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現物急増の下地?

先週末の日経紙商品面には「白金ETF残高最高水準」と題し、プラチナの現物を裏付けとしたETF(上場投資信託)の残高合計が世界的な低金利環境下のなか、金と比べた割安感などを背景に投資家の継続的な買いから年初比で4割増え過去最高水準となっている旨が書いてあった。

それに伴い世界のプラチナETFが裏付けとして保有する現物は年初から25トン増加して88トンになったが、前回プラチナETFが過去最高を記録したと当欄で取り上げた今年の4月時点で73トンであったからそこから約半年一寸で15トン増加したという事になる。

減産対応もままならないなか欧州を中心とした世界的なディーゼル車販売の不振を背景に歴史的安値に甘んじている白金だが、先週には日清紡が燃料電池車の発電装置向け触媒について白金使用料を三分の一に減らした新素材開発の報があった。斯様な陰極まる環境下でのETF残高増加が復活の下地となるか否か引き続き動向を見守りたいところ。


追加売却への壁

さて、先週末の日経紙マーケット面の銘柄診断では2020年3月期の連結純利益予想の上方修正を好感し4か月ぶりの高値となったかんぽ生命株が取り上げられていたが、このグループでは日本郵政株の上昇をもっとも願っているのが復興財源確保を狙っている他ならぬ政府の面々だろうか。

かんぽ生命が4か月ぶりの高値を付けた先週末はこれにツレ高し出来高を急増させながら反発していたとはいえ、前回同様の件を取り上げた7月末の株価から3カ月以上経ってなおほぼ同値水準と冴えない。政府が売却予定の保有株で4兆円計画の残り1兆2千億円以上を確保するにはやはり前回同様、売却までの需給緩和を勘案しても10%以上の値上がりが最低ラインとなってくる。

斯様な状況で追加売却に向けた政府の作業も事実上ストップしている状況だが、先ずはグループ全体のコーポレートガバナンス体制の再構築が何所で一区切りつくのかが焦点となると前回書いた通り、投資家の不透明感が払拭され信頼が戻ってこない限り株価の回復も覚束無いだろうか。


遠のく風物詩

今週は某回転寿司チェーンの前を通った際に「価格高騰なんのその!かに祭り」なる宣伝を見掛けたが、カニといえば先週解禁された日本海のズワイガニ漁の初セリでは鳥取港での競りでブランドカニ「五輝星」が、カニの落札価格としてはギネス記録を塗り替える世界最高値500万円で競り落とされた旨が各紙で取り上げられていた。

ちょうど昨年の今頃に当欄では「季節の味覚が危うい」と題し、ズワイガニとタラバガニの輸入価格が過去最高値となっている旨を書いたが、アジア諸国の嗜好変化に加え日本海では今年も稚ガニの数が過去20年間で最低の水準と生息数は減っており資源量は2年後までに更に2〜3割減る見通しと先週の日経紙にも出ていた。

ウナギの高騰はもう何度も取り上げているが、先月末はサンマが鯛よりも高くなった旨を書き、このカニも昨年に続いての高騰と通年で丑の日、サンマ祭りや鍋におせち等々節目のイベントに不可欠なモノが次第に高根の花になりつつある。競り落とされた冒頭のカニは銀座の料亭に出荷されるようだが、こういったブルジョワ向けは兎も角も一般向け水産物も受難の時代になりつつあるか。


全部高相場一服

本日の日経紙商品面には「金、3か月ぶり安値圏」と題し、足元での米中貿易協議の進展期待や米国の景況感の改善などからマネーが株式などのリスク資産に向った事で、金の国際指標であるニューヨーク先物が今月に入って調整色を強め直近では3か月ぶりの安値まで下落している旨が書かれていた。

ここまで相場を牽引してきた一つにETFがあるが、先週はETFの最大銘柄であるSPDRゴールドシェアから1日の減少幅としては3年ぶりの高水準となった13トンが流出した模様。9月末段階で世界のETF残高は半年で13%も増加し2808トンと、IMFが保有する金の量とほぼ同じとなっていただけに揺り戻しも相応というところか。

斯様に先行きの不透明感が一時後退、マイナス金利でのバブル化が急速に意識され金や債券が調整色を強めるに至った事で、先に当欄でも書いた金・株式・債券の全部高の構図から株が一人勝ちとなっている状況だが中央銀行の不気味な継続的積み上げも進行している様をみるにこの構図もバブルだったと片付けるのはまだ早計か。


仮想通貨操作

さて、直近ではスノーボードの元オリンピック選手が大麻取締法違反の疑いで逮捕されたというショッキングなニュースがあったが、今朝のTVでは有名な金融トレーダーのKAZMAXなる人物が麻薬取締法違反の疑いで渋谷区にあるクラブから出てきたところを逮捕されたというニュースが流れていた。

