デリバティブ市場混戦模様

さて、一昨日の日経紙金融経済面には「世界の証取 デリバティブ覇権競う」と題して、米先物取引業協会が纏めた最新データで先物やオプション等デリバティブの昨年の世界の売買高は252億枚と前年比で2%増え、11年以来5年ぶりに過去最高を更新した旨が出ていた。

ところでデリバティブといえば強みを持っているのが米ICEあたりだが、ココは英ロンドン証取傘下のLCHクリアネットの牙城を崩せず来ている事で、破談色濃厚となってしまったドイツ証取との合併話を逆手に取って食指を動かしてくる可能性もあるが、かつてはICEが呑み込んだNYSEユーロネクストもこのドイツ証取とも破談歴があるなどややこしい。

この時は欧州委員会の壁が立ちはだかったのだが、上記のロンドン証券とドイツ証取の現状もまた規制当局であるところの欧州委員会がネックとなっている。ともあれ取引所の国際的な競争力が激しくなるなかでアジア勢はどう動くかだが、当然ながらこれまたデリバティブに活路を見出してゆく以外ない。

現状日本取引所傘下でデリバティブ市場を運営する大阪取引所の昨年のデリバティブ売買高ランキングは17位と発足当時から次第にランクを下げてきている。この背景はやはり監督官庁の壁に阻まれ総合取引所の実現が遅々として進んでいないのが大きい部分だが、先ずはこの辺の世界標準を見据え本邦市場の改革は焦眉の急である。


下方硬直性

本日発表される米税制改革案への期待持続からリスク選好的なドル買いが継続、1ドル111円台に軟化した円相場を受けて本日もTOCOMでは金相場がしっかりの展開となっていたが、昨日の日経紙商品面にも「金に資金流入続く」と題しCFTC発表の18日時点の投機筋買い越し幅が5ヶ月ぶり高水準となるなど資金流入が継続している旨が載っていた。

ルペンリスクと警戒されていた23日投開票の仏大統領選では果たして欧州リスクが増幅する最悪のシナリオが避けられたものの、燻り続ける地政学リスクや米国の金融政策にも不透明感が漂い目先の雲が晴れてもその下げ幅が限られるなど下方硬直性が定着化しつつある。

こうした背景もあって今月に入って金とプラチナの価格差も昨年末から約3割、更に100ドル以上も拡大しているが、これまでにない長期逆鞘現象とされる時期もあったが恒常化を経てこの鞘もすっかり馴染み固定化されつつある。リーマンショック時に効いた裁定が通用しなくなったのは株の個別でも多々あるが、既にアノマリーそのものが崩れている証左だろうか。


HFT界再編

本日の日経紙金融経済面には「超高速取引 淘汰の波」と題して、HFT(金融商品を高速で売買するハイ・フリークエンシー・トレード)大手の米バーチュ・フィナンシャルが同業のKCGホールディングスを買収する事で合意した旨が載っていた。システム開発の負担等が重く収益性維持には再編が避けて通れなくなってきたという。

バーチュといえば上場申請目論見書にて1238日間で損失を出したのがたった1日だけだったと謳い、5年で勝率99.9%という運用成績と併せて顰蹙を買った経緯があるが、赤字に転落したKCGホールディングスのみならず同社も16年12月期は上場後初の減収減益に陥り純利益は2割減となっている。

冒頭のシステム開発負担もさることながら取引低迷も大きな要因になっている。NY証取の売買高は一週間前に今年2番目の低水準、ナスダックに至っては今年最低を記録するなど盛り上がりに乏しく、注文と並行し収益機会も減少しているのは逆風。地政学リスクが燻るなか様子見姿勢が継続されるようであれば再編の波にさらされた業界も安穏とはしていられない。


ターニングポイント

本日の日経紙地域総合面には「ふるさと納税戸惑う地方」と題して、今月あたまに総務省がふるさと納税における返礼割合や返礼にふさわしくない品目を細かく列挙した通知を出し過度な競争の自粛を求めた事に対し、自治体の中では見直す動きがある一方で個別制限に反発する声や通知に反し継続を検討する動きもある旨が出ていた。

直近で後者の継続検討とした自治体は個々の解釈での判断としているが、確かに一頃パチンコのような換金構図になっていたトコロや純金製品を用意しそれに著名トレーダーがすぐさま応じたところから注目を浴び早々に打ち切ったトコロもあったなか、継続表明の自治体のコンセプトを理解すればこれらとの相違性を感じなくもない。

この辺は外と内の立場から解釈も異なったものになってしまうものだが、現実問題としてここ数年特に「売り」を持たない自治体は税流出が顕著で、豊富にネタを擁しているところの格差拡大から死活問題になってきており、これを重く見た総務省の動きと並行し最近では媒体側も魅力的な食材群一辺倒から、TVでもよくネタにされているペットの殺処分ゼロや災害支援等の課題解決モノを取り上げる事が非常に多くなった。

個別制限の強化でふるさと納税も今後歯止めがかかって来るか否かだが、上記の通りお上と当事者各々の立場でその見解も相違してくるのはふるさと納税に限った事ではなく、総じて一括りで考えられないところは本当に難しい部分でもある。


インデックス運用の功罪

さて、先の日曜日の日経紙朝刊の一面を飾っていたのは「株指数運用市場を席巻」と題して、低コストで市場平均並みの成績を狙うのが効率的との見方が強まった傾向から本邦市場で投資信託の8割、年金運用の7割が株式市場で株価指数の構成銘柄を丸ごと買うインデックス運用が急速に広がっている記事であった。

これを先導するGPIFは日本株投資における運用比率を2001年度から倍増させているが、倍増といえば日銀によるETF買いもまた然り。異次元緩和策の一環として年6兆円分の購入を目標としているが、日経平均が下げに転じたホワイトデー以降から約1ヵ月で8,970億円分を購入し、その規模は昨年度の株式投信への純資金流入額の実に約7割に相当するほど。

この影響もあって地政学リスクが高まっている割に日経平均がまだ下げ足りないと感じている向きは多いと思う。またインデックスは指数に組み入れられていれば内容に問題があろうが割高だろうが、個別で見ればチキンレースの域でも自動的に買う玉石混合で健全な株価形成に影響が出る弊害も指摘されている。

他にもコーポレートガバナンスコードへの逆風を懸念する声もあるなど上記の件含めいろいろと出始めたが、斯様に最近はかつて予想もしなかった過ぎたるは猶及ばざるが如しのような偏重傾向が各所で表面化する時代になりそれらに対する課題が今後も彼方此方で議論されてこようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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