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大手にも波

さて、今週は週明けの日経紙一面に「証券大手、人員を削減」として大手証券各社で人員削減の動きが広がっている旨が載っていた。直近では三菱UFJモルガン・スタンレー証券が全社員の約2割の希望退職者を募集するがこれは今年2度目、また野村證券やみずほ証券も数百人規模の人員削減に踏み切り、大和証券も今年4月以降およそ550人の社員を主に営業部門へ配置転換という動きが見られる。

先に東証が超高速システムを導入してからというものその後は中小のディーラーがお手上げで飽和状態から職探しが横行したが、プライマリーまでもが環境悪化してきている昨今はこんな波が大手にも押し寄せ、一寸前なら営業職など投信販売で使い道がある銀行やまた保険関係など引き合いがあったがこれも既に買い手市場になっている。

しかし配置転換と粛々と片付けてはいるが、現場から離れていた次長クラスが無機質な部屋で研修という風景はなんとも荒涼感漂う。取引で例えれば、相場に見切り千両で他へ飛び出すことが出来る向きはまだいいとして、最後まで残る向きはさながら維持率割れで強制決済されるのを待っているパターンも多い。

火曜日にもコメントしたような本日まで売買代金は4日連続で9,000億円割れというこんな薄商いの環境下では個人向けもキツイが、上記の通り大手の旨みで優位にあったプライマリーなど主力のビジネスも環境悪化が表面化して来ており、その上に大手はリーマンショック後にファイナンスで高い株券と引き換えに投資家からガッツリと掻き集めた資金も枯渇しつつあるのが現状。

まあ人員削減は国内に限った事でもなく、海外でも大手中心にこの嵐が吹き荒れゴールドマンなど今年のボーナスは最低でも20%のカットということだが、相場産業ゆえに山高ければ谷深しというところか。


頼みのアジア勢

本日の日経紙には「奮発消費 世相映す」として、依然として厳しい個人消費を取り巻く環境下で貴金属や美術品、輸入自動車など高額品の売れ行きが好調な旨が載っていた。同紙によれば日本百貨店協会が昨日発表した9月全国百貨店売上高は前年同月比2.4%減と3ヶ月連続のマイナスであったものの、美術・宝飾品・貴金属は同1.1%伸びて6月から4ヶ月連続のプラスとなった模様。

詳細で自動車では英ロールス・ロイスや独メルセデス・ベンツ等も出ていたが、他にも価格帯で更にこれらを上回る伊ランボルギーニの「アヴェンタドール」も多数の予約で納車まで1年半待ち、英マクラーレン・オートモーティブでも3,000万円近い新型がロールス・ロイス並みの60台近く入っている旨を他紙でも見かけた。

この手は先立つ物がないと手も出ないワケだが、アッパーミドルクラスを見込んで百貨店各社は宝飾品等の販売を強化、外商も強化しより高級な商品を求める消費者に応えるとしているが、自粛反動というスポット的な国内より根強い期待はやはり一時のバブル期にある中国勢あたりが視野に入っているとの見方もある。

この中国、月初から株式市場が一週間もの間休場となった国慶節では、期間中の小売、飲食業の売上高が前年同期比で17.5%増になったと発表されている。伸び率は鈍化した模様だが全面的に売れ行きが良く、特に金価格下落で値下げされた宝飾品が売れたという。欧米ブランド株式は直近でキツイ調整に見舞われたが、日本の百貨店と共に目先の年末商戦で彼らに対する期待は依然大きい。


コマばかりの日足

昨日も一寸触れた「オリンパス」が怪しげな内情に本日も引続き乱高下となり、その売買代金も1,100億円超と商いの方もまたスゴイ。これだけで東証一部売買代金の軽く1割を超えているワケだが、こんな1銘柄で1割を超えられてしまう東証売買代金の方は8,400億円弱と連日で今年の最低を記録している。

