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旬なTOB

本日も日経平均は大幅に4日続落と下げ止まらないが、そんななか逆行高の急騰で目立った個別といえば船井電機で比例配分ストップ高となり2,000万株近い買い成り行き買いを残して引けていた。背景にはコンピュータ・ビジネス書籍出版の秀和システムが早期の経営立て直しを目指す同社に対してTOBを実施、918円というTOB価格にサヤ寄せした格好だ。

ところでM&Aといえば2020年の日本で届け出のあったTOBの件数はM&A助言レフコによれば57件と19年比で9件の増加となっていたが、その買い付け金額は19年比で8割も増加し過去最高水準となった模様で、今年に入っても既に1〜2月で17年の年間金額を上回るなど活発している模様だ。

冒頭の船井電機の場合は昨日の取締役会でもこのTOBに賛同する事が決議されている通り敵対的ケースではないが、当欄でも昨年取り上げた前田建設工業による前田道路へのTOBや、今年に入ってからは直近の日本製鉄による東京製綱へのTOBなどいずれも敵対的TOBとなっており最近は従来禁忌とされてきた上場大手間でもこの手のケースが目立つようになった感がある。

昨日も持ち合い株の合理性がコーポレートガバナンスコードを背景に一段と問われる事になると書いたが、斯様な持ち合い解消など背景にM&Aに絡む活動は活発化しており上場企業のみならずアクティビスト本体が中堅どころを狙ってTOBを仕掛けている最中の案件もあるなど喧しく、噂ベースでも水面下で動いている話が複数入ってきており今後もこうした動きはますます顕著化する事は想像に難くない。


炙り出される持ち合い株

さて昨日の日経平均は先週末に続いて600円を超える大幅続落となったが、そんな急落の中でも逆行高し年初来高値を更新していたものにNECがある。顔認証技術を活用して熟練医師でも判断が難しい病変などを高精度で見つけ出す事に成功したとの報が背景にあるが、もう一つ同社といえば香港市場に上場する半導体関連の「華虹半導体有言公司」の全株式売却を先に発表している。

同社はIFRSを採用しているために純利益に変動はないもののその売却益は581億円にのぼる。この手では三菱マテリアルもまたSUMCO株を売却し21年3月期には126億円の売却益を見込んでいるが、斯様に大手の所謂政策保有株の売却が進行しており先週の日経紙には2020年4月から今月中旬までの売却益の合計は20年3月期比で5割増しになった旨が出ていた。

来る東証再編の上場基準も睨んで今後は政策保有株の売却要請も進むと思われるがもう一つ、上場企業の持ち合い株が日本株全体の時価総額の約5%を占めるといわれているなかコーポレートガバナンスコード改定を背景にその保有合理性が一段と問われる事にもなるだけに今後も最後の炙り出しが促進される事になろうか。


金融政策株価明暗

さて先週行われた米FOMCと共に注目された日銀金融政策決定会合は、金融緩和長期化を睨みETFの購入を柔軟にしたり長期金利の変動幅を事実上広げたりして緩和の持続力を高める政策修正が行われる事となったが、特に前者のETF買い入れ政策変更は日経平均へのネガティブインパクトが大きく週末と本日の2営業日で1,000円を超える急落をもたらしている。

即ちETFは原則年6兆円としていた縛りを無くしその購入対象は日経平均型を止めTOPIX型に一本化するというものだが、個別では最も高寄与度で吸い上げ顕著とのイメージの強いファーストリテイリングは後場から急変、その株価は97000円台からものの30分程度で90000円スレスレまでの急落を演じ本日も4000円超の大幅続落と2営業日で10000円を超える暴落を演じた。

ネガティブインパクトといえば買い入れ上限据え置きとなったREITの個別もまた軟調展開を強いられたが、一方で許容する長期金利変動幅拡大との決定で貸出事業の収益改善期待から18日は銀行株の急伸が目立ち、翌日の週末は三菱東京UFJFG、三井住友FG、そしてみずほFGのメガバンク群が揃って年初来高値を更新していた。

