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引き際

先週末にはセブン&アイHDがアナリスト向け決算説明会を開催していたが、日経紙一面でも報じられていたように20年以上にわたってグループを率いてきた会長の突然の引退表明で周辺がザワついている。会長人事案が否決された責任を取った格好というが、カリスマ退場に各流通業界トップにもショックの声が上がっている。

土曜日の日経紙・春秋の末尾には「経営者の引き際は難しい」としてダイエー、セゾン、そごう等の名が挙がっていたが、前者は過剰債務の責任を取る形で退任し後者のそごうは逮捕という形で退場と何れのカリスマ経営者も厳しい幕引きが記憶に新しい。もっと広義で見れば大塚家具もそうだっただろうが、人事案含め最後まで事業にコミットしてしまうところは共通事項か。

しかし或る意味取締役会で今回の事案が否決されたという事は、ワンマン?に対する統治機能が社外取締役含め働いたという事にもなるか。コーポレートガバナンスが云われて久しいが、今回の騒動はこれが形ばかりのものではなくファンド勢含めた株主らに説明責任を果たせるかという点でガバナンスが効いた事例ともいえようか。


物価優等生返上

さて、新年度入り1日の日経紙では、値上げのCM歌詞を掲げたあの「ガリガリ君」で有名な赤城乳業株式会社の全面広告が載っていて非常に印象的であったが、世界的な食品需要の変化や物流費の高位安定、原材料やスティックなど包装資材の需給ひっ迫と価格の高騰等が重なり実に25年ぶりの値上げという。

他にもこの新年度から値上げになる身近なものはザッと挙げてもトマトソースからサントリーのウイスキー、煙草からディズニーパスポートまで多数ある。また上記のガリガリ君の25年ぶりの値上げとほぼ同じく、実に24年ぶりにこの4月から値上げをするものに「塩」もある。

物価の優等生的存在であった物が近年次々とそれらを「返上」してきているが、その代表格であった卵の値上げを当欄で挙げたのが約6年前、3年前にはヤクルトの22年ぶりに値上げを取り上げ、昨年はジョアの23年ぶりの値上げや永谷園の25年ぶり値上げも取り上げた。デフレ脱却を謳う政府には望ましい事なのだろうが、今後も粛々と各方面で進行してゆくのかどうかが注目される。


倣う銀行営業部隊

さて、週明け4日の日経紙金融面では「大手行が投信営業改革」と題して、りそな銀行が投信の販売手数料収入よりも顧客の運用残高を増やした社員を評価したり、三井住友FGは分かり易い商品の情報提供などをグループ各社に求める指針を作るなど大手銀行が資産運用業務の営業改革に乗り出す旨が載っていた。

投信といえば長年営業にとっては転がし易くノルマ商品の代名詞的存在であったが、証券会社に倣えで銀行も挙ってこれの販売に注力してきた経緯がある。こうした過程で複雑な二階建て、三階建てのデリバティブ商品も投入され、販売している行員でさえ仕組みが理解出来ぬままハイリスク商品の特性で後に問題になった例も多かった。

そういったところから上記のような改革案も出てきたのだろうが、この投信も近年では値下げの波が広がっており中には無料を謳う投資家目線の物も少なくない。日銀のマイナス金利政策の導入でこうした部分もますます重要となるなか、長期運用を育む切っ掛けにもなるか否かその姿勢が注目される。


IPO変調

本日も円高が重しになって、日経平均は今年の大発会再来ともいえる実に6日連続安と冴えない展開。地合いの悪い中でもインバウンド関連としての注目度が高まり、連日のストップ高とひとり気を吐く展開が続いていた先週にIPOしたばかりのエボラブルアジアなどもさすがに年初来高値を付けた後は急速に値を崩す展開となった。

ところでこのIPOといえば、先月は一気に6社が新規上場する日があったがこれはリーマンショック前の2007年2月以来の事。うち3社の初値が公開価格を上回った一方で2社が同価格を下回り残り1社は変わらずであったが、それは兎も角も相場の軟調展開も恒常的になるとこの手も荷もたれ感が出てくるというもの。

さて国内では斯様に企業のIPO意欲が高いものの、明けから3月に世界の取引所に新規上場した企業は前年同期比4割減った旨も先月末の日経紙投資情報面に出ていた。上場準備の期間等の長さから相場環境にあまり左右されないという部分もあるが、初値パフォーマンスの悪化など重なってくれば企業側の姿勢にも変化が見られるかもしれず国内事情として注視しておきたい。


新年度相場

先週末の新年度入りから大きくつまずいた新年度相場だが、週明けの本日も軟調展開となりこれで5日続落である。今年は大発会から大幅な株安に見舞われその後の波乱相場が記憶に新しいだけにその再来を彷彿する向きも出てきたが、振り返ってみると結局15年度は円高・株安の展開であった。

上海株安をきっかけにした中国の景気減速懸念から比較的低リスクとされる円に投資マネーが逃避し、利上げをスタートさせた米の追加利上げシナリオも当初から想定していた通りには進まないとの見方が強くなり円安・株高の構図の巻き戻し現象から上記のような展開になり、チャブつき相場に苦労した向きも少なくなかっただろう。

今年はそんなワケで冒頭のような悪夢の再来を予想する向きも居る一方で、新年度初日の日経紙では夏の参院選をにらんだ景気対策への期待や堅調な米国景気から再度円安・株高に戻ると予想する見方も出ていた。4月は平均上昇率が月の中でも高いというアノマリーもあるが、新年早々ボラの激しさを見せたマーケットだけに何れにせよ目が離せない展開が続くことになるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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