取り法的にグレーと見られる節税策などを謳う業者も増殖している模様だが、この手の暗号資産はマネーロンダリングにも格好の素材として予てより挙げられている。マネロンといえば公表されているリスク・ランキングでは19年に米の一つ下の73位に位置していた日本だが、昨年には69位へと順位を上げ前回から100位に改善した米との格差が開いてきている。

こうした順位の変動を裏付けるように日本のマネーロンダリング摘発件数もここ10年右肩上がりで推移しているが、上記の暗号資産やスマホ決済などの普及でその手口も次第に複雑且つ巧妙化してきている事もあり、リスクランキングの順位が上がった事を軽視せずに踏まえ欧米並みの危機意識を改めて喚起するところだろうか。


捲土重来?

さて、周知の通り本日招集された臨時国会で自民党総裁の岸田氏が第100代首相に選出された。先の総裁選は下馬評を覆す?ような結果とも取られたが、結局は異端?ともいわれる河野氏を以てしての改革路線よりも安定路線を今回は取った感は否めないところで、その辺はこれまで明らかにされている所謂「3A」の意向が色濃く反映されそうな旧態依然の人事にも見られるところ。

斯様な政治イベントではマーケット関係者もヤキモキするところだが、週を通じて続落した先週の日経平均は既に菅総理が退陣表明をする前の水準にまで沈み結局往って来いとなっていたが、本日もこの流れは変わらず6日大幅続落となった。この背景には外部環境の悪化もあるものの、冒頭の通り新政権に対する改革への期待が後退し上昇を牽引した投資家中心に資金を引き上げる動きもあるのは否めないところか。

投資家目線では政治に安定より変化を求めていた証左でもあるが、確かに新総理のいうところの財政再建も突っ込みどころはあるし金融所得課税強化なども捉え方によっては「貯蓄から投資」の掛け声に逆行する悪手?とも取れないでもない。何れにしろ3年の任期、新総理には同じ轍を踏む事の無きよう各所の舵取りをお願いしたいところである。


オルタナティブでウイスキー

さて、今月アタマの日経紙・プラス1の「何でもランキング」はウイスキー知識であったが、この低正答率の4位には昨年8月に香港で行われた英競売会社ボナムスのオークションに出品され日本のウヰスキー1本の落札額として当時の世界記録となったサントリーホールディングスの「山崎55年」の落札価格を問う問題が出ていた。

世界的な日本のウイスキーへの評価の高まりでその輸出額は2010年の約17億円から2020年には約271億円とここ10年で16倍に。そのため国内では手に入り難くなった素地のところに、世界中に溢れた過剰流動性資金を背景に図らずも投機の対象となりその熱は上がり続けるばかりだ。ちなみに冒頭の落札価格、答えは驚きの8500万円であったが昨年6月に発売されてからわずか2ヵ月でその値段が約25倍以上に大化けした計算となる。

そういえば16日付の当欄で書いた「逸品会」でも同会限定で「希少ウイスキー4本セット」と称し、山崎25年に竹鶴25年それにクラウニングカスクとマッカラン30年のセットが約130万円で売られていたが、山崎25年だけでも巷の相場はだいたい140~170万円で流通しているワケであるからこれまた投機目線で見たら即買いのそれこそまさに「逸品」だろうか。

今から3年ほど前にも当欄では世界初のウイスキー・インベストメント・ファンドが設定1年で30%を超える評価益を上げていた旨を書いていたが、個別の銘柄では知識も必要になる為にメーカーの株式に投資する動きも見られ、MSCIワールド指数を米英仏の主要ワイン・ウイスキーメーカー5社の平均株価は10年前を1として見た場合、既に5を超え大きく上方乖離しておりオルタナティブ投資の枝葉もまだまだ伸びしろがあるといったところか。


自助努力

今年もふるさと納税で早くもおせちの案内が多彩になってきたが、先週末の日経紙一面には「ふるさと納税 勝者は」と題し、総務省が返戻品競争バブルを重く見て所謂3割ルールなどの規制厳格化を打ち出して以降、一時は制度変更に伴う減収がみられたものの2年連続で増収となった自治体もあるなど特産品を売り出す好機とみて新制度にうまく適応し知恵を絞り受け入れ額を増加させた「勝者」の工夫などが取り上げてあった。