予てより下げ相場の過程でも日銀によるETFの買い入れがパタリと止まった旨でマーケットはその「布石」にザワついていたものだが、やはり次に進む公表となると改めてその反応も顕著になるもの。出口を見据え保有構造の正常化に向けた応分の副作用もあろうが戦略の試行錯誤はまだまだ続くか。


復帰後の道のり 

本日は東芝の筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネージメントとファラロンらアクティビストによる株主提案を審議する臨時株主総会が都内で開催された。同社は先月に2021年3月期の連結純利益見通しを上方修正し配当も上積みすると発表しているが、当欄でも昨年触れたところの定時総会運営を巡っての事務処理等の不適切処理や議決権行使を巡り一部圧力があったとの疑いに絡んだ株主側要求による異例の臨時総会開催となった。

この件でこれまで東芝側は集計作業その他について調査を実施した事で更なる調査の必要性は無いと反対していた経緯があったが、果たしてエフィッシモの提案が賛成多数で可決された。欧米等では電子的議決権行使が主流となっている現代において旧態依然な郵送形式に加え株主総会が集中する特異な形態という問題も背景にあったものの、やはり最も基本的な株主の権利を損ないかねない部分の是正は喫緊の課題ともいえる。

今後は6月の定時株主総会で結果が報告される予定となっているが、一方で昨年11月公表の新経営方針に関してファラロンから出されていた議案に関しては賛成少数で否決された。先にめでたく?二部から一部へ悲願の復帰を果たした同社も再建途上で株主構成など大きく変わりその影響から緊張関係が続いているが、一部復帰が株主との新たな関係を構築する契機になるか否か引き続き注目される。


サイダーとガバナンス

さて、当欄では昨年の11月にドン・キホーテがファミリーマートにTOBを仕掛けた際に当時の社長が知人に自社株の購入を不正に推奨した疑いで東京地検特捜部が動いている旨を取り上げたが、先週に行われた初公判の罪状認否ではその起訴内容を認め知人へのストロングレコメンドであった事が明らかになっている。

末尾では同氏の突然の退任もこの辺が絡んでいたのか否かと書いたが、トップがインサイダーに関与するというレアケースであった。インサイダー取引といえばもう一つ、先週の日経紙法務面にもデンソーとの業務提携に絡みマザーズ上場のモルフォ株を巡るインサイダー取引訴訟の判決も注目を集めている旨が出ていた。

こちらも元役員から従業員持ち株会に目を付けられた社員まで複数名対象となっていたが、一審では金融庁の認定が全面的に否定され一律の線引きに待ったが掛かった格好となった。今後の経緯が注目されるケースだが、何れにせよ企業側のこの手の規制に対する更なる周知徹底含めガバナンス体制の強化が今後も益々求められようか。


媒体の変遷

本日も日経平均は6日続伸となりザラバでは先月25日以来3週間ぶりに3万円の大台に乗せる場面があったが、ちょうど1週間前の日経紙・投資情報面には「下げ経験なくリスク膨張」と題し個人投資家のリスクテークの現状が載っていたがその冒頭にはインフルエンサーが勧めていた銘柄を買ったが塩漬けになったという投資家の話が出ていた。

さてこのインフルエンサーといえば先週はツイッター上で著名な投資家が、ジャスダック上場銘柄の株価を不正に操作したとして金商法違反の疑いで逮捕された旨の報道があったばかり。保証金に絡んでの犯行なのか増担保規制解除目的の操作だったというが、同氏には実に5万を超えるフォロワーが控えており以前より同氏の銘柄には注目が集まっていた経緯がある。

時折金融界にも的を射た?苦言も呈していたが逮捕されてしまっては元も子もない。ネット上での株価操作といえば少し前になるがH・Pで一世風靡した大物仕手筋をバックにチラつかせ煽り数十億も抜いた事件があり現代ならではの仕手戦を見たと思ったものだが、あれから更にネット証券口座は急増しSNSも急速に発達してきた近年では投資家のツールも自ずとそういったモノへ傾斜が著しくつくづく時代の流れを感じざるを得ない。


変動行使価格

先週末の日経紙マーケット面では「人気の増資 株主に不利?」と題し従来の新株予約権に比べ行使が進み易く資金調達のメドが立ちやすい行使価格が動くMSワラントなどの新株予約権の発行が増加している旨が出ていた。ここではジャスダックのINESTが取り上げられていたがなにぶん二桁の株価だけにその変動率が話題になっているようだ。