同氏は仮想通貨の売買が盛んだったビットコインバブル期に所謂マスコミが煽った”億り人”なる造語と共に頻繁に取り上げられたが、その勢いに乗じて同氏に肖りたい投資家を集めた会員制オンラインサロンを立ち上げ最盛期には5000人を超える会員を煽り”サロン砲”なる価格操作の手口を使い仲間内で私腹を肥やしたという黒い噂が報じられた事もある。

ところで仮想通貨の意図的な操作といえば、先週は米の大学教授らによって或る特定の市場参加者がテザーを使ってビットコイン価格の操作を行っていたとする論文が発表されている。その規模は両者で全く違うものの、国内では仮想通貨は金商法の対象外となっている事で罰則は無いだけに改正法施行まで先行参入した向きの中にはヤリ得だった輩は相当数居るのは想像に難くないか。


1%包囲網

先週末の日経紙夕刊・十字路では「外為法改正 悪魔は細部に か」と題し、10月に閣議決定された国の安全上重要な企業に対し株式の保有比率が10%以上になるなら事前届け出を求めてきたものを、1%以上と厳しくし外国資本からの出資規制を強化する外為法改正案が書かれていた。

ここでは中国を念頭に米などと歩調を合わせて目を光らせるという米に忖度する旨も書かれていたが、もう一つ近年は株主要求が通り易くなったのを背景に重要提案を目的とする株式の新規・追加取得の集計が過去最高水準になっているのにみられるように、世界の「物言う株主」が日本企業への投資を増やしている事への防衛?の観測も一部出ている。

この事前届け出対象となる株式保有割合をG7各国で見てみると緩いところでフランスの33.3%、従前の日本と同様の10%がドイツ、もう少しキツいところでイタリアの3%があると先月の日経紙にも書いてあったが、この3%前後でも企業への重要提案が通る事例もあるだけに1%という数字を弾きだしたのにも合点がゆく。

とはいえ機関投資家への配慮から経営参画しない投資については免除が新設されているものの、その具合的な線引きや審査の実効性など課題は多い。上記のように安保上のリスク管理の側面と投資誘致の規制緩和のバランスをどう図ってゆくのかまだ紆余曲折がありそうな感も否めないところ。


フォーエバーではなかった?

本日の日経紙社説には「流通業は閉鎖の次の一手を」と題し、冒頭はアパレルなど流通業に店舗閉鎖の嵐が吹き荒れているとの書き出しであったが、店舗閉鎖といえば先月末で米フォーエバー21が日本の全店舗の営業を終了し完全撤退した。完全閉店セールと題しファストファッションとはいえ全品50円の張り紙と併せ空虚な在庫処分そのものの様相を呈していたが、さほど話題にもならずにひっそりと消えゆくさまは開店当時に想像も出来なかった。

思い出せば今から10年前に当欄では黒船来襲の如く同社がH&Mと共にファストファッション市場を席巻、激戦区の原宿に1000人を超える列を作って出店を果たし当時の松坂屋銀座店でもグッチが撤退した後にココが入る運びの旨も書いたが、まさに盛者必衰とは斯様な光景のことか。

ココはイオンモール等のSCにも入っていたが米国では消費を牽引してきたSCがそれらを支えてきたテナント小売店がネット通販に押され集客力低下を背景に苦境が鮮明になっており、国内もゾゾタウンなど新興ネット勢の破壊力は凄まじかったがSCのみならず百貨店との蜜月関係も破綻しつつある。

ファストファッションの中で成長率を維持しているのが唯一ユニクロくらいであるが、他の競合も近年はエシカル消費の流れでファストからH&Mが先行したエコやZARAが取り組むサステナブルへと傾斜しつつある動きも見られる。生き残った新興勢もまた新たなフェーズに入って来たというところか。


改正と投資誘致

昨日の日経紙社説には「ガバナンスの実効性上げる会社法改正に」と題し、情報開示の負担等の課題は残るものの政府が株主総会を形式ではなくより対話の場にする見直しや、株主一人が株主総会で提起できる議案数を10に制限するなどの会社法改正案を閣議決定した旨が書かれていた。

ココには過去に野村ホールディングスに対し社名を野菜ホールディングスに変える等の提案が大量に出された旨が出ていたが、これ以外にも取締役の社内呼称はクリスタル役?とするとか、オフィスの便器は全て和式とする等々100項目にわたる一般的理解を超える株主提案が為されていた記憶がある。

今回の改正案でもまだ米などと比較するに緩いとする意見がある一方、日弁連などは提案権の不当制約等でまた意見を異にするようだが、概ねガバナンスの潮流に合せるような改正案となった事で改めて自社のそれを再考する機会となり、投資家にもこの強化をアピールし海外からの投資を呼び込める狙いが叶うかどうか今後も注目したい。