この記事の中には書いていなかったが、返戻品を巡っての総務省と遡及適用などを問うたバトルで記憶に残っているのはやはり大阪の泉佐野市か。昨年は特産品の泉州タオルなどを推していた記憶があるが、直近ではふるさと納税型クラウドファンディングで外部企業を誘致しそこで創られた製品を返戻品とするというふるさと納税によって企業支援をし新たな地場産品を生み出す取り組みなどをスタートさせている。

辛勝した訴訟のその後の動向が注目されていたものだったが、これまで地場産品を「持てる者」だけの有利性が不公平感を燻らせていた問題を斯様な取り組みによって新しい特産品作りというところで格差を埋めてゆく制度になるという期待感はある。一方でこの夏に認定要望を出した関空拠点のLCCで利用できるピーチポイントについては大阪府から認定されなかったようだが、果敢に攻める企画力を背景にした同自治体の動向は今後も目が離せない。


腐っても銀座

先週は国土交通省が纏めた今年7月1日時点の基準地価が発表されていたが、全用途の全国平均は0.4%の下落と2年連続の下落となっていた。住宅地が下げ幅を縮めたのに対し商業地は前年度から下げ幅を広げており、コロナ禍の打撃が大きい飲食店やホテル需要の減退が続き全国で55%にあたる2846地点で下落、大阪圏など中心に下落が目立っていた。

昨年は新型コロナウイルス感染拡大の最中所謂「夜の街」と名指しされ前年比5%のマイナスとなった新宿歌舞伎町が長期にわたる緊急事態宣言などが響き10%以上の下落率で首位に、またコロナ禍によるインバウンド商売の直撃を背景にこちらも前年比5%以上のマイナスで下落率上位二つにランクインしていた銀座もこれに続く2位、3位にランクインしていた。

特に7丁目あたりは飲食街が犇めき合っているだけに下落が最も大きくなっており1年前に比べ地価は9%下落、その下落率も昨年の5.9%から拡大していた。とはいえ路の数本でその光景はがらりと変わり、メインストリートに近い好ロケーションの空き物件は賃料の値下がりを好機と見て勝ち組?の手当が進んでいるのを目にするが銀座ならではの下方硬直性が改めて感じられる。


コロナ禍のスタイル変化

さて、総務省が先週末に発表した8月の全国消費者物価指数は前年同期比で横這いとなり、前月まで12カ月連続で下落していた物価は13ヵ月ぶりに下げ止まった。しかし依然として上がらぬそれが欧米を恒常的に下回っているのが改めて鮮明になるが、同指数といえば先に行われた5年に一度の調査品目の入れ替えで約30品目が追加除外されている。

今回はやはりというかコロナ禍における消費スタイルの変化が見え、ザッと挙げても追加項目にはソファ、クッションが入り、料理の時短傾向という事なのかシリアル、味付け肉、カット野菜、更にはオリンピックで大人気となった冷凍餃子も追加され、コロナ禍によるイベントの中止などを背景に写真撮影代も追加となっていた。

他に目立ったところでは相次ぐ自然災害も多発している事で屋根修理費が追加となり、超高齢社会を反映し葬儀料も追加、近年のジェンダー問題の観点から女児スカート、それに男児用ズボンが除外されこちらは子供用ズボンに統一された。また女性の社会進出で公立・私立の幼稚園保育料が除外され学童保育料が追加されている。

また今月はアップルが恒例のイベントで新型アイフォーンの発表を行っていたが、こうしたスマホの普及で除外項目の方には固定電話や携帯型オーディオプレーヤー、ビデオカメラ、電子辞書、料理の講習代まで除外となっていた。依然としてデフレ脱却は遠い道のりだが、また5年後どういった物が追加され何が除外されているのか気になるところ。


育たない土壌

さて、本日21日は今年7月に米グーグルが主要株主と合意していたところのスマートフォン決済のスタートアップ企業であるPring(プリン)の買収が完了となる日だが、斯様な海外勢による日本のフィンテック企業買収が相次いでいる旨が「国内フィンテック青田買い」と題し先週末の日経紙・金融経済面にも載っていた。

本邦勢の決済サービスといえば頻繁にテレビのCMなどで目にするpaypayはじめとしてd払いや楽天ペイ等々大手の乱立状態にあって、上記のプリンは決済サービスの中では失礼ながら今一つ抜きん出た存在感に欠けるというのが個人的な印象だったが、決済ビジネスへの伸びしろへの高い評価と割安感を背景にガリバー的存在が目を付けて触手を伸ばしたというところか。