この薄商いで動かないのが日中取引、毎度海外をそのまま映す形でマド空けのスタートが恒例で、引けてから日足を見てみれば一目瞭然でコマがパラパラと点在する有様。結果上記のオリンパスのような一部個別に一極集中してしまうワケだが、これらが平均を決めるというものでもなく要は海外が日経平均を決めているようなものである。

この辺に関しては、先週の12日付け当欄で「続く夜間の伸び」として末尾に「イニシアチブを取れる参加者が不在で、日本市場が自力でトレンドを形成することはないのが日中の実情であるとすれば、活況な夜間取引はその裏を見せられているようでもある。」としたが、まさにこれが実情。

しかし自国で動かない株というのも考えもので、この辺が改善しない限り証券各社の苦悩もまだまだ続きそうだ。


商習慣の壁

先週の日経紙一面には13日から「M&Aに賭ける」としてここ最近のM&A事情が載っていた。確かに恒常的な円高の影響もあって一寸したM&Aブームにもなっているが、週末の方の項にはこうした機運の中では外国勢の日本企業売りもまた誘発とも書いてあった。

斯様に環境で思わぬ出物が出て来るのはオークションと同様だが、この辺は株式市場で最近話題になったのが米投資ファンドのサーベラスが筆頭株主になっている「あおぞら銀行」か。相手として噂されているのが「ANZ(オーストラリア・ニュージーランド銀行)」で、その株価も思惑で一寸前には乱高下した経緯がある。もう一つこれも同紙に載っていたが、8月末に日本事業を撤退すると発表した英小売最大手「テスコ」等。

当時は鳴り物入りで登場したものだったが本国流経営方針が合わずに8年で撤退、また同じスーパー業界からこの手のパターンで撤退していったのが仏大手の「カルフール」がある。これもまた卸しを飛ばし直接仕入れを目論んだものの、上手くゆかずに撤退していったパターンだ。そうそう、本日も週末に続いてオリンパスが外国人社長の解任騒動で暴落しているが、これも相容れなかった部分があるのだろうか?

また上記のあおぞら銀の話とて今迄外銀が日本で大成功を収めた例が無く、こう考えると日本固有の商習慣とどう付き合うかが非常にキーとなってくるが、これは何も企業に限ったことでなく、例えば商品先物の新規上場商品なども或る面同じだなとフト思ったりもする。


新ジャスダック一年

さて、今週で大阪証券取引所のジャスダック市場とヘラクレス市場を統合させた「新ジャスダック市場」が発足してからちょうど一年が経過した。当時もこれについて当欄では触れたが読み返してみると発足当時1,005社あった企業数は直近で970社に減少、これは2001年8月末以来10年ぶりの低水準という。

週明けには増加傾向にあるMBOについて触れたが、このMBOはもとより震災後の株価低迷で時価総額基準額が未達になったりまた財務悪化ありでIPOを横目に上場廃止もまた多くなってきている。そのIPOだが、リーマン・ショック後に失速したものの今年は上場予定を含め9月末迄で全取引所合計は25社へ増加。うち約半数がジャスダック市場であり斯様に近年では漸増傾向にあるものの、やはりピークから比較してみれば9分の1以下と心許ないのも事実。

また月曜日記の話に戻るが「フランフラン」を展開するバルスは、他のアジア市場での再上場意欲に関して時価総額が東証の3倍は見込める感触というのも理由の一つとして挙げている。他のアジア市場に活路を見出し流出組が増加、結果として上場企業数が減少の一途というのもダイレクトに活力が削がれよろしくないのは一目瞭然。

一年前に当欄では「今後IRやスタープレイヤーの発掘が非常に重要になってくる。」と末尾に書いたが、この辺に関しては日経紙ではジャスダック市場が未上場企業対象に独自に成長性や上場意欲を調査し上場予備軍発掘を強化しているという旨が載っていた。誘致も大切だがこうした撤退企業鑑みるにその後のケアもまだまだ再考の必要性があるのではないかとも思う。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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