これを発行する企業も一般に知名度の高いモノも少なくなく、日経紙に出ていた以外でも例えばこれも株価が超低位となってしまったAV機器老舗のオンキョーホームエンターテイメントや、あの「いきなりステーキ」を展開するペッパーフードサービスも同ワラントの発行を発表しているが、いずれも株価が下落トレンド中で不安定な値動きが繰り返されている。

同ワラントはあのライブドアがニッポン放送株取得の為に発行したMSCBに非常に顔が似ているが、公募等との違いは価格が引き下げられた段階での権利行使で大量の新株発行から急激な希薄化が起こり得る点で、また行使次第で払い込みのタイミングもムラが出て来る或る意味非常に不安定なファイナンスともいえる。

極端な言い方をすれば同ワラントの類は引受先証券会社の取りはぐれは無く、逆に既存株主は常に損失リスクを抱えるファイナンスともいえるだろうか。ちなみに上記のライブドアのファイナンスでは引受先のリーマンは貸株でザッと100億円以上の利益を上げたが株価は一貫して下落、最後はこのライブドアは破綻し投資家の株券も紙屑に、果てはこの手で彼方此方暴利を貪っていたリーマンまでもが破綻し全員が残念な結果で終ることとなった。


あれから10年

毎年この時期には防災啓蒙が活発化してくるが、本日で東日本大震災からちょうど10年が経過した。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で政府主催の追悼式が中止となり自治体主催の追悼式も同様に縮小ないし中止を余儀なくされるところも多かったが、今年は参列者を減らすなどコロナウイルス感染対策をとったうえで2年ぶりに開催された。

昨年は丁度この時期にコロナパニックで株式市場が暴落、大震災による原子炉のメルトダウンで当時の株式市場がパニックになったのを思い出させたものだったが、今年は先月起きた福島県沖の大きな地震に加え、先のみずほ銀行の大規模なATMトラブルも大震災直後に義援金の振り込みが集中した事によるシステムトラブルを思い出させ、何やら3.11を決して忘れてはならないと節目で暗示されているようにも感じるのはいささか考え過ぎか。

ところで上記の義援金といえば以前はこれが主流であったが近年では被災自治体へのふるさと納税やクラウドファンディングも定着しつつあり、某大手ふるさと納税サイトからは約30の災害で累計70億円の寄付金が被災地へ届けられたという。まだまだ永続的支援やコミュニティーの再構築等々課題を挙げればキリが無いが、私たちに出来る事を永続的に続けてゆきたいものだ。


金融分断

本日の日経紙金融経済面には存在感低下が指摘されてきた英が上場誘致の背積極化に乗り出した旨が出ていたが、英金融といえば先の日曜日の同紙にもEU離脱で事業の前提になる規制が変わりEU投資家離れなど金融分野の英国側への影響が如実に表れた事で金融取引のシェア低下に直面している旨が出ていたが、シティーの地位低下が英経済や世界のマネーの流れに及ぼす影響が懸念されている。

同頁にもCBOEの集計データが出ており、欧州株の売買占有率において昨年末には43.5%と2位の13.9%のフランクフルトを大きく引き離し首位に君臨していたロンドンであったが、完全離脱後の今年1月の同データでは21.7%とほぼ半減し4位だったオランダに首位の座を明け渡している。

英とEUの間で金融機能の分断が進行すれば域内全体に負の影響が及びかねないともいえるが、分断といえば一方でアジアでは米中対立の影響からIIPO企業が上場先として香港を選ぶ動きが顕著になり、米政府の制裁を受ける中国企業にも本土からの買いが膨らんだ事で香港取引所は純利益が過去最高となった模様。金融分断を巡っての明暗模様とも取れるが、何れにおいてもリスクとして燻り続けるという部分は否めないところで今後もこの辺は注視しておきたい。


ジェンダー世界標準への道

さて、昨日は米ニューヨークで1904年に実施された婦人参政権を求めるデモが起源とされる「国際女性デー」であったが、この日はヨーロッパの一部では日本の所謂「母の日」という位置付けの国もある。日経紙でも特集ページでは各所女性トップの対談や企業の全面広告等と共に日本の男女格差を取り上げグローバルでこれらを是正するうねりが起きている旨も出ていた。