三強の野望

さて、先週は旧興銀系の不動産会社ユニゾを巡るTOB合戦を取り上げたが、TOBといえば規模が桁違いに大きいものとして直近でそれを計画している可能性があると話題になっているのが仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンによる米宝飾品大手ティファニーへの買収提案だろうか。

買収提案額は提案前の値に22%のプレミアムを乗せた1株120ドルといわれ、この報を受け当のティファニー株は前週末比30%以上も急騰しこの提案額を早速上回って引けたが、同社の経営陣にはLVMH擁するブルガリゆかりの人脈が居る関係もあって一連の買収案仲介の背景にはブルガリの影が見え隠れするとの噂も出ている。

LVMHは此処を手中に収める事により他のスイスリシュモンやケリング等との競争に備えると見られているが、冒頭の急騰劇では一日で実に時価総額が約4000億円も膨らむような規模案件だけに実現が叶えば欧州企業による今年最大の買収案件となる。折しも3強の一つケリングもまたスイス高級時計ブランドの買収観測が浮上しているだけに、今後の再編と併せその勢力図変遷にも注目しておきたい。


2019ハロウィーン

今年も恒例のハロウィーン本番となったが、先週末の日本橋界隈では仮装した子ども達が周辺の老舗を巡る微笑ましい光景が見られた。一方で渋谷では年々大騒ぎの度合いが増し昨年TV等でも取り上げられた通り警察出動機会も増えてきた事例も鑑み、周辺の小売店が区の要請を受け先週末に続き夜間の酒類販売を自粛する方針を決めている。

絶好の商機も斯様な機会損失に転換してしまい、そんなワケで今年は集う人々の手にするドリンクがアルコールから映える?タピオカに変っていたようだが、これまでのマスコミやメディアの煽りがハロウィーンにおけるこうした動員に拍車をかけていた部分も否めないだろうか。

そんなワケで今年は幾分自粛ムードもあって地味目な印象も受けるが、その市場規模もバレンタインの上鞘に転じた2016年の1345億円をピークにして2017年が1305億円、2018年は当欄で1200億円台にまで減少すると推測と書き、果たしての1240億円であったがさて今年は如何ほどになるのだろうか?

ところでハロウィーンといえば5年前の日銀によるハロウィーンのサプライズ緩和で市場が狂喜乱舞しDOW、S&P500共に史上最高値を更新したのが記憶に新しいが、今年はそれを前にしてS&P500は約3か月ぶりに史上最高値を更新している。株式市場で云われるハロウィーン効果でここから更に一段高へと今年もアノマリー通りの展開となるか否か注目したい。


戦線拡大事情

さて昨日の日経紙企業面では「ユニゾTOB混迷増す」と題し、旧興銀系の不動産会社ユニゾホールディングスを巡るTOBにおいて当初のHISやフォートレス・インベストメント以外にも複数の投資ファンドが短期間のうちに次々と同社をターゲットにする異例の展開を見せている旨が書かれていた。

同社に関しては8月にもTOBを仕掛けていたHISに株主からの応募が無く不成立となった旨に当欄でも触れていたが、当時ホワイトナイト的存在であった米投資ファンドのフォートレス・インベストメントも買い付け期限を4度も延長する過程で両者間での条件面での対立が浮上するややこしい展開となっている。

ブラックストーンなど後発組の買収提案賛否についての回答期限が迫っているが、金融経済面にも出ていた米エリオットなども積極的に質問を経営陣に突きつけるなど何れもイグジットを睨み活発化してきている。その背景には運用成績停滞という焦りも一部あるとみられるがこれらが複雑に絡み合い今後も戦線拡大は想像に難くないか。


増税後初の密輸

さて、10/24付ゴールドニュースでは福岡空港を経由して韓国・仁川から金塊計9.5キロをカートのフレームの中に隠すなどで密輸しようとしたとして、福岡県警や門司税関は関税法違反の疑いで韓国人を逮捕した旨が載っていたが、利鞘狙いのこの手のケースでは消費税10%になった増税後では初の事例となった。

金密輸に関して前回触れたのは昨年5月の約32億円を荒稼ぎした金密輸団の事件であったが、これもたしか韓国人グループであった。約32億円の稼ぎといえばその売却額は実に約400億円にものぼる計算だが、近年はLCCのアジア便が増加し運搬コストも下がり摘発されても消費税罰金相当の納付で済む緩さが日本を主戦場にしている。

全国の税関ではこの増税を前に金密輸への警戒を強めていたのは想像に難くないが、昨年の罰則強化で引き上げられた罰金も上記の韓国では10倍で金塊没収という現状を考えればまだまだ旨みのある市場という位置付けは不変で財務省など関係各所の対策は急務だろうか。