ところでグーグルによる本邦勢の買収劇といえば、数年前に日本企業に出資を仰ぐも評価が認められなかったロボット開発スタートアップ企業のSCHAFTを同社が買収したのが記憶に新しいが、斯様に積極的にリスクを取れる国内投資家も少なく足元の利益や実績を重視する根強い傾向にあり、M&AやIPO時の企業価値評価も低くなり易く成長企業が国内で育ち辛い土壌にあるといえるか。

同頁には直近であった米決済大手ペイパル・ホールディングスによる後払い決済のペイディ買収も載っていたが、このペイディもわずか数社という日本の数少ないユニコーン企業の中の一社であった。実際に同社以外のユニコーン企業の中にも既に米有力ベンチャーキャピタル数社から資金調達している向きもあり、今回の相次ぐ買収劇はSCHAFTの事例から数年経ても旧態依然としている日本企業の目利き力の課題が改めて問われるケースであると考えさせられる。


秋の逸品会2021

さて、今年の春に続いて「秋の逸品会」も御招待いただいたので先週末に冷かしがてらに会場に赴いた。「三越スペシャルコンテンツ」ではエントランス入って直ぐのブースに丸紅エアロスペースが取り扱うビジネスジェットなどの販売が行われていたが、ドアマンに案内されたパーキングの直ぐ隣でもコーンズ・モータースがロールス・ロイスやフェラーリ等々の最新モデルを一堂に集めての展示・販売を行っていた。

面構えが一段と厳つくなった?ゴーストの最新モデルも置いてありまさに芸術品とも思えるボディーを一瞥していたら、「ぜひ座るだけでも・・」と観音開きのドアを開けてお声掛け頂いたのでお言葉に甘え身を委ねてみたが流石に溜息の出る心地良さである。ロールス・ロイスといえば今年5月くらいに1~3月の販売台数が116年の歴史で最高を記録したと発表していたのを思い出したが、成る程ゆうに3,000万円を超す斯様なモデルが今年は前年比でほぼ倍増と飛ぶように売れているという。

他の高級車勢をみても国内ではJAIA(日本自動車輸入組合)によれば1~6月の上半期でフェラーリが前年比で30.2%増、ポルシェが同16.3%増、ランボルギーニが同12.9%増といずれもが統計のある1988年以降で過去最高を更新しており国内の日系メーカー8社の新車販売が11.2%減と落ち込んでいたのとは対照的である。

当欄では年初より「揺るがない富裕層」としてアートオークションから高級ブランドまで席巻しLVMHなど上半期純利益が前年同期比10倍を弾きだしている旨を書いて来たが、今回の展では超高級車市場も富裕層の消費意欲が不変なのを改めて目の当たりにした。今週は日経平均がとうとうバブル崩壊後の高値を更新してきたが、株高効果も背景に富裕層関連ビジネスは今後も更なる盛り上がりが続くのは想像に難く無いか。


ハイブランドも参入

昨日の日経紙・金融経済面には「NFT 著名ブランドに波及」と題し、先月の仏ルイ・ヴィトンのNFT(非代替性トークン)を活用したスマホ向けゲームリリースや、伊高級ブランドのドルチェ&ガッバーナも今月下旬から女性用ドレスや宝飾品、腕時計などのアート作品の競売をする予定などNFTがハイブランド群にも波及している旨が載っていた。

このNFTに関しては当欄でも5月頃に取り上げた事があるが、上記のヴィトンのゲームなど創業者の生誕200年を記念したプロジェクトの一貫といい、キャンドルを集めてゆくそのステージではヒーリング系のBGMが流れ森のいたるところにはヴィトンのモノグラムをあしらった花?が散りばめられているなどなるほど同ブランドらしい構成となっている。

D&Gの方はオークション開始価格など明らかにされていないが、その辺は兎も角もこの数カ月でも老舗のクリスティーズがNFTアートを扱ったり上記のように大手どころのハイブランドも挙って参入している。斯様に急速な広まりに資金もまた急激な流入を見せていることから随所で付くその価格も適正か否か疑問符が付くが、いずれにせよ黎明期だけに今後の枝葉には期待したい。


手枷足枷

先週の日経紙・グローバル市場では「米SEC 迫る判断の時」と題し、米でビットコインに絡みSECが先物連動型のETFに柔軟な姿勢を示している事を背景にビットコインに連動するETFの上場申請が相次いでいる旨が出ていた。既にCMEにビットコイン先物が上場している事から確かに可能性は高そうだが、それ以外の部分については依然として規制強化路線は不変のようだ。