その中で意思決定の場に女性を増やすとの項があり欧米企業のケースが幾つか出ていたが、当欄でも先月に女優の社外取締役起用を取り上げた際に末尾でこの辺に触れている。この日の一面にも「女性役員、2年で1.6倍」と題し主要企業で女性社内役員は2年で1.6倍に増加し、先に触れた社外取締役として起用する例が大半だった日本でも生え抜きの女性役員が増え始めた旨が出ていたが、それでも上記の欧米のケースに程遠い感は否めない。

先に東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長による女性蔑視発言が炎上し辞任にまで追い込まれた過程ではスポンサー企業が不快感をあらわにした旨がニュースになっていたが、既にこれらの企業ではジェンダーに関する配慮はビジネスにおいて常識となっているという証左で上記の件に絡んでも今後の各社の取り組み姿勢に期待したいところ。


出資証券乱舞

本日の日経平均は週末の米株式急反発を受け寄り付きこそ急反発して始まったもののあと失速し3日続落で引けたが、121円安のうち中身はファーストリテイリングの57円とソフトバンクの51円の2銘柄で108円押し下げるという高寄与度銘柄によるもの。そんな中個別で先週から地味?に目立っているのはやはり日銀株か。

同株は年明け早々に24,610円と80年代のバブル期以降での最安値を更新し後もダラダラと出遅れ感著しい動きだったが、先月末から突如として動意づき3月に入ってからは4日連続ストップ高の離れ技をやってのけわずか1週間でその株価は2倍化したものの、ザラバで年初来高値を更新した先週末からは一転してストップ安となり週明けの本日も終日ストップ安とジェットコースター相場を演じている。

バリュー株など物色の波が一巡し最後に目を付けられたか否か、確かに日経平均がバブル期以来約30年半ぶりに3万円大台に乗せてきたのを考えると買い進めたETFの運用益増加など勘案するに究極の好業績出遅れ銘柄とも取れなくもないが、政府が半分以上を出資する出資証券の乱舞は違和感が付き纏う。

ところで昨日の日経紙一面を飾っていたのがチャートは語るで「迫るバブルの足音 緩和、見えぬ出口戦略」と題した記事であったが、バブル期に40倍以上にまで大化けした経緯のあるこの日銀株の突然の物色はやはり過剰流動性によって引き起こされた金融相場を象徴するような動きといってもよく上記の日経記事も妙に実感が湧いてくるというものだ。


自販機彼是

さて、一昨日だったか朝のニュース番組にてこのコロナ禍で人と接触しないというところに主眼を置いた自販機が続々と登場している旨が放映されていたが、その内容も様々でやはり今の時世を反映してのマスクから営業時間の制約などを背景にしたラーメンなど今ならではのユニークなモノが見られる。

また蜜になり易いイベントものに絡んでは先のバレンタインの時期に新宿高島屋のエントランスにてカカオサンパカの自動販売機が登場したのが話題になっていたが、昨年宮下公園がリニューアルしオープンした渋谷MIYASHITA PARKではこれと似た感じでホワイトデーまでの期間限定で真珠のアクセサリー類の自販機が設置された模様だ。

話は飛ぶが以前ドバイに行った際に「金」が自販機で売られていたほか、別の自動販売機ではジュースを買ったところ搾りたての果汁に皮付き生オレンジが入っていたのに感動した覚えがあるが、虎ノ門ヒルズビジネスタワーでも生食用の牡蠣や車エビの自販機が登場した模様で日本でもこの手のモノが自販機で買えるようになってきたか。

自販機メーカーの業界団体によればこのコロナ禍で外出自粛が続くなか、足元の自販機の出荷台数は例年の7割程度まで落ち込んでいる旨を目にした事があっだが、そうしたなか斯様に新形態で需要を掘り起こそうという動きが広がり始めている。上記の自販機はいずれもタッチ決済だが、現在開発中のモノもAR技術を駆使した自販機からスマホ購入で取り出し口も自動開閉の完全非接触自販機も登場予定という事で今後も要注目というところか。