あれからひと月

さて、東京証券取引所で先月から始まった呼び値変更第二弾として「TOPIX100」に採用されている5,000円以下の銘柄の刻み値を0.5円、また1,000円以下を0.1円に縮小する取引が始まって一ヵ月以上が経過した。

当初は低位の(みずほFG)の売買代金が130%増加した旨などが報道されていたが、確かにかれこれ2週間近くも東証一部売買代金は活況の目安とされる2兆円を下回って推移しているなか、この辺はコンスタントに5千万超えの商いをこなしている。

このみずほ、先週末の日経紙でも10銭単位に変ってから株価が滑らかに動くようになった旨が載っていたが、レンジ自体が変わったワケではなく約定頻度が上がっただけで、PTSで細々やっていた向きはともかく一般にはそう実感としては響かず喧伝するほど大袈裟なものではないような感じではある。

中庸を取るなら第一弾止まりの方が東証一部の投資家にはバランスが取れていたような気もするが、先月の当欄で「大口目線」と題して書いた時の末尾に「〜これはこれで幕間繋ぎで選好されてきた新興市場や二部への関心が一段と強まり、意外に暫くはこちらの循環物色が続く地合いになるかもしれない。」とした通り、果たして東証二部指数は12日の連続上昇で2007年以来約7年ぶりの高値水準、ジャスダック平均も2006年以来約8年ぶりの高値水準となっている。


ROEへ傾斜

昨日は8%の壁云々としてROEを取り上げたが、本日も日経紙財務面には「川崎汽、ROE10%へ」と題し同社が中期経営計画でROEを10%、そしてEPSを40円とする目標を設定した旨が載っていた。同社の前期実績ではこのROEが4.6%となっているが、市場の関心に対応する格好でこれより2倍強水準まで引き上げるという。

マーケットの方もこれと併せるように外資系の一部でカバレッジを開始、大手三社のなかで同社はトップピック評価になり、他社も投資判断をアンダーパフォームからアウトパフォームに格上げの動きがみられたことで株価も其れなりの反応を示した。

斯様に経営目標に使っていた従前の指標ROAから、上記の通り市場関心に対応しROEの採用に踏み切った例の一つだが、それにしても新指数JPX400の登場によって企業のROEに対する取り組みが本当に様変わりした感がある。この指数、先の入れ替えでも主力のソニーが脱落の憂き目に遭ったが、今後もこの椅子を巡る下剋上が展開されそうである。


8%の分岐点

本日の日経紙には「8%は魔法の数字」と題して、投資家が注目し始めた投資の判断基準に企業のROEがこれから8%を超えるかどうかという点が注目されている旨が載っていた。確かに最近ではROEの上昇が囃された企業に年初来高値を更新するものが目立っているようにも感じる。

ところで年初来高値どころか最近に上場来高値を更新したものに(花王)があるが、先週の同じマーケット面の銘柄診断では同社が取り上げられていた。同社は予想PERが30倍程度と高めであるものの、見出しにもあったようにROEは11%とやはり高い。

さて冒頭の8%という数字、同紙によれば国内外の機関投資家が日本株に求める株主資本コストは8%が最多回答で、ROE8%達成で9割超の投資家要求を満たすという。そんなワケで今期ROEが8%を超えて上昇する企業群の株価上昇率が全ての企業の中で最大であったという分析も出ていたが現況の日本企業平均がちょうどこの8%、この分岐点から各社どういった取り組みを見せるのか株価共々興味深い。


面子入れ替え

週明けの日経平均は依然として出来高、売買代金共に低水準が続いているものの、先週の9連騰後でも一服を挟んで反発となっている。背景には依然として巨艦GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)保有上限撤廃などの報による下支え効果が大きいが、先週末の日経紙では「都、株式投資を検討」と題して約4兆円の公金の一部で株式投資を検討する旨も出ていた。

この東京都がモデルとするのが上記のGPIFという。これまでGPIFについて何度か取り上げてきたが、インチキ投資顧問に年金が溶かされた事件の際にも「年金モノの場合はトップの裁量というのもあり」とした事があるが、厚生年金基金の絡みでは2年前の当欄で天下りした国家公務員で基金の資産運用を担当していた9割が資産運用業務の経験が無かったという件も書いてある。

斯様にこれまでの運用首脳陣のスタンスは上記の一発狙いか所謂国債一辺倒に近いもので簡単に言えば運用放棄といっても過言ではなかっただろう。そんなワケで末尾には「金融系専門知識の有資格者しか担当になれないようにするとか何らかの改正が必要だろう」とも書いたが、漸くというか新年度以降大幅な委員の入れ替えを行いこれに適うような面子も一部ではあるが加わっている。

GPIFは巨艦とも言われている割にその中身は上記の通り甚だ稚拙なものであったが、斯様にこうした人事や運用委託先の見直しの動きも出てきた。それでも従前運用を継承したい向きもまだ居るわけでこの辺の折衝がどうなされてゆくのか今後も注目である。


プレーヤー交代

さて、昨日の日経紙商品面には「パラジウムが高値」と題して、ウクライナ情勢緊張を背景にして主産地ロシアからの供給不安が根強くなっている貴金属のパラジウムが、ニューヨーク先物市場で2001年2月以来の900ドル台乗せ、東京市場でも13年5か月ぶりの高値を付けた旨が載っていた。

このパラジウムだが、先にロンドン市場では金・銀に続いてプラチナと共に国際指標価格の算出方法が見直される事が決まっている。この辺に関しては先週末の日経紙社説で「商品市場は銀行撤退に対応を」と題し、この見直しの主因となった欧米金融大手の撤退云々が挙げられており、現況の地政学リスクの高まりによる各種商品相場の変動が憂慮される旨も載っていた。

地政学リスクといえば上記のメタル以外にも原油などがあるが、この原油も相次ぐ投資銀行やヘッジファンドの撤退で、足元で地政学リスクが高まっているにも関わらず指標のブレントとWTIの合計売買高が前年同期比で1割減りリクディティーの低下が最近では著しくなってきているという。

斯様に大手金融機関の存在感が薄れる一方で、これに変って資源商社や新興国などの新たなプレーヤーの存在も台頭している一部報道がある。大手金融に比べた規制の緩さがどのように影響するのか、またヘッジなど彼らが抜けた後の穴を埋められるのかどうかこの辺は今後も注目である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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