先週もSECは米最大の暗号資産交換所を運営するコインベース・グローバルに対し、現在計画中の買い手に年率4%の金利が付く暗号資産関連商品「レンド」についてこれを導入した場合は提訴すると警告しており、これを受けた同社が同商品の導入を早くとも10月まで延期する方針を示した事でこれを嫌気した同社株価は下落の憂き目に遭っていた。

斯様に上場している限り甘んじて受け入れなければならない件は数多あるが、本邦は価格変動の大きさや企業収益の安定性を問題視し東証が仮想通貨交換業者の上場審査自体を受け付けておらず、ナスダック市場で約6兆円の時価総額を誇るコインベースは羨ましくも映る。斯様に主要市場への上場機会一つ取っても手枷足枷だが、上場カードを持てない日本は自ずと資本再編を模索しなければならない環境下にあり改めて日米の土壌の違いを感じる。


初の銀行対象敵対的TOB

さて、先週にも取り上げたがこのところ関西スーパーマーケットや道路舗装最大手のNIPPOなどTOBの発表が相次ぎ、先週は対象銘柄が軒並みTOB価格にサヤ寄せする急騰を演じていたが、これらに続いて前回の当欄でも少し触れた通りSBIホールディングスが新生銀行の株式を大幅に買い増すべくTOBを実施すると発表している。

これを受け同社の株価はTOB価格にサヤ寄せすべく、先週末の比例配分のストップに続いて週明けの本日も大幅続伸し年初来高値を更新して引けている。旧長銀の新生銀行といえばかつては旧日債銀のあおぞら銀行との合併を目指していたもののこれが破談に終わった経緯もあったが、こちらも再編思惑の再燃か揃って年初来高値を更新していた。

同行も米投資ファンドのサーベラス支配が長らく続いていたが、破談劇からもう11年である。それは兎も角もこれまた先週書いた関西スーパーマーケットの例に見られるように従前は友好的な立場を築いていたものの、今回のケースのように競合証券会社との提携など信義にもとる?行為から何れもTOBに踏み切られているケースが多い。

先週末の発表前から2営業日で3割超の急騰とはいえ同行のPBRはそれでも未だ0.45倍程度、非上場となれば公的資金の絡みから金融庁も期待が膨らむというものだが、その金融庁は既に先週末SBIに対して新生銀行の主要株主認可を出している。同意なきTOBと喧しい展開で、同行は週内にも質問状を送付する運びだが先ずは今月中に明らかになる諾否の行方を見たいところ。


市場に問う

さて、既に先月末でエイチ・ツー・オー リテイリングの傘下企業と経営統合を発表している東証一部の関西スーパーマーケットだが、先週末には同社に対し同じく同社の大株主でもあるディスカウントスーパー・オーケーが買収提案する事を決めた旨が報じられている。これを背景に先週末に終日買い気配で売買が成立しなかった同社株は、今週TOB価格にサヤ寄せする格好で週明けから連続ストップ高の急騰を演じ上場来高値を更新していた。

この報で思い出すのが、先に当欄でも取り上げたDCMホールディングスによる同業の島忠に対してのTOB実施中のところに対抗する形で家具大手ニトリが参戦した件か。結局は愛の力よりカネの力の方が勝った?か鳶に油揚げを攫われる形で同社を手中に収める結果となったが、こちらは5年超しの因縁で予定している経理統合も株式交換という事で全く同じ構図では無いもののこれに劣らぬ争奪戦である。

スーパー業界といえばこのコロナ禍の巣ごもり消費で足元では好調に見えるものの、上記のホームセンター業界よろしく少子高齢化で出店余地が限られるなか競争が激化、加えてネット通販勢との競争も激化しEC対応の投資も課題となるなか、先行したイオンなどに見られるようにこちらも再編の機運が広がっているのが現状だ。

しかし先のニトリ然り今回のケース然り、また本日もSBIホールディングスが新生銀行にTOB実施の報が飛び込んで来たが、最近は上場企業間でも従来は禁忌とされてきた敵対的TOBを積極的に打って出るケースが本当に目立つようになってきた感がある。昨年の島忠を巡る争奪戦では、結納まで済ましていた両者の縁談を途中から参戦したニトリが白紙にして結局同社を手中に収める結果となったが、今回の参戦劇でも撤回意向は無いとしている関西スーパーの心変わりはあるや否や今後も注目が怠れない。